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2007年8月 4日

Vol.43 千葉県 処(ところ)園芸

7月某日、鉢のセリ日・・・大田花きの1Fフロアを上から見てみると、とってもトロピコーsun.bmp(トロピカル!)
market.JPG

ハイビスカスに巨大クワズイモ、沖縄からのビッグな観葉植物がたくさん!夏商材が多く、まるで南国からごっそり抜き取ってきたかのような熱帯植物がフロアを埋め尽くします。
写真の左上にちょろっと見える白い一角は胡蝶蘭です。

中でもひときわ鮮やかにその一角を染める商品があるではないか。(中央下)
・・・一体これは何なのか?

アジサイの出荷はほぼ終了だし、何よりアジサイより更にビビッドカラー!
チューリップなんて季節外れだし・・・ガーベラか?いや違うなぁ。
ブーゲンビリアの色でもないし。

下に降りてみると、・・・OH!!なんとなんとベゴニアではありませんか!

auctiontop2.JPG

こんなにボリューム満点で、発色が美しく、素晴らしい品質のベゴニア・・・一体これはどなたが作っていらっしゃるのか。
商品に貼られた出荷シールには千葉県「処園芸」(ところえんげい)と書いてある。むむ・・・。
lavel.JPG


処園芸さんとはどんな方で、どこでどのようにベゴニアを栽培されているのか。
どうしてこんなに品質のしっかりしたベゴニアが作れるのか、その秘密が知りたい!

あ?、も?、こーなったらじっとしていられない!早速千葉まで行ってみることにしました!

いざ千葉へ!

翌日(早っ!)・・・快晴!
ありがとう、お天道様!sun.bmpあなたはいつも私の味方だ。(相変わらず大袈裟やな)


一面田んぼの中に「東関道」をひた走りに北上・・・
tunnel.JPG field.JPG


この田んぼの真中をひた走りに走っていくと、見えてきました国民宿舎の「サンライズ九十九里」!!

sunrise99.JPG


国民宿舎でありながら、太平洋を独り占め!
サンライズ九十九里を過ぎると突然キラキラとした太平洋が見えてきました!

sea.JPG


ここで高速を下りて、海岸通りをまっしぐら。
この“海岸通り”がまたまた乙なもの。


まだまだ旬の時期とは言わずとも、既に海にはサーファーの姿がちらほら。
道の両脇にずらりと並ぶサーファーショップは時期になればその街が1年の中で最盛期を迎え、多くの人で賑わうことを容易に想像させます。

このサーファーショップの並びに突然現れた乗馬クラブ・・・なんで?

horseriding.JPG


馬に乗るのも波に乗るのも同じ「乗る」繋がりってことですかね。・・・まいっか。

訪問前のお勉強!

タララッタッタッタ?♪
ハイ!ここでベゴニアの基本的なお勉強タイムですー!


ベゴニアはシュウカイドウ科に属し・・・

シュウカイドウ科ってなんだ??
しかも調べてみれば漢字で「秋海棠」と書くではないか。
「ドウ」の字は「堂」ではなく「棠」であることに注意。さすが植物だけあって、下は「土」ではなく「木」であるらしい。

そんなことはどうでもいいとして、ネットで検索すると以下のように出てくる。
「シュウカイドウ科とは、中国?マレー半島原産の多年草。葉は互生し、卵状心形で先は尖り、縁に鋸歯がある。花期は9?10月。山地の湿り気のある木陰にしばしば群落をつくる。本邦では観賞用に栽培するが、中国では根を秋海棠根(シュウカイドウコン)と称し、活血薬とする。また花は天ぷらにして食べられるという。」

・・・むむむむ。「花は天ぷらにして食べられる」というところしか理解できない・・・無念。

つまり、シュウカイドウ科を英語で言うと「Begoniaceae」で、「ベゴニア科」みたいなものですね。
よし!分かった!!kirakira.bmp

このBegoniaとう名前は、フランスの植物収集のスポンサーであるミッシェル・ベゴン(Begon)さんの名に由来します。もしかしたら、今のベゴニアは「ベゴニア」という名前ではなく「ミッシェル」という名前だったかも・・・?いや、ありえまい(-.-)

