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2011年11月25日

vol.88 八丈島の切り葉・切り花 ~後編~

さてさて、前編に引き続き、八丈島特集後編です。

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ホントに88回になってしまいました^_^;アハハ

今回は葉物をご出荷頂いている3軒の方からお伝えしてまいります!


その1:川崎グリーン


その2:日の出花壇


その3:沖山農園

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まず1軒目。
川崎グリーン・川崎朋喜(かわさき・ともき)さん(58歳)。

知る人ぞ知る八丈島の名プレーヤーです。

都内でもトップフローリストさんたちが認めるスーパークオリティで葉物をご提供くださっています。その定評ぶりは同じ利休草の注文でも「川崎グリーンさんの利休草!」とご指名があるほど。


こちらは2011年11月某日の大田花きの利休草の注文画面。
赤字「川崎さんの利休草じゃないとダメ!というリクエストがあった印です。
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花物でもなく、脇役としての出番がほとんどでもある利休草に対し、頑固なまでにカワサキ利休を譲らない。
なぜカワサキ利休でないといけないのか。それは他産地と明らかな差別化ができているからです。

その特徴は・・・

① スッとホッソリ 繊細仕立て

② でありながら、ラインは先端までピンとまっすぐ

③ でも曲げたりねじったり、しなやかな動きを出せる

④ しかも小葉で葉が詰まっている

⑤ おまけに先の方まで葉が展開している

など、まるで新体操の選手を形容したような言葉が並びます。
ball.jpgclub.jpgribon.jpgrope.jpgピンッ!

その秘密に迫ってみましょう。

こちらが利休草の圃場です。

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利休草は殆どがフラワーネット(一定の高さで碁盤の目に張った網)を使って栽培されますが、
3624.jpg←フラワーネット参考写真(産地ウンチク探検隊vol.83香花園さんで撮影したものです)

川崎さんは上から糸で吊って、利休草の伸長を誘導しています。

新体操選手のような細くてしなやかなラインを作れる理由の一つはここにあるようです。

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「昔、スマイラックスを作っていてね。その応用で利休草も吊って作ることにしたんだよ」


ふむふむ___φ(゚ー゚*)メモメモ・・・その心は??


「“利休草は立つものだ”(手で持ったら支えがなくてもピンと立つということ)という概念があったんだよね。

だから一般的にはフラワーネットで作るんだけど、私はスマイラックスを作った経験からしなやかで柔らかい利休草を作りたいと思ったんだ。

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自立するかしないかは問題ではない。
まっすぐでありながら自由が利く細くて柔らかい利休草。デザイナーさんも垂らして使ったり、巻き付けたり、もちろんアレンジにも使える。その方が利休草の活躍の場が広がるでしょ。


フラワーネットでは立つかもしれないけど、繊細さはなかなか出ないし、逆に先端が曲がっちゃうんだよね。でも上から吊れば頭の先までピンとするからね」


利休草に対する新しい概念の提案です。

スマイラックスの栽培からヒントを得られたのですね。

「それからうちは密植栽培なんだ。半坪(90cm×90cm)に8本くらい植える。

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フラワーネットではここまで密植できない。小葉で繊細な利休草を作るためだよ。
8株のうち一度に同じタイミングで芽が上がってくるのは4株くらいね。その4本を切ったころに別の4株から芽が上がってくるから、交互に収穫するような形になる。フラワーネットに生産性は半分くらいに落ちるけどね。通常は1株から10本切れるとしたら、密植の方法では5-6本くらいかな」


それでも川崎さんは品質にこだわり、新しい利休草の開発に挑みます。
よく見るとなんだか川崎さんの利休草は少し違います。
ご覧の通り上の方の葉までしかり展開しているのです!

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見てください、↑この葉先!

普通は上から2-3段はまだ葉が開いていないものですが、カワサキ利休はこの時点ですでに上の方まで展開していますし、出荷の際は一番上まで展開します!

しかも、先端がないわけでなく、先端が持つしなやかさはそのまま残しています。

利休草でこの表現力を出せるのはさすがの技術です。


あ!電照発見!
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川崎さんも共選の隆さんと同様、夜業をされるのでしょうか。(+_+)ミナサン、大変ジャ・・・


電照栽培するんだよ」


え?利休草で電照栽培??σ(・・?)..ヘ(~・・)ゝホェホェ????


電照栽培というとキクを思い出してしまいますが、よもや川崎さんのところでは電照菊ならぬ、“電照利休草”を栽培されていらっしゃるのでしょうか。

「そうそう、電照利休草。電照があるからこそ11月から良いものを出荷できるんだ。」


(゚ロ゚;)エェッ!? どういうことなのでしょうか。

川崎さんのところでは9月下旬から電照を始めます。

日暮れから夕方から8時くらいまで、12月から1月の日が最も短い時で最大4時間ほど電照します。

つまり日長(にっちょう)を長くするということです。


う~ん、日長を長くするって??(゚ー゚*?)オヨ?

「いろいろと研究してきたんだけど、利休草は日が短くなると休眠体制に入るんだよね。だいたい8月の盆明けくらいからなんだけど。


休眠体制に入られちゃうと、生長点が止まって出荷できなくなっちゃう
んだ。

だから眠らせないように電照を使うというのが一つの理由」

生長点が止まった利休草はこのようなものを指します。

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あ、ほんと。「先」がない。これが生長点が止まった状態なんですね。

カワサキ基準でいったら、これはもう出荷しません。

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「もう一つの理由は、品質向上のためね。

夏場の暑い時には意図的に伸ばしっぱなしにして、1mくらいのひょろひょろにしておく。伸ばしっぱなしのボーボーにね。

そのために電照栽培をして生長が止まらないようにするんだ。

利休草の特性上、切らなければ次の芽は上がってこない。

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市場には30-40cmくらいで出荷されているものもたくさんあると思うけど、実は短いうちに切ってしまうと、株が太ってくれないんだ。

だけど、ボーボーに伸ばしているうちは株がだんだん肥えてくる!

秋のブライダルに向けて良い利休草を作り込みたいから、ボーボーのままにして我慢して我慢して、電照を使ってでも生長を止めないようにして、9月に一気に刈り込んで丸坊主にする。

株が肥えたところに出た芽は本当に良い物だよ。それを育てるためにまた電照を使うんだ」

なるほど、これまた面白いやり方ですね~。


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・ 利休草は短いうちに切ってしまうと株が肥えない

・ 今出ている芽を切らないうちは次の芽が出てこない

という特性を理解して、うまく活用した方法ですね。


ためる・・・切らずに我慢、我慢!!(`^´;) 」→
「(株が)肥える」→「(良い芽が)出る」→「繊細に、しかしピンとまっすぐに育てる」→
切る」というのがカワサキ流の独特な手法です。

川崎さんのお師匠さんに当たる人と一生懸命研究を重ねて、今の方法に辿り着いたといいます。


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「夏場には伸ばしっぱなしにして、強制的に株を休ませる。休んで株が充実したところに良いものが出てきて、秋の需要期に向けて吊り糸で育て上げる。

手間はかかるけど、利休草の場合はこの(切るタイミングや品質を大きく)“コントロールができる”ってのが面白いね~」

利休草はビャクブ科という一般的にはなかなか耳慣れない植物のグループに属しています。

このグループの仲間を見つけるのは花き市場でも難しい個性派の逸品です。

中国原産でビャクブは「百部」と書いたようですが、こちらもまた園芸最盛期であった江戸の享保年間に中国から日本に渡来しました。

それを他の植物を生産した経験と日々の研究から、個性派の中の個性派(“the unique of the uniques”とでもいうのでしょうか)を生み出し、独特のカワサキワールドを作り出してしまったといえるでしょう。


肉厚であること葉の節間が詰まっていることもカワサキ利休の特徴です。


「水を切ることがポイントなんだよ」
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え?水を切るんですか?こんなにツヤツヤしていて、しかも水も一見下がりやすそうなくらい柔らかな感じなのに?


