2007年4月30日
vol.38 福岡県 JA糸島
今回 訪れたのは福岡県の糸島地区。
この周辺は『魏志倭人伝』に記される古代国家『伊都国(いとこく)』が栄えた地と伝えられています。
つまり、『いと』という響きから時代によって少しずつ文字を変えながら、現代の『糸島』へと伝わってきたというわけです。
また、諸説ありますが、女王 卑弥呼の国とも言われています。
いずれにせよ、歴史の重みが感じられる地域。
その伊都国より出土された勾玉と銅鏡がデザインされたマークがJA糸島の目印となっています!
↓↓↓
生産物は、背振山の麓では露地菊や千両の栽培が、そして平野から沿岸沿いでは草花・洋ラン・バラ栽培などが盛んに行われています。
そして、こちらのお二人がJA糸島の生産者をとりまとめるドン二人(?)、JA糸島花卉販売委員会の委員長 吉村さん(左)と副委員長 高宮さん(右)。
「現場の声をよ?く聞いとってください!」と生産者のハウスを案内してくださいました。
早速、“花伝説・糸島”の花職人達をご紹介しましょう!
?富永 達章さん?
8名いるブバリア生産者のうちの一人で、海にほど近い場所で栽培している富永さんです。
栽培する上でのご苦労を聞いてみると、
「芽かきや連作障害による欠株が出やすかったり、大変なことばっかりですよ!」と富永さん。
「特に、ブバリアは天候に大きく左右されるんです。」
「日照がないとダメだけど、夏場の暑さではクシャっとなる。だから毎日、日中は1列ずつシェードをかぶせて、夕方 はぐる(めくる)作業も必要あるから、出掛けることもできんわけですよ。夜、飲みに出歩いてるようではダメなわけです(!?)」
と花作りに懸ける禁欲生活(!?)、ではなくご苦労を語ってくださいました。
ロイヤルダフネレッド ロイヤルダフネピンク ロイヤルユリヤ(NEW)
新しい品種の『ユリヤ』は、咲くと薄いピンクの可愛い花で、使いやすい色目です。
「この他にも、『ナオミ』っていうスナックの名前(?)の品種も出てきます。」と富永さん。
こちらも乞うご期待!!
富永さんからお花屋さんへのメッセージ
単色ではなく、白、ピンク、赤、グリーンと色バランスよく出荷しています。
添え花だけど、丹精込めて作っているので10円でも高く買ってもらえると嬉しいです!
?平野 正文さん?
9名のトルコキキョウ生産者のうちの一人 平野さんです。
「トルコは日照時間が生育に大きく影響します。
九州はあったかいイメージですが、この辺の北部九州は、冬場 日照が悪く、1ヶ月に2、3日しか晴天がない時もあるんですよ!」と予想もしない天候によるご苦労を語ってくださいました。
日照不足は苗枯れや、死花が増える原因となり、トルコキキョウにとっては まさに死活問題です。
主力品種は、“まほろばシリーズ”、“リネーションシリーズ”、“春うらら”など。
4月中?下旬に出荷開始です。
平野さんからお花屋さんへのメッセージ
今後の出荷に期待してください!
さらに、来年は3月下旬からの出荷に挑戦します!
(3月に出荷するには、例年より1ヶ月早い9月に定植する必要があるのですが、9月の福岡はまだ暖かい為、難しいのです。)
?一ノ宮 浩さん?
15名いらっしゃるミヤコワスレの生産者の中でも異色の存在の一ノ宮さん。
何故かというと…田舎暮らしに憧れて2年前に糸島の地へ移住していらしたのです!
しかしながら、風邪をひかれていてお会いできず(-.-;)残念!
そんなわけで、圃場主不在ではありましたが、ハウスの中を見せていただき、以前ミヤコワスレを栽培していたことのある委員長の吉村さんに説明していただきました。
「今年は暖冬で温度が下がりきらなかったから色が薄いなぁ」と吉村さん。
ミヤコワスレの生育には寒さも必要なのです。
「でも、暑さにも弱いんです。
夏場は1000m近く標高の山の上や、高冷地で水はけのよい場所へ持ってかなきゃいけないから、苗を残す為に大変苦労しているんですよ。」
まさに今 危機状態なミヤコワスレ!
さらに、「栽培にもかなり技術がいるとですよ!しっかりした苗が残り、彼のような若い後継者ができればよかばってん、苗も分けるほどないのが現状やけん…。」と寂しくなるお話も。
それでも糸島の生産者はガンバッテます!
「普通はピンチかけて栽花本数取ってるけど、糸島は1株1本で勝負してますから!」と最後に力強くおっしゃいました。
ミヤコワスレの作り手からお花屋さんへのメッセージ
茶花感覚で使われるので、使われる量が減るのが心配です。
でも、1ヶ月は花持ちしますし、糸島のミヤコワスレはスゴイです!
