2012年6月29日
vol.95 皿井植物園(愛知県) 後編
★今後の展望と方向性
「これからも観葉植物にとって厳しい時代が続くと思う」という社長の皿井さん。
ではどのように乗り越えますか。
「売り方を変えていきたいと思う。
生産は会長に任せて、私は販売をもっと考えていきたい。
実際に5-6年前から出荷する時の鉢をオリジナルのものに変更したんだ。それまでは生産鉢といって、生産する時のプラスチック鉢のまま出荷していたんだけど、それをデザイン性のあるものに変えたんだ」
今まではこのように鉢の縁のあるもので出荷していました。
これを飾るとき、多くの場合、おしゃれな鉢カバーを使うでしょう。
しかし、↓このようにファッション性のある鉢で提案することにより、商品としての完成度が高くなり、使う人もこのまま飾れるようになります。
これは、・・・陶器鉢ですか?
「陶器鉢もあるけど、多くはプラスチック鉢」
でも一見陶器のように見えますね。
「陶器では重いし、せっかく納品しても割れていたりするでしょ。逆に出荷先で取り扱う人に迷惑をかけちゃうことになるんだ。
だから、数量限定で、本当に一部のみを高級品として陶器で出荷して、もっと気軽に楽しんでもらうためのものは、おしゃれにデザイン性を高めつつも取り扱いやすいようにしているんだ」
なるほど、デザイン性を重視しつつ販売者や消費者の便宜を図る。観葉植物としての完成度をより高めて出荷しているのですね。
「お客様がどのような商品を買いたいかということをいつも考えるようにしているよ。
売れない商品を作っても仕方ないでしょ。売れる商品をいかに作って、いかに売っていくか。ヒット商品が出たとしても寿命は短いから、次の商品として何をどう提案していくか、常に考えるようにしている」
★会長インタビュー
花きの生産・販売を取り巻く環境がものすごいスピードで変化していますが、生産側としてはどのように対応していきますか?
「1+1=2までの理解能力の人に√(ルート)の計算を教えても、これは暖簾に腕押し。
つまり一人ひとりが能力を持っていないといけない。オートメーションといっても、機械と同じなら機械がやればいいこと。少量多品種の時代は、全ての鉢物の管理が同じというわけではない。それぞれの商品の特性を理解して従業員が技術を上げていかないと、正しく水やりもできない。
個々の従業員の能力を高めてもらって、またそういう人に集まってきてほしいと思う。ここが私たちの生産のキーを握っていると思うんだ。
仕事は体が2割、頭が8割。
職場に行く前から既にやることは決まっていて、体を使って2割を体現していくだけ」
なるほど、頭を使わずして仕事はできない。しかも8割が仕事の外でインスピレーションを受けたりして決まっていく。2割はシンプルにアウトプットということですね。
「現場でも頭が働かなければ、なんぼ体が丈夫でも2割の仕事しかできない。
“百姓は馬鹿でもできる”と言われた時代もあったが、今は違う」
そうですね、農家さんは仕入れから生産、販売、マーケティング、経営も何でも全て自分でやらなくてはならないわけですから、オールマイティで頭の良い人でなければできることではありません。
「でも、うちの場合は例えば従業員が100人いたとしても、自分で考えて植物を育てられる人は片手ほどもいない。指示しなければ水をやることすらできない。」
会長もなかなかお仕事に厳しい方とお見受けしました。
それだけご自身に厳しいことを課して、実行してきたが故のことでしょう。厳しい実情を踏まえ、これからはもう従来のようにはいかないと、将来を案じます。
皿井植物園さんの未来は?
「雇うことと育てること。一人ひとりの能力を開発すること。これが今後のカギを握る!」
つまり“人”ということですね。
どういう方に来てほしいと思いますか?採用されるときはどのようなところを見ますか?
「優しい人に来てほしい。他人と植物と全てに対して優しい人。それはもうヘルパーの気持ちでね。
植物は自分力では歩くことも食べることもできない生き物。自力で身動きの取れない人をお世話するのと同じ。
植物を扱う時も乱暴にするのではなく、優しくいたわれる人であってほしい。
そして、そういう人たちをまとめる立場の人になってほしいから、頭のいい人に来てほしいと思う。
通知表で“5”ばかりという意味ではなくて、“常に考えている人”ってこと。全てのことには意味があるのだから」
というお父上のお考えの一方で、社長の喜清さんはご自身の方針を明確に持っています。
「一人ひとりの技術を高めていくことは必要。だけど、もっと大切なのは、個人の能力に頼らなくても同じ品質の物を大量生産できるという仕組み作りだと思うんだ」
なるほど、誰でも同じように生産できる仕組み作りですね。
「昔は生産の品種数が少なかった。生産効率もいいよね。
だけど、現在は嗜好の多様化から生産品種が多くないといけない」
観葉植物も切り花と同じで少量多品種ですね。消費に目を向けた品種のラインナップが必要です。
「となると、例えば5品種を一つの施設で温度とか光量とか同じような環境で育てないといけなくなるよね。だけど植物の性質や対応はそれぞれ異なる。管理が大変だし、対応も難しい。結局一人の能力に頼らざるを得なくなる。だから会長はもっと従業員一人一人の能力や技術を向上させたいっていうわけだけど、私としてはそれをいかにシンプルに行っていく仕組み作りをするかが課題だと思っている」
これは一見逆のことをおっしゃっているように見えますが、まったく矛盾していません。
消費の多様化でそれぞれの植物に合った管理をしていくこと、また誰でもそれができるように、仕組み作りをしていることは、植物の大規模生産を行う上で企業にとって必要条件でしょう。
しかし、誰でもできるようなしくみがあったとしても、一人ひとりの意識が低く、言われたことだけをやっていては、植物を育てることなどできません。
気象状況は毎年変わりますし、植物は工業製品ではありません。些細な環境や状況の変化に気付いて対応する力。これは仕事に携わっている限り、どのようなポジションであっても必要とされていることかと思いますが、植物栽培であれば、なおさらそれが必要なのです。
誰でもできるようしつつ、従業員一人ひとりが考える力を付ける。
これが会社のボトムアップに繋がることはどの企業でも言えることではないでしょうか。
新しい消費形態の時代に生まれた新しい課題。そこに取り組む若社長!