一般的にベゴニアは以下の4つのタイプの大別されます。
?四季咲きベコニア(センパフローレンス)
bego1.JPG

?冬咲きベゴニア(クリスマスベゴニア)
?球根ベゴニア
bego3.JPG

?エラチオールベゴニア
bego4_1.JPGbego4_2.JPG

先が長いので、ここでは?-?の説明は割愛させていただきます♪あしからずm(_ _)m

通常、市場に出荷されているのは?のエラチオールベゴニアで、処園芸さんのベゴニアもこのタイプです。
南米原産の球根ベゴニアとイエメンのソコトラ島原産のベゴニア・ソコトラナの交配による品種で、ドイツの育種家オットー・リーガーさんが多くの品種を開発したこともあり、リーガースベゴニアとも呼ばれます。この名前なら聞いたことがある方も多いかもしれませんね。じゃ、エラチオールと呼ばれるのはエラチオールさんもたくさん品種開発をしたのかというとそうではなく、最初に育成されたときの品種にちなんで“エラチオール”と呼ばれているわけです。

はい!そこでイエメンのソコトラ島ってどこ?と思った方へ、ソコトラ島の場所を調べてみました!

map.jpg
ありました、ありました↑

サウジアラビアのあるアラビア半島からから300km南に浮かぶ島で、アラビア文化発祥の地と言われるイエメンに属します。面積は3,600k?程度で、択捉島よりやや大きいくらいですね。
位置的にはアフリカ大陸至近のため、気候は1年中暑く、アラビア海のガラパゴス島と呼ばれ独特の動植物が生息しているのだとか。
紀元前にはアレキサンダー大王がアロエの生産地であるソコトラ島を占領させたともいいます。
アラビア本土を向いている北側では商売のために来航したアラブ人やインド人、はたまたギリシャ人などが入り混じって住んでいたため、様々な文化が融合して発達したようです。

ソコトラ島を知らずして、エラチオールベゴニアを語ることなかれ!

もしエラチオールベゴニアがお部屋にあったら、魅惑の島ソコトラ島が少し近くなったような気がしませんか?

・・・な?んて考えているうちに。おっと危ないzukiri.bmp
道を間違えるところでした!ase.bmp

処園芸さんのハウスはこの鳥居の見えるところを左に入って行きます。
torii.JPG


そして到着しました?

housearrival.JPG house2.JPG

このハウスの中にあの立派なベゴニアたちがあるのでしょうか・・・
何はともあれ、早くあのベゴニアを拝見したい!
“とにかくハウスに連れてって?!!”とわがままを言って早速ハウスに御案内いただきました。


 ・・・


だーーーーーー!bikkuri.bmp

すんごい!鮮やかに広がる一面のベゴニア。
begoniadarake1.JPGbegoniadarake2.JPG

まるでキャンバスに絵の具でべったりと色付けしたかのような、いやいやしかし透き通るような美しさをも備える鮮色。
遠くから見る限りではなかなかベゴニアとは分からないほど色で面を埋め尽くします。
ベゴニアってこんなにきれいだったんだと再認識させられる瞬間でした。


そして早速、こちらが処園芸の処ご夫妻です。満面の笑顔で迎えてくださいました。

couple2.JPG

ご主人の處要一さんと奥様の茂美さんです。

処園芸さんは全部で9色のベゴニアを栽培していらっしゃいます。

きれいな色を備えるまでの成長過程はこちら↓

親木から挿し木をして約10日。こんなかわいい赤ちゃんベゴです。
10days.JPG

挿し木をしてから鉢上げまでおよそ1ヵ月、赤ちゃんベゴはここで養生します。

鉢上げをしてから5週間後・・・(ここまでに一度ピンチをします)
5wks.JPG

ちらほらと花を付け始めるのが10-12週間目・・・
flowering.JPG

鉢上げからおよそ13週間で満開、出荷を迎えるわけです?flower.bmp
fullbloom.JPG
ピンク、かわいぃっ!

このハイクオリティのベゴニアを栽培するための處さんのこだわりは一体なんなのでしょう!?