「そうそう、水やりは完全に土が乾いてから。やり過ぎると葉と葉の間が伸びすぎちゃうんだ」


ほんと!
よく見ると地面には干からびた虫チャンが・・・チーン(+_+)!! 
そこまでカラカラにするなんて、ナンダカ意外。
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「そのためには土壌もやせていて水はけがいいことが重要なんだ。
そのほうが小葉で締まった良い物ができる。
ココは火山灰の堆積層だからちょうどいいんだよ」


園芸に取り組もうと思ったら、何かと肥沃な大地であることが条件かと思っていましたが、“やせている土地の方が好都合!”なんてこともあるのですね~。


これぞ“生産マニュアル・オブ・ザ カワサキ利休”と言わんばかりに栽培の秘密を教えてくださいました。
がっっ!みなさん、これはココだけの秘密ですよ~d(‐x・≡)ナイショ×ナイショ


あら?みなさん、よく見るとこれら利休草の違い、わかります?
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なんだか葉数が違っているような・・・3枚葉、4枚、5枚!
そう、1段から展開する葉の枚数が異なっているのです。
3枚葉も多い中、川崎さんのところにはは5枚葉のものまであるなんて!


続いてコチラは丸葉利休草。
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通常の利休草と全くテイストが違いますね。
この丸葉利休草がまた小葉できゅっと締まっていて、かわいいッ!(≧∇≦)
「丸葉小葉利休草」って感じですね!

たまたま見つけたものを固定して、出荷しています。5枚葉のものも固定して将来出荷できるように準備しています。

なんだか川崎さんの圃場は、次から次へと新しいものが生まれてくる面白ポケットのようです。
いえいえ、生み出しているんですね、川崎さんが( ^ー゜)b

利休草のほかにキキョウランやジャスティシアなどを主に3種類を栽培しています。

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以前はグリーンネックレスやスマイラックス、アイビーなどを作っていらっしゃいましたが、ご夫婦お二人でされているため、新しいものを始めようと思ったら栽培品目の整理も必要になってきます。


マーケットから「何か新しいものない?」という新商品に対するニーズがとりわけ高い葉物の特性に気付いていた川崎さんは、ひとつの品目に留まることなく、常に新しいものを求めて生産してきました。


「(“出荷のための生産”ではなく)“勉強のための生産”としていろいろなものを作ってみる」という意味もあるといいます。

利休草の栽培もフラワーネットを使わずに上から吊って栽培しているのもスマイラックスの栽培経験があったからこそ。


ロベ一筋、レザー一筋の共選の皆さまとは対照的な選択ですが、ご両者ともそれぞれの選択でマーケットから評価を得ています。


あ、チョット、チョット!!みなさん、これをご覧ください。
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利休草の花です。

ハ・ナッ!

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アタクシ、ウン探検88回目(しつこい?)にして初めて利休草の花にお目にかかりました。
(*^-^*)ラッキー!
よ~~~~くご覧ください。このような色形をしているのですね。


では香りは?クンクン( ̄●● ̄;)


うヴェぇ!くちゃい!

勢い余って表現してしまえば“くさや風フレグランス”です。


しかし、土壌に含まれる成分の匂いなどが影響している場合があるようなので、純粋に利休草の香りと早合点して濡れ衣を着せてはいけないようです!

良い香りかどうかかは別として、フルボディな濃厚な香りでございました^_^;(言い直し)

「ウン探さん、“ヒッピーとスクエア”って知ってるかな?」と川崎さん。


はてσ(゚・゚*)ンート・・・?
“トムとジェリー”ならかろうじてわかりますが。。。

「ヒッピーはあのヒッピーね。
放浪的で型に捉われない自由な感じのヒッピーと四角い堅物なものの象徴でスクエア。

アナログとデジタルにも置き換えられると思うんだけど、進み過ぎたデジタルの世界から自由な発想は生まれないという言を残した人がいるんだ。私もそう思うよ。
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ヒッピーかスクエアかといったら、私はヒッピーでね、いつも新しいものを生み出していきたいと思うし、面白いことにわくわくするんだ。

仕事は面白いと思うこと!これがいつでも基本なんだ。
今の仕事も面白いと思ってどんどん新しいことにチャレンジしているよ。

この“面白い”がなければこんなしんどい仕事やってられないよ(笑)」


→>>>>-(゚ロ゚)→ズキューーーン!!  真実を衝かれた瞬間でした。

川崎さんの花の生産の仕事だけでなく、私たちが関わる仕事全てにおいてそういえるでしょう。

もちろん“面白い”だけでは成り立たないかもしれませんが、少なくとも“創造的”な仕事に携わる人であれば、仕事をしていて“面白い”という感覚なしではやっていけません。

また、仕事は多かれ少なかれ創造的な要素を持っているものでしょうから、仕事をする人はすべからくヒッピー的視点を忘れず、どこかに“面白い”を見出さなければ発展しないのではないでしょうか。

なんだかカワサキ利休の作り方を通して、仕事の奥義を教えられましたm(_ _)m(脱帽)。

ふと、どうしてこのような川崎朋喜さんという方がここに誕生したのか不思議になり・・・アレコレ詮索してみちゃいました(*゚ー゚*)

※川崎さんのことをご存知の方はたくさんいらっしゃるかもしれませんが、この情報は他では決して知りえないウン探ならではの極秘情報です!
デカシタ゚。(*^▽^*)ゞ!!


川崎さんのお生まれは実は徳島県なのです。


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小学校4年生の時に園芸技術センターにお勤めだったお父上のお仕事の関係で八丈島に引っ越してきました。
同じ“島”つながりではありますが、言葉は通じず“まるで外国”だったと当時を振り返ります。

東京(本土)の高校に行ったときは、花をやろうとはつゆとも思っていませんでしたが、何をやろうか考えたときにお父上のお姿しか思い浮かばず、選んだ道は農業専門の大学。卒業後は造園会社へ。

造園会社の勤務であちこちの農家さんを訪問しているうちに、「あれ?作っている方が面白い?」という思から、自然に何かを作りたいと思うようになりました。

そこで鉢物の生産会社に転職し、次から次へと現れる面白い植物に興味を持ち10年勤務。

このときの10年の経験が川崎さんにとって仕事の原体験となっているといいます。


その後は八丈で5,000坪を借りてレザーファンからスタート!現在に至るというわけです。

「独立してからは、いーろんなものを作ってみて、面白いと思うものを出荷したら結果が良かった/ダメだったの繰り返しだよ。

面白いからこれからも色々やりたいよね」


花き業界の中での葉物の位置付けをどのように見ていますか。

以前よりマーケット全体が葉物に興味を持つようになってきたから面白いよね。

葉物は“単なる添え物”から、全体の中のエッセンスとしての存在が上がってきたでしょ。花屋さんが楽しみにしてくれるようになったし、使ってもらえるようになったから嬉しいよ。
私も面白がってあれこれ出荷するしね。自分の商品がどのように使われているのか見るのが一番楽しみだよ。ブライダルフェアとか本当は見に行きたいんだけどね」


仏教的な表現ですが、人の心はコロコロ変わるから「ココロ」というといいます。

そのココロの集まりである生活者のマインド(気持ち)が流行を作る。だから流行はコロコロと変わっていくのが当たり前。

とりわけ嗜好性の高い花き商品は、流行に影響され変化するスピードが速く、特に昨今の葉物に関しては要求の変化のスピードが加速しているように感じます。

フローリストさんたちの新規商材の開発要求レベルも高く、次から次へと「もっとない?何か新しい葉物ない?」などと言われる毎日。だからこそ川崎さんはひとつの葉物生産に留まることなく、マーケットに合わせ作るものを試行錯誤し、作り方を試行錯誤し、日々研究を重ねているのです。


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生まれ変わったら何をしてみたいですか?

「結局グリーンに戻るかな。違うやり方で同じものを作ってみるかもしれない。

一生勉強しながらも、試行錯誤が続くよね」

川崎さんにとってグリーンとはそれほどまでに奥の深いものであり、人の一生はやりたいことをやりきるには短すぎるということなのでしょうか。

「(グリーンに)戻る」とおっしゃっているところからも、葉物生産がご自身の天職であると認識されていることがよく分かります。

一生勉強、マーケットに支持されているにもかかわらず、まだ先を見ていらっしゃる。
これからも川崎グリーンさんは面白いですよ!これは注目に値します!!!