皿井植物園さんは観葉植物を作るだけでなく、栽培の仕組み作りにもチャレンジしています!
いろいろと皿井植物園さんのポリシーやリバイバル大作戦について教えていただきましたが、これらの苗はどこから仕入れるのですか?
「マッサンやユッカなどの観葉植物の原木はコスタリカから、パキラやミリオンバンブーは中国・台湾から、チューリップやヒヤシンスの球根はオランダから仕入れるんだ。」
もしかしてご自身で海外に行って買い付けていらっしゃるのですか?
「いやいや、そこまではできないよ。私たちは生産
ほとんどは私たちのビジネスパートナーさんから購入するんだよ」
どこか輸入されているパートナーさんをご紹介いただいてもよろしいでしょうか?
「いいよ。ひとつは豊橋にある株式会社タクトさん」
あ!なんと、ちょうど豊橋にあるのであれば、えーい!行ってしまえ!トツゲキ探検隊!!
探検隊の血が騒ぐぅ~!いざタクトさんへGO――――!
来てしまった・・・突然すみません。ウンチク探検隊改め、トツゲキ探検隊と申します。
ムチャな訪問にもかかわらず、ご親切に迎えてくださったのが、株式会社タクトの代表取締役社長西川滋(にしかわ・しげる)さんです。
タクトさんの主な業務は、球根・苗・観葉植物の原木等の輸入販売のみならず・・・
● 鉢物コチョウランなどを中心にした花きの生産出荷、販売
● 切り花商品(ブーケやアレンジメントなど)の加工、卸
● 輸入した球根のパッキング(↓このパッキング機械は国内でも3社くらいしかもっていないのだとか)
などなど、幅広くビジネスを展開されています。
そもそもどうしてタクトさんという会社が生まれたのでしょうか。
「私は20代の頃は大阪で繊維の輸入業務に携わっていてね。そこで貿易のノウハウを培い、29歳の時に出身地の豊橋で今の会社を設立したんだ。
幸福の木が売れている時に、コスタリカに原木があるって聞いて、独りでコスタリカに発った」
その時西川社長はおいくつくらいだったのですか?
「31歳くらいかな」
まだ中南米の情報など入手しにくい時代。未知の国に独りで行くのは怖くなかったのですか?
「今のようにネットもなかったからね。まずマイアミまで行って、そこからどうするか考えた。
ロサンゼルス経由で、そこからメキシコシティ→エルサルバドル→ガテマラ→コスタリカというルートで行ったこともあるよ(笑)。
六カ国語辞典を片手になんとかコスタリカの種苗会社と取引できるようになった」
すごいバイタリティ!!
「皮切りが中米でなんとかうまくいったから、その後海外の取引開拓の自信になったと思うよ。
でも、逆に国内の営業は若かったし、できたばかりの会社だし、生産者さんの間では知られていなかったから、信頼されて取引が始まるまでに時間がかかった」
どうやって信頼を獲得したのですか?
「生産者さんのところに毎日通うとか、お客様のご要望を何でも聞くとか・・・そうやって困っているお客様のリクエストを“なんとかしましょう”と引き受けてお役立ちしてきたことかな。
なんとかしましょうとご要望を叶えるうちに、こうして業務が多岐にわたるようになったんだ」
タクトさんの特色は何ですか?
「生産側と販売側とにたくさんの繋がりを持っている。
大田花きにも出荷者として、また同時に買参人としても登録している。だから、川上と川下の両方の意見を聞くことができ、それをマッチングさせることもできるんだ。」
ワオ!種苗供給会社でありながら、大田花きの出荷者さんでもあり、また買参人さんでもあるなんて・・・どうも、いつも大変お世話になっておりますm(_ _)m
「それから、差別化として他社にできないような仕組みを作らないと生き残れないよね。
シンプルなブローカーだけなら誰でも真似できる。私たちはブローカーでスタートしたけど、今ではそう簡単には付いて来れないような機能が備わったと思う」
そのタクトさんは、この7月から第30期がスタートします。30周年おめでとうございます。
会社にも寿命があり、30年が一つのターニングポイントなるという説もありますが、30周年を迎えた今、どのように思われますか?
「やっとスタートラインに立ったと思うよ。当社の場合はスタートがゼロだったから、まだまだやることはたくさんある。30年続いたということは、ひとまず業界で認められたということかなと思う。ここからが心機一転、もう一度スタートしたいと思う」
2012年、タクトさんは再スタートを切ります。
★皿井植物園の格言!
① 品質の良い観葉植物は、良いリレー栽培から生まれる。
リレーする段階で誰かが自分だけ儲けようとすると、ずみが出て、良いものを安定的に供給することはできません!そのためには良いビジネスパートナーを持つこと。
フェアーに仕入れて、フェアーに販売!
良いリレー栽培をするには、よりよいリレーションシップを構築することが大切!
(あー、オヤジギャグ最近毎回やな~。スミマセン^_^;)
② “お客様が求める商品を、買いやすい価格で、安定的に供給し続ける”---これがモットー!
