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2005年10月30日
Vol 9. 福島県南会津郡田島町の花道中
今回のウンチク隊、ちょっとだけ趣向を変えまして「田島町のはな たんけんたい!」です。
コトの発端は、当社に田島町長である湯田氏自ら訪ねて来てくださったこと!
「花に対してあんなにアツい町長はいないっ!ウンチク聞きに行って来い!」と、
町長に感銘を受けたアンドゥ本部長とシシド隊長の指示のもと、さっそく町を代表する生産者さん達を訪ねて参りました!注)この地域は同じ苗字の方が多いため、町の人は皆、名前(given name)で
呼び合うフレンドリーな土地です。今回の探検隊!もその慣習に従って進めていきます♪
いざ田島町へ
まず、トップバッターは室井豊一さん。JA会津みなみを通して当社にご出荷していただいています。
なんとハウスは52棟!田島町で一番面積を持っている花の専業農家です。
東北の農家は基本は米作+兼業で花、というイメージがあるんですけど。
「米はうちは完全に消費者だね。ここらへんは中高地だから米作だけでは食っていけないんですよ。
だからここら辺はトマトやアスパラをやってる所が多いんだよね。」
なるほど?。確かにアスパラのハウスをたくさん見かけました。
「でもうちは山が近いからね、こういう場所はアスパラに虫が出るんだよね。
これは消毒大変だ、じゃあ花をやってみようかな、と。始めたのは平成元年から。
ここに合った花はなにかな、と思っていろんな花を何十種類も試したんですよ。」
豊一さん家からは現在チース、HBリモニウム、カラー、ユリ、ヒマワリ、セローシア・・・などなど出荷していただいています。
←(写真)右が豊一さん。(写真)左が将来を担う息子の崇さん。
「ここら辺は昭和40年代くらいの新しい産地だから、暖地みたいに歴史がない。
所得を上げるには量でこなせる花でないと生き残れないしねー。」
新しいことで食べていくって、本当に大変ですよね。
出荷準備をしている作業小屋を見学。長さ、品質別に仕分けるのは本当に大変な作業。
しかし一番びっくりしたのはチースを一本一本はかりに載せてチェックしている姿!ボリュームを
見るのって目分量じゃないんですね・・・。
豊一さんが最近力を入れているのはカラー。5年前から始めたそうです。
会津みなみではBEB、ブラックマジック、クリスタルブラッシュが主な品種ですが、
数年後には品種・数量共にボリュームアップの予定です。
「田島をカラーの一大産地にしたいね!」と豊一さん。
息子さんの崇さんもカラー好き青年ですので将来が楽しみです!!乞うご期待♪
虫が飛ばないハウス!?
田島町は昔からカスミソウやチース(切花業界用語で「スターチス」のこと)で有名ですが、 カスミソウも新しい取り組みが始まっています。ここは室井和之さんのハウスです。「試験栽培のハウスだよ!」と連れてきていただいたのはいいものの、
スイマセン、一見なんの変哲もないように見えるんですけど・・・。
「UVカットのビニール張っているんだよね。虫飛ばない試験。
品種は『雪んこ』なんだけども、消毒回数は1回。」えええっ、一回だけ!すごいですね。
「ただし資材代かかるけど・・・これで値段もあがるといいんだけどね!」
新しい提案ができるといいですね。(市場も頑張ります!)
育種家の戦略
次は田島町が誇るリンドウの育種家、大竹英雄さんです。ピンクのリンドウを中心に育種されています。「サクラ」「ベニコ」などの名前で個撰出荷されています。
お伺いしたときは時期も終わりに近くでしたが、それでもあまり見ないピンクの色合いに惹かれてしま
いました。咲いた姿もとってもかわいいんですよ?。
見ないと思ったら案の定、英雄さんのリンドウは当社に・・・というより、
東京の市場には現在出荷いただいておりませーん!!うぉう残念っ!
しかしリンドウというと仏花というイメージが濃いのですが、この色はかわいいですよね。
「ピンク系は洋花感覚でアレンジに使えるようにと思って出しているよ。
だから物日(需要がある時期)に合わせて出荷ではなく、いつでも当てにして使ってもらえるように、
6月から9月の終わり頃までずっと続けて出荷しているんだよ。」
育種もこなす上に使い方まで提案した上の出荷戦略、さすがです。
←大竹英雄さん。リンドウ一筋のアツい方です!
英雄さんがリンドウ一筋になったきっかけは?
「28年前に知り合いから種タネをもらって作ったんだよね。誰も作っていなかったからはじめから。」
育種まで始めちゃったのは?
