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2010年12月21日

vol.80 JAわかやま 興里農場 バラ ~和歌山県産地シリーズ~ 後編

和歌山県シリーズ後編は、JAわかやま興里(こうさと)農場からです。


こちらはJAわかやまのバラがセリで販売される様子です。
(QUEEN ROSEと記載されているピンクの縦箱がそれです)

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まずは大田花きの担当者にインタビュー!


大田花きでバラ販売歴5年の担当者に聞いてみました。

興里農場のバラはどうですか?

「いや~、すごいよ!
あんなすごいバラ見たことないナイ。
大田花きのバラの中でも屈指の優良産地さんだよね。

トンカチのように丈夫でありながらホントに美しく咲くし、スタンダードだけでなく、スプレーの輪付きもすんごくいいのよね。
どうしたらこんなに立派なバラができるのかな。
特異なまでに豪華なバラは、一体どんなところからやってくるのか、ちょっとウン探で見てきて!」


('◇')ゞ ラジャ!
美しく乱れる興里農場のバラの謎に迫るため、大田花きバラ担当者から指令を受けJAわかやま興里農場へ潜入!
ウンチク探検隊、いざ出陣!タッタラーー♪

秘密の潜入です・・・といいつつ、正面からこんにちは~!
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って全然秘密の潜入になっていない^_^;


ぬぬッ!Σ(゚д゚;) !?
な、なんとこれが噂の“トンカチバラ”ですね。
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確かに茎もしっかりしています。

そしてあれもこれも、“今日中に出荷しなくてはいけないのではないか??”とこちらが心配するくらい大きく色付いたバラばかりです。
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こちらは25年前から驚愕のバラ生産を手掛ける中村さん。
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バラ作りのきっかけはなんだったのでしょうか。
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「トマトを作っていたんやけどね、トマトの裏作として花を始めたんよ。その時はアルストロメリアとか、アネモネ、スイートピー、フリージアなんかを作ってたんやけど、そういう季節指数の高い花は、パートさんを雇っても休みになるとどっかいっちゃうんだよね~」





なるほど、つまりその季節にしか雇えないパートさんだと、また雇用しようと思ったときになかなか人員を確保するのが難しい。
そして、メンバーも交代するから、雇用するたびに一から教え直し。パートさんにスキルを蓄積していくことが難しいというわけですね。


「そうそう、だからパートさんにも通年で働いてもらえるものを作ろうと思って、バラにしたの。それもスプレーね」

ふむ、どうして当時はスプレーにこだわったのでしょうか。

「あ~、誰も作っていなかったから。それだけ」


そうですかぁ、“誰も作っていないから自分が作る!”というのは、ニッチでありながらリスクも高い。なぜ周りがやっていないかを見極めないと、成功するか失敗するかは表裏一体。
そのリスクを計算しつつ、「周りがやっていないから」というところにかけて実行されていくところが中村さんですねぇ。


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品種選びの基準は何ですか?
「感覚ッ!( ^―゜)b

趣味ッ!

う~ん、でも一応自分の戦略に基づいてやっているんだよ。でもその戦略も毎日変わるからねぇ」

(゚-゚;)ウーン
もう少し教えてください・・・


「そやなぁ、ベースとして使ってもらえる花を導入するようにしてんねん。
“この産地のこれを買っておいたら安心”と思ってもらえる花。
欲しいから買うのではなく、必要だから買う。“なくちゃ始まらないよね”という品種という観点で選ぶねん。

花保ち剤を使ったとしても、それは魔法とちゃうからな・・・開いていない花が希望通りに咲くとは限らんやろ」

おっしゃる通り。

「それにもともと良い花、きちんと咲く花でないと花保ち剤使っても効かんやん。だから、そういう基準でも品種を選ぶね。

大型のパッカー屋さんの友人が多いからね。安心して彼らが納品できるものを提供したいやろ。裏切れんしな」

ビジネスパートナーさんを“友人”というポジションでご紹介いただきました。
大切なご友人と捉えていらっしゃるからこそ、信頼を裏切ることなく納品しようとする中村さんの姿勢が見て取れます。

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「そういう観点で品種を選んどるけど、つまり大切なことは品種ではなく品質っちゅーことや!
品質を保つためにどの品種を選ぶか。そういうポイントやな」


ご自身でも育種されると伺いました。
「そうそう、そのときも感性でやるよ。でもなにしろ強くなかったらあかん!
花も樹勢も、何もかも強くあること。でないと中村セレクションからは落ちてしまうな。

例えばどんなに発色が良くてきれいでも、輸送に耐えられんかったら意味ないやろ。そんな花、エンドユーザーに届くときにはスカスカや。」

スカスカはいけません。
確かに、強さあっての美しさですよね。

「そや。弱かったらお客様にも迷惑をかけるし、出荷現場も大変や。
流通に載らん花は、畑でいくら良くてもお金にならん!」


確かに。

ホント、丈夫さを売りにしているだけあって、この茎、太ッ!∑(゜◇゜;)

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ご覧ください。ちょっと太めの絵を持つボールペンと比べても、ひと回り太いくらいです。

これじゃぁ大田花きの営業担当をしてトンカチバラと言わしめるわけです。
納得、納得(゜ー゜)(。_。)(゜-゜)(。_。)ウンウン


093a.jpg育種、育苗

そんな中村さんにとって、ご自身で育種していて良い品種に出合えるのは4年から5年に一度だそうです。

こちらの花をご覧ください。
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中村さんが育種された品種です。名前はまだありません。


とてもきれいだったので、取材班もつい手に取って香りを嗅いでしまいましたが、形、色、香、三拍子揃ってとてもいい花ですね。

持った感じも茎が細い割にしっかりしていて、使いやすそうです。

「いや~、茎が細すぎてあかん。
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市場の流行からしたら全てええかもしらんけど、バランス悪いわぁ」

えーーーーー!!!(+_+)
中村さん、ここまで条件が揃っているのにNGだなんて、なんてバーが高い!