そのためには、オートメーション化と同時に従業員一人ひとりの能力開発を行うべし!
★名前の由来と管理方法
みなさん、今回の記事に出てきた「マッサン」という名前、耳にしたことありますか?
初めてこの名前を聞いた時は、アタクシも「“マッサン”てなによ?!」と思ったものでしたが、マサヒコさんかマツイさんのニックネーム・・・ではありません、はい。
“マッサン”とはドラセナ・マッサンギアナの略名で、別名「幸福の木」。こういえばピンとくる方もいらっしゃるかもしれません。
ではなぜ「幸福の木」なのか。
どうやら、それはハワイでは、マッサンを玄関に置いておくと幸福になると言い伝えられているからだそうです。
なるほど、マッサンはラッキーツリーなのですね。
マッサンの管理方法
暖かいところが好きなので、エアコンの冷風や冬の冷気に当てないよう気を付けてください。
最低気温は15度くらいを目安に。 また、夏の直射日光に当てると葉が焼けてしまうので、室内でお楽しみいただくのがお勧めです。
水やりは、やりすぎるくらいなら、乾いている方が◎。水をやりすぎると、根腐れを起こし、栄養を吸えなくなってしまいます。葉に異変が現れたら、既に根がダメージを受けている可能性大!設置場所にもよりますが、夏でも1週間に1回水をやれば十分。水をやって根を傷めるくらいなら、極力やらない方が安全。
10月以降は2週間に一度でも大丈夫かも。愛情過多は禁物系植物なので、冬場は放置系がお勧めです(*^-^)ノ
でも寒いのはダメ!
では、「ユッカ」って何?「ユッケ」と似ているけど肉じゃないし、「ユカちゃん」でもないし?何語??
はい、お答えいたしましょう。
「ユッカ」とはその学名をユッカ(Yucca)・エレファンティペスといい、別名「青年の木」とも呼ばれます。
なぜ青年の木かというと、若い芽がつぎつぎと芽吹いてくるからなのだそう。命名の父はなんと皿井勝喜会長。
リュウゼツラン科です。アガベとかサンスベリアなどもリュウゼツラ科なので、比較的暖かいところが好きな植物ですね。アガベといえばテキーラの原料ですし、テキーラといえばなんといってもメキシコ!
管理方法は、メキシコのイメージで!!ってどんな?
水やりは1ヵ月に一度くらいでもOK!乾燥には比較的強いけど、水のやりすぎや寒いところはNGです。1-2月に暖房を切り、5度以下になる場合は要注意です。
そして最後に「マジナータ」。
“マジ、アナタ??”ではありません。本名はドラセナ・コンシンネ・マジナータといいます。愛称は「真実の木」。こちらも会長が命名されました。
ハワイで生まれた幸福の木のように、縁起の良い名前の方がいいだろうという会長の思いがこもっています。
こちらもリュウゼツラン科。原産地はマダガスカルですから、やはり暖かいところ好き♪
水のやりすぎよりは乾燥気味にしておいた方がいいでしょう。
★おまけ
最近の研究結果によると、観葉植物をオフィスに置いておくと、以下のような効果が期待できるそうです。(Dutch Flower Councilより)
・ 空気清浄効果
・ 心の鎮静効果
・ 仕事の効率アップ
・ 健康維持
(湿度を保つことによるドライアイや乾燥肌、のどの痛み、頭痛などの防止)
・ 騒音吸収
・ 癒し効果
(同じ症状の入院患者であれば、緑の見える部屋にいる患者の方が、回復が早いという実験結果も出ている)
もちろん観葉植物と一口にいっても何を置くか、また置いた植物のコンディションにもよると思いますが、観葉植物を置くことによるメンタル的な効果がいろいろと発表されています。
心と体の健康のために、是非身近にグリーンを置いて楽しんでくださいませ~(*^-^)ノ
まずい、今回も長くなりすぎてしまった(+_+)スミマセン
いつも気長に最後まで読んでくださるウン探読者のみなさま、どうもありがとうございます!
次回を是非お楽しみに❤
2012年6月28日
vol.95 皿井植物園(愛知県) 前編
愛知の鉢物、続編取材のため、満開のアジサイを楽しみながら快調に車を飛ばして渥美半島を一路北上!
(もちろん制限速度以内ですから、ご心配なく)
キキキーッ!(←急ブレーキの音)
ギョッ∑(゜◇゜;)
ギョギョーーーッ!な、なんかおる~!!
ウゲッ!Σ⊆・д・⊇!!!
ゲ、ゲムジー~!!ヒョエーーー!
毛虫がコンクリの道路の上を横断中。
いやいや、なんのなんの、生産者さんを取材させていただくウン探たるもの、毛虫様ごときに動揺してはなりませぬ!
こんなことは当たり前!人類みな兄弟、殺生することなかれ!
もちろん、殺生はしませんが、毛虫は人類ちゃうやろて・・・^_^;
と、立ち止まったところは・・・キョロキョロ(゚ー゚?)キョロ(*゚ー゚)ゝキョロ
ぬぁ、ぬぁんと目的地の皿井植物園さんではないか!ワオ!w(゚o゚)w!!ラッキー❤
皿井植物園さんといえば、観葉植物の数量安定、品質安定の代名詞的な産地さんで、観葉植物のひとつのカテゴリーのリーダー的存在。
大田花きの園芸チームを以ってして、
「いわゆる日本のナショナルブランドみたいなものだね」
と言わしめる皿井植物園さんでは、生産に対しどのような取り組みをされているのでしょうか。
いざ潜入です!ラジャ ('◇')ゞ
こちらが皿井植物園代表取締役社長の皿井喜清(さらい・よしきよ)さん。
お父上である会長の皿井勝喜(かつよし)さんがここ田原の地で園芸の生産を始め、2代目となります。(↓写真右側が会長の勝喜さん)
従業員さんはおよそ100名の大規模経営。花の生産で従業員100名といったら、相当大きいですよ!