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その2 日の出花壇

こちらは日の出花壇の菊池義郎(きくち・よしろう)さん。

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熱帯植物をたくさん所有されていて、“日の出ミックス”という名前で変りダネの葉物をミックスで出荷されることでマーケットのファンから支持を集めています。

その日の出花壇は、ちょっとした山道をぐるぐると登って行ったところにあります。
“日の出花壇”といってもただの“花壇”じゃあないんです!
緑に囲まれた山道を登ってちょっとエキサイティング!
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そんなエキサイティングなドライブ中に、ふと目の前に現れた白い巨大な風車。

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八丈島は二つの火山で出きた島だけに、温泉地でもあります。風の強い日には硫黄の臭いがすることもあるのだとか・・・。

その特性を生かして、地熱発電を行っているのです。


この地熱発電を使って、義郎さんの圃場はまるで「熱帯植物園」!
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東南アジアの山に分け入っているみたいです!
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なにかあるかって、リストアップすればきりがないのですが、ご覧の通りドラセナにジャスティシア、キキョウラン、カラテア、シンゴニウムに斑入りシンゴニウム、ポリシャスに斑入りポリシャス、ポリポジウム、シペラス、モンステラ、セローム、・・・・あ、もういいですか?なんでも1,000種類くらいあるみたいなので、キリのいいところで切り上げましょう。

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セロームだって、キチント大きくなっちゃって。
葉の真中に載せてある白い物が長さ13センチのボールペンです。
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こちらは八丈名物アシタバです。
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クラマゴケ  紅葉しています・・・
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義郎さんはコレクター的な要素が強いのですね。


コチラはモンステラの花!
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なんだか熱帯で巨大化した水芭蕉の花のような形をしています。

あーーーーッ!なにか昔のハンドマイクのようなものを発見!
コレ、何でしょうか?
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「モンステラの実だよ」


きょえーーー!!w(゚o゚*)w

モンスの実ってこんな形をしているのですね!

モンステラの語源はラテン語の“モンストラム(monstrum)”(=驚異的な出来事、不可思議なこと、怪物)で、怪物の「モンスター」とその語源を同じくしています。

モンステラはまさに植物界のモンスター
なのです!

このモンスター、なんと実(み)を食べることができるのです!
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コチラがその可食部にあたります。
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う~ん、なんだか名前に似合わずとても甘くて良い香り。

お味は?( ̄~ ̄ )モグモグモグモグモグ

・・・

おいしい!

そうですねぇ、パイナップルの味に近いでしょうか。
パイナップル6割、バナナ3割、ドリアン1割弱が混ざったようなお味でございます。
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ドリアンが苦手な方もドリアン独特の強烈な臭いはないのでご心配なく。

そしてなんとこの甘い果実からは、お酒もできてしまうのです。

こちらがモンスのお酒。とても希少なものです。
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杏露酒のような濃厚でアマ~イテイストです。クセもなくおいしいですよ。
知らずに飲んだらモンスの果実酒であることはまずわからないでしょう。

このように葉は市場に集荷され、その実は食べたりお酒にしたり、その七変化ぶりはまさにモンスターです!

義郎さん、八丈島でこんなに熱帯植物を集めて、なんだかライフワークのようになっているように見えますが、何かきっかけはあったのでしょうか。


「小学校のころね、自然が好きな先生がいてよく山に連れて行かれたんだよ。
そこに食虫植物のモウセンゴケを見つけてね。それをいじり始めたのが最初なんだ」

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食虫植物が最初だったんですね!

八丈の山に入ったら面白い植物はたくさんありそうですが、義郎少年のアンテナがとりわけ食虫植物に反応した理由は何だったのでしょうか。


「学校で教えてもらう“食物連鎖”っていうのは植物が三角形の一番下にあって、その上に昆虫とか鳥とかがいるわけでしょ。

でも食虫植物を見たときは
“学校で教えているのと違うじゃないか!”∑(゜◇゜;)
っていう驚きがあったんだ。


“草が虫を食べるなんてどういうこと?食物連鎖の定理が間違っているじゃないか”って思って先生に聞いたら、

“あまり研究されていない分野だから、自分で研究しなさい(-.-)”って言われてね」


それから義郎少年は食虫植物にはまっていったというわけです。

食虫植物のためなら物々交換をしてでも新しいものを手に入れようとしたほど。


今は熱帯植物園を開くまでに。
こちらが義郎さんが管理する植物園。
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食虫植物はもちろんのこと、

パパイヤからカカオ、バナナなどたくさんの実を付けた樹々がありました。

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「八丈島は年間平均気温が18度で温暖でしょ。熱帯植物が枯れることもないんだ。

種苗会社がアメリカ大陸などから色々持ってくるからね。それを預かっては面白がっていろいろなものに取り組んできたんだ」


先ほど川崎さんに八丈は火山灰や固まった溶岩などでできているから・・・と教えていただいたのですが、アメリカ大陸や熱帯の植物がそのような土壌で育つのですか?(*'へ'*) ウーン

「八丈島でも南端に位置するこの中之郷地区というのは園芸発祥の地でね、ここだけは実は土があるんだよ!

なんと、園芸にはもってこいの恵まれた場所だったのですね。
植物少年が生まれるわけです。


川崎さん曰く、“義郎さんの前世はなにか山ん中の動物だったかも・・・”というほど自然を愛してやまない方。まさに、八丈島に生きるべくして生まれてきた八丈に宿る自然の神の申し子とでもいうのでしょうか。


八丈島のフラワーピーポー見つけました。

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その3 沖山農園

沖山農園の沖山常正(おきやま・つねまさ)さん。

ドラセナの育種家さんで、国内のドラセナの育種数は日本一と言われています。

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以前は漁業に従事され、“機関長”や“無線長”などなんだかすごい任務を引き受けていらしたようですが、35歳で花の生産に飛び込み、30年ほど前からドラセナの育種を始めました。


理由は“ドラセナの美しい姿に魅せられて”。ウフ≧(´▽`)≦
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世の中に排出したドラセナの数は15種類にも及びます。

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「昔はドラセナもアトム(赤)ばかりだったんだよね。
このアトムを名古屋の市場から仕入れて、遮光のためにネットをかけたり、青(緑)が出ますようにとか願をかけたりしていたんだ(笑)」

ネットをかけたり願をかけたりしていたら生まれたのがアトムの変異の“ドリーミィ”で、ピンク色の縁取りが入ったものです。

このドリーミィを皮切りに沖山さんが次々と新しい品種を開発していくことになります。

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「ドラセナはね変わったものがあったから植え替えてみると、育って行くうちに元の種類に戻ってしまったりするんだ。
そんなことを繰り返して、変わったものだけを残して徐々に株を増やしていくんだよ」

そうして生まれたのが、沖山品種のアトムホワイトやスーパーホワイト、スーパーメロディやミディタマコ、メロディタマコ、ホワイトタマコなど。


う~ん、それにしても品種名によく登場する「タマコ」ってなんですか?


「タマゴ」eggs.jpgでもなく、「タマコ」って??

「私の奥さん」heart55.jpg

え!あ!そうでしたか!奥様のお名前だったんですね!
これまた失礼いたしましたm(。_。;))m ペコペコ…


「苦労かけたからね」


そうでしたか~。


と言っているところに「ど~も~」!と背後からどなたかが。


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あ、はじめまして!失礼ですが・・・(゚ー゚;A


「沖山玉子です」

オキヤマ・タマコさん?

た、たまこさんって、よもやあのタマコさんのご登場??

そうです!コチラがニュータマコの玉子さん。
ホンモノです。
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本当に玉のように美しいその笑顔は、つややかなドラセナの姿を想起させるにふさわしい☆
(✿ฺ◕ฺ‿◕ฺ)ウンウン♥

沖山さんがドラセナを通して玉子さんに愛情と感謝の気持ちを注いでいるのが良く分かります。
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ドラセナの美しい姿に魅せられて育種をはじめ、付けた名前は奥様の名前。
いやぁ~、なんだかのろけられちゃったかんじですねぇ~ヾ(^◇^;)ゝ エヘヘ


いや~、それにしてもご覧ください。この沖山さんの施設!

この柱、丸太でできているのでしょうか?

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電柱を使っているんだ。だから電柱づくりっていうんだよ」

デッ、電柱??グルグルグルグル(◎_◎) ?