?吉村 義隆さん?
個撰出荷をされていて、多くの品目を栽培されている吉村さん。
たくさんの品種を抱えお忙しい上に、訪問したのはちょうど出荷日。スミマセンm(_ _ )m
私達が到着するなり、「じゃ、行くよ!」と走り出す吉村さんを追いかけてハウスを見せていただきました。
年間20種類もの品目を出荷されています。
今時期、出荷されているのは…
カレンジュラ ダイアンサス ソネット ワイルドオーツ ヘリクリサムシルバー
ヘリクリサムライム チョコレートコスモス ベルベロン ストロベリーキャンドル
そして、この巨大スカビオサには驚かされました
同行した販売促進アドバイザーの鈴木千春さんも長身ですが、さらに長身のスカビオサ。
農場整備によって、下に溜まっていた肥料分が混ざり合って、良い土壌になったようです。
そして…
コレ何だか分かりますか?
答えは『アスパラガスの根っこ』でした。
あまりお目にかかれるものではありませんよね。
野菜のアスパラガスと同じ仲間なんですが、観賞用で残念ながら食べられません。
属名のアスパラガスは、「とげのある」という意味のギリシャ語に由来し、一部の種類がとげをもっていることから名付けられましたようです。
ちなみに、主な品種のプルモーサスは、「羽毛状の」という意味なんですよ!
吉村さんからお花屋さんへのメッセージ
共撰出荷だと出荷できる品種も狭まってくるとですが、消費者の要望に応えられるように個撰出荷で幅広く栽培しています。
花屋さんはじゃんじゃん売ってください!!
?藤川卓雄さん?
ちょっとピークは過ぎてしまいましたが、エビデンドラムのハウスも見せていただきました。
「苗作るまで2年、生産まで2年もの期間を経てやっと出荷できるんですよ。」と藤川さん。
そうしたご苦労があってこそ、可愛い花が咲くわけです。
藤川さんからお花屋さんへのメッセージ
年末から正月にかけてが出荷のピークです。
来年に期待してください。
?吉村 和実さん?
最後に訪問したのは、JA糸島花卉販売委員会 委員長の吉村さんのカンパニュラのハウスです。
カンパニュラ部会では 12月?5月にかけて電照や温度管理によって、出荷量に波ができないように生産者同士で調節しています。この調整が、長期にわたる安定出荷を可能にしているのです。
と、そこへ奥様が通りかかり
高宮さん:「父ちゃんの花は生き生きしとるなぁ!」
奥様:「そやろ!!(^。^)/」 なんて微笑ましい会話も。
さてさて、品種は『チャンピオンピンク』、『チャンピオンパープル』、『チャンピオンホワイト』が中心。
さらに、「今期はお客様の要望に応え、現状の半分ほどの大きさの小輪タイプを新たに加えたんです!」と吉村さん。
残念ながら写真はありませんが、ピンク、ライトピンク、パープルで、アレンジに使いやすいカンパニュラをぜひお試しください!
吉村さんからお花屋さんへのメッセージ
お花屋さんの声に応えられるように頑張って栽培してます!
今日一日お付き合いいただいた皆さんでパチリ!
とにかく厳しい状況の中でも、明るく、意欲的に生産に取り組むステキな糸島の皆さんでした!
(左から) JA糸島花卉販売委員会 副委員長 高宮さん、JAふくれん 猪名富さん、農協の中牟田さん、同じく 森本さん、花卉販売委員会 委員長 吉村さん
幅広い商品群でお花屋さんや消費者の期待に応えるJA糸島!
さらに、使い手の心をキャッチしようと新品種や、新しい品目の導入にも積極的な糸島から目が離せません!
JA糸島の格言
・60%共撰出荷でいい品物を、長期間、安定数量お届けします!
・40%個撰出荷で小回りをきかせ、細かなご要望にも対応します!
・ふくれん、農協、生産者で三位一体となって取り組んでいます!
2007年4月16日
vol.37 沼田弘樹さん&常陸野カーネーション組合
今回は訪れたのは茨城県の常陸野カーネーション組合です。
かえで→てぃあら→らなん
あっ、「ん」が付いてしまった!
…と “しりとり”になっているこれらの単語は常陸野カーネーション組合オリジナル品種の名前なんです!
さらに、そのオリジナル品種を生み出しているのも組合員!
そこで、まずは生産と育種を手掛ける沼田弘樹さんを訪ねました。
育種家 沼田弘樹さん
では早速、沼田さんが生産しているオリジナル品種をご紹介しましょう!