経営面積は、施設、露地を合わせておよそ11.5ha。30品目100品種以上に及びます。
渥美半島に農場14箇所(!)、更には中国にも2つの農場を有しています。
えええーーーッ!∑(゜◇゜;)
チュ、中国にも圃場があるのですか?
でも中国の生産管理はどのようにされているのでしょうか。
「基本的には中国の人に任せているよ。たまに見に行くけどね」
その信頼関係はどのように築かれたのですか?
「以前中国からの研修生が3年ほどうちで働いていてね。
彼が中国に戻って、今、中国農場のトップとしてやっているんだ。日本向けの商品の栽培をね」
なるほど~!彼がどういう人であるかを良くご存知なわけですね。
それなら安心!
★環境
ここ渥美半島は、三河湾と太平洋に囲まれ、黒潮の影響で冬も比較的暖かく、降水量と日照量が多く、農業には好適な環境です。
年間平均気温 16.0℃
年間降水量 1,620.6mm
年間日照量 2202.2時間
(地点:伊良湖、1981-2010年統計、気象庁
※「地点」において田原市の統計データが十分ではなかったため、同じ渥美半島にある伊良湖のデータを採用いたしました。皿井さんの農場のうち6つは伊良湖にあります)
東京と比べてみると、
年間平均気温 16.3℃
年間降水量が 1,528.8mm
年間日照量 1881.3時間
(地点:東京、1981-2010年統計、気象庁)
と、伊良湖の方が日照時間も降水量も多くなっています。
また、皿井植物園さんの多くの圃場がある田原市においては、総農家戸数4,584戸、農業産出額779億円で、市町村別でみると全国第1位を誇る日本屈指の農業地帯です。
農業産出額を部門別にみると、花きが365億円(47%)と最も多く、次いで野菜、畜産の順となっています。(皿井さんご提供データ)
「関東でいえば、千葉の房総半島に気象環境が似ているかもね」と皿井さん。
田原市は以前の田原町と渥美町と赤羽根町が合併して生まれました。どの町も全国的に花の生産が有名で、もしかしたらウン探読者のみなさんも耳にしたことがあるかもしれません。
いや~、ここ田原市は農業生産の超大手だったのですね!m(_ _)mマイリマシタ!
★歴史 ~皿井植物園さんの誕生~
社長のお父上である勝喜会長にお話しを伺いました。
会長のお父上は、田原で酪農に従事されていました。酪農も田原では大きな産業のひとつで、その中でも皿井さんは地域で最大級の酪農家でした。ですから、勝喜会長も学校では酪農を勉強され、昭和34年、酪農家の後継者として就農されました。
(昭和34年といえば、皇太子、現在の天皇陛下がご成婚された年。伊勢湾台風が襲来した年でもあります。)
それを何がきっかけで園芸に転換されたのでしょう?
「昭和40年頃ね、戦争が終わって人々の生活が安定し始めた頃、これから経済は伸びていくものだと思った」
昭和39年 ビートルズ来日、OECDに正式加盟、東海道新幹線開通、東京オリンピック開催、佐藤栄作内閣成立
昭和40年 いざなぎ景気始まる、国鉄「みどりの窓口」開設
昭和41年 新東京国際空港建設予定地を成田に決定、100円札廃止を決定、郵便料金値上げ、自動車生産高世界第3位
・・・ふむふむ、なるほど日本が高度経済成長を遂げた昭和29年から48年までの真っただ中ですね。
「これから日本の人の生活は豊かになって、潤いを求めるようになるだろうなと思ったんだ。
みんなのお腹がいっぱいになったら次には花を楽しむ時代が来る。もちろん観葉植物もすぐには受け入れられないだろうけど、将来的には必ず受け入れてもらえる日が来ると予測して、鉢物生産に転換したんだよ」
とはいえ、一度に全てを変えたわけでなく、地域一番だった会長のご両親の功績とご意思も尊重し、昭和51までの10年間は酪農との複合経営を行い、その中で徐々に鉢物生産を増やしていきました。
ご両親も夢にも植物に転換されるとは思っていらっしゃらなかったのではないかと会長はいいます。
「経営というのは究極的には利益を出さなければならない。
手持ちの農業規模を維持しつつ、利益を出していくために選んだ道が園芸だったというわけなんだ」
★出荷場
こちらは出荷場。渥美半島内の14の農場で作られた商品をこちらに集め、このように商品をきれいにして、トラックに積まれ各市場に届けられます。
Wow!∑(゜◇゜) さすが大規模農場。
ベルトに観葉植物が乗って、動いていく観葉植物をベルトの両脇に立っている人がきれいに掃除をしたり整えたりしていく・・・鉢の汚れを拭いたり、余分は葉を取り除いたり。
商品ラベルを付けて、保護のためのネットをかけて・・・
ゴミはベルトに残し、自動的にゴミ箱へ、鉢物は台車に載せてトラックに掲載する準備です!
こうして手早く作業をしていくのですね。
さて、観葉植物に詳しい方もあまり関心のない方も、このような商品を目にされたことがあるのではないでしょうか?
コレ、どうやって作るの??(゚_。)?と思われたこともあるのではないでしょうか。
はい、お待たせいたしました。その秘密をウン探が明かしましょう。
★ミリオンバンブーの編み編み
ミリオンバンブーは長い状態に育つまで、そのまままっすぐに育てます。
↓
希望の長さまで育ったところで、下葉をむしります。
(そういえばそうですね!編んであるところには葉がありません!
