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2008年10月 5日

vol.67 宮城県 梶農園

flower13.jpg「箱を開けて見れば、分かる!」と評判のバラがあります。定評があるところには、かならず何かがあるもの・・・いったい何が違うのか、それはどんな風に作られているのかを知りたくなります。そんな期待にお応えするべく、ビデオカメラひとつで産地さんに飛び込むのが、われらが産地ウンチク探検隊です。

それでは、さっそく今日の舞台をご紹介しましょう!

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?宮城野のバラを訪ねて?

風光明媚な自然から食材王国とも呼ばれ食通をうならせる豊かな大地、さらに今、開発まっさかりの仙台スポット!自然と都市がミックスされた不思議な魅力を持つ宮城県。
仙台からほど近く、古くから宮城野と呼ばれるその地を訪ねたウンチク探検隊は、東北のバラ産地「宮城野バラ工房 梶農園」と出会いました。

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?梶農園に到着!?

晩夏の9月下旬、宮城野は早くも涼しい秋の風・・・のどかな田園風景には仙台米が穂を垂れています。
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さすが東北地方というだけあって、夏は暑くも寒くもカラッとしているのですが9月下旬ともなれば肌寒いくらいです。夏がカラッとしていることはバラにも良いらしく、夏場に作る宮城のバラは品が良いことで有名だそう。

着きました!ここが梶農園です。出迎えてくださったのはお父さんの丹野敏晴さん。2008年バラ会議ではパネラーとして大活躍された、息子さんの岳洋さんも肩を並べていらっしゃいます。大きなハウスが軒を連ねていますね!どれくらいあるのですか?

「ハウスは15?16棟、広さは3000坪ぐらいあります」とお父さん。


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「どうぞどうぞ」と事務所に案内してくださるお二方。岳洋さんが煎れてくださったコーヒーに暖まりながら、しばしお話を伺いました。

「バラをはじめたのは昭和55年、それまではカーネーション栽培でしたね。」と歴史を振り返るお父さん。
梶農園のバラの歴史は、今年で28周年を迎えるんですね。かくいう私自身も同じ年なので、何だか親近感をおぼえちゃいます。


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事務所の壁に「MPS」のポスターを発見しちゃいました。「去年5月からMPSを始めたんですよ。」と岳洋さん。MPSというのは環境に配慮した花づくりに取り組む生産者に与えられる国際認証、いわばお墨付きのようなものです。
海外でさかんですが、日本国内でもMPSに取り組む花の生産者がどんどん増えてきていますよね?

でも・・・一体どんなことをやっていて、どんなふうに環境に結びついているのか?は意外と分かっていなかったりして。
のちほどゆっくり、MPSについても教えてください!

バラを見たくてソワソワ落ち着かないわたしたちを察してくださって(?)、イスから腰を上げた岳洋さん。

「まずは選花場を見に行きましょうか。」

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?「切り前」と「選別」へのコダワリに迫る?

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ここが選花場。けっこう広いんですね。

バケツにはきれいなお水。

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「採花のたびにバケツを洗って水を全部取り替えて、雑菌が入らないようにしてるんです。」と岳洋さん。

そうですか、ということは一日に何度も水換えを・・・という私のひとりごとに、「でも当然のことなんですよ。」と何でもないような岳洋さんのお返事。

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真っ先に目に飛び込んできたのは、市場でもお客さんから定評がある丹野さんの「アヴァランチェ」。
けっこう、咲いてますね。バラはもっとつぼみの小さいうちに採花するのだと思っていましたが・・

「バラの切り前と選別には一番神経を使ってます。花屋さんからお客さんの手元に届く日数を計算して、お客さんの手元で咲くように”切り前”を計算して花を収穫しますから、たとえばアヴァランチェはこの状態がベストなんです。これよりも小さいつぼみのうちに採ってしまうと、きれいに咲かないんですよ。」と岳洋さん。

切り前というのは花を採るタイミングのこと。

なるほど、そうだったのですか!ある程度花を大きくしてから出荷するというのは、その分、手間がかかるんじゃないですか?