こちらは交配した苗を育てる育苗室です。

接ぎ木したバラが活着(かっちゃく;根が張ること)するかどうかは温度と湿度が重要なポイントになります。
湿度が十分でないとすぐに枯れてしまうので、十分室内の湿度を保っておく必要があります。
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みなさん、バラの接ぎ木苗をご覧になったことはありますか?
こちらがそれです。↓
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こうして上手に茎を合わせてテープで巻き留め、育成したい品種(穂木;ほぎ)台木(だいぎ;その株の根っことなる木)に接ぎます。

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なぜ台木に次ぐ必要があるのかというと、ここに育種した1本のバラがあるとします。
これを販売用に増やしたい。すると、こうして1本のバラから育成用の枝をチョキチョキと切っていくわけです。

このとき切られた育成用の短い枝が穂木となります。

この穂木をプツプツと土に挿していけば、根が出てバラの株に生長するのですが、一般的にバラ、とりわけ若い穂木はデリケートで病気に弱く、大きくなる前に病気にかかってしまう可能性がとても高いのです。


そこで、直に土に挿すのではなく、病気に強いバラに接ぐことによって、病気にかかりにくい強い株を育てることができるのです。

台木に使われる品種はロサ・オドラータ(原種)やノバラなどで、これらの丈夫な台木に接ぐことによって、丈夫で樹勢が強いものができ、株全体の寿命も伸ばすこともできるのです。


中村さんもロサ・オドラータを台木にしています。

「樹勢も強いしな、丈が取れるわ」


なるほど、中村さんのトンカチバラの秘密はこの辺りにもありそうです。

こちらが台木に接ぐ方法で丈夫な株を作り、増やされた中村セレクションの数々です。

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中村さんの手によって生まれた育種は興里農場の"K"が冒頭につき、“K-なんちゃら”という名前になりますので、どうぞご注目ください。
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093a.jpgさて次に、生産の秘密にもう少し迫ってみましょう。


もしかして培地にワケあり?

「土耕栽培のときは土作りを重視していたんだけど、ロックウールに変えたときに買ったまま使うのではなく、独自にアレンジを加えて使ったんよ。
ロックウールでの十数種類の組み合わせで下に敷いてみたんよ。ゼオライトとかサンゴとかね。もちろんヒントは土耕栽培の中にあって、それまでトマト栽培などで研究したノウハウがあったからこそ、いろんな組み合わせを思いついたんやけどね。

いろいろやり始めたときに“土耕の水揚げはいいけど、ロックウールはイマイチとかね、いろいろ培地によって評価がまちまちなんよ。」

では何を・・・?

「これ」

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ぬぬッ!
こ、これは切り花用の給水スポンジ?!!w(゚o゚*)w

「そうそう、給水スポンジを砕いて使ってんねん」


中村さんは切り花のアレンジ用に使う緑色の吸水スポンジを2cm角のキューブに砕いて培地としています。
でも、このスポンジだけでこの強くて美しいバラができてしまうのですか?

「うん!(≧∇≦)」(大きな声で元気良く!中村さんスマイル~)


え、ほんとですか??c(゚.゚*)。。。??


「その“うん!”の中には企業秘密も入っとる!」


そ、そうですよね~^_^;

聞いたあたしがウブすぎた。すみません。


「でも今の形に行きついてから、夏場ベッド内(培地の部分)に酸欠が起こらなくなったな。

潅水するにも保水に柔軟性ができて、根腐れがなくなったよ。

それにロックウールに比べ、花首も大きいものができるようになったよ」

すばらしーーー!一石二鳥も三鳥も・・・。
独自の摸索と研究で、他産地には真似できないバラができてしまうのですね。

核心は企業秘密にしても、強くて美しいバラの秘密のひとつは培地にもあることが分かりました。

他には?

切り前(採花のタイミング)にも何か理由が隠されていますか?

「あるで~。
うちはドレスフラワーで特許を取ってるんよ」


ド、ドレスフラワー??(・_・?)


ドレスフラワーとは、出荷時にバラの花の部分をネットで包んで出荷するというアイディアと技術のことです。
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採花してからお花屋さんの店頭に置かれるまでの輸送中でも花は生長して開花を進めてしまいます。
その開花を抑えるためのものです。


このネットかけの発想が生まれた背景は?