そんなところに手がかかっていたとは!!)
↓
中国で編み込み
ほうほう、器用な方が目にも止まらぬ速さでパッパとされるのでしょうね、きっと。
編みながら上の高さを合わせる。
(ナヌッ?上の高さを合わせる??となると・・・?)
↓
上から編んでいって、下を合わせるため、長いところはバチン!と根ごと切る!!!
ナニ??(゚o゚;)
下を切るのですが?根ごと??
「そうだよ」と社長の皿井さん。
聞き間違いかと思って二度聞きしてしまいました。
そうです。編み編みミリオンバンブーの場合は、高さを合わせて編んでいき、余った長さは下を切るのです。それも根ごと。
↓
鉢に植える。発根を待つ。
↓
発根したら日本に輸出。
なんとこんな仕掛けになっていたのですね( ^ー゜)b
★パキラの編み編みは?
パキラの編み編みは苗が小さい時に“茎が急に伸びる”生長ステージがあり、その特性を利用して編んでいきます。
その時はまだ茎が柔らかいので、茎と茎の間に空間を作りながら、サクサクっと編んでいく台湾での作業になります。
これが生長したところでまた畑に定植して、太く大きくなり、編み編みの空間も詰まっていくというわけです!
わーい!謎が解けた~(^o^)丿
「この編み編みのしくみが象徴しているように、いかに効率的で確実なリレー栽培をするかが、良い観葉植物を出荷するポイントになるんだ。リレー栽培するのは、編み編み商品だけじゃない。当社で扱うほとんどの商品がそうなんだ」
※リレー栽培とは
苗の生育段階に合わせて異なった生産者で栽培をしてくことをいいます。
それぞれのステージに合わせた環境を作り、生産者間でリレーしていくことで、栽培の効率化を図ることができます。
「リレーの段階で誰か一人でも自分だけ儲けようとすると、必ず別の人のところにしわ寄せが行く。そのような状態で良い品質のものを継続的に出荷できるわけがない。全員がフェアーに仕入れてフェアに販売していく。品質・数量・価格が安定するのは、このチームワークによるところが大きいんだよ」
↓苗は以下の図のように流れて消費者のみなさまの手元に届きます。(クリックで拡大)
★“売れる”とは?
「うちは90%以上市場出荷しているけど、“市場で売れたから売れたことにはならない”と思っているんだ」
では、どこで売れれば売れたと言えますか?
「小売店で売れて初めて“売れた”といえる。市場で売れても小売店でロスになっては売れたことにはならない」
小売店で売れるためにはどうしたらいいと思われますか?
「もちろん消費者に買ってもらうこと。
そのためには、
① デザイン性の充実・・・今ある素材をどう使うか
② 販売店との連携
こういうポイントを考えなくてはならないと思うよ。生産担当といえども、生産だけをしていればいい時代ではない。
近年は本当に売りにくくなった。単価も下がったし、数量も出ない。従来のように作っているだけじゃだめなんだ
本当に単価も下がり、数量も減ったのでしょうか。
平成3年から20年までの鉢物の卸売推移を見てみましょう。
↓こちらが鉢物全体の卸売数量と単価です。(クリックで拡大)
そしてこちら↓が観葉植物の卸売数量と単価です。(クリックで拡大)
(データ元:『フラワーデータブック』 財団法人 日本花普及センター)
観葉植物(下のグラフ)を見ると、平成15年をピークに生産は一気に減少。
通常、供給量が減れば価格は上がるのが市場原理というものですが、平成15年以来単価がほとんど上がっていないのが現状です。
また、平成20年の卸売取扱量は平成5-6年とほぼ同じなのに、卸売単価は半分とまでいかないまでも、55%ほどになっています。
「平成14、15年ころから売りづらくなってね。需要に対して生産量が多かったんだよね。急に売れなくなったわけじゃないんだろうけど、そんな感じを受けたよね。だから1割生産量を減らしたのに、売りにくさに変わりはなかった。
このころまでは生産者は作るところまでやっていればいいと思っていてね、誰からの注文かも気に掛けなかったんだけど、このころから“まずい!どうやって売っていこう!?”と思うようになったんだ。そのタイミングで出会ったのが、鉢皿付きの品の良いプラスチック鉢。
表面の土が見えるのも良くないと思って、化粧石を敷くようになった。
こうして商品を作り上げて、徐々に
これからもみなさんに“カジュアルに楽しんでいただけるもの”を作っていきたいと思う」
ナショナルブランドである皿井植物園さんは、こうして会長・社長足並みをそろえて、観葉植物のリバイバルに取り組みます。
後編に続く・・・
2012年6月20日
vol.94 かねいち園芸(愛知県)
日本列島はすっかり梅雨入り・・・台風が日本列島縦断中だし(-_-;)超メイワク
今年も本格的な夏はもうすぐそこ!!
夏といえば象徴的なのがハイビスカス。
今回は全国でも屈指の品質を誇る愛知県のかねいち園芸さんを訪れました。
かねいち園芸さんのリピーターである某仲卸O社のSさんに伺うと、
「なんといっても花付きがいいよね。ぴかイチだよ。」
大田花きの鉢物営業T担当に聞いてみると、
「一般的にはハイビスカスだからといって、日本の盛夏に耐えられるほど暑さには強くないはずなのに、かねいち園芸さんのハイビスカスは花持ちもいいし、新しい花芽もどんどん上がってくる。
ホント不思議なくらいなんだよね。
日本で有数のハイビスカス生産者と言って間違いない!」
なんという高評価!w(゚o゚)w オオー!