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「もちろん、花を傷めないようにあれこれ工夫していますよ。バケツは出来るだけゆったり使って詰め込みすぎないようにしたり・・・。」

あっ、本当だ。バケツはゆったり。ただ置いておくときも、花をネットや農薬の袋でていねいにくるんでいます。


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よく見ると1本ずつ手選別されていました。

「品種によって、花を採る切り前はまったく違いますね。今はようやく花を見て感覚的に判断できるようになりました。」と岳洋さん。

ハウスの中を見渡して遠くから花のつぼみを見つけ、切るか、切らざるかを一瞬で判断するんだそうです。

「いちいち近付いて見に行っていたら、1本切るにも時間がかかっちゃうよ!パッと判断しないと。」

まるで鷹の目・・・!経験と職人技ですね。お客さんの手元で咲かせる、そのためだけに1本1本ここまで気を遣われている梶農園のバラ。

ここまで丁寧に扱われてキレイに咲かないワケがありません。

実際に「アヴァランチェ」をはじめ、なかなか咲かないと言われている大輪系のバラも、梶農園さんのところなら心配ないとお客さまからご指名での注文も多いとか・・・やっぱりお客さまが一番良く見抜いていらっしゃるんですね。

お客さまに見て楽しんでもらうために「産地では出来るだけのことをする。別に特別なことはしてない、当たり前なんですよ(笑)」という岳洋さん。

う?ん・・・掃除でも料理でもバラづくりにおいても、「やって当たり前なこと」と言われていることほど地道で手間のかかること、ですよね。当たり前をちゃんとやるって大事なんだなぁ。

大きな冷蔵庫の中を拝見。庫内の温度は5度、かなり寒いですね。

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除湿機を置いて湿度を保っているんですね。あっ、こんなところに梨が(笑)

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これですね、切り前が見事にそろってます。全部同じつぼみの大きさ。良く咲くバラはこの時点で違うんだ、ということが一目見て分かります。

選花場に戻ると、パートさんたちがきびきびと手作業で花を選別されていました。切り前を見極めた採花も、選別もすべてパートさんたちが全部心得ていらっしゃるそうです。

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「パートさんたちは全員プロですよ。」お父さん。

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?魅力的なラインナップに迫る!?

梶農園では、どんな種類のバラを作られているのでしょうか?ハウスを見学させていただきながら、おさらいしてみましょう。

その1、人気の高い定番のバラ

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「ザ・テレサ」       「ローテローゼ」      「エスタ」 ・・・みなさんも一度は手にしたことがあるはず!

その2、ゴージャスな大輪カップ咲き

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「アヴァランチェ」   「スイートアヴァランチェ」 「ロッソクラシコ」

その3、ユニークな花色

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「ラナンキュラ」           「レッドラナンキュラ」    「アローフォリーズ」

その4、変りダネ

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「ラ・カンパネラ」     「エクレール」

その5、最新品種

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「アムネシア」            「ピーチアヴァランチェ」

何かしら興味を引かれて、欲しくなってしまうバラがありませんか?

とくに、切り前や選別に神経質なほどこだわっている丹野さんのバラだからこそ大輪カップ咲きは、間違いなしに生きてくると思われる品種構成です。

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「品種構成では、花色の配色バランスには気を遣いますね。お客さんは花色を見て買われますから。
あとは1輪で存在感のあるバラ、個性の強いバラも必要。何といっても、お客さんを飽きさせないバリエーションが大事。」とお父さんはおっしゃいます。

なるほど、定番のバラから変わりダネまで・・・流行をとらえた大輪品種や最新品種もしっかり網羅されているから、お花屋さんは梶農園のバラだけでお店をコーディネート出来そう。

「それでもお客さんのニーズは年々変わるんですよ。それにすばやく対応できるように情報収集だけは欠かせないですね。」

今では頼もしい息子さんの岳洋さんが、そのあたりをしっかりサポートされています。

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「ここ数年まで、ずっと土耕栽培だったからね。」とお父さん。

バラ工房の昔をしのぶネーム入りショベルカー。まだ動くかな?


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ここはラベンダー通り。これまた立派なラベンダー!

「今年はもう咲き終わっちゃったんですよ。夏は一面良い香りでしたよ?」と岳洋さん。

近付くとまだほんのり爽やかな香りが残っていました、癒されます?。

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?環境コントロールの秘密?

ハウスで見つけました!この大きなヒートポンプという装置。

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装置から飛び出た丸いパイプは送風口。ハウス内の温度、湿度のコントロールを助けて、バラにとって
良い環境を作ってくれます。

「全部で15台導入しています。効果は目に見えて分かるほどだよ。」とお父さん。品質向上に一役買っているそうです。

「幸い、宮城県は年間の日射量に恵まれて夏は涼しいから、バラづくりには良い環境なんですよ。
冬も太陽が出ている日中は暖かくて、ヒートポンプいらずの日もあるぐらいです・・・といっても宮城の秋冬はやっぱり寒いですけどね、9月末頃からもう暖房を入れ始めてますから。」と岳洋さん。


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夏涼しい高冷地の気候は、バラには最適。湿度が低くカラっとしているから、病気も出にくいということで無駄な農薬も使わなくて済むんじゃないでしょうか?