「選別ばかりするよりもいい系統作ればいいな、って。
昔、岩手の学校に行っててりんごの『ふじ』を作った先生についてたからね。」
でも育種は手間も時間もかかるし、とりかかるのはすごいエネルギーですよね。
「実は、おたくの社長さんに昔会ったことがあるんだよね。」と英雄さん。
エッ、うちのシャチョーが何か・・・。
「まだおたくが大森園芸の頃だね。その頃作ったのは青いリンドウなんだけども、
磯村さんから『岩手のリンドウよりキレイだね!』と言われた。それから本気になったんだよ。
この頃誉められてなかったら育種やめてたねー。」
おお?!そうでしたか!!ちょっと感動的な話でヨカッタ・・・。
英雄さんの育種された品種は今後、県の試験場の協力を得て整理し、品種登録などをして
「個人所有の品種」から「広く使われる品種」として広めていければ、と考えているそうです。
「昔は自分だけ、という意識が強かったけれども、今じゃ技術的なこととか全部教えてやるよ、
やっとそういう気になってきた。50くらいになるとそういう気になるね。娘も帰ってきたし、
畑も広げて頑張るよ。」英雄さんの品種が東京でもお目にかかれるのを楽しみにしてます!
枝物の大家へ
お次は室井園芸さんのご紹介です。知る人ぞ知る枝物の大家です。 関西へのご出荷が中心でしたが、数年前から当社にもご出荷いただいています。 お邪魔したときは家族総出で野バラの出荷準備の真っ最中でした。「うちはじいさんがはじめて40年。池坊(いけのぼう)に合わせて2?3体とれるように組んでるんだけど、
枝物自体も生け花で使われなくなってきたね。アレンジでも組めるようにいろんな枝ぶりのものを入れているよ。」
葉っぱをとり、きっちり束ねられたものは水の張ったプールにつけていきます。
ボリュームある枝物をここまでコンパクトするなんて、すごい手間ひまかかってます!ほどくのがもったいないくらい・・・「枝をしぼっていくのにはワザがあるんだよ。」
あの?、素人目で悪いんですが、なんとなく実が青いのが多いように感じるんですけど・・・。
「これは大阪に出すもの。大阪は実が青い方が需要があって高いんだよ。」
へぇ?そうなんですか!所変われば、なんですね?。
「青い時に出しちゃうから東京に出す時期には量が少なくなっちゃうんだよね?。
でも畑を広げてるから心配しないで!」タハハ。よろしく頼みます。
←実バラの切り方にも室井園芸のこだわりがあります!
ツルウメの畑にもお邪魔しました。
枝物は本当に大変です。「2mで○本」などの注文に対応して枝を切っていきます。夫婦力を合わせての共同作業です♪ああっ眩しくて見てられないっ。(っていうか逆光でスイマセン・・・)
花にアツーい町長
湯田田島町長にもお話をお伺いしました。町おこしに花を、という自治体はよく聞きますが、花市場までいらっしゃる情熱の深さにとっても
びっくりしました。花市場の人間が聞くのもなんですが、なぜ「花」なんでしょう?
「時代は変わるけど花だけは変わらず人間に愛されているでしょ。すばらしいな、と。
花は人間のDNAに入っているんだね。だから、花で老人医療費を減らす!」
えっ、花で医療費削減?
「予算を削るだけでなくて生きがいや健康のために投資をするのが大切!花にはそうできる
可能性があるんだよ。ここは冬は雪が深くて、春になって溶けると町の人は一斉に庭の世話を
始めるから花でいっぱいになるんだよ。長い冬の後に花で癒されるんだね。これが医療費を
減らすのに役に立つんだよ。」 な、ナルホド?。
「それと、今、国ではニート(就業・就学・職業訓練のいずれもしていない人)の就業対策をやっている
んだけど、うちの町も協力したいと考えてるんだよ。それを花でできないかな?というのが最初の
出発点。心を閉ざした人が田舎で広げてあげられたら・・・うちの町にある休耕地をニートの人に
切り開いてもらって自信をつけてもらいたい!」 壮大なお考えですね?!
「心を開いて終わりじゃだめなんだよね。この町を就農の場所にしてもらって、
市場に出せるものを作って自信につなげてもらいたい、っていうのが最終目標だね。
大きい喜びを与えられるものは価格が高い、喜びが小さいのは価格が安いのが市場の原理。
うちの町では大きな喜びが与えられるものを生産したいですね!」
「どんなことでも念ずれば花開く、夢では絶対に終わらせない!」と話を締めくくっていただきました。
聞きしに勝る、花にアツーい町長でした。今後もどうぞよろしくお願いします!
「第一回南会津花道中」
10/14、自治体、個撰共撰、出荷市場の枠を越えて南会津地域の花産業の今後を考えていく、 という画期的な会が開かれました。ここでも生産者・農協・県指導員・市場関係者・町長も交え、 アツい話が繰り広げられました。大田花きは今後もこの新しい取り組みに協力していきます。
■田島町は来年の3月20日、舘岩村・伊南村・南郷村と合併して「南会津町」になります。
田島町の格言
・花の力で町づくり、そして都会のニートの心を開きます!
・量は力、品質は信用、安定供給信頼!
(↑JA会津みなみのスローガン。この通りによろしくお願いします!)
↓福島県田島町のHP(リンク)
http://www.town.tajima.fukushima.jp/main.htm