ウンチク探検隊結成以来7回の夏を経験し、なぜ今までかねいち園芸さんに伺うことがなかったのかと思うほど。
8回目の夏を迎える本年、満を持してかねいち園芸さんに潜入してまいりたいと思います!ъ(*゚ー^)イザ!
東海道新幹線の豊橋駅に降り立ち、渥美半島へ向けて一路西へ西へ・・・。
太平洋を臨む渥美半島の突端手前でハイビスカス生産を営むのは、
かねいち園芸の渡会正人(わたらい・まさと)さん、46歳。
お祖父様の代から野菜やポットマムを作り始め、シンビジウムや観音竹、アロエやグリーンネックレスなどに取り組みましたが、今は“なぜか”ハイビスカス中心の生産となっていると渡会さん。
ここで「“なぜか”そうなっている」とおっしゃいますが、のちほどその“なぜ”が明かされますので、どうぞ最後までご一読ください。(今回も長くてすみません^_^;)
渡会さんの生産面積は加温施設が3,000坪、加温システムのない育苗用の施設が200坪、合わせておよそ3,200坪。生産のほとんどが5寸鉢で年間15万鉢を生産、出荷しています。
施設の中は、何万鉢と並ぶハイビスカスの鉢でいっぱい!
ん??(・・∂) アレ?
割り箸を持って何をされているのでしょうか?
“花×割り箸”でイメージするものといったら、ユリなどの“花粉取り”ですが、ハイビスカスは花粉が花を汚すわけでありませんから、取り除く必要なんてないでしょうし・・・ナンデ???(゚_。)?(。_゚)?
「ハイビスカスは1日花だからね、咲き終わった花を取り除いているんだよ」
と渡会さん。
そうなんです、ハイビスカスは1日花。つまり、1日きれいに咲いて終了。う~ん、「美人薄命」を体現したかのような花です。切り花でも流通がないわけだ!
終わった花をこうして1鉢ずつ手作業で摘んでいくのも地道で気の長い作業です。
←1日で咲き終わった花
↓終わった花を摘み取って、きれいにしていく。割り箸はマストアイテム!
終わった花を取り除いても、次の花がどんどん開花するので大丈夫!
ハイビスカスは1株の新陳代謝の良い花だったのですね!
かねいち園芸さんには、何色あるのでしょうか。
「主に4色だよ。色別の構成は、赤と黄色が多いかな」
渡会さんによると、生産品種の色は大別すると、
赤が最も多く30%、黄色30%弱、ピンク25%、オレンジ15%
「面白いことにその年によって売れる色は違うんだ。
基本的には赤、黄色が人気なんだけど、今年はなぜか赤がいつもにも増して人気だよ。
もちろん季節によって、春先はピンクが出て、夏も本番となってくると、赤やオレンジの人気が出てくるというのは例年の傾向ではあるんだけどね。」
う~ん、この人気の動きというのは何と関連しているのでしょうか。
色見本の会社であるパントンによると、2012年の流行色は「タンジェリンタンゴ」。
トマトとニンジンを合わせたような情熱の赤オレンジです。この発表からいけば、オレンジが出てもいいような気もするのですが、今年は赤ですか・・・。
ぐるぐると圃場を巡りながら拝見していると、突然目の前にどか~んと土の山が!
よもや、これはハイビスカスの生産に使っている土か?
「そうだよ、この土を使っている。」
キラーンッ( ̄▽+ ̄*)!
見つけてしまった!
この土にかねいち園芸さんのクオリティの秘密が隠されている可能性大!?
★土に秘密?
黒々と、またふわふわとしていかにもハイビスカスによさそうな感じ♪
ダイブしたら、ふんわりと受け止めてくれそうなほど!・・・って、まあダイブはせーへんけど。渡会さんの大切な資源ですから・・・
この土はどうやって作るのですか?
「土を1年畳んで、堆肥を入れて、ピートや黒ボク(火山灰土と腐植でできた土)なんかを入れてね、熟成発酵させるんだ」
へ~、1年畳んでねえ~、・・・って、たッ、畳む??(゚ー゚*?)オヨヨ?
“土を畳む”って何ですか?キョロキョロ 土をタ・タ・ム??
「土を寝かせるってことね。
これを見て。
こうやって土を寝かせるんだ。
堆肥とかを混ぜて、シートをかぶせて熟成、発酵させる。
混合物の構成比は親父が研究して辿り着いたものだけど、これが最も良い。
↓右側の土の山が完成したもの。
既成の土で済ませず、こうしてオリジナルの土を使うと、やっぱり地力が違うよね」
なるほど、それで力のある良い株ができるのですね。
「こうしてふわふわしていなければ、水も吸収しない。水を吸収しないと早く乾いちゃうでしょ。
でも軽いけど、握ると一瞬固まるでしょ。それからゆっくりと崩れる。
これは水持ちがいい証拠なんだ。
うちは手潅水だから、そんなに給水力が良くないとどんどん乾いて、水やりが追いつかない。はたまた給水力が悪くて軽ければ、風が吹くと飛んで行っちゃうし。
こういう土を使うと根の張りもいい」
うわっ!!
土の中にいろいろがミックスされています。
なるほど、これをハイビスカスに使っているわけですね!
よく見ると・・・みなさん!コチラ↓↓↓
渡会さんのハイビスカスの表面から根っこがぴょんぴょこ出まくっている!!!
白いの全部根っこですよ~!!!(; ゚ ロ゚)ナント!!
コレ、鉢の中はどうなっているのでしょうか?
“うんちく探検隊”改め、“わがまま探検隊”は渡会さんに懇願して、見せていただいてしまいました。
ジャジャーン!