さらに宮城は、東北でも特に日射量が多い地域。環境コントロールをしやすい恵まれた土地なんですね。
食材王国と呼ばれるわけも、良いバラが出来るわけも分かります!

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「去年から始めた”MPS”も環境コントロールのひとつだね。」とお父さんはおっしゃいます。

なるほど、丹野さんたちは具体的にどんなことをされているのですか?

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「まず花の栽培に必要なエネルギー、肥料、農薬を日々チェックしてデータを毎月提出します。花を作るためのコストはどれだけかかるのか?ゴミは正しく分別されているのか?といったことまでチェックして、自社の生産を把握することが出来るようになります。」と岳洋さん。

MPSに取り組むことでどんなことに役立っていると思いますか?という質問には、一番大きなところでは、自分たちの生産の実態を知ることが出来て肥料や農薬についてこれまでよりも深く考えるようになったことかな?」とのこと。


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あの、ずっと気になっていたんですが机の上に置いてある「農薬事典」これは、もしかして岳洋さんが読まれているのですか??

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あーそれは!と岳洋さん。「農薬といっても成分とか残効期間も様々なんで、使用量を見直したりうちのバラに最適な薬を組み合わせたりしています。まだまだ勉強中です(笑)」と。

本当に勉強熱心ですね!


MPSを通して環境に配慮した花作りを目指して作られたバラは、自然と無駄な農薬が控えられ、花の品質も細かくチェックされているということ。このバラはそんな生産者のもとで作られたバラですよ、という
安心感や信頼をもたらしてくれる目印になりそう。

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?ここでちょっと息抜きタイム♪?

梶農園では一般のお客さま向けに採れたてバラの直販店もやっています。

事務所の側にある、こちらのお花屋さん。贅沢にも採れたばかりの新鮮なバラを1本から買うことが出来ます。

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店内、バラづくし・・・贅沢?!これはお客さまも嬉しいはず。あの「アムネシア」や「レディチャペル」を、1本100?300円とはかなり良心的なお値段だと思います。実際に、ご近所から仙台方面まで色んなところからお客さまがいらっしゃるのだとか。花保ちの良さに感激して、リピーターが多いそうです。
お近くの方は是非!
梶農園HPでお店の情報をご覧いただけます。コチラ→http://kaji-noen.jp/index.html

ちなみに、お店のロゴはお父さんのお気に入り。お越しの際は間近でチェックを♪

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?バラづくりのコンセプトに迫る!?

丹野さん、梶農園のバラづくりのコンセプトを伺っても良いですか?

うーん、そうですねぇ・・・と少し考えてから、ご主人と岳洋さんは語ってくれました。

「まず第一には、お客さまが楽しめるバラですね。お客さまに、それぞれのバラのもつ個性や魅力をお伝えするのが自分たちの役割だと思ってます。」

とてもシンプルですね。

「そのためには、産地では”当たり前なこと”を徹底してやり続ける。出来ることは全部やる、努力を惜しまないこと。」と岳洋さんも続けます。

「当たり前なこと」とおっしゃるのは、つまりバラを咲かせることを前提にした切り前や手選別、花を傷つけないよう無理のない梱包をして出荷すること・・・などなど、当たり前だけど手間のかかる仕事ですよね?

「そうですね(笑)なんでも基本に立ち返って、地道にやり続けることが大事なんだって思いますよ。」とお父さん。

「昭和55年からバラを始めて色んな時代がありましたが、少しでも良い方向へ進むためにあれこれと努力はしてきたと思うんです。長い目で見て、立ち止まらず流されることなく・・・。」と深いお言葉。どんなときも一本筋の通ったお人柄と懐の大きさを感じます。

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「どんなバラが求められているのか、流行やお客さんのニーズについて行けるように情報収集も大事」と
岳洋さん。「情報収集も息子が熱心にやってくれるから安心です。」と嬉しそうなお父さん。


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梶農園は、この素敵なコンビの前向きなバラづくりがあってこそ成り立っているということがずっしりと伝わってきましたね・・・。今日一日、本当にお世話になりました。お父さん、岳洋さん、どうもありがとうございます!

箱を開けて見れば分かる、梶農園のバラの秘密。バラづくりの原点。

みなさまにも伝わったでしょうか?

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梶農園の格言



・梶農園のバラは量より質、効率より手間+環境配慮型である!


・合言葉は「咲いて楽しめるバラ」。
咲いてこそ分かるバラの個性を楽しんでください!


・定番から最新トレンドまで、幅広い品種バリエーション。
必ず欲しいバラが見付かります!




(文責 三浦彩)

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