ひよこ いちご れもん
『ひよこ』
オリジナル品種の代表作!名前とマッチした花色はお花屋さんからも使いやすいと評判です。
さらに、軸が太く、バランスもよいことから、関東東海花の展覧会で銀賞に輝いた実績もあります!
『いちご』
沼田さん:「レッドバーバラなんかと違って小輪でこじっかりした赤でしょ!」
この“こじっかりした赤”を作りたくてベースにグリーンの遺伝子を加えたのだとか。
『れもん』
沼田さん:「花びら1枚1枚をよ?く見ると、縦にピンクや白っぽい色が入っているでしょ!」
う?ん、写真じゃ分からないですが…これも一つのコダワリなんです。
ぜひ本物を見てください!
そして、その他に こんな未発表品種も!
今後に乞うご期待
オリジナル品種画像一覧は このページの一番最後、もしくは常陸野カーネーション組合のHPをご覧ください。→http://www.hitachino.net/p.html
ところで、もう皆さんもお気付きかもしれませんが、品種名が全てひらがな3文字!
とても明快で覚えやすいですよね。その名付け親であり、産みの親でもある沼田さんに育種する際のポイントを聞いてみました!
すると意外にも、「色に対するコダワリはない」という答えが返ってきました。
「茨城は暖地でも高冷地でもない、どっちにも特化してない地域なんです。冬は寒くて、夏は暑い!だから、茨城の気候で花を作るのはホントは難しいんです。
だからこそ、いい品質のものを安定して、長い期間出荷できる品種作りを目標としています。」
沼田さんが手にしているのは、カーネーションではないようですが…?
実は育種しているのはカーネーションだけではないのです!
それは、また後でご紹介するとして…
良いカーネーションとはどんなものなのか聞いていました!
Point ステムしっかり!
Point 花は四方にバランスよく!
Point 葉はクリクリ!
Point ワックスによって限りなく白い葉!
Point 最後まで咲く!
圃場を見ていると、確かに!
葉がクルクル巻いています。
「栄養バランスがいい証拠なんだと思うけど…、カーネのお決まりで昔から巻いていた方が良いと言われているんですよ。」と沼田さん。
表面の白いものは手でこすると落ちますが、農薬ではなく、自らが分泌するワックスがのっている状態なのです。
これによって害虫がつきにくくなるのだそうです。
そして、それらの条件をクリアした代表作が『ひよこ』>なのです!!
でも、茨城という土地が花を栽培するには難しい土地柄である上に、組合員が12市町村に点在しているという常陸野カーネーション組合。
共撰出荷にも関わらず、統一規格と高品質を維持していく秘訣は何なのでしょうか?
組合員の方々の圃場を拝見しましょう!
沼田 実さん
圃場主はご不在でしたが、奥様が作業をされていました。
栽培している品種は… キャンドル ライトクリームキャンドル など
もしかして、キャンドルがお好きなのでしょうか?
それにしても草丈の長さに驚きです!
なんと肩の位置より高く伸びています。
「実さんのハウスは草丈が伸びるんだよね。ウチの土壌とは違うせいかな…?」と沼田さん。
生育は良好!!出荷商品に期待です。
ハウスの片隅では、花キリンも こんなに立派に咲いていました!
藤崎 千秋さん、一樹さん
続いて、藤崎さん親子です。
栽培している品種は… レジーナ ピンクテッシノ など
品種選びの基準について聞いてみると…
藤崎さん:「レジーナは花が好きだから…、それにウチは同じ組合でも広範囲におよんでるから、田んぼと畑のような土地の差があるんですよ。だから、それぞれの土地に合った、作りやすい品種というのも自ずと異なってくるんです。でも、品種選びは毎年悩むよねー。」
沼田さん:「我々のような中堅産地では品種を絞り込まず、同じ色でも幅広いラインナップで、それぞれのお客さんに対応できるようにしているんですよ。」
なるほど、組合内で同じ品種に集中しすぎず、それぞれの土地に合った品種を栽培することによって、様々なお客様の要望に応えられるような幅広い商品構成も常陸野カーネーション組合の魅力なわけですね。
カーネーション作りを始めて32年の藤崎さんの作るカーネーションは、“太くてしっかりした茎”+“ぷっくり膨らんだ蕾”が魅力的!
それぞれの土地で、組合員みんなが同じように栽培できるだけのキャリアがあるのも魅力の一つです。
そして、冷蔵庫の中で発見したのがコレ!
花持ち保証の秘密兵器『鮮度保持装置』です!
13日間花持ち保証の取り組みをご存知でしょうか?
常陸野カーネーション組合では、2001年11月から取り扱い市場及び茨城県経済連との厳格な品質管理によりセリ日から13日間の花持ち保証をしているのです。
そして、それを可能にするのが組合全員の冷蔵庫に取り付けられた『鮮度保持装置』!