「およそ40年前のものでね、町の電柱を再利用しているんだよ。

他の角材は八丈富士の杉の丸太。

台風に備えて頭に当たらない程度に低く作る必要があったんだ。この電柱づくりはこれは天然記念物にもなっているんだよ。


今の鉄骨の施設であれば天井が高くても大丈夫なんだけどね」


ほほぉ!
これは大変珍しいものを見せていただきました。ありがとうございます。

そしてココ沖山農園さんからもドラセナの新品種のみならず、次々と新しいものが出荷されています。
一部の例ですが、シルバーに輝くミリオや斑入りのルスカスなど市場ではまだ定番化されていない商品がたくさん!

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八丈島の個選の生産者さんたちは、葉物の新商材開発という点で無限のポテンシャルを持った方たちなのです(。→‿◕。)☆!

これからも八丈の出荷品目から目を離せません!


訪れたその日は沖山さんのご自宅でちょうど月に1度の「切り葉・切り花勉強会」の日でした。ラッキー♪

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↑立ってお話しされているのが日の出花壇の義郎さん。司会進行役です。

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生産品目や販売チャネルこそそれぞれですが、花きの生産に携わる方や学校の園芸関係の先生たちが集まり、毎回ひとつテーマに沿って勉強します。先生役は普及所の方。
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この勉強会はよくありがちな「勉強会という名の飲み会」ではございません!
皆さん真剣に勉強されているのですよ!
質問も活発に出ていました。
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八丈島の個選の方たちは決して孤立することなく、このように情報交換していたのです。


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【八丈島 「チーム個選」の格言】


コロコロ変わる葉物のニーズに対応すべく、その品目の領域を超えて開発に挑むべし。

葉物の存在感は年々アップ↑ならば供給レベルも上げていかなくちゃ♪

トップフローリストのみなさん、八丈からデビューする葉物に注目ですよ~( ^―゜)b


【おまけ】

八丈島の地面をよく見るとなんだか土が黒いな~と思っていると、やはりそれは火山でできた土地だからだそうです。
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砂浜といっても浜に砂はなく、岩でゴツゴツしています。
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「ビーチの砂は別のところから持ってきているんだよ」と川崎さんが教えてくださいました。
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コチラをご覧ください。
黒い溶岩が渦巻いています。
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まさに“八丈富士が噴火して溶岩が流れ出し、海水に冷やされてそのまま固まりました”みたいな様相を呈しています。
この溶岩の堆積は4000年ほど前に噴火したものと言われています。


4000年も前に噴火したそのマグマの上にこうして立ってみると、八丈のこの土地でに流れた悠久の時や展開された歴史に思いを馳せてしまいます。DSC01671.jpg


何千年経っても変わらないものの上で、今回の葉物個選の生産者さんたちはコロコロと好みを変えるマーケットに対応して生産を変えていくという、全く真逆なことをしているように思います。

しかし、違うのはそのスピードだけで、大地はゆっくりと変わっているし、むしろ個選の生産者さんの信念や花の消費者に対する思いは変わらないのかもしれません。


この八丈富士、最近の火山では1605年に火山灰をまき散らし、住民のみなさまにご迷惑をおかけしたようですが、現在は休火山となっています。
いま暫し、そのまま深い眠りにつきたまへ~。
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八丈のありのままの自然を観察すると、やはり土がない。
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タニワタリなどの植物はこのように岩場に根を下ろし生活しています。着生植物だからこそできる技。

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というか、適者生存、このような植物しかここでは生きていけないのでしょう。

タニワタリは大きく放射状に広げた葉で空からの雨水を受けとめ、根に流し込みエネルギーの源としているのです。
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名付けて「木の下園芸」
木下さんの園芸ではなく、木の下の園芸。

露地でもなく施設でもなく、樹の下でいい塩梅の日照と風通しで、環境を整えて栄えていく植物のありようを、川崎さんはそう名付けました。

これが八丈島の園芸の原型なのだと。
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【八丈島名物ダイジェスト】
鮮魚

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島トウガラシ
刺身用のおしょうゆに入れて、風味を付けます。そのまま口に入れるヴェリーデンジャラス!!
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さといもDSC01472.jpg DSC01456.jpg

魚の塩辛(画像なくすみません。皆様のイメージにお任せします♪)

八丈太鼓

これがまたすごいんだ。
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丸い石でできた石垣
(=大黒玉石垣) 
これが積める技術を持っている人もだんだん減っているのだとか。
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あしたばとその関連商品asitaba.jpg DSC01469.jpg

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くさや
(なんといっても!)
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自然

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皆さんとても明るくて屈託なく、いい方ばかりです。

八丈に出張した朝、澄んだシーブリーズを体内に取り入れようと散歩をしていたら、黄色い帽子をかぶった小さな小学生が律儀に立ち止まり、
「おはようございます!!」bowing.png

と大きな声で挨拶してくれました。

“立ち止まって”ですよ。これは私も我が身を振り返り、見習わねばと反省した次第です。



八丈富士/八丈小島

(今は無人島ですが、以前は人が住んでいました。弊社にも小島出身の社員がいました)
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そして何より、八丈島の葉物をお忘れなく!
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このような素晴らしい自然に囲まれて育ったら、情操豊かでしっかりした人に育つんやろな~。


あ、いた・・・(-.-)   八丈出身の人@大田花き

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なんと大田花きではこの二人が堂々の八丈出身です。

しかもなんだかちょっと偉い席に座っている・・・さすが八丈が生んだ人材は違う。


【蛇足的ですが】

ん?八丈島の車のナンバーって何になるのでしょう??

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気になって見てみました。
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この通り「品川」でした・・・。そうですかぁ。都内でも湾岸地域は品川ですから、その管轄内ということでしょうか。


ちなみに衆議院の小選挙区は大田区や品川区と同じ東京都第3区になるのだそうで・・・なんだか大田市場のある大田区で日常を過ごす者としては親近感が湧きます~。


そんな八丈島特集でした。


・・・the end・・・

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<写真・文責:ikuko naito@花研illust2018_thumb.jpg

2011年11月14日

vol.88 八丈島の切り葉・切り花 ~前編~

皆さん!ウンチク探検隊もついに記念すべき第88回目!末広がりの88回です!

これまでウン探を一度も見逃したことがないというツウなあなたに聞いちゃいます(≧∇≦)
東京都下にある花の産地をいくつ言えますか?
このウン探も88回といえども東京都の産地をレポートしたのは1回か2回か・・・?
2つ以上言えたら、相当ス・ゴ・イ!


今回の取材先は東京都でも有数の花の産地!もちろんウン探も初上陸の地域です。
さてどこでしょう!?

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ヒント:羽田から南下することおよそ300km、伊豆諸島の一つで、夏は多くのダイバーや釣り人たちが訪れる南の島!

正解は・・・・・

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八丈島!・・・ってここまで引っ張っても、タイトルでもうバレバレですが^_^;
ウン探第88回は「8」つながりで、ここ八丈島からお届けしまーーーす!(*^^)vイェイ!

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さて、八丈をディープに知る前に、さらっと一般常識をおさらいしておきましょう。
真中がくびれたこの形は、よく「ひょうたん形」に例えられます。

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1960年代にNHKで放送された「ひょっこりひょうたん島」は、諸説ありますがこの八丈島がモデルだったとも言われています。
♪ひょっこりひょーたんじィーま~ぁって若い方々、分かります??


