大田花き 大田花きコーポレートサイトへ
 

« 2005年5月 | トップ | 2005年8月 »

2005年7月27日

Vol 6.千葉県旭市 石毛洋蘭園編

今回はウンチク探検隊初!鉢物の取材ですよ!
贈り物、劇場、国会、夜の街、ちょっとキンチョーしそうな事務所の中などに
引っ張りダコの高級鉢物の女王様、ファレノプシス(和名コチョウラン)です!
コチョウラン一筋15年、品質ピカイチ石毛洋蘭園さんへ突撃させていただきました!

コチョウランは漢字では「胡蝶蘭」と書きます。
花言葉はいろいろあるのですが、私が気に入っているのは『幸せが飛んでくる』!
幸せが「やってくる」んじゃないんですよ、「飛んで」くるんです!!
まさに蝶のごとし?!

と、一人で盛り上がってしまいましたが、
まずはフライイング前のファレノプシス(以下ファレノ)たちから取材。


まず第一ステージの温室から。

苗の生長ステージに合わせて温室が分かれています。

素焼鉢に入ったファレノの苗が整然と並んでいます。
すごい数ですね・・・

「市場に相手にされるような数を確実に作っておかないとね。そうじゃないとお客さんついてこないじゃない。」

と、石毛氏。

「ファレノは風がないとダメなんだよ。着生ランだから。」

ファレノはまずどうやってこの温室にやってくるのでしょう?
「フラスコ苗を買っているんだよ。」
フ、フラスコ?ってあの理科の実験で使うあれですか??
「全部クローンだからね。」
Oh?、フラスコの中でクローン栽培された苗ということですね。ガッテンしやした。
「昔、ファレノは実生でしかできなかったんだけど、クローン苗が出てから価格が下がったね。」
まぁ消費者の皆さんにとっては喜ばしいことですが・・・でも単に生産が楽になったのではないようです。
「フラスコで大きくするのと外に出してから大きくするのは違うんだよ。 4?5年前に植え替えのダメージを減らせれば、って苗のサイズを大きくするのがはやった時期があったけど、 結果的によくなかったね?。」
いろいろタイミングってあるんですね。

(最初はこんなにミニミニ軍団。)


(一つ一つ水ゴケで丁寧に植えていきます。)

  
ソボク?な疑問なのですが、どうして素焼鉢で育てているんですか?
「素焼鉢の方が乾くからだよ。乾けば根が水を求めて伸びていく。
上がモリモリにできているからといって株が充実しているとは限らない。
小さいうちから根がびっしりしているものを作るのが大事。」
ランって栄養のなさそうなミズゴケに植えてあるし、根っこを重要視しないと思ってたんですけど、
やはり花の付き方は根張りがカギを握っているんですね。

ファレノの生育条件は?
「暑くても寒くてもダメ。もともと乾燥には強いけど、咲いた花が乾燥に弱い。冷房の風に当たるとダメ。」
ダメダメぞろいですね。うむーさすが女王様。
皆さんも女王様を買った(いただいた)ら、エアコンの風にはくれぐれも気をつけてくださいね。
女王様が育つにはここの地域の気候は合っているんですか?
「台風さえ来なければね。」

ところでこの温室にはよくある潅水システムが見あたらないんですけど。
「水遣りは手でやってるよ。」
ひーえー!この広さをですか!!
「タイミングも大事なんだよ。」

ところで、ラベルがささってあるのですが。
これは・・・日付でしょうか?
「いつ植え替えしたかが書いてるんだよ。」
よくみると、苗の大きさにしたがって、素焼き鉢の大きさも違います!
3つ日付が書いてあるってことは、3回植え替えしたってことですか?
「花がつくまでもっとするよ。」

ということですので、
開花までの作業の流れを簡単に図式化してみました?。

開花までなんと、トータル24?28ヶ月かかります!
2年以上ですよ!2年!人間なら生まれてからその間に立って歩いてしゃべっちゃいますよ!

ちなみに、全ステージ通してトータル的にファレノを作っていらっしゃる方は実は少ないのだそうです。
それぞれ専門のステージ担当の生産者さんがいて、リレー方式で作っているのが大半なのだそう。
「リレー方式が性に合わないんだよ。」と石毛氏。
「親父は自分が全部見ないと気が済まないんだよね。」と息子の隆一氏。

石毛洋蘭園が高い品質を維持できるのは、一貫生産体制にこだわっているから。
「最初から最後まで手間ヒマかけてるからきれいに咲くんだ。」

開花室へ

ようやく2年越しの開花室へ。 いきなり入り口にすごい輪数のファレノ発見!!