花持ち保証がされていると、消費者の方にも安心してお奨めできますよね。
箱の側面には、長く楽しむ為の取り扱い方法についても記載されていますので、ぜひ参考になさってください。
さらに、この箱スグレモノ!
名付けて『常陸野オリジナルワンプッシュロック』!
その名の通り、ワンプッシュで開閉可能。ガムテープを貼ったり、はがしたりする手間も省けて
省コスト! + 再梱包の際もラクラク!なんです。
販促活動やお客様のニーズを探るヒアリング活動にも積極的!
作るのも大変ですが、売るのも大変な今の時代!
常陸野カーネーション組合では、お花屋さんの生の声を聞こうと数班に分かれて都内のお花屋さんを回ったり、大田市場内仲卸通りにて来場するお客様に展示した商品についてのアンケート調査を行ったりしています。
売る人、使う人の意見に耳を傾けてくれる常陸野カーネーション組合から生み出される商品は これからも期待できます!
組合長 尾形昌寛さんからお花屋さんへのメッセージ
組合員14名は12市町村に離れていますが、ネットワークでしっかり結ばれています!
メーリングリストで情報共有しているので、共撰でもきめ細かい対応が可能です。
とにかく、イイモノをお届けしよう!という一心で一生懸命作っています!!
常陸野カーネーション組合の格言
・茨城で生まれ育った maid in 茨城のオリジナル品種は、茨城の気候にマッチしているからストレス知らず!ボリューム、輪付きが違います!
・多品種栽培でお客様の要望に応えます!
・常陸野カーネーション組合の強みは、12市町村に渡るそれぞれの土地でも、組合員みんなが同じように栽培できるだけのキャリアがあること!
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さてさて、お待たせしました!
続いては沼田農園レポートです。
まずは、グラジオラス!
通常グラジオラスという名前から思い浮かべる花は、初夏の頃から見られる鮮やかで大きな花だと
思いますが、沼田さんが育種しているのはスプリンググラジオラス!
圃場に咲いた花をご紹介しましょう。
サザンクロス フォンティーヌブロー ヌーベルモーヴ
クレッセント アメジスト オーロラ(今年は出荷なし)
細いラインで繊細なイメージの花ですよね。
この花の育種を手掛ける切っ掛けを聞いてみると…
「20代半ばに原種のトリスティスに出合っていいな!と思って…。あの時見た木漏れ日の中で風に揺られていた姿は鮮明に思い起こせますよ。」と初恋の人を思い出しているよう(?)でした。
以来、可能性ある全ての色と、原種がもつ繊細な草姿をイメージしながら育種を続け、切花として出荷できるまでに7年もの歳月を費やしたそうです。
そして、「かわいいでしょ!こうやってフワっとまとめるだけでも花束らしくなるでしょ!」と差し出してくださいました。
太陽の方を向き、お辞儀をするアメジスト。→
華奢な雰囲気ながら、凛とした上品な面持ちの花が魅力的です。
でも出荷最盛期のハウスを見せていただくと、こんな感じで真っ青。
切り前も右の写真のように ちょっと色付いたくらい。
花傷みを防ぎ、長く楽しんでもらう為に蕾が色付き出した程度で出荷しているのです。
一度使ってみれば、その可愛らしさの虜になるはず!
数ある品種の中からお気に入りの品種を見つけてみてはいかがですか?
次に案内してくださったのは、ヤツデのハウス。
⇒⇒
これまた、「かわいいでしょ」と沼田さん。
ヤツデの葉は、成長するごとに3枚葉⇒4枚葉⇒5枚葉と枚数が増えるのだそうです。
軸も10cm程あるので、ミニブーケに使ってもカワイイのではないでしょうか?
ハウス周辺の景色に見とれていると…
「あの山も、この道の左側も全部ウチだよ。」と サラッとおっしゃる沼田さん。
そして大王松が立ち並ぶ場所へ着くと…、
⇒⇒
「年末にはこうして伐採するんだよ。」と身のこなしも軽やかに登っていきました。
動画でお届けできないのが本当に残念(+_+)
それもそのはず、沼田さんにはこんな趣味もあるのです。
広大な土地の中にはお手製ロッククライミング練習テントを発見!
⇒⇒
いとも簡単そうにやっているので桐生隊員も挑戦しましたが…、
へっぴり腰。
この次の瞬間 ボタっとあえなくマットに沈みました…(-。-;)
ちょっと横道に逸れましたが、年末の大王松も楽しみです!
これからも たくましい腕っ節 + 育種家としての凄腕で、理想の姿とオリジナリティを現実のものとする沼田さん、そして 買う人の要望に応える花作りに取り組む常陸野カーネーション組合から目が離せません!