緯度にして九州の長崎、熊本周辺、更にずずーーーーっと西へ行けばヨーロッパより南の北アフリカ、昨今まで政情穏やかでなかったリビアの首都トリポリ辺り、アメリカ大陸ならロサンゼルスより更に南のサンディエゴに相当します。結構“南”よね~。

八丈富士三原山という2つの火山によってできた島は暖流の黒潮の影響を受け、年間平均気温は18度、冬場の平均気温も10度と比較的温暖、年間降水量は東京全体平均の倍以上に当たる約3,000mmにもなる海洋性気候。日本有数の雨地帯といっても過言ではないでしょう。

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森に入れば1年中濃い緑に恵まれ多くの野鳥が現れる。海に入れば亜熱帯の珍魚の宝庫。豊かな自然に恵まれた八丈島の面積約70平方キロメートル。東京都区で最も大きい大田区(約60平方キロメートル)と最も小さい台東区(約10平方キロメートル)を合わせたくらい。


人口約8,000人。ここでは“島内みな知り合い”って感じで、道路で誰かとすれ違うたびにご挨拶。
お名前も皆さん似たような苗字が多いので、ファーストネームで呼ぶのが八丈流。


そんな八丈島は、実は東京都下における花きの大産地なのです。
何を生産しているか。
もちろん高温多湿の環境ですから、熱帯系のものなら何でもお手の物なのですが、花き市場に出荷されているのはロベやレザーファンなどの葉物です。

いまや「“ロベの島”八丈」と言われるほどロベの生産は盛ん。
今回のウンチク探検隊では、なぜそれほどまでに有名な葉物の大産地が八丈島に生まれたのか、秘密を見てまいりましょう。


お邪魔したのは共選産地と個選産地。

いつにも増して記事が長くなる気配ぷんぷんなので、今回は前編/後編とに分けてお送りしたいと思います。スペシャルバージョンです!

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まず前編は共選であるJA東京島しょ(とうしょ)八丈島支店
早速ですが「島しょ」ってなんでしょ?

「島嶼」と書き、「嶼」「小島」を意味します。
つまり“東京島嶼”といったら東京の小さな島たち。そのうち八丈島にある農協の支店がJA東京島しょ八丈島支店いうわけです。

こちらは八丈支店のレザーファン組合のみなさま。レザー一筋!の専業で他の農産物は作っていらっしゃいません。
組合員の皆様併せて500坪以上で生産しています。
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お邪魔したのはレザー一筋21年の佐々木忠彦さんの圃場。2種類のレザーファンを生産しています。
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え?2種類?レザーって品種の違いがあるの?と思われた方はなかなか鋭いですね。
市場に出荷されるときはその別なく全て「レザーファン」として出荷されますが、実は八丈のレザーは厳密に言うと2品種あるのです。

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いや、しかしどちらがどちらなのか全然見分けがつきません!?(゚_。)?(。_゚)?アレレ?

分からなくてもいいのです(*^-^*)ダイジョブ!
見た目は殆ど同じの2品種は、日本に最初にやってきた在来種と“マイルド”という改良種です。しかもココ八丈島で育種されました。在来種の中から良い品種だけを選抜に選抜を重ねてマイルドが生まれたのです。

“良い品種”とは何かというと・・・
① 大きくてしっかりしているもの
② なにより胞子がつきにくいこと


レザーはシダ植物ですから、小学か中学の理科で習った通り、花を咲かせて実が成って・・・という方法ではなく、葉の裏に付く胞子を飛ばして子孫を増やすのです。
ですから、普通のシダの裏はこの通り胞子でぎっしり!
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WOW(@_@;)!!見る人が見たら気持ち悪いと思うことでしょう・・・。
もしくは逆に「素敵」と思うかも?
一般的にはこの胞子がない方が受け入れられやすいので、胞子がつきにくいものを改良してマイルドが生まれたというわけです。
ですから、在来種の中でも胞子が付いておらず、きれいなものは現在でも出荷されます。


“切るタイミング”はどのようにみるのですか?

「まず色を見て、緑が濃いこと。

その次に触ってみる、まだ湿っていて柔らかい場合はまだダメなんだ。そういうのは色が少し淡いでしょ。これではまだ若いから、切った後に水を吸い上げる力が弱いんだ。レザーはシダ類だから水が好きでしょ。水が上がらなかったら致命的だから、ここを見誤ったらいけないんだよ。

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(↑こちらは形は既に整っているが、周りの葉に比べて色がまだ淡い。これは収穫にはまだ早いということ)


そして、葉が固くて乾いていること。
それを手で切り取るんだ」


え?手??hand.jpg

手で切り取るんですか。疲れませんか?
「その方が作業が早くて効率がいいんだ。こうやってね!」

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なるほど。作業性の問題ですね。

「だから腰が痛くなっちゃうんだよ」

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これはなかなか大変じゃ(>д<。)
だから、皆様のお悩みは腰痛なのだとか。こうやって腰にサポーターを巻いていらっしゃる方も。

腰は「月」(にくづき=つまり「体」)に「要」(かなめ)と書きます。農家の皆様、くれぐれもお大事に☆


さて、良いレザーを見分けるポイントは?
「必ず表と裏からチェックすること。
表から見て左右対称なもの。そして今度は裏を見てさっき言ったとおり胞子が付いていないもの」

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生産管理で気を付けていらっしゃることはありますか?
「冬場は最低気温4-5度が限界なんだ。霜が降りると若い葉はダメになっちゃうからね。最近は温暖化で施設内に霜が降りるということも少なくなったけど、油断できないんだ。」

そう。レザーにとってベストの管理は温度23度、湿度80%
・・・って結構蒸し蒸し蒸していますね~(;´д`)フー

夜温は14-15度程度が理想的。この昼夜の温度差がないと葉が締まらないのです。
しかし、それ以下の温度になるとやはり気を付けなければなりません。

レザーにとって理想的なこの環境は、実は世界でもコーヒーベルト(コーヒー豆の産地が集中している一帯。赤道を挟んで南北回帰線25度の間)の環境とほぼ同じなのです。
【↓コーヒーベルト】
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実はレザーファンの輸入品もこのコーヒーベルトの国々から出荷されているのがほとんど。しかも赤道直下でも標高1,000メートル以上の所だったり、植物の栽培には大変恵まれた環境でレザーがじゃんじゃか生産されているわけです。

八丈島はもちろんコーヒーベルトには入っていません!そのようなハンディキャップの中、八丈のレザーも世界のトップレベルの品質を保っているのです。バラやカーネーション、トルコギキョウや球根類などなど(ありすぎて以下省略)の生産品質と並び、レザーにおいても日本のトップクラスは世界のトップクラスというわけですね。

こちら佐々木さんの奥様。大切な戦力です。
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奥様にとってレザーファンは何ですか?

「敵であり味方である」

スパッと答える奥様。さすが、反応がいい。
つまりどういうことでしょうか?

「仕事は決して楽ではないので“敵”とも言えるし、精神的に救ってくれるものでもあるので“味方”ともいえる」

「敵」というのはご苦労が多いということが容易に想像されますが、恐らくは味方が前提なのでは?“味方、ときどき敵”といったところでしょうか。

そうでなければ、このようなりっぱな↓鉄骨の施設でレザーを作りませんよね( ^―゜)b
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そう、八丈の皆様は鉄骨の施設でレザーを栽培されている方も少なくありません。


って、えーーーーぇえ!!(゚ロ゚屮)屮??!!
鉄骨はちょっとやり過ぎじゃありませんか?鉄骨の施設では作るのにもお金がかかるし、葉物生産で回収するにもなかなか時間がかかるのでは?


いえいえ、それが違うのです!
ここ八丈島は日本屈指の台風銀座に加えて、台風のないときでも強い潮風がビュンビュン吹き荒れる海洋性気候なのです○o。困ヽ(*゚Д゚*)ノ困。o○


だから通常の八丈の一般家屋は2階建てが少ない・・・。強風が吹くから。いや、“吹き荒れる”から。
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昔はよく木造家屋の屋根を吹き飛ばされたのだとかΣ(゚д゚;)!
そのくらい強風が吹き荒れるので、ヤワな施設では飛んで行ってしまうのです。

それに、強風が吹くたびに「大丈夫かな・・・大丈夫かな・・・」という心労やストレスを考えたら、やはりこれは丈夫な鉄骨の施設を作るということがいかに大切なことか、お分かりいただけると思います。はい☆-(^ー'*)


風も強いし雨もよく降る。
この鉄骨施設に守られて、気温と日照と湿度は理想的な形で確保できる。だから八丈の皆様の手によって丁寧に作られたレザーは肉厚で艶々☆
発色も違うし、良く持つのです。
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ところで皆さん、日本でレザー栽培発祥の地はココ八丈島であることをご存じでしたか?
(さっきチョット言ってしまいましたが・・・)

昭和40年、当時の横浜植木会社(現:横浜植木株式会社様)から30株ほど購入したのがきっかけ。
昭和50年、次世代を担うスーパースターとして八丈島で本格的に増殖し始め、30株から始まったレザーは300株、3,000株、30,000株と爆発的に増えていき、量販体制に。気付けば洋花ブーケの葉物といえばレザーファンは欠かせないというほど一世風靡した品目です。


昭和50年代、レザーファンの時代が到来!
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でもどうして、これまた「レザー」と呼ばれるようになったのでしょうか?
英名をレザーリーフ・ファーン(Leatherleaf Fern)といいます。直訳すると「革質の葉を持つシダ」。
想像ですがツヤツヤとした葉の表面が革素材のように見えたのでしょう。そのような高級素材にも例えられたレザーですから、日本でも大ブームを起こすのは至極当然のことにも思えます。ブームを起こすには確固たる生産体制がなくてはなりません。その生産を支えたのが、この八丈島の皆さんなのです。

これからも国産のレザー供給を力強く支えてくれることでしょう。

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さて、こちらは独特な雰囲気をお持ちのお父さん。
こんにちは(✿◕ ‿◕ฺ)ノ))。₀: *゚✲コンニチハ✲゚ฺ*:₀!!