「そうだね、ツボミで出してしまうとエンドユーザーのところで咲かないかもしれないという悩みがあるよね。小売店さんのところで開花調整などしてくれるのかもしれないけど、それも大変でしょ。

それに、ツボミで採花したものと咲かせてから採花したものでは日持ちが全然違うんよ。ツボミで出しても咲かないし、ベントネックになっちゃったりするんよね。

咲いたものの方が確実に長持ちするから開かせてから出したいんよね。
でも十分咲かせてそのまま出したら、エンドユーザーの手に渡ったときに、どんな姿になっているかわからないよね~。
そこで“咲かせて出荷”+“輸送中の開花を抑制”するための対策がこのドレスフラワーってわけ」


なるほど。
花は圃場で咲いたものが最も美しい。そして十分大人になって(開花して)強さを備えてから採花したものは、強さと美しさを両方兼ね備えているのです。

しかも長持ち!大人になって最も美しい状態で切ってそのまま飾ることが、最も長持ちするコツなのです。

ごく一般的にはこれくらいの開花で市場に出荷されます。
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ここを中村さんのところではこの状態プラス2-3日圃場で咲かせてから、このくらいの状態で出荷します。
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商業ベースに載せるとなると、切ってから飾るまでに必ず輸送が発生します。
その間のストレスをどのように解決するかということで生まれたのがドレスフラワーの発想なのです。

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まあ輪(りん)の大きいことなんの!


「ウェディングで利用してもらう場合、お花屋さんが結構苦労して咲かせているんだよね。そうすると中には咲かないものもあるし、お花屋さんは大変でしょ。切るときの年齢を少し上げて、それを畑で咲かせてあげるんよ。そして、できるだけ切った瞬間の状態に近い形で消費者に届ける。それが狙いなんよ」


なるほど~。これだけ開花していてもネットでカバーすれば花びらが反り返るほど開いてしまうことはないわけですね。
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↓↓↓↓↓

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↓↓↓↓↓


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若いのはかわいいけど大人のお話はできない。できるだけ大人に開花させて出荷したいけど、老化との矛盾がある。その問題をネットでカバーしようということですね!

このネット、リアル女性にも欲しいアイテムやわ~(≧∇≦)

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実は取材班も市場でこのネットを見たことあります。
国内品のみならず海外からの輸入品でも見ますね。
しかし中村さんのパテント案だったとは存じませんでした。

「そや、海外の人もみんなマネしてんねん。
ほんまはパテントやから勝手に使ったらあかんねんで」


恐れ入りました・・・。


「結構みんな無断で使っているんよ。
無断で使っていたら処罰の対象になるから、みんな気を付けて!」
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でもどうしてこのタイプのネットに辿り着いたのでしょう?

「まず一つは伸縮性のあるもの、これは大切だよね。作業上も商品保護上も考えてね。

女性のストッキングとか、果物を包んでいる保護材なんかでもやってみたんやけどね・・・虫も入るし、いろいろ試した結果、今のこれになったんよ。パッキングするときに緩みを持たせないと、花びらにネットの跡が付いちゃうでしょ。そう、緩みも大切」


中村さんは、このネットはお花屋さんではなく“エンドユーザーに渡った時点で取って欲しい”とおっしゃいます。

それは、このネットには花弁の保護と開花抑制の2つの意味があるからです。
このネットはエンドユーザーのためのものなので、エンドユーザーに届くまでは外さないでね♪と中村さん。


どのタイミングでネットをかけるのですか?
「採花の5日前から1秒前まで!」
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ふむ。このあたりのルールはだいたいで大丈夫のようです。

なんて教えていただきながら、圃場を見渡してみると、このようなものが・・・この数字入りのカートは何でしょうか。
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「サイズを測るメジャーの意味もあるけど、トゲで葉や花が傷まないようにこのウィール付きのこのカートに入れていくんよ。
それぞれの長さに合わせ置いていき、長さの異なるバラが上下に重なることはない。
そうすれば下に置かれた花への負荷が最小限にとどまり、傷もほとんど付かないねん。」


ふむふむ(゜-゜*)、なるほど。


「右手で花を切ったら流れ的には左手で抱えるやろ。それをやったら下に持った花や葉は傷つくやん。だからこれ(カート)を使うねん」


人の腕で抱えるってことは少なからずバラの重み以外の力がかかりますからね。
このような細やかな心遣いと創意工夫で、興里農場のバラは葉もきれい!


だからこそ、中村さんは自社のバラをQUEEN ROSEと名付けてブランド化しています。
DSC07656.jpg←看板最上部に「QUEEN ROSE」と書いてあります。

どうしてKINGではなくQUEENなのですか?


「花は男性ではなく女性やねん。なーんでKINGにせなあかんねん。」


あ、これまた愚問で失礼いたしましたッ!m(_ _)m

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「QUEENやしな、丁寧に作ることだけは心がけてるよ。傷つけたり汚したりしないように」

そうですね、ウェディングなどで使っていただくためにはキズものはいけません。

DSC07661.jpg冷蔵庫に保管するときも長さをきちんと整理して長いバラのトゲが短いバラの花びらを傷つけることのないよう細心の注意を図ります。


そらもう、トゲとトゲの間に花が挟まろうものなら、出荷前に八つ裂きですわ。


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この辺りの細やかな配慮や工夫はさすがです。











093a.jpgユニークダイバーシティ : イスラエルへ

何でもイスラエルに頻繁にお出かけになっていたとお伺いいたしましたが、何のために?