★カーネーション オリジナル品種一覧★
いちご ひよこ
しおん あられ
うさぎ なつめ
れもん てぃあら
ぼるどー かえで
らなん
2007年4月 1日
vol.36 群馬県 さかもと園芸
今回お邪魔したのは群馬県の桐生市黒保根町。 「クロホネ町」と読みますが、「黒骨」(←これだとちょっと不気味)ではありません、くれぐれも。 群馬県民なら誰でも知っている「上毛カルタ」で、“つ”で始まるフレーズは“ツル舞う形の群馬県”、 しかも「つ」はプレミアムカードで、これをゲットすると特別点がもらえるという切り札なのです! そのフレーズの通り群馬県は鶴が舞っているような形をしています。 今回訪問させていただきましたさかもと園芸さんは、その鶴の左羽の付け根の辺りに所在する桐生市にあります。 おっとヤバイ! これからアジサイの大家であるさかもと園芸さんを訪問するというのに、私はアジサイのことを何も知らないではないか! 緊急事態発生! 道中、車の中で必死に基本の「き」を勉強いたしました! ?アジサイの「花」と呼ばれる部分はどこか分かりますか? 実は↓これです。 この写真の中心部分の「ポチッ」としている部分が花です。これを装飾花、或いは中性花といいます。 →ここまですらっと出てきたら、あなたもまさに“アジサイプロフェッショナル”! 略して“アジプロ”。 でもまだまだランクCね。 写真は蕾の状態です。?では一般的に花と思われがちな花びらのような“あの部分”は何にかというと、「ガク」になるわけです。 この花びらのように開いているのは「ガク」。英語でSepal(セパル)。 “アジプロ”としてはこれもすらっと出てくるよーに。クリアできたらランクB。
はい、次。 ?じゃあ、真中のこのつぶつぶは何さ?↓ これも花です、花! これを「両性化」といいます。 つぶつぶは蕾の状態で、これが咲くと5つの花びら(Petal:ペタル)がきれいに割れて、中から雌しべ(Pistil:ピスティル)と雄しべ(Stamen:ステイメン)がぺこっとお目見えするわけですね。 ハイ!これであなたもアジプロ、ランクAに認定されました! さて、とりあえずの焦燥感も拭い去れたところで、ウンチク号が首都高を抜けて舞い降りたのは佐野藤岡インターチェンジ・・・ここまで2時間! 佐野藤岡といえばなぜかラーメンで有名。 乱立するラーメン店を尻目に少し走ると突然左手に現れたのは巨大な“プレミアムアウトレットモール” 行きたい衝動をググッとこらえて黒保根町に向けて猛進、猛進! やはりこーゆーものはプライベートでゆっくり来るものでしょう。ここはサラリと諦めるべし!(当然)
佐野藤岡ICで下りてから更に1時間。黒保根町に到着! 1時間走ると景色もガラリ変わってしまうものです。 幾度となくアップダウンを切り抜けて、なっとさかもと園芸さんに到着! 東京から約3時間・・・周りの山々の頭にはまだ白い残雪がくっきりと見えます。 よもや「赤城おろし」とか「榛名おろし」とか言われる空っ風は、これらの山から吹き下りてくるのか。 運良く取材に行った日は穏やかな日でしたが、群馬は「嬶(かかあ)天下と空っ風」という文句で有名な通り、真冬に吹きすさぶ風に向かって自転車で走ろうものなら、前に進めたもんじゃありません ちなみにこのフレーズに出てくる「嬶(かかあ)天下」という言葉ですが、一見“群馬の女性は恐妻”という印象を受けがちですが、これには誤解があります。 群馬は昔から養蚕や製糸業が盛んで手先の器用な上手早な女性は高い賃金で雇われていました。 そのため働き者だった群馬の女性は、子守りを旦那に任せて働きに出ていました。 それを第三者が見て、「群馬の女性は(本来自分でやるべき)子供の世話を旦那にさせて自分は働いている!」と勘違いしたことから始まり、“恐妻”のイメージで捉えられるようになってしまったのです。 しかし、もともとは副業だった養蚕や製糸業も専業化が進み織物業が発展すると、上州の人々の暮らしは大きく上向くことになったのですが、その原動力となり活躍したのは農家の女性だったのです。 つまり、「群馬の女性は働き者!」 群馬で「かかあ天下」と言った場合は、女性に対する褒め言葉なんです! くれぐれも誤解のないように! あ、ちょっとヒートアップしすぎましたか?あはは^_^;
さて、本題に戻りまして、アジサイの大家にお会いするためには、いくらアジプロといえどもランクA程度では極めて失礼にあたるわけです。 更に超A級になるために、ここで【もっとアジプロ講座!】 アジサイは別名“七変化”と言われるように、白色を除いて用土によって色が変化します。 酸性の用土ほど青味が増し、中性に近づくにつれてピンクや赤がより鮮明になります。(注意!:では、アルカリ性ならもっと鮮やかな赤になるかというとそうではなく、アルカリ性の用土ではなかなか植物は育たないわけです、はい。) これは赤の色素(“アントシアニン”紫サツマイモやブルーベリーに含まれていることで有名ですね( ^ー゜)b)がアルミニウムと化合すると青くなるためで、アルミニウムは土の中に多量にあり、酸性ほど水に溶けて植物に吸われるようになるからです。 日本の土の殆どが酸性土ですから、青系の花は比較的鮮明な花色になりますが、ピンクや赤系の色は紫かかって濁ってきます。 そこで坂本さんの技術力の見せどころ! 坂本さんはその育種力と栽培力で数々の美しい赤ヤピンク系のアジサイを世に排出しているのです! ご覧ください↓ ハウスには出荷を間近に控えたピンクのアジサイたちがハウスいっぱいに広がります! 一足踏み入れただけで圧巻の光景です。 アジプロの方ならご存知かもしれません。 ↓こちらはミセスクミコ♪ ピンク色が愛らしくて人気品種です。 美しいミセスクミコにうっとりしていると、もっと美しいものに遭遇しました!
