販売を想定して仕事を組み立てる


5年も花き業界の売上が減少気味になっていると、ものの考え方にも人により差が出てくる。概して、45歳未満の人たちは前向きに捉え、それ以上の人たちは後ろ向きであることが多いのはどの業界でも同じようだ。
産業界では、不況の時、業界上位の大手企業はあまり売上高を落とさず、それ以下の会社は大手との差が広がりがちになる。景気が上向いてくるとどの会社も元気になるが、また不景気になるとその差が広がる。人的資源によるものも多いだろうが、資金力に裏付けされた未来の芽を育てているかどうかの方が大きいように思う。花き業界は種苗会社を除き、全て零細企業の集まりだから、予算といっても限られているが、3〜5年後を見て確実に芽を育てているところは現在の花き業界においても元気な会社である。例えば、近い将来株式を公開しようと事業展開している花の小売や卸売会社は小生が知っているだけでも4社ある。その社長さん方にお会いすると、いずれも大変魅力的で情熱にあふれ、誠実な方々ばかりである。彼らにはマネジメントがある。我々花き業界のようになかなか零細性を脱却できないのは、マネジメントがないからだと経営学の神様ドラッカーは言うが、自分のことを振り返ってみても確かにそうかもしれないと感ずる。金がない、人がいない、野心がない、だから一生懸命働いているが、自転車操業というか、その日暮らしというか、そういうところが多い。
先述した株式を公開しようとしている若い会社以外にも、事業規模をこれ以上大きくせず小さいままであっても大変人間味豊な商売道に徹した小売店店主や農家の方が多いのには驚かされる。マネジメントという横文字を使わずとも、仕事というのはこういうものだと体現している人たちである。
ではこの素晴らしい人たちに残念ながら欠けているものは何かというと、時代に合わせる努力である。消費者は幾多の物財を消費している。そして一部花も買ってくれている。他の物財は消費者に訴えるべく、目を引くPR活動やポップ、売り出し方、商品構成などを競っている。当たり前のことだが、販売に力点をおいて、仕事を組み立てていく。このことは20世紀とすっかり時代が変わってしまった21世紀に行うべき基本的なことであると、進化する小売店たちが我々に教えてくれている。




2004/08/23 磯村信夫