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2006年6月21日

Vol.16 愛知県 I&Tクレマチスガーデン

出張! 産地ウンチク探検隊 

愛知県 I&Tクレマチスガーデン 『もっとクレマチスを!』


よく晴れた午後はすっかり初夏のここち。今年もクレマチスの季節になりました。
近頃の八重咲きブームでさらに加速したクレマチス人気。
一大ブームの予感を感じたウンチク探検隊は愛知県まで遠征、I&Tクレマチスガーデンを
取材してまいりました!愛知県といえども広し・・・クレマチスガーデンは愛知県稲沢市、
カラーやアルストロメリアでも有名な海部花きセンターにもほど近い場所に位置します。

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天気は快晴、ぬけるような青い空。
名古屋市から40分、どこまでも続く平坦な道を車で何時間走ったでしょうか。
きれいに舗装された道路は広々としているのに人っこ一人歩いていません。
コンビニの駐車場の広さまでも目にまぶしい。
静かでのどかな所です。
どうやらこの辺りは枝物の栽培地らしく、あちこちに枝物畑が見えました。


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あっ!見晴らしの良い平野に、何棟も連なる立派な鉄筋のハウスを発見。
今日の目的地I&Tクレマチスガーデンに到着しました。
ハウスの横で手を振って出迎えてくれたのは社長の石黒さん、初めまして!

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「よく来たね」と笑顔の石黒さん。穏やかな語り口調にひきこまれます。
あっ嬉しい、うちの会社のカレンダーを使ってくださってますよ。

石黒さんはサラリーマン時代から大好きなクレマチスをコツコツと研究、育ててきた
クレマチスの達人。
定年後はますますクレマチ切花ひとすじに、育種と普及につとめてきました。
流石、本当にたくさんのクレマチスハウスをお持ちです。
もちろん育種の企業ヒミツもあって、OKをいただいたハウスを密着取材する私たち。

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それでは早速ハウスを拝見させていただきましょう。こうやって圃場に足を踏み入れるときは
いつもちょっとドキドキします。クレマチスはどんな姿を見せてくれるのでしょうか。
ハウスの天井の高さも然ることながら圧巻な光景。
クレマチスってこんなに大きな背丈になるんですね!

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細い通り道の両側にそびえたつクレマチス。高さは2?3m近くあります。
ひらりと咲く大輪の白花の清々しいこと。大輪一重咲きのパテンス系をはじめ
今年一番人気の八重咲き「キリ・テ・カナワ」、純白が上品な「雪の粧(ゆきのよそおい)」が
顔をのぞかせてくれました。手の平よりも小さくほど良いサイズですが
さすがは八重、華やかに見えます。
八重咲きは、開花の後ちょっと花びらが落ちても形崩れしないから良いですね。

DSCF0806.jpg「雪の粧」
DSCF0795.jpg「キリ・テ・カナワ」まだ咲きかけ。

今にも咲きそうなキリ・テ・カナワ。花弁の裏側は白色で産毛がふんわり。
一重咲きのパテンス系品種とくらべると…見てください、このほっこりしたボリューム感。

「キリ・テ・カナワは茎が強いから切花向けだね、花もちも良いよ。」

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確かに細くてしっかりした茎、これならオアシスにシャキッとささりそう。
切花に向いているのはパテンス系の品種とのことです。

石黒さんはクレマチスを特に切花向けに普及させてきました。
切花に向く品種選びから、栽培過程でも脇芽を間引いたり…
本当に色々と手間がかかります。
「クレマチスを切花に?そんなクレイジーな!」
当時そう言われていたのが、今やクレマチスは大人気の切花に。
成果はちゃんと実るんですね。

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キリ・テ・カナワというオペラ歌手がいますが、その方にちなんだ
ネーミングなのかな?ニュージーランドのマオリ音楽を歌う人気の歌手です。

DSCF0820.jpg「キリ・テ・カナワ」咲いたよ。

石黒さんのクレマチスは、すべて支柱仕立て。支柱にツルをクルクル巻きつけている。
ネット仕立てだと、ツルがからまって取り外せなくなるからなんですね。
「クレマチスのツルはお隣さんとすぐ仲良しになっちゃうんだよ」
困っちゃうんだよ?と石黒さん。
一晩のうちにツルがあちこちと手をつないで、からまっちゃうらしい。
してみれば、クレマチスって本当に良く動く植物なんですね。

「長いツルの柔らかな動きが、一番の魅力だね」ズバリ語る石黒さん。

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一緒にくるり、仲良しクレマチス。

そう言われてみれば、クレマチスって立ち姿が美しい。
クレマチスのKlema(クレマ)をギリシャ語でつる、巻きヒゲという意味ならでは。
これがツル植物の魅力なのです。

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カッコイイクレマチスがある、と近頃、市場担当者の周囲でひそかに熱い
「花炎」という品種。その花炎にお目にかかることが、今回のミッションでもありました。
細く縮れた花弁は八重咲きで、鈍色の赤から緑へグラデーションが個性的な品種です。
んー、どう見ても玄人向け。

(花炎 写真 ?少々お待ちください。乞うご期待!?)