おっとこれはよもや本物のミセスクミコなのではあるまいか??
じゃじゃ?ん!本物のミセスクミコ様がご登場です! 本物のミセスクミコ様はとても若々しくていらっしゃり、アジサイのミセスクミコのように頬をピンク色に染めつつ、ハウス内でテキパキと従業員の皆様をリードする信頼の厚い坂本さんの奥様なのでした。 やはりここでも群馬の女性は働き者! 艶やかな本家本元のミセスクミコさんに引き続き、坂本さん、ご登場!!
じゃじゃ?ん!!
さかもと園芸の坂本正次さんです。
「ミセスクミコと名前を付けた理由は?」と尋ねると、 「まあ、だいたい名前を付けるときは家族の名前、芸能人の名前、ゴロが良い物なんかを順位考えていって決めるんだよね。そのときは秋吉久美子とか後藤久美子とか、久美子っていう名前が芸能人にも多かったからね・・・」なんて芸能人に逃げるあたりは照れ隠しでしょうか? その名前と商品イメージがぴったり合っているためか、今では毎年母の日のヒット商品です。 とりわけ今年は昨年より色のりが良いのが特徴です! 今年坂本園芸のアジサイに出合ったあなたは超ラッキー! ------------------------------------------------------------------- アジサイの生産にはだいたい10ヶ月から1年かかります。 主な販売期は3-5月、ですから前の年の4月から5月に挿し木をして販売に備えるわけです。 ここから2ヶ月弱で出荷。(注意!青じそではありません、くれぐれも) 徐々に成長していき・・・ ↓ ↓ ↓ぐぐーん! ↓ ↓ ↓ぐぐーん!! ↓ ↓ ↓ぐぐーん!!!と生長して となるわけです。 完成 ちなみにこちらは“ブルーダイヤ”という品種です。 透き通るような涼しい青が新鮮な印象を与えます。 蒸し暑い夏に涼しく快適な空間をコーディネートするには一役買ってくれそうな好適品種ですね。 このようにハウスを見学させて頂いているとなんだか不思議なものが・・・ おっと、こんなところにどうして菜切り包丁が
よもや日本人の野菜不足の傾向を案じ、ハウス内でもアジサイの葉を茹でて食べたりしているのか?? まさか
・・・と思ったら、答えを発見!
生長した苗を植え替える際、根の回りの土塊の大きさを調整するために菜切り包丁を使っていたのでした。 何かと思ってびっくりしちゃいましたよ?。
なんて納得していたら次の不思議ちゃん発見! い、いったいこれは何なのでしょう この4輪のタイヤに載った1枚の鉄板。一見“スケボー”のようにも見えますが、通常のサイズに比べると微妙にバランスが違う・・・。スポーツ少年だった坂本さんの健脚に付いていけない従業員の方がこれを使用して伴走するとでもいうのか?まさか??