なんと!縦横無尽にびっしりと張るハイビスカスの根!根!根ッ!!
こうでないと、次々と開花する株にはならないわけですね。
暑い夏でも花持ちが良く、花芽がジャンジャカ上がってくる理由は、ハイビスカスの株の力によるものであり、更に元を辿れば、株の力を生み出すこの土に理由があったのです!!!
★冬はピンチ?!
ところで渡会さん、ハイビスカスの出荷期は主に夏ですが、冬場は何をされているのですか?
まさか常夏のハワイに研修という名のバケーションに行っていたりするのでしょうか??~(^◇^)/ ウホホホ
「ピンチしているんだよ」
あ、ホント??仕事されていらっしゃるんですか。
「冬場はずーーーっとピンチ。圃場にある全15万鉢を繰り返し何回何回もね」
はい、みなさん。ここで「ピンチ」とは、「追い込まれた厳しい状況」とか「窮地」のことではなく、
園芸用語でピンチといえばいわゆる「摘心」のことを指します。
ハサミでチョキチョキ!
「1回目のピンチが終わる頃には最初にピンチした鉢の枝が伸びてくるから、また2周目が始まる。朝起きてから夜寝るまでずっとピンチに次ぐピンチだよ」
へー、ピンチ作業ってハイビスカス生産一大作業なのですね。
「そうだよ。私の場合は生産に重要なことの7割はピンチだね」
WOW!w( ゜Д゜)w
7割も占めるのですか!
そんなに重要だなんて!
となるとやはり、パートさんに任せずピンチはご自身でされるのでしょうか?
「そうだね。私と嫁さんしかしない。」
このピンチというのは、ハイビスカス生産の要のようです。
どこをピンチするのですか??
「こうやって天辺から出てきた芽を、バチン!とここで切る。
これがピンチをした跡。
一つの鉢につき最低でも3回は必ずピンチをする」
あ、ほんとよく見れば、ピンチしたばかりの形跡がたくさん!
そうです、このピンチという作業は、頂芽(ちょうが:植物の生長点)を摘み取る(=“芯を止める”といったりします。だから“摘心”)と、その脇から新しい芽が出てくるという植物の性質を利用したものです。
頂芽をピンチすると、側枝が2本出てくるので、枝の張りや開花を促進させたいときに行います。
つまり、このピンチ作業なくして花芽とたくさん付けることはないのです。
また、このピンチ作業が開花を促すだけでなく、全体の形を整えることにも繋がっています。
「たとえばこの2つを比べてごらん。
一見同じように見えるかもしれないけど、こっちは注文品としては絶対に出荷しない」
ふむ・・・“こっち”ってどちらでしょう??
目の肥えたウン探読者のみなさまはもうおわかりですね!( ^ー゜)b
「右側はこの枝がぴょこって出ているでしょ。
ちょっとバランスが悪い。
これはもうB品扱いなんだ。この枝のピンチが甘かったんだよね・・・☆=(+_+。) 」
なるほど、渡会さんは選定基準も厳しいし、それ以上にご自身のお仕事に対しても厳しい。
B品が出た=ご自身のピンチが甘かった。“あれだけやったけど、まだ足りなかった”と振り返ります。
自社製品に対するこだわりも深く、同時に商品完成における全ての責任をご自身で負っています。
切り花の生産では、1輪を大きくするために、脇芽や新しい花芽を摘み取ったりするのですが、それだけピンチをすると、逆に通常1輪が小さくなりそうですが、渡会さんのハイビスカスの輪の大きいことなんのって!
手持ちの物と比べてもこんなにおっきぃ!!
5寸の鉢の直径は15cmで、ボールペンの長さとほぼ同じですから、品種によっては鉢の直径と同じくらいか、それよりも大きい花をたくさん華麗に付けるものもあるのです。
★生産全体 ― ピンチ7割=残りの3割は?
ピンチ7割とおっしゃっていましたが、あとの3割は何ですか?
「“2割が矮化剤”(わいかざい;植物の成長、とりわけ茎の伸長を抑制するもの。こんもりとしたかわいらしい形の鉢物を生産するのによく使われる)のタイミングと“1割が防虫”かな。
私はどこで研修を積んだわけでもないし、自分の経験で見極めて行うしかないんだ。
品種によって矮化剤のタイミングも防虫の必要性も異なる。虫は出てしまったらおしまいだから、いかに未然に防ぐか注意しながらやっているよ。
まあ、あとはもちろん何を育てるにもそうだけど、光・温度・水。この三拍子のバランスは間違えちゃいけない。
過ぎたるは及ばざるがごとしで、多すぎてもいけないし。分量が決まっているわけではなく、ここは“熟練の感覚”によるところが大きい。」
温度管理で注意していることはありますか?
「最低温度は冬でも14度を切らないようにする。
夏は施設の中だし40度くらいはいっちゃうよね。暑すぎないように遮光したり、風を通したり」
取材当日も天窓が開いていました。
冬は夜でも14度をキープするのですか?
「そうだよ。だから燃料費はすごくかかる。
これが燃料タンクなんだけど」
はい、みなさま、こちらをご覧ください。
これが農家さんにある一般的な燃料タンクです。
中には浮き輪が入っていて、このメモリは浮き輪が上がると下がる、下がると上がるので、満タンのときには下に印があり、目減りするに連れて徐々に上がっていくのです。
そして、右側にあるこの赤い矢印が「ここまで印が上がってきたら、次の燃料を注文しましょう(*^-^)b」マークです。
「このタンクひとつが重油2,000リットルなんだ。
冬場はこの1本が1週間でなくなる。今年の冬は1リットル80円以上したから、タンク1本で18万円」
ぬぁ、ぬぁんと∑(゜◇゜;)
1週間で18万円が飛んで行ってしまうのですね・・・パタパタパタ(←万札に羽が生えて飛んでいく音)
あ、いやいや、18万円の重油代がかかるのですね!
