個人消費未だ期待できず


このたびの新潟県中越地震で被害に遭われた皆様には、心よりお見舞い申し上げます。
また、新潟県の生産者の皆様方、道路が寸断されているにもかかわらず、ご出荷いただきまして、誠にありがとうございます。

さて、昨日TBSラジオの長寿番組である「全国子供電話相談室」に先生として出演した。余震が続く最中とあって地震の質問が多かったが、花も2つほど番組で取り上げられた。
実際の現場でわかったことは、10名余りのスタッフが別室で子供たちからかかってくる電話に応対しており、影の先生役もいる。9時55分に番組が終わった後、オンエアできなかった子供たちの質問に当日担当した先生たちが直接電話をして答える。このアフターケアが「全国子供電話相談室」が40年も続く秘訣なのだろう。

今週末の最前線の現場では、土日とも花の自家用消費はあまり奮わなかった。給与前であることと地震のニュースを聞いて身繕いをする日とした人が多かったためであろうが、先週のキク類の高値で小売店価格が消費者の値ごろ感とずれてしまっているのではないかと思われる。「消費財の販売量は需要で決まるのではなく、消費者の値ごろ感で決まる」のルールを逸脱してしまったのではないかと危惧する。

現在の日本の経済については、2001年から2003年末まで雇用調整を行った大企業が平均経常利益率4.4%となっていることでわかるとおり、経営は改善された。そして設備投資意欲が盛んで、これが日本経済を引っ張っている。日本の全サラリーマンのうち、3分の1が大企業に勤める人たちだ。だから、今年7月のボーナスも前年を上回り、12月も上回ると予想されている。バランスシートの調整が終わり、労働分配率は相変わらず上がっていないが、社員にも余剰金を回す体力が付いてきたのである。
しかし、中小企業をみると、ここで働く人は全サラリーマンの3分の2だが、雇用調整を2003年から本格化している。だから7月のボーナスの平均値も全体では前年よりマイナスとなり、失業率は改善されず、12月のボーナスも平均値で前年を割り込むと予測されている。日本は元々、労働分配率、企業にとっては人件費率が高い国であったが、グローバリゼーションとともに「会社は誰のものか」「会社は株主のもの」というアングロサクソン流の考え方に重きを置くようになり、大手企業の中には構造的に戦後大手の下請け企業としてともに成長してきた中小企業と縁を切るところも多く出てきた。
中小零細企業のリストラは2003年からようやく始まったばかりで、家族経営などが中心だから、雇用調整といっても大手企業のように簡単にはいかない。結局、事業の再定義から始めざるを得ない。
だが、2006年からは中小企業も筋肉質となって浮上してくると予想されるが、その頃行われる可能性が高い消費税の増額、その他の増税で結局サラリーマンの手取りはなかなか増えないかもしれない。となると、消費が景気を牽引するということは考えにくい。「増税やむなし」は国民のコンセンサスであるが、ここをうまくやってほしいものだと思う。

結論として、現在大企業が日本経済を引っ張っているが、花を売る者とすれば2つの顧客にターゲットを絞って販売していきたい。1つは大手企業の従業員である。もう1つは住関連の消費が活発な50〜60歳代の中高年者である。ガーデニング素材はこの層にうまくはまっており、ブームが過ぎ去って行った30歳代から40歳代前半の人たちに代わり最も大切な顧客となっている。切花は仏花以外においてこの層をうまく取り込めていない。すっかりきれいになった棲み家を飾るものとしてアーティフィシャルな花に関心を奪われてしまった感があるが、これを取り戻す算段をしなければならない。




2004/10/25 磯村信夫