まず培養土にこだわっていらっしゃいます。
赤土とピートと堆肥をオリジナルブレンド。
“土のこだわりがなくなったら良い物は作れないよ。技術云々より、やっぱり土だね。”と処さん。
soil.JPG


次に潅水は手潅水とプールベンチ!
プールベンチは乾いたら水を吸い上げてくれるので、手潅水と変わらず、微妙な塩梅を見ながら水をやることができます。


そして最後は植物をよく観察すること!
親が子の様子を見て微妙な変化に気付いてあげるように、處さんの植物に対する愛情の目で以ってよく「観て」あげることが大切!

・・・と伺い、私も“ベゴニアを観てみよう!”とハウス内を一緒に歩いていると不思議な物を発見!

こ、これは一体何なのだquestionmark.bmp

finger.JPG


ここで伝票を数えるための指サックか、もしくは・・・むむむ。全く分からない!
どうやら一緒に置いてある緑のスティックが関係しているらしい。
stick.JPG


ヒント:このスティックの長さは21cm


答えは、仕立ての際に仕上げる支柱を挿す時に使う指サックでした。
そのままでは枝が暴れてしまうので、このグリーンの支柱を3本程度立てることによって、“きちんと”コンパクトに仕立てるのです。

こうやって→doing.JPG

家の敷居をまたいで外に出るときにピシッと襟元を正して行くのと同じような感じでしょうか?
この支柱を4号鉢に3本ずつ挿していくので、ずっと作業していると指が痛くなってしまうとのことです。
そのためにこの指サックで保護しているわけですね。
それでも奥様の指には“ベゴニア支柱タコ”(っていうんか?)が出来ていました。


ほら!!↓じゃじゃ?ん!
tako.JPG

この支柱挿しはひとつひとつ手作業でやるため、時間のかかる本当に大変なお仕事なんですよ。それをピーク時にはパートさん2人と1日に500-600鉢を出荷するのですから、気の遠くなるような作業です。

しかしこのベゴタコ(さっそく略してしまった・・・^_^;)のお陰で、支柱を指す前と挿した後ではこんなにも違うんですよ。


使用前⇒before.JPG

使用後⇒after.JPG

“しゃんと”しましたよね。キュッとまとまり、コンパクトに美しく、そして品が備わりました。

(あ?!!私も自分に支柱を立てて、重力に抵抗できる体になりた?いっ!!)

なんて騒いでいるうちに、次なる不思議を発見。


・・・??? こ、これはなんだ??

razor.JPG

よもや處さんはこんなところで髭剃りをされているのか?
しかもこのような昔懐かしL字カミソリ(安全ガードなしにて凶暴)を使って・・・?
だっ、大丈夫ですか??

よもや処さんのお顔は傷だらけ?

なんて、ふと處さんを見上げると、處さんのお顔はつるつるではないかーーー!kirakira.bmptokorosanzoom.bmp

どうやら髭剃りに使っているわけではないようです・・・じゃ、ナニ??

実はベゴニアを挿し木で増殖するための穂切り用カミソリだったんですね。

液体は消毒液で、病気が伝染しないように殺菌しているのです。

そか、よかったよかった。(ほッ)


訪問中、始終ニコニコとご対応くださった處ご夫妻。
ベゴニアを始めたきっかけは何だったのでしょうか。
どうしてもご主人の處さんとベゴニアのイメージが結びつかないのですが・・・(あ、失敬!)


「昔はね、全く園芸とは関係のない業界の会社員だったんですよ。」
とこちらの失礼な質問にも気さくに答えてくださる處さん。

会社員当時から独立心があり、ご結婚された茂美様のご実家がベゴニアなどの園芸品の栽培をしていたことがきっかけで“これをやってみよう”と決心されたそうです。

しかし「ド素人だったからねぇ」と處さんは当時を振り返ります。
一体ベゴニアの何が處さんに栽培を決意させたのでしょうか・・・。

最も大きなポイントは周年栽培できる!ということだったそうです。
ご自身で園芸の素人という認識を持っていらしたからこそ
“失敗するかもしれない。失敗しても周年出荷できるベゴニアなら、次の周期がすぐにくる!”
というリスク軽減が大きなポイントとなったのです。