「ひと冬で合計70kgくらい使う。
なぜ14度なのかというと、4月出荷スタートに合わせた温度調整と、この経費との採算がぎりぎりのところが14度っていうことなんだ」
なるほど、そのような理論に裏打ちされた14度だったわけですね。
ところで、かねいち園芸さんは海岸から数百メートル入っただけの海岸沿いにあります。
すぐそこが海ですが、潮風による影響はないのでしょうか?
・・・塩害を受けやすい品目はたくさん!特にお正月に使う千両などは強い潮風にあたると葉先が黒くなってしまうので注意が必要ですが??
「もともとハイビスカスは強い植物だよ。沖縄で生け垣にされているくらいだからね。台風でもみくちゃにされても、元気に花をつける。葉色も変色しない」
そういえば、昨年ウン探で八丈島に行ったときも、サボテンやヤシの木に交じってハイビスカスが植えられていました。(八丈島のハイビスカス→)
八丈島といえば、台風だけでなく日ごろの強い暴風から、昔は2階以上の住宅が立たなかったというほどの暴風地帯です。そのような地域の生垣に使われるくらいですから、とても生命力の強い植物なのですね。
「そうそう、だからここでも潮風の影響は全くないし、夏場に外に出しておいて潮風にもまれても、普通に花を咲かせる再生力のとても強い花なんだよ」
これは、ますます魅力的に見えてきます。
★渡会さんにとってハイビスカスとは?
「“好きなもの”だよね。自分の手に合っている。
結局のところ、私はハイビスカスが好きなんだ。私の性格と合っていると思うよ。」
はい、ここが冒頭の「なぜ」に対する答えです。
“自分の性格と合っているから好き♡”という掛け値なしのシンプルな理由によって、結果的に集中と選択を行い、鉢物の需要低迷期を乗り越えられることになったといっても過言ではないでしょう。
将来はどのような生産を目指しますか?
「昔はね、目指せ日本一のハイビスカス生産者って思っていたけど、日本一にもいろいろあるからね。
量で日本一とか、品質で日本一とか、サイズで日本一とか。
私の場合は“かねいち園芸に頼めば安心”ていう信用の一番になりたいと思うんだ」
う~ん、「(*'へ'*)
お話を伺っていて最後までわからないのが、この「かねいち」というお名前の由来。
渡会さん、どうして「かねいち」っていうのですか?
「お爺さんの代からの屋号なんだ。
なぜ屋号に“かねいち”なのかは、逝ってしまったお爺さんに聞かにゃわからん。
“金が一番”からきているわけではないと思いたい。
“一番稼げるように努力しましょう”ということじゃないかなと自分なりに解釈している」
なるほど、お祖父様が残してくださったものは、生産ウンチクのみならず、そのスピリットまでもですね。
★かねいち園芸の格言
良いハイビスカス生産の裏にあったのは・・・
① 独自の研究によるオリジナルの土 花持ちの良さは土の力による!
② ピンチ、ピンチに次ぐピーンチ!
栽培での重要度はピンチ7割!
ピンチをすればするほど、かねいち園芸の経営はピンチとは無縁になります!
(うわぁ~、究極のオヤジギャグ!)
③ 信用第一!かねいちブランドを守るために、日本一の信用産地を目指す!
★良いハイビスカスの見分け方
① ツボミの多いものを選びましょう!
株の強さの指標になります。また、次から次へと咲くので長い間楽しめます。
② 枝ぶりの良いものを選びましょう。横や上から見たときにたくさん枝分かれして、こんもりとしているものがGOOD!
③ 幹の太いものを選びましょう。青々と茂った葉をかき分け、下からちょろりと失礼して、主幹の太さをチェック!
太くてしっかりしたものであればGOOD!ボーダーラインは、5寸鉢であれば、ボールペンよりも太いこと。これ大事♪
★ご家庭での管理法
水を切らさないように、夏場は1日に1-2回は水やりをしましょう。
しかし、やりすぎて受け皿に水を溜めるのは禁物です('-^*)b
ハワイのイメージがありますが、決して直射日光が好きなわけではありません。
株が大きくなれば地植えもOKですが、鉢に植えている間は、日当たりの良い室内においてカーテン1枚くらいの日差しがちょうどいでしょう。かねいち園芸さんでも、真夏は遮光して、葉が変色しないように十分注意しています。
花が終わったら、できればひと回り大きい鉢に植え替えるといいでしょう。こうすると、翌年また花芽を付けやすくなります。根が伸びれば、上の葉や芽も伸びる。芽が伸びれば花芽も付くというわけです。
地植えの場合は、株自体が大きくなってからでないと、冬の霜や雪に負けてしまいますので、気を付けましょう。
★消費者の皆様へ一言
「愛情を込めて作っています。嫁さんより大事にしているかも?」えへ((^┰^))ゞ テヘヘ
「いやそんなことはない!」(と、すかさず否定する渡会さん)
ハイビスカスは、大切にすれば玄関先でも屋外でも何回でも花を咲かせてくれます。霜にあてなければ、木化してアジサイのように大きな株になります。ぜひかわいがってください。
なるほど、アジサイの大きい株はあちこちで見かけますが、ハイビスカスの大株はあまり見かけません。
もし鮮やかなハイビスカスがご自宅にあったら、圧巻かも。
ご近所の話題になりますよ、きっと( ^ー゜)b