花がありすぎて地面つきそうなくらいあふれてるんですけど!!

ファレノって最高どのくらい花がつくもんなんですか?
「20輪でも25輪でもつけられるよ。」

おっほ?すごいゴーカ!!
「でもそんなの作ったってお客さんお金出し切れないじゃん。でも注文来れば作るよ。」

ビックリファレノはひとまず置いといて、ささ、商品のファレノを見学しますよ?。

こちらは花芽が出るのを待つばかりの株たちです。

「ステムは光(明るい方)を向くんだよ。
ねじれたりするのを防ぐために南を向けて仮曲げするんだ。」

だからみんな、同じ方向を向いているんですね。

こちらはツボミがついたコチョウラン。

支柱と洗濯バサミ(?)で美しい姿勢に矯正中です。ちなみにファレノは元々はまっすぐなんですか?最近まっすぐなファレノも出ているようですが。
「自然と曲がる品種もあるよ。でもきれいに仕上げるために矯正はするね。ステムの固さも品種によって違うよ。それと、品種、株の充実度合いによって花と花の間隔が決まる。キレイな姿にするにはいろいろ考えるね。」

「オレ、開花全然たずさわってないからよく分からないなぁ。」と跡取り息子の隆一氏。
「うちは全部OJT※だからな。手取り足取り教えない。」と石毛氏。
オホホ、厳しい師匠のお言葉。

※OJT=On the Job Training
意味:日常の仕事の中で、日常的な業務を遂行しながら、
仕事に必要な知識・技能・技術・態度をレベルアップしていくことをいいます。


さて、開花室のお隣には鏡の間が。ここは?

答えは、女王様最後のお化粧場、仕立て加工場でした。


このように、正面の姿を見ながら丁寧に化粧鉢に植え込んでいきます。

1つ作るのになんと約20分もかかるそうです。

「大きくなればなるほど仕立てはむずかしいよ。」

こちらの温室には、出荷を待つばかりのファレノがズラーリ。
「種類は色目の違いも入れて10ちょいかな。あとは試作もあるよ。 品種によっては全部が全部クローンで増やせるとは限らない。」


 
和紙とクリップで丁寧に包装されて出荷準備完了です。

ちなみにこの和紙、けっこうお高いらしいですわよ奥様。

このラベルが高品質の証です!

石毛洋蘭園、15年の歴史

石毛洋蘭園は15年の歴史があるそうです。 「たまたま植物園で買ったのが咲いたのがきっかけだね。 カトレアもやろうと思ったけど、結局ファレノの方が自分に合うと思って。」 

石毛氏自身がファレノの魅力にとりつかれたんですね。
「うちはね、バブルの終わり頃に始めたんだよ。
元々農家だけど、トマトやキュウリやってるんじゃ家族労働だから伸びないと思った。
この辺の地域で切花(トルコ)を始める人が出てきた時期で、それに刺激されたんだな。
最初は運転資金と苗代を稼ぐためにキュウリやトマト、米を作った。
そのカネを苗、油代につぎ込んでファレノを作り始めたんだよね。」

おぉ、すごい情熱!

「うちなんか、ほら、後発組だから目立つもん作んなきゃと思って。
13?15輪咲いたから、市場に出してみたら、これが認められたんだな。
当時は10輪くらいで出荷してた人が多かったからね。」
技術の高さが石毛洋蘭園の基礎を作ったんですね。

何か他に苦労することってなんですか?
「人も同時に作っていかなきゃならないことだね。 仕立て方教えるにも1?2年で使い物になるわけではないから。 自分はいろんなことに必死で、いろんな目に遭ったから今のマニュアルができたけど、 息子は必死さがないから、それを教えなきゃ。」

ムダを省く!

