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2005年3月 9日

Vol.2 神奈川県平塚市 松木さんちのガーベラ 編

浜田さんのバラに引き続き、ウンチク隊またまた平塚市です!今回は、引く手あまたの大輪ガーベラを作っている松木園芸さんにおじゃまします。

松木さんのガーベラの特徴は大輪種ガーベラを主に作っていらっしゃること。

大輪種ガーベラを作る産地は前に比べて多くはなってきましたが、ガーベラ=ミニというのがまだまだ主流です。松木さんは早くから大輪系を導入したベテランです。しかも花保ちや品質などでも優れた評価を得ています。

今回のウンチク探検隊は営業本部ガーベラ担当Y垣部員にくっついて出動です!運転もしてもらってラークラク。しかし平塚市ってこんなに遠かったでしたっけY垣部員?・・・って地図見ながらじゃないですか!あなたホントに横浜生まれなんですか!?

Y垣:「だってわかんないんだもん。しかもオレさ、松木さんとこ行くの初めてなんだよね。」

ガーベラ担当して2年も経つというのに初めてって・・・。

住宅地をさまよいながらやっと松木園芸に到着。松木さんが穏やかな笑顔で出迎えてくれました。
「Y垣くん、いつかは来てくれると思ってたよ(微笑)。」 
松木さんは見た感じと同じやさしい方です。

実はワタクシ、ガーベラの圃場見学は初めてです。一歩ガラス温室の圃場に入るとうぉぉ広い!一面お花畑です。ガーベラたちがベンチでお行儀よく並んでいます。

市場では透明なキャップをかぶってくるので、実際咲いているのを見るとその大きさにびっくり!とってもゴージャスですね。
「キャップしてないほうがきれいなんだけど、やっぱり傷むからね。」
松木さんが一本とって渡してくれたのを持つと、おっ、重い!大輪系ガーベラの迫力恐るべし・・・。
草本の一輪咲きででこんなに重量を感じる花も珍しいかも。
「やすっぽちい花だとお金とれないからね。」


ワタクシの手は男並に大きいのですがこの通りの迫力です!

ガーベラを摘むときはいつも手なんですか?
「ハサミは使わないよ。とってみていいよ。根元をこう折って・・・」
と松木さんが実演して見せてくれました。ガーベラって手で簡単に摘めるんですね。

しかしY垣部員かなりの苦戦。ガーベラ担当なのにヘタクソすぎです。

バラの感覚でガーベラを育てる

松木さんのガーベラはベンチ栽培なのですね。しかしガーベラの根元をよく見ると、プラスチックの鉢に入ってベンチに並んでいます。これはなんという作り方ですか? 「ロック(ウール)っていうかね、水耕栽培。」

しかし普通のロックウールの水耕栽培で、鉢の中に植えられているのを初めて見ました。
鉢の中はなんですか?
「こういう形でね、サイコロみたいなロックに植えてんの。培地をいろいろ試したんだけどようやくこれに落ち着いたかな。」

これは松木さん開発の作り方なのですか?
「違うよ。メーカーが作って売ってるよ。」

あっ、そうなんですか…。これはスタンダードなガーベラの作り方なのですか?
「もちろん土耕で作っている人もいるよ。ガーベラって特に決まった作り方ってないんじゃないかな。」

なぜこの作り方を選んだんですか?
「下がつながっていると、病気が出てきたときにすぐ移るからね。ひとつひとつ鉢に植えると病気が出たとき他の株に移らないですむでしょ。ポットにしてからずいぶんよくなったよ。」

なるほど?。ポットの大きさは産地によって違うらしいです。

「あとは溶液の点滴がどれだけ・・・水のかけ方だね。結局。水少しだけやってあと肥料だけやったらぜんぜんダメだしね。」

おおっ、ここらへんで企業秘密のにおいがしてきたのですが。ズバリその秘密は?

「秘密!?うちに秘密なんてないよー。オープンだよ。でも他の人に言ってもみんな頑固だから直さないだろうしね。水やりはあんまり多くかけるともったいないしね。こぼれちゃうし。うちは昔バラやってたから。バラやってたときの感覚でやってるね。」

そう、実は松木さん、初めからガーベラ生産者ではないんです。

「ガーベラの前はバラを作っていたんだよね。やめてもう5年くらい経ってるかな。」

今では圃場にはバラの影も形もありません。松木園芸のバラってけっこう評判も良かった・・・って聞いているのですが。ガーベラに移ったワケは?