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なんと知る人ぞ知る八丈島の生き字引きこと喜田孝(きだ・たかし)さん、66歳です。
八丈島農協のロベ生産組合の第2代組合長さんです。ロベの話を伺う前に、八丈島のオリジナル言語について教えていただきました。

なんでも八丈島の方言は日本に数ある離島の中でも最も古い方言なのだとか。そのような貴重な言葉にもかかわらず、全国でも4番目に話す人が少ない方言でもあるのだとか。年々話者が消えゆく幻の方言。せっかくですから喜田さんとちょっとお話してみましょう。

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喜田さん、こんにちは!
(喜田さん)「ロベ∀йィ゚+o。△★*@Θ±。。。」

え? ☆!☆?☆ (☆_◎) ☆!☆?☆チンプンカンプン(衝撃的!!)
なんておっしゃいました?全然わかりませんでした。
今、八丈の言葉で何かおっしゃったのですか?それとも日本の共通言語だったのでしょうか・・・それすらワカラナイ!


すみません、昔から英語も聞き取りが苦手だったもので、もう少しゆっくりお話していただいてもよろしいでしょうか?

「ロ・ベ・オ・ヤ・マ・ナ・ベ・ト・カ・ラ」


はあ・・・。
八丈島の言葉のようです。
それにしてもこの音の羅列は一体何を意味しているのでしょう。(゚_。)?(。_゚)?


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「“ロベヲ、ヤマナベトカラ”って言ったんだよ」


あぁ!なるほど、“ロベヲ、ヤマナベトカラ!”とおっしゃったのですね。そして普通の言葉もお話になるんですね・・・

それでなんとおっしゃったのですか?(←全然理解が進まない)

「“私はロベを山に植えました”って言ったんだ」

なるほど、やっと伝わりました。ありがとうございます。
八丈の方言をお話しされる方は今となっては大変貴重ですね。


で、その貴重な人物喜田さんも“ロベヲ”作っていらっしゃいます。

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「昔はね、牛を飼っていてホルスタインのおっぱい絞りをしていたんだよ」

へ~!ホルスタインのおっぱい絞りからロベ生産に職業変更ですか。かなりの転身だと思いますが、何かきっかけはなったのですか?


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「昔はココ八丈では畜産も有名だったんだよ。昔は八丈の牛乳は世界一と言われたものだったんだ。
でも飼料の価格高騰などで徐々に畜産は儲からなくなっていたんだ。だから私も畜産をやめて昭和35年にロベ生産に移ったんだよ。そのころはロベが成長株だったからね」


あ、ホントだ。
ふと振り返れば、農協の集荷場と同じ敷地内に牛乳の加工場がある・・・。

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こちらが今でも有名な八丈牛乳。

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早速いただいてみると・・・(* ̄O)◇ゞ ゴクゴク

わッ!“本当の牛乳”の味がする!

いつもスーパーで買う牛乳と明らかに違います。
本当はこのような味をしているということを教えてくれる“本物牛乳”という感じです。しかも低温殺菌(今回もお得意の四文字熟語か?いや、花とは関係ないからやめとこ)。
おいしいですよ。牛乳好きにはたまらない。


八丈名物、生き字引の喜田大先生にいろいろ教えていただいたところで、現役組合長にバトンタッチ!

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こちらは八丈農協で250軒にも上るロベの大生産組合のリーダーを務めるのが第4代組合長の浅沼實(あさぬま・みのる)さん57歳。


實さん(八丈は同じ名字の方が多いので、現地の習慣に倣って下のお名前にて!)も25年前に民宿経営からロベ生産に華麗なる転身をした転身組です。

ちょうど集荷所で集荷作業をされていました。

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ロベを階級分けして箱に詰めているようですが、ロベの良し悪しはどこでみるのでしょうか?

“良いロベ”の見分け方を教えていただけますか?

「本当に良いものは“葉切り”がされていないものだよ」
↓葉切りされているもの。葉先がバツン!と切ってある。
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ではどうして葉切りして出荷するものがあるのですか?

「風に吹かれて周りの葉と当たったりすると葉の先が傷むでしょ。だからそこを切り取って出荷するんだよ。
切らないとその傷がだんだんにじんで広がってきてしまうからね。

だから葉先が切れていなくて先端まできれいに伸びているものが“秀品”、葉切りされているものが“優品”なんだよ」
(※品質の階級は上から秀品、優品の順です)

それにしても、見てくださいと言わんばかりの素晴らしい艶です。
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ロベはヤシ科ですから、主な出荷期は春夏かと思いますが、冬場は何をされているのですか?皆様ロベ専業と伺ったのですが?

「枝うちとか圃場のメンテナンスだよ」

毎日?

「そう、毎日。
きちんと冬場にメンテナンスをしないと、葉が伸びたい放題では下の方の葉は日照不足にもなるし、高温多湿になって虫害や病気も出やすくなる。夏場に良いものを出荷するには冬場のメンテをいかにきちんとするかにかかっているんだよ」


ふと見れば實さんのお足下はなんと“地下足袋”!
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いつもこのスタイルですか?

「そうだよ。集荷場と圃場ではいつもコレ。滑らないし踏ん張りがきくんだ」

それではお待たせしました!ロベの圃場にお邪魔してみましょう。
みなさん、ロベがどのように作られているか想像できますか?
こんな感じかしら?
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それともこんな風に植えられているのかしら?
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はたまたこんな感じの高いヤシにロープ一本で登って切ってきたりするのかな~、(だから實さんは地下足袋を履いていたんだ)なんて想像されているみなさん♪
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真実をお伝えします(*`д´*) ←真剣な面持ち
コチラがその圃場です。
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えええーーーーーぇ!なんだか想像と全然違うぅ!


お邪魔したのは共選でロベ組合を構成する250人のうちのおひとり、村上真理子さんです。

この真理子さんがまた只者ではありません。

何を隠そう2010年2月の関東東海花の展覧会にてロベで「農林水産大臣賞」を受賞したスゴ腕なのです。

「色ツヤがいいからって評されたかな。良く覚えていないわ。ハハハッ(笑)」
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さすが、この明るさですよ。ロベにツヤをもたらせているのは!


いやいや、それもあるでしょうけどウン探の名にかけて、農水大臣賞受賞の秘訣を「真理子さんの明るさ」で片づけてはなりません!(自戒!)


圃場を拝見いたしましょう。

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直射日光がビシバシ当たると、さすがのロベも葉が焼けてしまうので、遮光のためにネット施設で育てています。

「このネットは風除けの意味もあるのよ。強い風に当たると葉先が茶色くなっちゃうから。」

真理子さん、ロベ生産で何か独自に心がけていらっしゃることはありますか?

「そ~ね~、肥料は年に2回でしょ、あとは除草をしっかりすることかな。ロベにとっては台風と並んでムシが大敵なので、除草を徹底するというのは防虫対策でもあるのよ」

なるほど~。

ロベ畑って下から覗くとこのようになっているのですね~。

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これはまたきれいに並んでいらっしゃること!∑(o'д'o)!!