「そうそう、某大手企業が日本に農業資材を輸入しようというときに、イスラエルの窓口になったんよ」


花き業界の多くの人がオランダやドイツ、フランスに出かけて花業界の発展に向けて様々なことを吸収しようとしているときに、中村さんはイスラエルに目を向けていました。

それもバラの品種を見に行ったり、農業資材を見に行ったり・・・何回か見ているうちにイスラエルが面白くなってね。
1990年代ころは隔月でイスラエルに出かけていたよ。
気候もイスラエルは地中海性気候でも南端の方だから、西岸海洋性気候のオランダよりも暑さ対策では参考になることが多いんよ」


冬の寒さはどうにでも対策が打てます。しかし、日本の夏の暑さはバラの生産者さんにとっては毎年異常とでも言いたくなるくらいやっかいです。
ですから、倣うべきはオランダよりもむしろイスラエル、ヒントはイスラエルにあると中村さんは考えたのです。


「そうしているうちにイスラエルに色々知り合いができてね、ある日『エコノミスト』というイスラエルの新聞の一面に載ったことがあるんよ。」


な、なんと∑(゜◇゜;)


「そこからまた芋づる式に知り合いが増えてね」

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と思ったら、何と日本の雑誌にも掲載されているではありませんか!

経営と技術と商品の情報誌『農業経営者』(1998年11月号;㈱農業技術通信社発行)のグラビアを飾る中村さん。

かっこええなぁ~(*´ -`)pinkheart.jpg

これはもうグラビアアイドルならぬ「グラビアファーマー」ですね!


093a.jpgところで生産はどのように学ばれたのですか?

「僕ね、(技術などを)盗むの得意なんですわ。
師匠みたいな特定の人に教えてもらったことはないんやけど、(圃場に)3回くらい見に行ったらだいたいわかるな。
とりわけバラは誰の生産も参考にしてない」


え?ではどうやって?


「トマトの栽培が原点になっているし、90年代当時から南米やイスラエルを見て歩いているのでわかってしまったよ」


生産の基本がインプットされているから、1を見て10を知ることができるということでしょうか。センスがあるのでしょう。


「海外の産地の人がうちに来て、圃場を見ると“FANTASTIC!”や言うねん(嬉)♪」


中村さん、このグローバル社会の中、海外の一流産地が見学にいらして彼らに“FANTASTIC!”と言わせてしまうこと自体が“FANTASTIC!”ですよ。

「オランダの或るバラの種苗会社の社長に“お前んとこのバラ見たら、海外の産地はジェラシー覚えるでぇ”と言われたこともあんねん」

って、その社長さんはさすがに和歌山弁ではないとは思いますが、そんなことまで言われるほど生産を評価されるなんて、OTAのバラ担当者がすごいすごいと言うはずですわ。

093a.jpgおっと、このピンクのカーペットはなんでしょう?

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「オキザリス“ディープオマ”や」

中村さんはバラの育種、生産だけでなく、ほかの花苗の育種や育苗もやっていらっしゃいます。

こちらは中村さんが育種されたオリジナル品種のディープオマ。種苗登録されています。

「パテントはしっかり取らなあかん。“整理をする”ということやわ。無秩序は良い物を世に出させなくなってしまう。そしたら日本の花き産業はダメになってしまうやろ」


なるほど、中村さんの視点は単なる“良いもの生産”ではなく、日本の農業をさらに活性化するところにおいていらっしゃいます。
ミクロの目とマクロの目。中村さんは農業経営者として両方の目をお持ちです。
そのほか和歌山県の主力品目でもあるスターチスなどの育苗も行っています。

093a.jpg中村さんにとってバラとは何ですか?

「生きる糧やな。命やわ
LIFEでありEVERYTHING。
何物にも代えられん。
寒いも暑いも生活の全てバラがバラ生産に関する思考に繋がる」

093a.jpg10年後の夢は?

「日本でトップ産地の一つになりたいな」

もうなっていらっしゃるのでは?

「いやいや、バラでクイーンローズいうてもまだまだエンドユーザーはわからんやろ。雑誌にもあまり載らんしな。
上から◎傑みたいな名前を連ねる産地として、エンドユーザーに認知されるようになりたいわ」


093a.jpg興里農場の格言

・ 生産するときは常にエンドユーザーを意識すべし。
  また業務用のバラは仕事をされる方が使いたい状態まで圃場で咲かせて出荷すべし。
・ 品種選びの品種はひたすら「強いもの」。強さあっての美しさ。美しいだけのバラは流通に載せるべからず。
・ 独自性を生かすべし。人の後を追っているだけでは、その人と同じものしかできないということ。
・ ドレスフラワーはただの網かけローズではない!
  バラ人生の中で最も美しい状態を保つための老化防止効果の高い秘密兵器であった!
・ 花の取り扱いは丁寧に行うべし。皆がやっている当たり前のようなことに聞こえるかもしれませんが、そこに創意工夫を施すことによって、最後の品質はグンと違ってくるのです。

093a.jpg消費者の皆様へひとこと


どこの花より1日でも長く持つバラを作ります。
同じ品種で他産地と混ざったら、「これは興里の!」とわかるくらい顔がある産地。
それがREMARKABLE(リマーカブル;際立っている)であるということです・・・という産地であり続けるよう努力しますので、宜しくお願いします。


093a.jpg興里農場の「興里」とは「里を興す」の意味。

「設立当初は周りの人と一緒に花をやって産地として形成できるようにと思って始めたんだけどね。今はうちだけだよ。お金の問題ではなく、花が好きじゃないとできないでしょ。」

ここにもまたひとりFLOWER PEOPLEを見つけました。

093a.jpg【番外編】
こちらは中村さんのご自宅です。

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スッ、スゴイ!!!ヽ(*゚O゚)ノ
築60年、造りは歴史を感じさせますが、とてもきれいで良くメンテナンスされている感が漂います。
しかも、お庭(「庭園」ていうのかしら、こういうの??)には塵ひとつ落ちていない!
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あの煙突、ご覧ください。今ではかなり珍しいそうです。