事務所には名車、日産フェアレディZのポスター発見! 「これは前に工場見学に行ったときにもらったんだよね。」 ・・・石毛さんカーキチ(車好き)ですか? 「実はオレ、養子なんだよね。昔は日産の横浜工場にいたんだよ。」 ほぉ?製造業ですか!全然違う業種にいらっしゃったんですね。 「こうやって久しぶりに工場見学すると自分も刺激受けるし、ためになるね。 モノづくりの現場とかずいぶん昔と変わったよ。 今、クルマは同期生産(注文受けてから生産にかかる)で最短3日で作れるらしい。 ムダを省いていくって大事だね。自分の経営に生かそうと思うよ。」

他産業からも学び取ろうとするその姿勢が石毛洋蘭園を育てていくのですね。
その考えは息子の隆一氏にもしっかりと受け継がれていくでしょう。
石毛父:「オレもう隠居すんだよ。」
いや?、この名調子だとまだまだ現役でしょう!!(笑)


(息子の隆一氏です。ちなみに結婚してコドモさんもおります。石毛家は安泰ですな?。)

石毛洋蘭園の格言

・一貫生産っで高品質の製品を作ります!
・機械に頼らない水やり!大変です!
・自動車産業に学ぶ効率的な経営!

お花屋さんへ一言・・・

・ファレノは芸術、美術品レベル。宝石などと並ぶ価値のある花です。
・高価なものを扱っているという意識を持って、取り扱う勉強をしてください。

おまけ

石毛洋蘭園の魚たち。実は温室でお魚飼っている産地さんってけっこう多いんですよね。

温室の周りは赤茶色。

使用済みの素焼き鉢はこうやって土にかえっていきます。

突如ぶら下がったファレノ発見!

固いスポンジ?に植えられております。

女王様の化粧鉢のお姿もいいですが、着生ランらしい、野性的なお姿もこれまたステキ♪
「前に市場出したこともあるんだけど、あんまり売れなかったんだよね?。」

アララ、そうですか?。
注文受け付けております!当社園芸チームまでどおぞっ!!(在庫あまりないのでお時間かかるかもしれませんが)

石毛洋蘭園はただいま従業員募集しています!
若くてやる気のある方大歓迎!応募・問い合わせは 当社・商品開発室まで

(文責 よしだゆきえ)

2005年7月15日

Vol.5 福島県福島市 JA新ふくしま

福島市.bmpみなさま?、大変おまたせしました!
久々の更新、ウンチク隊、東北初上陸です!
東北地方は探険隊(商品開発室)にとって縁の深いところです。
実はメンバーの半分が東北出身ですから!
しかもわれらがシシド隊長は福島市生まれなんですよ?。
福島に着き、通りがかった墓地を見ると「シシド家」の墓石がいっっっぱい!
シシド家の本拠地に乗り込んだ感じです
(さすがに写真を撮るのはやめましたが・・・)。


故郷を闊歩するシシド隊長。

そびえたつのは雪抱く吾妻連峰です。

ちなみにその山裏がワタクシの生まれた山形県米沢市。世間は狭いもんですなぁ。

JA新ふくしまは日本屈指の小菊の産地として有名ですが、新しい品目品種を導入するスピードの速さとチャレンジ精神旺盛な生産者が多いことでも有名!
今回はあえてビック品目の後ろで見え隠れする、ほかの魅力的な品目に探険隊はロックオン!
まずは品質のよさピカイチのダリアを作っていらっしゃる奥山さんのお宅へ突撃です。
  


(奥山さん)

奥山さんの圃場は福島市の郊外、シシド隊長の母校(吾妻中学校)がある庭坂地区にあります。
シシド隊長曰く、ここはお隣の山形県人に「陽光の庭坂」と呼ばれるほど、気候に恵まれた地域。
東北とはいえ、冬でも日照量が多く穏やかな気候なのです。
早速ハウスの中をのぞくと、中大輪のダリア、ダリア、ダリア!
ダリアブームの先駆けとなった品種「黒蝶」もしっかり咲き乱れていますよ!
 
言わずと知れた「黒蝶」

「ブリストルストライプ」は隊長オススメです。

スイレン咲きのダリア。※写真左

奥山さんがダリアをはじめたのはいつ頃なんですか?
「入れたのが7年前かな。最初に入れたのは小輪・単弁のやつが多かった。」
それから奥山さん家では毎年新品種を導入しているそう。

全部でどのぐらいあるんでしょう?
「70品種くらいかな。」

こりゃすごい?!品種名を全部覚えているとか?
ミックスで出しているから名前はわがんねな。」やはりそうですか、そうですよね?。

「ダリアはまだまだ選抜がすすんでいないから、
複色咲きを植えても単色で出てきちゃうのもあるんだよね。
新しいのが出たらとりあえず作る。そんでよかったら増やしてる。」