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「そうそう、それからロベの木を植える時に結構間隔を取るのよね。90-95cmくらい。
人によっては75cm以下の人もいいるくらいなんだけど、ウチは間隔が広い方かな。そうすると風が吹いて葉が揺れ動いても、葉同士が擦れ合わないし葉先が割れなくなるのよね」


あらまあホント。葉先がきれい!これなら葉切りする必要ありませんね。
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水やりは?
「ここ八丈では水やりの必要ないのよ。1年を通して十分雨も降るし、湿度もあるしね」

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どこから切っていくのですか?
「幹の下に生えている方から順に切っていくのよ。樹の天辺に生えている5枚位を残してね。8月には全て収穫してしまうの」

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この施設内のロベの樹はだいたい1.4mくらいでしょうか。ここまで大きくなるのにどのくらいかかるのでしょう?

「10-12年。実生(種から育てること)から苗にするまでに4-5年かかるのよ。苗になったら定植して、この高さになるまで更に5-7年ね。どんなに早くても定植から5年目でやっと製品を採れるようになるの。

DSC04448.jpg同じタイミングで植えても、苗ごとに生長の差があるから、結構高さはボコボコしているでしょ(笑)。高くなりすぎた樹は葉を採った後に幹から切ったりするのよ。そうでないと、低い樹たちの日照権を阻害しちゃうから」


1株から何枚くらい採れるものなのでしょう。
「1回で7-8枚。
切らずに置いておくと葉先が黒ずんできたり割れたりしちゃうので、きれいなうちにね。施設内を回って採花のタイミングをよく見てね。どこを残しておいて、どこを今日切るかの判断が駆け引きだったりするのよね。いまだに日々勉強中よ(笑)」


あれれ??(゚~゚o)???
ロベの葉元をよく見てみると、葉になりかけの子供みたいのがいます・・・これは?

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「葉じゃなくて、トゲだよ」

トッ、トゲッ!?∑( ̄[] ̄;)!

ぬぁ、ぬぁんと!こんなに大きくて鋭いトゲが付いているのですか?ロ、ロベに??

あ、ホント触ると固くて・・・これ刺さったらイタイでぇ~=(´□`)⇒グサッ!!
ん?つまり、このトゲを処理して出荷してくださっているということですか?

「そーよー!」

だから真理子さんの手もこの通り・・・アタタタッ!

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指を指しているところはとげが刺さって皮膚が変色してしまったところなのだとか。

「トゲはね、1度水に浸けるとふやけて取りやすくなるの。
数時間置いたものをこうやってカマで取る。1本1本両サイドね」

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エ━━━(゚ロ゚;)━━ッ!!(驚)

ロベの出荷前に1本1本トゲをカマで取っていてくれていたとは、知りませんでしたm(_ _)mモウシワケゴザイマセン!

市場では大きい箱にたくさんロベが入ってくるものですから、てっきり簡単なものかと思ってしまいましたが、真理子さんの白魚のようだったはずの手をこのように傷つけてまでも、このような鋭いトゲを1本1本取ってからご出荷頂いていたとは・・・脱帽!

【トゲ取りシーン】
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きれいにトゲが取れました。


出荷までは本当に手間のかかるものなのですね。

でも真理子さん、どうしてロベを生産品目として選んだのですか?
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「私にはロベしかないのよ~。ロベなら難しい技術も要求されないし、連作障害もない。

自分のペースでできるでしょ。ご年配の方でもなんとかできるということは、自分が年をとってからも続けられるってことだしね。

八丈にロベがなかったら生活していけなかったという人も多いのよ、ウン探さん」


連作障害もなく年を取ってからも続けられるというサステイナブルなところがいいですね。

「そうそう、同じ八丈名物でもアシタバは3年で畑を替えなくちゃいけないの」

DSC01539.jpg ← 八丈名物「アシタバ」


農業を続ける人にとって、同じ土地でずっと同じものを作っていけるというのは大きなメリットですね。
ロベがあっての八丈島。ロベが八丈の経済を大きく支えていることがよく分かります。


こうしてトゲまできれいに処理されて、集荷場に集められ、出荷の準備ができた商品は八丈島の港に集められます。
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こちらがその港、底土港(そこどこう)といいます。
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底土港(そこどこう)ってそこドコ?(ア。スミマセン!)

いやいや、冗談抜きにしてそこはどこかというと、八丈島の形をひょうたん形に例えると、このくびれのところにあります。

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八丈島のメインの港です。

底土港から出船して東京は竹芝桟橋に到着します。所要時間はおよそ10時間。飛行機であれば1時間足らずの距離なのですが、航空貨物事業が撤退してしまったので、切り葉のような大きな箱のものは船で送るしか手段がなくなってしまったのです。

東京都下でありながら大消費地が遠い。離島である分、生産資材や肥料のコストも本土より高い。加えて、船は欠航率が飛行機よりも高い。これが八丈で花きを生産出荷する人の悩みです。


それにもめげず、平坦地が少なく意外と山がちな八丈で、急斜面を開墾して“段々ロベ畑”にしてでもロベの量販体制に臨みます。
そりゃもうこんな感じ↓
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車を走らせれば、流れる景色はロベ林。
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↓谷間にも(写真上部の緑がロベ)
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♪あれに見ーえるはロベではないか・・・ってホントに木々の向こうに見えるアレもロベです。
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ちょっとスペースがあればすかさずロベを植える。どんなに狭い場所であっても、まさに生き字引きこと喜田さんのおっしゃる「ロベヲナベトカラ」状態。

八丈の方々をここまでロベ生産に駆り立てるものって・・・


それは後ほどレポートいたします( ^―゜)b

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その前に季節外れですが、せっかくなので共選の「サンダーソニア」の生産現場をちょっとだけお見せしちゃいます。(ウン探を見てくださっている方だけに特別♪)


こちらは奥山隆(おくやま・たかし)さんです。
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サンダーソニアを共選で出荷してくださっています。今は時節柄花もなく、球根の育成が主な仕事です。


「サンダーの球根はね、こうやってV字型になっているんだよ」

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へ~、V字型の球根ですか。珍しい形をしていますね。
ほら、こんな感じ。なんだかカワイ♪

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「養成するときはまずこのV字の先を見るんだ。

これは先が黒くなっているでしょ。
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これは組織が死んでいるんだ。こうなっちゃうともうダメ。
これは切って、処分する。


もう一つを見てごらん。こっちは白くてぷっくりしている。
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これは生きている証拠。
一つの球根の中でも、生きている方だけを切り取って養成するんだ」

この白い粉は何ですか?体操選手の手ように白粉にまぎれていますが・・・?
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「殺菌剤だよ。割ったら傷口ができるでしょ。そこからバイ菌(ウィルス)などが入ったら大変だ。
ダメになっちゃったら、今の努力が水の泡でしょ。
もっのすごく繊細なんだ、サンダーの球根ってのは」


アレレ?どうしてその作業場にスケールがあるのでしょう???ヾ(゚ー゚ヾ)^?。。。ン?
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「もちろん重さを測るためだよ。3-4グラムの球根と5グラム以上の球根とに分けているんだ」


な、なんと!∑o(*'o'*)o ウオオォォォォ!!
どうしてですか?4グラムと5グラムの境ってそんなに大きいものなのですか?

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「芽が出てきた植物体の大きさとかエネルギーっていうのは、球根のサイズに大きく影響されるからね。

3-4グラムの球根は7-8輪の花が付いたMサイズの商品になるんだよ。5g以上の球根なら9輪以上、出荷時の長は80cm以上という大変立派なLサイズ商品。

採花してからMとLに仕分けするのではなく、最初から分けて商品のバラツキを最小限にするんだ」

なるほどぉ~。
そこまで緻密に良いものを作ろうとしている。

「こうして丁寧に処理していったものを、植え付けまでの間冷蔵庫に保管しておくんだ。

3-5℃で3か月間ね。
一度冷蔵庫に入れた球根を3月上旬まで時期をずらしながら定植するんだ。あえて開花時期をずらして、継続して採花できるようにね。

これを“休眠打破”っていうんだよ」

“休眠打破?”

眠眠打破ならよく知っていますが・・・ア、スミマセン、休眠打破ってなんですか?

