ダイナミック・プライシング


7月卸の取扱高は予想通り10%以上下回る結果になったところが多いのではないかと思われる。弊社の切花の単純ケース単価については98年以前は6,000円台を保っていたが、国民所得が目減りし始めた99年には5,000円台、2002年には4,000円台となった。その間、切花の1ケース当たりの入数は少なくなってきているから単純には比較できないが、98年比でケース当たり1,500円以上安くなっていた。昨年度は持ち直して5,000円台、本年の7月はまた4,000円となった。いずれも冷夏や猛暑などの天候によるところが大きいが、花き業界は一進一退を続けている。
しかし、注目して欲しいのは2002年より若干だが上回っているという事実である。暑い中でも景気は下げ止まっていると見てよいのではないだろうか。

さて、先週はWTO関連の記事が新聞を賑わわせた。各紙論調は異なるものの、結論は来年の香港の会議に持ち越されなんとなくぼやけた印象をぬぐえない。WTOの記事を読むときに心しておかなければならないことは、“ネガティブ・コンセンサス”が働いているということである。ネガティブ・コンセンサスとは、反対意見が満場一致だったとき初めてその議案が否決され、一人でも賛成者がいた場合、その議案が通るというものである。
日本は国際社会に慣れていない。農村部や花き業界がコミュニティとして活動しているから、未だに満場一致が良いとされる風潮がある。だからその対極にあるネガティブ・コンセンサスがなかなか理解できずにいる。しかし実際のビジネス界では、反対多数の意見でないとその議案が、特に投資案件は魅力がないと言われている。満場一致ということは現状の延長線上だから投資をしてもリターンが見込めない可能性が大きい。
日本の産業界の多くの会社が多数決を通り越してネガティブ・コンセンサスのルールを通している。それは会社が目的を持った組織だからで、責任は社長が負うことになっているからだ。しかしWTOは貧困を無くすという目的があるものの、UR(アメリカ通商)やケアンズグループが中心となってこと農業問題を取り仕切っているから、なかなか不透明な感じがするし、論理的に割り切れず、どうもしっくりしない。

ネガティブ・コンセンサスについでもう一つよく使われる横文字は“ダイナミック・プライシング”である。ダイナミック・プライシングとは需給バランスに応じて価格が変化することを言う。友人がコカ・コーラ社にいて、ダイナミック・プライシング、すなわち気候変動によって値段が変わっているこのシステムを使わざるを得なくなり、本当に大変だと嘆いたことを思い出す。僕の場合は卸売市場の市場を開催することだから、メーカーである生産者の方々の御苦労は当然普通の人よりもよく理解している。コカ・コーラ社だけではなく、あらゆるものがマーケットで値付けされていることは航空運賃が身近なところだし、インターネットを覗けばホテルに始まり、あらゆるものがダイナミック・プライシング化していることがお分かりになるだろう。
それではダイナミック・プライシングの世の中にあって利益を出すにはどのようにすればいいか。
① 的確な予測システム
② 素早い動き
この2つになる。日本中、このように忙しくなってきているから、忙しさの中でも競合他産地の情報を的確にとり、スピーディに意思決定し、物流させていくことが必要である。




2004/08/02 磯村信夫