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2012年6月28日

vol.95 皿井植物園(愛知県) 前編

愛知の鉢物、続編取材のため、満開のアジサイを楽しみながら快調に車を飛ばして渥美半島を一路北上!
(もちろん制限速度以内ですから、ご心配なく)
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キキキーッ!(←急ブレーキの音)

ギョッ∑(゜◇゜;)
ギョギョーーーッ!な、なんかおる~!!

ッ!Σ⊆・д・⊇!!!

ゲ、ゲムジー~!!ヒョエーーー!
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毛虫がコンクリの道路の上を横断中。
いやいや、なんのなんの、生産者さんを取材させていただくウン探たるもの、毛虫様ごときに動揺してはなりませぬ!
こんなことは当たり前!人類みな兄弟、殺生することなかれ!
もちろん、殺生はしませんが、毛虫は人類ちゃうやろて・・・^_^;


と、立ち止まったところは・・・キョロキョロ(゚ー゚?)キョロ(*゚ー゚)ゝキョロ

ぬぁ、ぬぁんと目的地の皿井植物園さんではないか!ワオ!w(゚o゚)w!!ラッキー❤


皿井植物園さんといえば、観葉植物の数量安定、品質安定の代名詞的な産地さんで、観葉植物のひとつのカテゴリーのリーダー的存在。

大田花きの園芸チームを以ってして、
「いわゆる日本のナショナルブランドみたいなものだね」
と言わしめる皿井植物園さんでは、生産に対しどのような取り組みをされているのでしょうか。
いざ潜入です!ラジャ ('◇')ゞ

こちらが皿井植物園代表取締役社長の皿井喜清(さらい・よしきよ)さん。
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お父上である会長の皿井勝喜(かつよし)さんがここ田原の地で園芸の生産を始め、2代目となります。(↓写真右側が会長の勝喜さん)
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従業員さんはおよそ100名の大規模経営。花の生産で従業員100名といったら、相当大きいですよ!
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経営面積は、施設、露地を合わせておよそ11.5ha。30品目100品種以上に及びます。
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渥美半島に農場14箇所(!)、更には中国にも2つの農場を有しています。


えええーーーッ!∑(゜◇゜;)
チュ、中国にも圃場があるのですか?
でも中国の生産管理はどのようにされているのでしょうか。


「基本的には中国の人に任せているよ。たまに見に行くけどね」


その信頼関係はどのように築かれたのですか?


「以前中国からの研修生が3年ほどうちで働いていてね。
彼が中国に戻って、今、中国農場のトップとしてやっているんだ。日本向けの商品の栽培をね」


なるほど~!彼がどういう人であるかを良くご存知なわけですね。
それなら安心!


pachira.gif★環境
ここ渥美半島は、三河湾と太平洋に囲まれ、黒潮の影響で冬も比較的暖かく、降水量と日照量が多く、農業には好適な環境です。
年間平均気温 16.0℃
年間降水量  1,620.6mm
年間日照量  2202.2時間
(地点:伊良湖、1981-2010年統計、気象庁 
※「地点」において田原市の統計データが十分ではなかったため、同じ渥美半島にある伊良湖のデータを採用いたしました。皿井さんの農場のうち6つは伊良湖にあります)

東京と比べてみると、
年間平均気温 16.3℃
年間降水量が 1,528.8mm
年間日照量  1881.3時間
(地点:東京、1981-2010年統計、気象庁)

と、伊良湖の方が日照時間も降水量も多くなっています。
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また、皿井植物園さんの多くの圃場がある田原市においては、総農家戸数4,584戸、農業産出額779億円で、市町村別でみると全国第1位を誇る日本屈指の農業地帯です。

農業産出額を部門別にみると、花きが365億円(47%)と最も多く、次いで野菜、畜産の順となっています。(皿井さんご提供データ)

「関東でいえば、千葉の房総半島に気象環境が似ているかもね」と皿井さん。


田原市は以前の田原町と渥美町と赤羽根町が合併して生まれました。どの町も全国的に花の生産が有名で、もしかしたらウン探読者のみなさんも耳にしたことがあるかもしれません。

いや~、ここ田原市は農業生産の超大手だったのですね!m(_ _)mマイリマシタ!

pachira.gif★歴史 ~皿井植物園さんの誕生~

社長のお父上である勝喜会長にお話しを伺いました。


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会長のお父上は、田原で酪農に従事されていました。酪農も田原では大きな産業のひとつで、その中でも皿井さんは地域で最大級の酪農家でした。ですから、勝喜会長も学校では酪農を勉強され、昭和34年、酪農家の後継者として就農されました。
(昭和34年といえば、皇太子、現在の天皇陛下がご成婚された年。伊勢湾台風が襲来した年でもあります。)

それを何がきっかけで園芸に転換されたのでしょう?