【CM】 JAわかやまのジンジャーエール

中村さんが大田花きにご出荷される際は、輸送効率を考えJAわかやまを通じて出荷されます。
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そのJAわかやまから販売しているのがこちらのジンジャーエール。
ショウガの生産量が高知県に次いで全国第2位の和歌山が、その特産であるショウガを使って開発した商品がこちらです!→


お味は・・・?
(* ̄O)◇ゞ ゴクゴク・・・

う~ん♪
ginger.jpgとぉってもジンジャリー(≧∇≦)!!
こんなジンジャーエール、いただいたことがありません。
ジンジャーエールというより“ショウガまるごとドリンク”って感じです。
風邪をひきそうだったので、こちらを少し温めていただいたら、すっかり良くなってしまいました。

【松下幸之助】

世界的に有名なのは中村さんもそうかもしれませんが、こちらの松下幸之助さんもご存知ない方はいらっしゃらないでしょう。

DSC07677.jpg言わずと知れた現在のパナソニックの創設者であり、経営の神様との異名を持つ日本を代表する実業家です。

1894(明治27)年、和歌山市(旧海草郡和佐村)にお生まれになりました。
なんと中村さんはこの松下幸之助さん生誕の地から目と鼻の先にあるのです。

こういった偉人を育てる土壌がある和歌山県はさすがです。

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それではみなさま、本年もウン探をご愛読いただきまして、誠にありがとうございましたm(_ _)m
2010年の締めくくりは、来年に繋ぐべく「末広がりの8」、「vol.80」で縁起良く幕を閉じることになりました。
どうぞ2011年もウン探を宜しくお願い申し上げます。


illust1945.pngwe wish you a merry merry christmas & a happy new year!

see you in 2011!
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<写真・文責:ikuko naito@花研>

2010年12月 3日

vol.79 JA紀の里 那賀支所 ハボタン ~和歌山県産地シリーズ 前編~

11月24日、羽田空港はすっかりクリスマスぅ~!

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さすがHANEDA、クリスマスツリーもきれいです~。

クリスマスの次はお正月kadomatu.png
新年を迎えるのに欠かせないアイテムであるハボタン産地にウンチク探検隊初上陸!
お正月用のアイテムは今の仕込みが正念場。

やってきたのは和歌山け~ん!
和歌山県のJA紀の里です。

・・・っとその前に、皆さんのハボタン理解度チェック!
問題1 ジャジャン!
ハボタンとキャベツはどこが違うの?


【解答】
同じです・・・は言い過ぎですが、キャベツもアブラナ属アブラナ科でハボタンも同様ですから、仲間というか家族ですね。ファミリーです、ファミリー。

問題2 ジャジャン!
“ハボタン”て外国の人に説明しようと思ったんだけど、英語でなんていうの?

【解答】
英名ではornamental cabbageとかflowering cabbageといいます。
ま、直訳すると“観賞用キャベツ”とか“花キャベツ”とでもいいましょうか。
そう考えると、日本語で「キャベツ」という言葉をあえて使わずに「葉牡丹」としたのは、なかなかロマンティックでうまい命名ですね。


日本の花卉マーケットにおけるハボタンといえば、今や松千両に並ぶお正月のマストアイテム。昨今の需要の伸びで、小さいものも流通していますから、ちょっとしたアレンジに入れても、バラやカーネーションなどの主役を邪魔せず、和の雰囲気を醸し出す良いアイテムです。
大きいものも存在感がありつつ、松とも合わせやすいので、とっても重宝します( ^ー゜)b

そこで第3問 ジャジャン!
日本にはいつ伝わったのでしょう??日本古来の植物ではなさそうですが・・・?


【解答】
そもそもハボタンは江戸時代前期にオランダから日本に渡来し、栽培されていたようです。しかし、食用として広まることはなく、園芸が盛んだったこの時期に観賞用として改良が進み、ハボタンが生まれました。
また、ハボタンはもともとケールの品種のようですから、実際に渡来したのはキャベツではなくケールのようです・・・う~ん、食用として広まらなかったのもケールならなんとなくわかりますね。
ちなみに、キャベツは江戸時代後期の1850年代に日本に伝わったようですが、やはり食用としてはあまり広まらず、大正から昭和かけて食の西洋化と同時に広まっていったようです。

それでは次に第4問です。ジャジャン!
和歌山県のJA紀の里でハボタン栽培を始めたきっかけは何でしょう。


チチチチチチチチチチチチチ・・・・watch.jpg
「(ーヘー;)え~と、え~~~~~・・・

って、いやいや、ここからはウンチク探検隊のお仕事ですね。失礼いたしました。

というわけでJA紀の里のハボタン栽培にまつわるストーリーを取材してまいりました。

紀の里がハボタン栽培を始めたのは、フルーツ王国fruit09.jpgである紀の里(当時の那賀町農協)で農閑期を利用した花栽培に着手しようとしたのがきっかけでした。

農閑期を利用した花栽培ですから、あまりコストはかけられない。
とすると施設なしで収穫できるハボタンがいいのではないかと試作を始めた生産者がいらして、その単価が結構よかったheart1.png うほッv(≧∇≦)v


そこで、産地として組織力を生かして出荷していこうじゃないかということで、みんなで作るようになりました。その場所が今の紀の川市にあった旧「那賀(なが)」という地域です。四国にも那賀という所がありますが、こちらは和歌山の那賀です。