「ガーベラの花はきれいだからだね。近所でガーベラやってる人がいて、それ見てたら色合いもきれいだし。特に大輪がきれいだったからね、いいな?と思って。」

ガーベラに惚れてうつっちゃったんですね。

控えめで、柔軟で、絶妙な感性の人 松木さん

ガーベラは一年中お花屋さんに出回っている周年品目です。見た感じ丈夫そうだし、圃場でも年がら年中ドンドン伸びて咲いてくるのでは?と失礼なことを思っていましたが、よーく見ると、花が全然咲いていない品種のものもチラホラ・・・

品種によって周年で切れるものとそうでないのがあるんですか?
「ガーベラはもともと休みがないはずなんだけどね、次に出るまで時間がかかっちゃうのとかもある。よく咲く品種よりか半分しか切れないものもあるよ。」

しかも1?2年で新しい苗に植え替えをするそうです。
「花は咲くんだけど、3年くらい経つとやっぱり樹勢が落ちるね。品質もよくなくなるし。」

(優しい笑顔の松木さん)
そのたびに既存品種を見直したり新品種を入れています。

営業Y垣部員曰く、松木さんの品種の作付けはいつもバランスがよく絶妙!

やはり綿密な研究・計算のもとで植え替えや品種の導入を行っているんですか?

「よく研究してる産地は試作圃場があるみたいだね。
そういうところは(経済性から)本数切れない品種はその時点で省くんだろうけど。
でもうちは個人でやってるからそんな試作圃場なんか作れないし。採花本数ばっかりみて選んでもね、花がきれいでなかったらしょうがないから・・・。
本数切れなくてもきれいな花はあるからね。うちは花重視だから。
自分が好きなのはとっておくね。あんまり切れない品種入れちゃって、周りからは異端児みたいに思われちゃうけどね。おもしろいと思ったものはどんどん出していこうかなって。まっ、明らかに失敗しちゃったっていう品種も必ずでてきちゃうんだけどね。2つ3つ。いつもパッていっちゃうから。」

それでも各方面から絶妙と言わしめる技はさすがです!

「好きな花を作っているだけだから。逆に挑戦とか、そういうのはないんだけど・・・」

ガーベラお嬢は環境にうるさい

2月だというのに、おジャマした日はとても天気が良く、太陽の光がさんさんとガーベラ達に注いでいます。この季節でこの光量だから、夏場はだいぶ暑くなるのでは?ちなみにガーベラの原産はアフリカ。別名アフリカンデイジーというくらいですから暑さには強いのでしょうけど。

「遮光はやるよ。やっぱ遮光しないとねぇ。やると株が疲れちゃうからってやっちゃダメっていう人もいるんだけどね。さすがにしおれちゃうし。水あがんなくなるからね。遮光するとその分涼しくなるからね。
遮光しないと働いてる人間もね、やられちゃう(笑)」

ちなみに冬はあったかくしないと花がなかなか出ないんだそうです。

「今年は油代が高いけどガーベラは周年品目だから暖房たかないと・・・。しかも暖房しても締め切ってはダメだし。」

ガーベラってワガママなお嬢様みたいです。
お嬢様方の一番心地よい環境作りに、松木さんはとても気を使っています。

「それと色はガラス温室が一番いい色出るんだよね。ビニルハウスだと光線の量が落ちるから。光質も大事なんだよ。それを考えるとガラスが基本だね。ビニールハウスだと張り替えた年はいいけど徐々にどんどん光量が落ちていくからね。湿度もむっとするでしょ。ガラス温室はカラッと抜けるから。夏はビニールに比べたら涼しいし。冬は油食うけどね(苦笑)。」

また、ガーベラはしみができやすいという難点もあります。

「うちでは全部自分で見ているからね。束ねるとき一本一本自分の目で見ているよ。一万本あれば一万本見てるからね。チェックして束ねてるから。」

美しさをしっかりチェックしてお嬢様たちを世に送り出しているんですね。

子どもにガーベラを植え付ける

実はおじゃました日に松木さん、野球の予定が入っていたそうです。ほんとうにお時間取っていただいてスイマセン・・・

「自分のじゃなくて子供達の少年野球。指導してんですよ。うち、小学校まん前ですしね。」

そうなんですか?。カントクがガーベラ生産者だったら、ガーベラという花を身近に感じるでしょうね。また授業の一環として子ども達が圃場の見学にやってくるそうです。

「幼稚園児から中学生まで来るよ。最近ほら土曜日休みだからね。これで将来需要ができるかどうかわかんないけど。」

いやいやできますよ!普通の小学生はガーベラって名前知ってる子普通いないですもんね。そして小さい頃に覚えた花って絶対忘れないですから。

「見学のお礼に作文が来るもんね。」とうれしそう。

初めて見るガーベラがこんなに一流で立派なものだと、子どもたちもきっと楽しいにちがいないですね。いい消費者になりますよ?。

Y垣部員:「オレ、花って大田花き入るまで桜しか知らなかったからなー。」

・・・こういうオトナが増えないよう、松木さんよろしくお願いします。

広がる松木園芸ガーベラの魅力

ふと見ると、なんと花の中に芽?があるガーベラ発見!(左写真)です。

「それは樹勢が強すぎちゃって。こういうのは(市場に)出てる?」
私は見たことないんですけど・・・。
Y垣部員の話によるとB級にたまに入ってるらしいです。
「おもしろいのは、また小さい花が中で咲いてんのがあるんだよね。双子になって咲いてるのとか、スプレー状に咲いてるのもあるよ。」

これらはいわゆる「奇形」の部類に入るのですが、これはガーベラの元々の生命力の強さがなせる個性技で、病気ではありませんよ!