「サンダーのような球根植物のうち、多くは季咲きは5月でしょ。
(※季咲き=人工的な処理を加えずに、季節がくると自然に開花すること。本来の旬)

球根の場合は冬の寒さに当たると、“寒いから寝る~”とお休みなるわけ。球根はむしろ“寒さ”に当てないといけないんだけど。

そのあと春が来て気温が上がると“わ~い!温かい~(≧∇≦)”と目を覚まして芽が動き始める。
そうすると開花のタイミングがちょうど5月なんだ。
この冬と春を人工的に作るのが休眠打破っていうんだよ」


球根を冷蔵庫に入れて寒さを当てて、冬だと思わせる。(本当の季節な夏なのですが、冷蔵庫に入れて冬を体感させちゃう!)


そして、冷蔵庫から出して圃場に定植、隆さんのところは施設栽培なので温度コントロールをして、本当の季節は冬なのですが今度は春だと思わせる。

畝によってタイミングをずらしながら球根を定植していくことによって、季咲きを待たずに冬でも継続的にサンダーソニアを採花することができるのです。
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少しだけ芽を出したサンダーたち。良く見ると既にサンダーの葉の特徴を示しています。
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残念ながら今はまだ花はありません。
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今日のところはフリー素材で入手したサンダーソニアの写真で堪忍してください。スミマセン!
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下を見ても花はないので、ふと上を見ると・・・


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あ、電照がある・・・!
もしかしてサンダーソニアって電照栽培なんですか?


「電照栽培じゃないよ。夜業用だよ」


や、夜業・・・!!w(゚o゚*)w!!

夜遅くまでそんなにお仕事されるのですか、隆さん?

「一つ一つ球根を手で植えていくからね。1ベッドで4,000球植えるんだ。
日が短くなると明るいうちに作業が終わらないから、この夜業用ライトは必須なんだよ」


どうもすみませんでした。

隆さん、くれぐれもご無理をなさらないようお体を大切にしてください。


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さてさて、ここまで色々皆様に教えていただいたのですが、う~ん、わからないな~。

八丈島の皆様をここまでロベ生産に駆り立て、ロベの島八丈が誕生した理由・・・


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こちらは八丈島農協の持丸元一(もちまる・もといち)さん。57歳。

「八丈といえば葉物。昔から八丈は葉物で有名なんですよ」

はあ・・・。でもどうして葉物で有名な八丈が誕生したのでしょうか。


「八丈の気候とか諸条件に合っているんですよね。
例えば花物をやろうと思ったら、苗代や球根代はのコストがかかるし、市場までの運賃は東京都下でありながら本土とはレースにならないほど高いんですよ。
運搬コストが全般に高いから内地に送る商品だけではなく、八丈に送る商品も高い。だから八丈島の物価は少し高いと言われるんです」


加えて風が強い八丈からの船便は航空便よりはるかに欠航率が高い。

「これがまた結構欠航するんですよね」(あ~、ダジャレ得意なんですか?)


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↑嵐の底土港。これでは船が出るはずもなく・・・。

「多い時では週3回出荷のうち2回も欠航するんです。
しかも、出荷したい時に限って。春先は春一番も吹きますから、3週間出ないということも決して珍しくないんですよ」


となると、せっかく採花したのに市場に送れず全部廃棄なんてこともよくあるわけです(+_+)ショック!


通常通り船便に載せられたとしても、海の上で揺られているだけで10時間。東京都下なのに長いぃ~!
そのようなリスクをトータルで考えたときに、なかなか「葉物」という選択の代案を考えるのは難しくなってくる。
そのような制約条件の多い中、せめて生産と販売は安定してできるものということでロベやレザーになったわけです。


では、八丈島とロベ・レザーとの出会いは何だったのでしょうか。
必ずその出会いがあったはずですよね?

なんと八丈島における園芸の発祥は享保年間にも遡るのだそう。
享保といったら江戸時代8代将軍吉宗の享保の改革の享保年間??


そうなんです。江戸時代、日本の花卉園芸文化は飛躍的に繁栄したと言われますが、離島であるここ八丈でさえもこの時代に園芸文化の発祥を見ることができるのです。


そのころ本土からもたらされたのはソテツ、ボタン、シャクヤク、キク、バラ、アサガオ、ツツジなど。これらに加えて八丈に自生していたのはソテツ、タニワタリ、フウラン、セッコク、エビネラン、ギボウシ、マンリョウなどがあり、人々は多種にわたる観葉植物に見飽きることはなかったと言われています。


しかし、この観葉のための植物から八丈の経済を支える園芸植物へと成長するのは大正時代になってからでした。

はい、ここがポイント!( ^ー゜)b  八丈島とロベとの出会い。

大正10(1921)年、当時の「横浜植木会社」(現:横浜植木株式会社)という園芸会社が八丈島の亜熱帯的な気候に目を付け、東南アジアからロベ2株を持ってきて植え付けたのが、まさに出会いとなります。←八丈に目を付けロベを植えたこの方、この企業がやはりセンスありますね~。


このロベの2株が雌木と雄木の対になっていたために、これが親木となって種子が採取され、ロベはどんどん殖えていきました。
このように八丈にもたらされた園芸品目は数知れず。八丈の気候条件と相まって、後の八丈を園芸王国にのしあげたのです。


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「八丈にもたらされた最初のロベの親木がまだあるんですよ」と元一さん.


えッ∑(゜◇゜;) ギョギョッ!

化石でも標本でもなく、ホンモノの親木があるのですか?
イキテル??生きていらっしゃるんですかぁ????


「そう。見てみますか?」

と連れて行ってくださったのは「ロベの碑」。

コチラ↓
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いつもロベをご利用の皆さま、このようなものがあることをご存知でしたか?

(あたくしは存じ上げませんでした・・・カ・ン・ゲ・キ(დ☣‿☣)!!)


八丈の経済を支えるロベに最敬礼の思いを込めて、昭和58年に自治会の皆様によって建てられました。

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ロベの碑の両脇を護衛するかのように立っているのが八丈に最初にもたらされたロベの2本です。

そのお姿は斜陽を浴びて神々しいほどです。

お足元はこんなに苔むして・・・!
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八丈の皆さんにとっては、戦後の物資欠乏や食糧不足の危機を乗り越えた今日の経済的繁栄もこのロベご夫妻の賜物なのです。
いわばロベの島八丈を生み出したお父さんとお母さんです。


このお二方あっての花き業界、そして大田花き。
ロベご夫妻、ありがとうございます(合掌)。

もうここまで「ロベ」を連発すると、「なぜ“ロベ”というんだろう・・・」と分からなくなってしまいましたが、ロベとはその学名であるフェックス・ロベレニー(Phoenix roebelenii)を略してロベと呼ばれるようになりました。最初から略しっぱなしですみません。。。


はい、それでは最後に共選を代表して實さん!

八丈では消費者の方々と直接お話しされる機会も少ないでしょうから、ここで消費者の皆様に一言お願いします!


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「ロベを使ってくれてありがといと思っています。

生け花やスクールの先生、仏業務の方々、そのほかロベをいつも使ってくださる皆様、長い間ロベを使ってくれてどうもありがとうございます」

皆様への感謝の思い!お預かりいたしました!
ロベを使ってくださっている皆様に届きますように~!

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【JA東京島しょ八丈島支店の格言】

・ 八丈のレザーもロベも品質は世界トップレベル。緑は濃く艶やかで肉厚、葉が締まっていて本当に美しい。
  もう一度その美しさを見つめ直すべし!

・ レザーファンの栽培条件はコーヒーベルトの条件がベスト也。
  コーヒーベルトより少し北緯の高い八丈では寒さから葉を守れ!

・ ロベは葉先が命!
  風に揺れても葉がぶつかりすぎないような間隔で定植すると◎。
  トゲは取っても刺されるな!生産に携わる皆様はご注意ください❤

・ 離島の制約条件、限られた選択肢の中で島の経済を支えるほどの
  大きな産業を生み出した八丈ピーポーのスピリットを見習うべし!

・ 台風銀座八丈における施設栽培は鉄骨が基本!

・ ロベの島八丈を生み出したロベご夫妻に最敬礼の念を以って臨むべし!
  八丈にお出かけの際はぜひ立ち寄ってみてください♪


後編につづく


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<写真・文責:ikuko naito@花研>
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