ここでハボタンの産地が確立され、紀の里の中心産地になっているので、箱には「那賀の葉ボタン」と書いてあります。そして、そのブランド名も「那賀の葉ボタン」なのです。

現在のハボタン生産の師匠はこちらの木村勝己さん(JA紀の里那賀支所 葉ボタン部会顧問)です。
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それまでハッサクやみかんなどの柑橘類を作っていましたが、産地を作るために“ハボタンを作って♪”と依頼され、“お小遣い欲しさに”(←正直ですね!)ハボタン栽培を始めたという木村さん。

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「最初はカミさんなんて見向きもしなくってよぉ、うら(私)一人でやっていたんだよ。でも今は地道な努力が実り、産地も確立されたしよかったよ」


生産品目にハボタンを導入するときは抵抗感もあったのでは?何せ果樹生産から花、しかもハボタンなんて、ちょっと接点が見当たりません。

「そやな、それはあったけど、先輩に教えてもらって、失敗を重ねて試行錯誤しながらやってきたんよ」

圃場を見渡すと・・・

おっとこれは、思ったより密植(苗と苗の間隔を空けずに植えること)されているのですね。
それには何か理由があるのですか?
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「そうそう、あるでぇ~。
密植したらギュウギュウな中で育つやろ。芯があまり大きくならずに、小さくてコンパクトなものができるんよ。」
と教えてくださったのは、JA紀の里那賀支所葉ボタン部会の部会長の杏西(あんにし)徳昭さん。

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なるほど、でもどうして小さいものを作っていらっしゃるのですか?
一般の人からすると、大きいものの方が単価が良いのではないかと思ってしまいますが・・・?
「お客様のリクエストやわ。アレンジとかに使うから小売店さんとしては小さい方がええんよ。
直径は10cmから14cmからをメインに作っとる。13cmがベストやな。」
8cmだったらミニとして出荷するんよ。」

ご覧の通り、今の段階で殆どは10-11cmに仕上がっています。
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「7月下旬から8月にかけて種を撒くんやけど、その時に6cm四方に一つの種を撒くんよ。そしたらちょうど大きくなったときに頭が大きすぎないええ子ができるわ。11月までにこの大きさになるんや」

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ぬぬッ!!(゚_。)? (゚_。)?
この風車は一体何でしょう!?
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ハボタンの栽培にも風向きが関係しているのでしょうか、それとも夏の暑い時に種撒きをするから、作業中に少しでも暑さが緩和できるよう設置するのか・・・むむむムムムxxx


「それは“モグラ撃退用”風車だよ」
とおっしゃったのは和歌山の高倉健こと、JA紀の里代表理事組合長の厚地諭(あつちさとる)さん。
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なんと!∑(゜◇゜;) モ、モグラ撃退装置ですか!?
でも、風車を回してどうしてモグラを退治できるのですか?「(゚ペ)??


「風に吹かれて回る風車の足元がカタタカタいうとるやろ。」
・・・・ほんまや。 カタカタカタカタッ
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「その音が地中に響いて、モグラが寄らなくなるんよ。」
なるほど!そういうことですね。
土壌内に劇薬を使わずにモグラバイバイ。すばらしい。mogurabyebye.jpg


「ところで、紀の里の皆さんはハボタンを食べたことありますか?」
・・・あるわけないか、あれへんよな~(独り言)


「あるでぇ~。キャベツが高騰したときにな。しかも生(なま)で。」


ええええぇぇぇ!∑( ̄Д ̄;)なぬぅっ!!あ、あるんですか???

え?誰?誰、誰?キョロ (((゜◇゜; )(;゜◇゜))) キョロ  
どなたですか~、今「ある」って言ったの??


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ハボタンを召し上がったご経験があるとおっしゃるのはJA紀の里の田村升さん。
ハボタン部会の事務局をご担当されています。

しかも“キャベツが高騰したとき”てそれ・・・そんなときに召し上がってしまうんですか?
キャベツの代わり???


「でもな~、苦いし、硬いわ!」


そうですよね~。ヾ(~∇~;) アラアラ
あの姿でおいしかったらとっくに食用です。
もしかしたら、おせち料理とかに入っていたかも??


ハボタンは観賞用です。
ですから、皆さんは絶対に食べないでください。


ハボタンは夏の暑い時に種を撒いて、虫が多い時に育ちますので、虫が大敵です。
ハボタンの芯は柔らかく、虫ちゃんの大好物。
しかし、芯を食べられた瞬間に、そのハボタンは商品にならなくなるわけです。
P1000200.jpgハボタンの栽培とはまさに生産者さんと虫ちゃんの一進一退の攻防線、種を撒いた瞬間から出荷まで激戦の日々なのです。

yudoto.jpg←虫対策の誘導灯です。


ざっと圃場を拝見したところ、虫喰いはなさそうですが・・・・あ、ありました!
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あえてお願いして見つけてもらいました。どうもすみません。


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そうそう、こうやって虫に食われてしまったら一気に商品価値を失ってしまうわけです。
そのために生産の段階で秘密の魔法をかけていますので、試しでもハボタンを召し上がることのないようお願いします。

食べたあなたまで魔法にかかっちゃうかも!?(*゚ー゚*)
ハボタンの試食はハボタンの生産者さんにお任せしましょう!・・・ってちょっと違うか。

104s.pngハボタン生産の大変なことは何ですか?