しかし、このポイントはひっくり返せば「少し本来の周期に乗り遅れると、一作とりこぼしてしまう」という危険とがあります。

お独りで経営を始めたばかりの時は「周年回していかなければ!」という重圧と、次から次へと回ってくる周期に追われる状況下での限られた作業時間から、寝る時間を惜しんでまでハウスに立ち作業をしていたとのことです。


きっと今は随分余裕が出て、当時を懐かしく思っていらっしゃるのかと思いきや、
“いやぁ、今でもその重圧は同じですよ。初心忘るべからずです!この仕事だけやっていればいいわけではありませんしね」

とお仕事に傾ける情熱と真摯ぶりを語っていらっしゃいました。


clover.bmp以上のような處さんの情熱がこもった良いベゴニアの見分け方を伝授しちゃいます!clover.bmp

まずスリーブを取ります。(←これを面倒くさがらずにやることがポイントです!)
分枝や全体のバランスがをよくみて、バランスよくまとまっているかどうかが大きなポイントとなります。


処園芸さんの格言hammer.bmp


1. 他社には真似できない處さん独自の土!
2. まるでベゴニアちゃんたちに問診をして決めたかのような絶妙な潅水具合!
3. 観察力!植物の微妙な状態の変化を見抜く審美眼を磨くこと!
4.そして・・・
栽培者の性格が栽培過程や仕上げ具合に反映されると言われます。處さんはご夫婦仲良しの上に植物に対する愛情と、周りの物や環境への丁寧な心配りも忘れません。ここに発色や花保ちの良さが差別化されて表れるのです!

處さんの商品は注文される方が多く、「処園芸で!」と指名買いされる方が多いと弊社の販売担当が言っていました。つまり、これは處さんの品質の良さを裏付けていることにほかなりません。
ベゴニアは夏の暑い時期でも花保ち抜群、処園芸さんのベゴニアはとりわけ美しく咲き続けるのです!


お花屋さんで處さんのベゴニアをお求めになりたいときは「大田花き経由(←これも大事)処さんちの!(←こっちはもっと大事)」とリクエストしてください。


?Message?
お花屋さんへ
出荷するときは輸送中に花が擦れることを考慮し、仕方なくスリーブをかけています。
優しいピンク色の素敵なスリーブではありますが、そのままにしておくと花が蒸れてしまいますので、店頭に配置する際はスリーブを外してくださいね。

?消費者の皆様へ?
愛情を込めて作ったので、皆さんも愛情を込めて可愛がってあげてください。
・ お部屋の中のなるべく明るい場所に置いてお楽しみください。
・ 夏の陽射しが強い場合はレース越しに日を当てるようにしてください。
・ 冬でもストーブ至近を避け、できるだけ暖かい所で管理してください。
・ 土が乾きすぎないように花や葉だけでなく、土もよく観察するのがポイントです。
  水をやるときは花や葉にかからないよう注意してたっぷりとやってください。


7月某日鉢物セリ日朝6時15分、来場される買参人さんもまばらなうちから、セリのトップで出番を待つ処園芸のベゴニアちゃんたち・・・。

auctiontop.JPG


可愛らしいベゴニアちゃん、処園芸のお母様たちが手にタコまで作って仕立ててくれたのですから、お客様の元でもきちんと可愛がられてくださいね?♪

おまけ♪

処園芸さんの周りは自然に囲まれてとてもきれいなところでした。
ちょうどお邪魔した日も、空の青に緑が映えてとてもきれいでしたよ。ウツギの花も眩しいくらいに咲いていました。
utugi.JPGblueandgreen.JPG


そんなところだからこそ、植物のみならず、動物もたくさんでるとのこと。
カエルちゃんを頂きにヘビも頻繁に出没するとのことです・・・(ぞぉ?pale.bmp←ヘビ苦手人間です)
frog.JPGbegozoom.JPG

<写真・文責:ikuko naito@R&Dkate.bmp
Copyright(C) Ota Floriculture Auction Co.,Ltd.