・・・と思ったら、またまた答えを発見! ベンチではなく地面に置いた鉢物を一つ一つしゃがんで見ていくのは一苦労。 腰も膝も痛くなって、耐え切れずに立ち上がったときにはズキリと関節が痛むか立ちくらみってとこでしょう。これではお仕事を続けるのは難しいですよね。 そこでこれに座ってちょこちょこっとスライドしながら移動すれば、随分身体への負担も軽減されるという優れモノなのです! 地植えが多い野菜を栽培されている方はよくお持ちのようです。
アジプロの皆さんならば、ここで知っておかなければならないことがあります。(←神妙な雰囲気で読んで下さい) 坂本さんはただの生産者ではありません! 数々の度重なる改良により数々の優れた新品種を生み出していらっしゃる育種家でもあるんです。 いままでに試作した数はなんと10万本にものぼります そのうち、世の中に残したのは20―30品種!これは大変なことなんです! しかもその品種は日本のみならず、世界中に注目されている品種を生産しているのです。 それではここで坂本さんの育種品種で、消費者の皆さんが比較的お店で手に入れやすい品種をご紹介します。 ・ ミセスクミコ ・ ブルーダイヤ ・ ピンクダイヤ ・ ユングフラウジェミニ ・ ユングフラウラベンダー ・ ウィンドミルピンク (「ウィンド見る」ではありません。ウィンドミルとは「風車」の意味で、その通りガクとガクの間に隙間があるのが特徴です。)
これらのアジサイの中ではかなりのシェア率を占めるメジャーな品種を坂本さんが育種されたなんて、いかに坂本さんが優秀な育種家であるか、お分かりいただけると思います。 ハウスの中には試作コーナーがあり、見たことの無い珍しい品種がたくさん並んでいました。 ↓ こちらは企業秘密♪につきモザイク画像にて勘弁してくださいな。 ------------------------------------------------------------------ そんなこだわりを持つ坂本さんの優秀な作品たちを世間が見逃すはずはありません! 坂本さんは数々の賞を受賞していらっしゃり、なんと2006年のジャパンフラワーセレクション・フラワーオブザイヤーに選ばれました。 受賞したのはフェアリーアイという品種です。 ↓こちらは授賞式で日本のファーストレディ安倍夫人にフェアリーアイをプレゼントした瞬間です。 とーぉっても嬉そーな安倍夫人です♪ その他、2002年にオランダで開催されたフロリアードでもGOLD賞を獲得、更に遡って1992年のフロリアードでも鉢物部門で第1位を獲得されるという輝かしい実績をお持ちなのです ハウス内にずらりと並ぶ坂本さんのアジサイちゃん ここから世界の優秀作品が生まれたのですね! では、なぜこのようなこだわりを持つ育種にも栽培にも優れた坂本さんが誕生したのか。 その秘密を(ドキュメンタリータッチで?)解明しましょう!
坂本さんは中学生の時から蹴球少年まっしぐら!・・・蹴球て(-.-) その頃はサッカー部のことを蹴球部と言っていたそうです。 「埼玉を制す者は全国を制す」と言われたくらい激戦地区の埼玉で蹴球(サッカー←しつこい?)に熱中、部長さんを務めていらっしゃいました。 あの釜本選手がオリンピックに出場したときで、それはもう蹴球に対する情熱は誰にも負けませんでした。 その蹴球熱は大学まで続きましたが、蹴球と同様に熱を注いでいたのがサボテン! 中学生のときお兄様からもらったサボテンをきっかけにハマッていった坂本さん。学校では教科書の手前にサボテンの本を隠してチラ見していたほどのサボテンフリーク! なんと大学の卒論も「サボテンの営利栽培について」!! 中学の時にお兄様からもらった最初のサボテンから徐々に増やしていき、群馬に引っ越してきたときはなんと600鉢ほども持っていらしたのだとか! そんな“サボマニ”(サボテンマニア)だった坂本さんが栽培品目をアジサイと心に決めたのは理由がありました。 やはり「サボテンの営利栽培について」大学で学ばれただけに良くご存知で、サボテンは生長が遅い上に、資金・栽培・時間、売り先の確実性などを鑑み、サボでは生計を立てるのが難しいから・・・泣く泣くサボテンを諦めることにしたとのことです 代わりに「“花”をやりたい」と栽培品目を模索。 雑誌『農耕と園芸』で企画していた鉢花のプログラム生産講座(六本木にて開催)に参加し、アジサイにインスピレーションを受け、メインアイテムとして栽培することを決意されたそうです!