固定化はなかなか難しいんですね。
「うちは切ってから集荷上で1日かけて水揚げしてから出荷しているんだよ。」)

「それとダリアはすごく手がかかるよ。芽かき、葉っぱかきに年中追われる。
うちはそれ専用にパートさんを雇っているほどだ。」と奥山さん。
でっかい花を咲かせるには大変な手間がかかってるんですね。

本来ダリアは球根の力があるので育てる分にはそんなに難しくありません。
ただ、切花として見ると水上がりも花もちもよくない部類でお花屋さんなかせですよね。。。
奥山さんは、より切花ダリアの魅力を引き出し、長く楽しんでもらうべく、さまざまな試行錯誤を重ねてきました。水遣り、土作り、仕立て方・・・どれもピカイチを目指した結果、高品質のダリアが生まれているんです。

(仕立て方は企業ヒミツ♪なので画像はボヤボヤ)

渡辺さんの圃場

さて、お次は渡辺さんの圃場へ。

結構キツい山道を車で行くこと約15分、突如、厳重に柵囲された畑を発見!

何か国家機密?な植物が隠されているのでしょうか??
と、ワタクシ柵に近づこうとすると、
「ちょっとスイッチ切るから待ってろ!!」

実はこの柵ナント電気が走っているのでした。

危なっ、ワタクシもう少しで感電するところでした・・・(焦)
「ここら辺はサルが多くてな、ユリの球根を掘って食べちまうんだ。
去年は全滅したけど今年はちっとマシだな。」

おおぉ黒ユリの天敵はサルですか・・・恐るべし。サルの脅威から逃れて生き延びた黒ユリ。そう思うとかわいさ倍増ですな。

もっと上の圃場へ。突然視界が開けて高原が広がっています。
そこにはいろいろな品目の草花が植えられています。ネタの宝庫だ?!
しかしここでもシカやサル、ネズミなどの被害があるそうです。
逃げるわけにはいきませんからね植物は。タイヘンです。


(山道の途中からは福島市が一望)


       


実は渡辺さん、高原の畑とは別に下界(?)にも畑を持っていらっしゃいます。
「品目や季節ごとに植物に合った場所で育てることができるんだよ。」
こりゃ?すごいゼイタク!!!だからイキイキしているんですね。

つぎは別の渡辺さんのお宅へ。ここでは温帯スイレンを導入して2年目です。
「熱帯スイレン入れてくれって頼んだのに、温帯スイレン入れたんだよな?!。」とシシド隊長。いやいやでもまぁいいじゃないですか!カワイイし。



(W渡辺さんです。※写真右下)

JA新ふくしま、クレマチス株も増殖中です。
しかも八重品種しか作りません!来年乞うご期待。


花弁が取れた後もかわいいですよね。
     
ここでちょこっとクレマチウンチクの時間です。

「クレマチスは無風だとなかなか絡まらないんだよ。風に当ててやらねぇと支柱に巻きつかないんだ。」

風に吹かれてあわてて支柱をつかまえるクレマチス。(実際の動きは当たり前ですが見えません)

→(大室さんです)

JA新ふくしまを、消費者の求める花に素早くかつ柔軟に対応できる産地に育てたのは大室さん。
26年間花き担当でしたが、定年数年前にして今年とうとう異動に!
しかも異動先が直販課・・・って市場外流通じゃないですか!!Oh ?!
カムバーック!大室さん!!

「カムバック無理だったら、定年後に独創性生かして花を作って
うちに出してください」とシシド隊長よりメッセージ。

JA新ふくしまの格言

・消費者が欲しい花は素早く導入!採算考えるのはあとまわし!
・企業秘密で差別化を図る。
・野生動物との生存競争に勝った花だけが東京にやってきてます

お花屋さんへ一言・・・

・欲しい花は行ってください!作りますから!

おまけ

左の写真は山中を走る奥羽本線。
渡辺さんの圃場に行く道途中にある、絶好の撮影ポイントだそう。鉄道写真ファンがよく訪れる場所だそうです。
今回は撮れませんでしたが、トンネルから抜けてくる山形新幹線がみれますよ。

(文責 よしだゆきえ)
Copyright(C) Ota Floriculture Auction Co.,Ltd.