「花炎を今年の秋のスーパースターにしたい」と隊長。
石黒さん「いやいや、今年はキリ・テ・カナワだよ。花炎はまだこれから…」と
そんなやり取りも。秘蔵っ子は、じっくり、ゆっくり、ブームを待つのです。

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あでやかなパテンス系品種。クレマチスの色と形は和にも洋にもマッチしそう。
一年苗で、1株から10本ほどの花が採れます。

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「手間のかからない出荷がテーマ。
ハウスの外でも育てられるように色々試しているところだよ。」
やはり、これだけ立派なハウス設備を維持するのは大変ですよね。
今のところ、ハウスの中で育てるのは特に丈を伸ばして育てたい品種や
病害虫に弱い品種と白花の品種。でも、どうして白い品種なのかと言うと…?
「外だと酸性雨で花シミになっちゃうからね」と石黒さん。
酸性雨という言葉にドキリ、深刻な環境問題を垣間見てしまった。

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早速、ハウスの外で栽培中のクレマチスも見に行きました。

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そこで見つけた、奇妙な八重咲きカザグルマの一種。カザグルマという品種は日本の山野に
もともとあるクレマチスの原種です。
でもこれは奇妙なツルを伸ばして、なんと自分自身に巻きついて花首を折っている!
自然界で八重咲きとは、奇形なんだそう。ツルを自分に巻きつけようとするのは
正常なもとの葉っぱや茎に戻りたいという願望なのです。

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ようやっと顔を上げてクレマチスガーデンの周囲を見渡せば、広々と見晴らしの良いこと。
遠くの草原にヒバリがさえずっています。都会じゃめずらしい、白黒のツートンカラーの
野鳥カササギ(天然記念物)も見付けた。時おり「ケーン、ケーン」と聞こえるのは?
「ああ、このあたりは野生のキジがいるんだよ。」
そぅですか!…もう何がいても驚かないぞ、と。

ふたたびハウスの中へ。
香りがあるクレマチスに出会いました。来た来た、本日のサプライズ。
ウンチク産地にお邪魔すると、いつも何かしら新しい五感を体験するのですが
今日は初めてのクレマチスの香り。パウダリーなバイオレット(スミレ)に似た
あわーい優しい香りがするの。

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これがその「ワイドボーイ」という木立性の品種。さすがにこれまで一度も
かいだことの無い花の香りがします。芳香性をもつクレマチスは、木立性の
インテグリフォア系品種に多いそう。
「散りかけが一番良く香るんだ」と石黒さん。ふんふん、確かに十分開いた花ほど
香りが強いみたい。てことは、咲きかけが一番良く香るバラとは正反対なんだ。

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ヨーロッパではクレマチスを「旅人のよろこび」と呼ぶ。
それは道端や生垣に咲き、葉で木陰を作って旅人を休ませてくれるから。
石黒さんはクレマチスの木陰に何を思うのでしょう。

「40年以上、ちまちま研究しておったのよ」

もともとサラリーマンだった石黒さん。20代の頃から大好きなクレマチスを
少しずつ勉強しながら育ててきたといいます。

「もっと、もっとクレマチス。そう言いながら10年経っちゃった。」

大好きなもののことをいつも考える、追いかける、ビジョンを描く。
そうしたら何か大きな流れに乗って少しずつ近づいて
いつか、本当に叶ってしまうのでしょうか。

「切花をたっぷり普及させたら、いつか庭にクレマチスのグランドカバーを作ってみたいよ。」
まだまだ夢は尽きません。

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「クレマチスの育種はダメでもともと。でも、この子とこの子をかけ合わせたら良いかな?って。
毎朝ここに来るのが本当に楽しみなんだよ、今日はどんな新しい花が咲いているんだろうって…」
これだけ石黒さんに思われたら、咲くしかないでしょクレマチス!

石黒さんのお気に入りはテキセンシス系の「プリンセス・ダイアナ」。
ベル咲きのチェリーレッドがとてもキュートです。

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それにしてもダイアナさんは、空に向かって3mはあろうかという草丈。
上のほうは採花するのが大変そうだぁ。
そんなわけで、この草丈のまま出荷することも出来るとのこと。
テキセンシス好きな皆様、ご注文是非いかがですか?

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ババーンとそびえ立つ

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クレマチスの壁!


ここで問題。さて、これはなーんだ?!

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キューティクルつやつやの金髪、じゃありません。念のため。

このモシャモシャは、クレマチスの花が咲き終わって中心の部分が残ったもの。
ひとつの植物が育って花を咲かせて、実がなるまでに一体どれだけ姿カタチを
変えるんでしょうか。

クレマチスの株をひとつひとつ見ていると、ツルの動きの面白さも然ることながら
たまにドキッとするような葉っぱを見つけます。
小づくりなのに、上品な形をしているんです。実に繊細でキレイ。

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もうずっと利久草が人気ですが、つる性の葉ものとして
出荷されるのも間近かもしれません。

クレマチス百面相をご覧あれ!

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喋り出しそうなくらい表情ゆたかなクレマチの葉っぱたち。こうやって毎日、身振り手振りが
さかんだったら見ていても飽きないですよね?

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クレマチスの格言 ?自選、他選のクレマチズム?

その1、もっとクレマチスを!切花いっぱい普及させよう。


その2、散りざまに魅力あり…葉の姿、実の姿にも注目すべし!


その3、クレマチスの水揚げは切って30分間が勝負。たっぷり水を吸わせること。


その4、クレマチスはなるべくオアシスにさすべからず。
     クレマチの茎は空洞になっているので、オアシスが詰まって
     水上がりが悪くなりがち…!

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(文責 三浦 彩)
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