「そうやな~、雨が少ない時の水やりと葉かきやな」

水が切れると十分に丈が伸びず、出荷できなくなってしまいます。今年の夏は特に暑かったので、水を切らさないようたくさん水を遣って丈を伸ばしました。
そして、丈が充分に伸びて茎も目標の太さになったら下葉を取り除きます(葉かき)。

DSC03424.jpg出荷の際は上から15cmくらい(葉4-5段)で出荷します。


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この葉かきも一つ一つ手作業ですし、中の方に生えている葉ボタンは奥の方まで手を伸ばして葉をかく必要があるので、これまた大変な作業です。もしこの作業を怠り、葉が密集しすぎてしますと、今度は病気にかかりやすくなってしまうのです。
間伐と同じ考えでしょうか、本来の葉が太陽の日を浴びて元気に育っていくためには、密植しながらもある程度の風の通り道と太陽光を確保していあげないといけないのです。

104s.png反対にハボタン栽培の魅力は何ですか?

「そらぁ、きれいやろぉ~。これはもうきれいやわ。ものすごく美しいでなぁ」
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「こんだけ美しかったら、これを触りながら喧嘩する必要あれへんわ。イライラせーへんし、カミさんと仕事していても、怒る必要ないわ」
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なるほど、ハボタン栽培は夫婦円満heartdouble.jpgの秘訣なのですね!(゚▽゚)(。_。)(゚▽゚)(。_。)ウンウン


「ま、美しいのもあるし、忙しゅうて喧嘩しているヒマなんかあれへん」

あッ、あら、そういうことですか(;´▽`A``


104s.png紀の里のハボタンは需要に合わせて良く導入品種等が変わると伺いました。

「毎年出荷が終わると、全ての取引市場の担当者にアンケートをするんよ。
そうすると担当者が仲卸さんからもヒアリングしてくれて、自分の意見も含め良かったことと改善点などを忌憚なく書いてくれるんよ。全国のおよそ30社からの意見が集まるやろ。結構な反省材料やで、これ。」

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これらのアンケート結果に基づき、3月の反省会で次の出荷の方針を決めるのです。

A市場はもっと赤が欲しいという、B市場は節間がもう少し詰まっていて巻きが多いものが欲しいという・・・そこでもっと葉の詰まった赤い品種を入れてはどうかと2010年に導入したのが「初紅」。本年デビューです。
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「消費者がいらんもん作っても仕方ないやろ。だから消費者やマーケットの声を聞く」
なるほど、これぞ紀の里の鉄則ですね。

104s.png皆さんにとってハボタンとは??

「生活の一部やな~。辞めようったって、辞められへん」

「安定しとるしな、生活そのものやな」

「着火剤やな!」
ちゃッ、着火剤??w|;゚ロ゚|w??fire.jpg


「そうや、紀の里の生産物でハボタンほど右肩上がりのものはないで。ハボタンの時期になるとみんな一気に熱くなって、急に必死になるんよ。ハボタンは短期勝負やからね」
なるほど、短期集中型の商品なのですね。
しかも、紀の里の農産物の中でも販売成績の成長率ナンバーワンのハボタンは、生産者さんのモチベーションを高いところで維持しているのです。
紀の里のハボタン生産者さんは、裏作に留まらないハボタン栽培への意欲を燃やします。

今年の出荷は12月15日から25日の10日間に集中やで。この間に140万本を収穫、出荷するんよ。

そらもう、ハボタン以外のことは何も考えず、寝食も忘れ出荷に没頭するんよ」
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オォォーーー!! w(゚ロ゚;w(゚ロ゚)w;゚ロ゚)w オォォーーー!!
140万本てちょっと想像できませんが、1日何ケースくらい出荷されるんですか?

「そやな、1日3,000ケース以上を全国に出荷すんねん。そらもう夜もヘルメットにライトを付けて収穫したりもする。そやないと間に合えへん」
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この短期間集中の出荷の際、農協の方は1箱1箱全て検品します。

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「え~!?ホントに全て検品するんですか?全てやっているふりして、100箱に1箱だったりするんじゃないですかぁ?」(←疑いの目)

「いえ、全部やります」

あ、これはどうも大変失礼いたしましたm(_ _;)m
抜き打ちでいくつか行うのではなく、1日およそ3,000ケース全て検品するのです。


検品のポイントは?
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① 色のノリ、発色の良さ

今年はどうですか?

今年は秋がなかったでしょ。急に寒くなったし発色はいいねぇ。
白のハボタン(晴姿など)は最低気温13度が1か月続くとスイッチが入って色が載るんだよ。
初紅などの赤い品種は最低気温15度が2週間続くとスイッチがONになる。
今年は10月が寒かったからよかったよ。でも11月に気温が高い日が続くと“色戻り”をしてしまうこともあるんだよ。
今年は大丈夫。良く着色したハボタンはバラみたいだよ。
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ほんと、確かにこうしてみると、バラのようです。
日々ハボタンと向かい合っている人が「バラみたい」とおっしゃるということは、「葉牡丹」という名前ではなく「葉薔薇」の方がよかったのでは?と思いつつ・・・いやいや、やはり「葉薔薇」では情緒に欠けるし、「葉牡丹」がいいですね。


② 軸の太さ
太すぎても細すぎてもダメ。
直径が15mm程度がバランスがとれていて美しいのです。ミニなら10mm以下。


③ 虫食いの有無

もちろん虫食いは那賀のハボタンとして規格外!言語道断です!