埼玉から群馬に引っ越したのは昭和48年の秋・・・世間では第一次オイルショックなどが起こり、ブルース・リーの「燃えよドラゴン」が封切りされ、おまけに桜田淳子・山口百恵・森昌子がデビューした年でした。あたしゃ生まれていませんが。 「昭和49年に栽培をスタートして以来33年(!)、様々なアイテムに挑戦しつつもメインの生産品目(アジサイとシクラメン)を変えずに一つのことをやってきたからこそできたのかも・・・」と振り返る坂本さん。 一つのことを成し遂げることすら容易なことではありません。 サボテンや蹴球に対する情熱を見れば分かる通り、坂本さんの一途な人となりがあったからこそ、世界レベルの数々の賞を受賞され、「アジサイの育種といえばさかもと園芸」というタイトルの獲得につながったわけです。 きっとその一途な情熱は奥様のミセスクミコ様にも注がれているに違いありません
「品種改良は楽しいけど、食べていかなくてはいけないから稼がないとね。 品種改良は先行投資で賭博的。費用対コストを考えてバランスよく生産と勧めていかなくてはならないよね。“好きすぎる”一筋ではどこかで弊害が出てしまう。」と坂本さん。 “好き”だけでは成し得ないという現実を見据えて、33年間生産と品種改良とに真摯に向き合ってきた坂本さんだけに、説得力のあるお言葉でした。
そんな坂本さんはその技術を若手の生産者に伝授するというお努めもしていらっしゃいます。 たまたまうんちく取材班がお邪魔したときに、坂本さんが生産指導をされているアグリベイスの多和田さんという方がいらっしゃいました。 (左が坂本さん、右がアグリベイスの多和田圭一さん)
多和田さんは2年ほど坂本さんのところで修行をして、今は「アグリベイス」として独立していらっしゃいます。
奥様の久美子さん曰く、「息子より手を掛けたわよ!」 そう繰り返しながら、多和田さんの肩を優しく叩いていらっしゃいました。その姿はまるで本当の親子のようでした
せっかくなので、同じ黒保根にある多和田さんの農場にもお邪魔致しました。 ↓ちょっとだけご紹介。 多和田さんのお宅も主にアジサイとシクラメンを生産していらっしゃいます。
多和田さん曰く、 「この辺は田舎でね、ハウスの周りではタヌキやイノシシ、鹿も人も出没するんですよーーー!」 こちらが「え?人も出るんですか?」と聞くと、 「うん、年寄りばかりだけどね・・・」 がーん(;_;) 多和田さーん、そんなこと言わないで?! アグリベイスで働いていらしたのは、若い方ばかりでしたよーーー!←これホント。 多和田さんのハウスではまだ咲いているアジサイは殆どありませんでした。 その代わりこんな可愛いシクラメンの赤ちゃんを見つけちゃいました! 播種して2週間の芽です。
坂本園芸さんは(アグリベイスさんも)、弊社の鉢物生産者グループ「ループワン」に所属していらっしゃいます。 ループワンの紹介ページはこちら↓
お花屋さんとご購入いただいた消費者の皆様へ 【管理のポイント】 1.置き場所 直射日光下では花が早く色あせるので、半日陰か明るい室内に置くことがポイントです。
2.水遣り自然界では梅雨時期の風物詩のひとつでもあるように、アジサイは基本的に水を好む植物です。 春から夏にかけては良く水を吸い土が乾きやすいので、土の表面がやや乾いたらたっぷりと与えます。 鉢の底から充分抜けるくらいにたっぷりと与えてください。 3.施肥 皆さんがお店で購入される時には既に与えてありますので、開花中は必要ありませんが、その後は月1回くらい追肥をして株を充実させてください。 4.剪定 アジサイの蕾は秋に枝の先にでき、翌年開花します。 夏以降、開花までの間に剪定をすると花が咲きません。7月末までに枝の中ほどで切り詰めます。 その後は間引いて日当たりをすると良い花が咲きます。
↑いかがでしょうか。世界の坂本さん直伝の「管理ポイント」。このマニュアルさえ知っていれば、「アジサイを10倍楽しむ方法」を知っているのも同然です!
今年はあなたの暮らしのパートナーにアジサイをいかがでしょうか。 きっと生活に彩りを与えるてくれることでしょう! 坂本さんのアジサイの目印はコチラ↓!
さかもと園芸さんの格言
毎年アジサイを暮らしのパートナーに迎える方も、今年はアジサイで空間コーディネートしようかとお考えの方も、是非世界の「さかもと園芸」さんのアジサイをお試しください♪ <文責:Kathy>
●おまけ● ハウス内の一方では、年末に出荷を終えたシクラメンたちが一休み。 花が終わり膨らむこの中から種が取れるんです。 ------------------------------------------------------------------------------- さかもと園芸さんとアグリベイスさんの所在する黒保根地域は、古くは平安時代に奥州から京に上る道沿いとして、江戸時代には足尾銅山から銅を搬出する街道筋として賑わいました。 黒保根町の総面積の89%を森林が占めており、清流も多くあり、恵まれた自然を生かした森林公園やキャンプ場、温泉センターなどがあります。 山あいにある黒保根町は、都会では失われてしまった人々の豊かな自然に育まれた暮らしが連綿と続いています。黒保根地域は山間地のため夏でも比較的涼しく、気候の面で花卉栽培に適しているのです。 最寄駅は東武特急「赤城駅」です。是非一度訪れてみてください。