「こういうのもいいと思うんだけど数がまとまんないんだよね。」


蕾でもステキなものが!真ん中がベルベットみたい!さわり心地も素晴らしいのです!!

スタイリッシュな感じがまた使えそうです。
ウンチク隊、ウンチク忘れて商品開発(開拓?)に若干走ってしまいました。

これ出してくださいよ?!
「女の人はツボミ好きだよね。弟のかみさんも同じこと言ってたな。」

ぜひ出荷してほしいもんです。頼みます、松木さん、Y垣部員。

 

ちなみに松木さんが個人的に一番好きな品種はどれでしょうか?

「うーん。好きなのばっかり選んでるからね。(としばし悩んでから)しいて言えばコルニスとかいいね。花色とか形じゃなくて総合的にみてね。ステムの太さとか硬さとかね。
一番きれいな花はオプチマかな。ステムの感じがいいね!硬すぎず柔らかすぎず。」

目のつけどころが花じゃなくてステム!ってとこが職人ぽいですね。バラといい、やはり花はステムが命のようですね。


(コルニス※写真左)(オプチマ※写真右)

ちなみにガーベラ担当Y垣部員は何が好きでしょうか?
「オレはアンニュイなやつが好きだな。M・Gとか。裏がとってもいい。セリ場ではそういうの売れないけど。」

アンニュイ・・・。しかもM・Gってアンニュイって感じか・・・?
垣部員曰く 「アンニュイ」なM・G。
(注:アンニュイ・ennui(仏)・・・倦怠感、退屈、の意。)

最後にウンチク探検隊として質問です。
自分はここだけ他の産地には負けない!とか哲学とかあったら教えてください!

「負けない!?哲学っ!?・・・(すごく考えてる・・・)」

あっ、あのー、そんなにムズカシク考えなくてもいいんですけど・・・。
いつも仕事で思ってることとかでいいので。

「そうだねぇ・・・。個人でやってるからあまり採算考えないでいい花を選びたいと思うね。切れなくていいから売れなくていいから。」

お花屋さんにお伝えしたいことがあれば・・・
「花屋に伝えたいこと?うーん、自分は自分なりのわがままでやってますから。お花屋さんが言うことより自分重視なんですけど(笑)。まぁ・・・気に入ったら買ってってことで。」

・・・と口ではこう言う松木さん、でもY垣部員と話すときはこんな言葉が随所に出てきてます。

「いいのあったら言ってもらえれば・・・」
「欲しい品種とか、言っていただければ・・・」
「なんでも言ってください。作ってほしいものがあったら・・・」

こんな本当に低姿勢な松木さん。松木さんの視点は単に好きなだけで終わりません。
種苗会社の話を聞き、私達市場の人間の話を聞いていただき、お花屋さん(弟さん夫婦がお花屋さんを営んでいらっしゃるそうです)の話を聞き、情報収集した上で松木さんの素晴らしい感性が生かされているんですね。

松木さんはこれからも魅力ある大輪系をもっともっと増やしていきたいそう。苗はオランダに発注するのだそうです。

「苗の供給が遅れたり、こなかったり、カタログと違うのが来たりすることがあってね。」

外国とのやりとりは大変です。

「本当は実際にオランダに行って見て選びたいんだけどね。市場に週3回出していると忙しいしねー。」

すいません、ご出荷ありがとうございます!そしてよろしく頼むよオランダ人!!

「ユーロはあがる、苗代は高い、油代も高いで大変だけど。」

大田花きもがんばって販売します!
そしてうちの営業部員Y垣のアンニュイさ加減もなんだかビミョーですが、これからもよろしくお願いします!

松木園芸の格言

・あくまで自分の好きな品種を追う!
・ガーベラは光が命!
・低姿勢で生かされる絶妙な感性!

お花屋さんへ一言・・・

好きにつくってるんで良かったら買って下さい。

松木園芸から出荷されている大輪ガーベラたち

ウォールストリート、エバーグリーン、オプチマ、コルニス、M・G、ティナ・・・などなど。 新品種続々導入予定です。お楽しみに!


おまけ:アンスリウム


実は松木さん、ちょこっとですがアンスリウムも作っています。

「アンス好きなんですよ、遊びでね。温度とかはガーベラとおんなじくらいだし。白とか増やしたいね。オレ、年取ってから、お金があって、温室があったらそんでまぁそこそこにアンスやろうかなぁと。」

あれれ?ガーベラは??

(文責 よしだゆきえ)
Copyright(C) Ota Floriculture Auction Co.,Ltd.