④ 大きさが揃っているか


⑤ 巻きは十分か


これらをチェックします。

そのあとは出荷に向けた最終作業に入ります。


ハボタンにとって乾燥は虫と並んで大敵です!
出荷の際は箱詰めした後必ず水を打ち新聞紙を被せて保湿します。

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生産者の杏西さんはハボタンだけでなく桃も生産出荷しています。
「桃を出荷する癖で、ハボタンもつい丁寧に扱ってしまうな。桃はハボタンとは比較にならないほど傷つきやすいから、ハボタンはそこまでやらんくてもいいのかもしらんけど・・・」


いえいえ、杏西さん、ぜひぜひ丁寧にお願いします。美しいハボタンは出荷者の皆さんのお嬢様か奥様かといったところでしょうから。その丁寧さはきっとご利用になるお花屋さんや消費者の皆さんに伝わりますよ( ^―゜)b


JA紀の里の葉ボタンは、本年一切台風に遭わなかった縁起の良い商品です。

花言葉は「祝福」「利益」。
そして、紀の里のハボタンは露地栽培された健康で丈夫な優良品。丈夫ですからロング・ローング・ライフ(Long Life=長持ち、永生き)です。まさに縁起物で、新しい1年を迎えるにあたりふさわしいアイテムですね。


106d.pngJA紀の里 葉ボタン部会の格言

・  ハボタンの生産は虫と乾燥との戦い。夏の暑い時に播種、栽培する品目だからこそ、葉かきもまめに行い、よく面倒を見てあげるべし。

・  検品は全ケース入念にすべし。

・  短期集中決戦に備え、体力を温存すべし。

・  出荷後はマーケットの声を聞くべし。毎年反省に基づき出荷品種もマイナーチェンジ。出荷形態も改善に次ぐ改善。一歩一歩前進すべし!

・  ハボタンは美しい。これほど美しいものを作っていたら、夫婦喧嘩にはなりません!


106d.png消費者の皆様へひとこと

・ ハボタンはお正月のお飾りだけでなく、花保ちもするので仏花にも使っていただけます。お値段も手頃なので、一度お試しください。

・ 今年の発色はベストです。それは夏から今までの気候が良かったからです。まずは今年の那賀のハボタンを使ってみてください。

・ 3年後はハボタンで売上1億円を目指します。(おっと、宣言しましたよ!これは期待できます)


DSC07730.jpgそれからウン探の取材班がおじゃまするということで、なんと取材当日に駆けつけてくださいました紀ノ川市の理事兼農林商工部長の田中卓二さんから消費者の皆さまへひとこと。

「JA紀の里は周年果物を出荷するフルーツ王国です。ウメに始まり、モモ、キウイ、イチジク、ブドウ、ナシ、カキ、ミカン、ハッサク、リンゴなどなど、パイナップルとバナナ以外は何でもできると自負しています。ぜひ紀の里のフルーツをお試しください」
田中さんは現在農林水産省から紀の川市へご出向されています。

JA紀の里の方が全員集まってハイ、ポーズ!
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お・ま・け↓↓↓

104s.pngこちらはJA紀の里が作った日本最大級のファーマーズマーケットです。

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おっとこれは珍しい、普通は居酒屋さんなどの飲食店に付いている緑提灯。もちろん★5つ!
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平成12年12月3日にオープンした「めっけもん広場」は、本年ちょうど10年目を迎えます。(祝!)
JA紀の里の先々代組合長が取り組まれ実現したプロジェクトですが、初年度売り上げ目標5億だったところ、実際には14億と軽く3倍近くの実績を打ち出し、翌年には早くも20億円を達成してしまったのだとか。現在は設立当初から拡張を重ね、26-27億の売上で推移しているとのこと。

さすが和歌山、ミカンが所狭しと並べられています。
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こちらは花売り場。
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その売上の秘密は随所に見られます。一般的に言われる“ご高齢の農家の方はパソコンに弱い”という課題を簡単なバーコードやタッチパネルを導入し、生産者さんがご自身でシールを発行し商品に貼付、ラクラクカンタンなシステムを構築しました。
こうして人件費を削減していることも成功の秘訣の一つです。

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和歌山県内だけでなく近隣の県からもお客さまが多く、ライバルのスーパーマーケットの存在を心配してしまうほどの盛況ぶりです。

JA紀の里のめっけもん広場は、広く一般に農の素晴らしさを知っていただくためのお店なのです。
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104s.png貴志駅のたま駅長
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和歌山電鉄貴志駅の駅長さんをご存知でしょうか?
こちらが日本で最も有名は駅長さんのお1人(・・・うんにゃ~・・・一匹?)でいらっしゃるたま駅長でございます。
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業務は部下に任せて、駅長様はご休憩の様子でしたが、なんとも色気のあるお背中を撮影させていただきました。

あ、ちょっと起きた!
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あ~、また寝ちゃったよ・・・(-.-)
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たま駅長は元祖動物駅長さんで、もともとは駅の売店の飼い猫さんだったのに、駅長さんにまで昇進され、大きな躍進を遂げられました。

和歌山県に行ったときには、是非こちらの名物たま駅長にも会いに行ってみてくださいませ。illust1112_thumb.gif

↓貴志駅は駅舎全体もネコちゃんのデザイン。すごい懲りようです。
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和歌山電鉄HP 

ウン探をご愛読いただいている皆様、いつもありがとうございます(*^-^*)
次回は和歌山産地シリーズ後編です。どうぞおたのしみに!


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<写真・文責:ikuko naito@花研>

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