「昭和40年頃ね、戦争が終わって人々の生活が安定し始めた頃、これから経済は伸びていくものだと思った」

昭和39年 ビートルズ来日、OECDに正式加盟、東海道新幹線開通、東京オリンピック開催、佐藤栄作内閣成立
昭和40年 いざなぎ景気始まる、国鉄「みどりの窓口」開設
昭和41年 新東京国際空港建設予定地を成田に決定、100円札廃止を決定、郵便料金値上げ、自動車生産高世界第3位
・・・ふむふむ、なるほど日本が高度経済成長を遂げた昭和29年から48年までの真っただ中ですね。

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「これから日本の人の生活は豊かになって、潤いを求めるようになるだろうなと思ったんだ。

みんなのお腹がいっぱいになったら次には花を楽しむ時代が来る。もちろん観葉植物もすぐには受け入れられないだろうけど、将来的には必ず受け入れてもらえる日が来ると予測して、鉢物生産に転換したんだよ」


とはいえ、一度に全てを変えたわけでなく、地域一番だった会長のご両親の功績とご意思も尊重し、昭和51までの10年間は酪農との複合経営を行い、その中で徐々に鉢物生産を増やしていきました。

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ご両親も夢にも植物に転換されるとは思っていらっしゃらなかったのではないかと会長はいいます。


「経営というのは究極的には利益を出さなければならない。
手持ちの農業規模を維持しつつ、利益を出していくために選んだ道が園芸だったというわけなんだ」


pachira.gif★出荷場

こちらは出荷場。渥美半島内の14の農場で作られた商品をこちらに集め、このように商品をきれいにして、トラックに積まれ各市場に届けられます。
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Wow!∑(゜◇゜) さすが大規模農場。
ベルトに観葉植物が乗って、動いていく観葉植物をベルトの両脇に立っている人がきれいに掃除をしたり整えたりしていく・・・鉢の汚れを拭いたり、余分は葉を取り除いたり。

商品ラベルを付けて、保護のためのネットをかけて・・・
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ゴミはベルトに残し、自動的にゴミ箱へ、鉢物は台車に載せてトラックに掲載する準備です!
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こうして手早く作業をしていくのですね。


さて、観葉植物に詳しい方もあまり関心のない方も、このような商品を目にされたことがあるのではないでしょうか?
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コレ、どうやって作るの??(゚_。)?と思われたこともあるのではないでしょうか。


はい、お待たせいたしました。その秘密をウン探が明かしましょう。
pachira.gif★ミリオンバンブーの編み編み

ミリオンバンブーは長い状態に育つまで、そのまままっすぐに育てます。

        ↓   

希望の長さまで育ったところで、下葉をむしります。
(そういえばそうですね!編んであるところには葉がありません!
そんなところに手がかかっていたとは!!)

        ↓

中国で編み込み
ほうほう、器用な方が目にも止まらぬ速さでパッパとされるのでしょうね、きっと。

編みながら上の高さを合わせる。
(ナヌッ?上の高さを合わせる??となると・・・?)

        ↓

上から編んでいって、下を合わせるため、長いところはバチン!と根ごと切る!!!

ナニ??(゚o゚;)
下を切るのですが?根ごと??

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「そうだよ」と社長の皿井さん。

聞き間違いかと思って二度聞きしてしまいました。
そうです。編み編みミリオンバンブーの場合は、高さを合わせて編んでいき、余った長さは下を切るのです。それも根ごと。
        
         ↓

鉢に植える。発根を待つ。
 
         ↓

発根したら日本に輸出。


なんとこんな仕掛けになっていたのですね( ^ー゜)b
 


pachira.gif★パキラの編み編みは?

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パキラの編み編みは苗が小さい時に“茎が急に伸びる”生長ステージがあり、その特性を利用して編んでいきます。
その時はまだ茎が柔らかいので、茎と茎の間に空間を作りながら、サクサクっと編んでいく台湾での作業になります。

これが生長したところでまた畑に定植して、太く大きくなり、編み編みの空間も詰まっていくというわけです!
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わーい!謎が解けた~(^o^)丿

「この編み編みのしくみが象徴しているように、いかに効率的で確実なリレー栽培をするかが、良い観葉植物を出荷するポイントになるんだ。リレー栽培するのは、編み編み商品だけじゃない。当社で扱うほとんどの商品がそうなんだ」

※リレー栽培とは
苗の生育段階に合わせて異なった生産者で栽培をしてくことをいいます。
それぞれのステージに合わせた環境を作り、生産者間でリレーしていくことで、栽培の効率化を図ることができます。


「リレーの段階で誰か一人でも自分だけ儲けようとすると、必ず別の人のところにしわ寄せが行く。そのような状態で良い品質のものを継続的に出荷できるわけがない。全員がフェアーに仕入れてフェアに販売していく。品質・数量・価格が安定するのは、このチームワークによるところが大きいんだよ」

↓苗は以下の図のように流れて消費者のみなさまの手元に届きます。(クリックで拡大)
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pachira.gif★“売れる”とは?

「うちは90%以上市場出荷しているけど、“市場で売れたから売れたことにはならない”と思っているんだ」


では、どこで売れれば売れたと言えますか?

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「小売店で売れて初めて“売れた”といえる。市場で売れても小売店でロスになっては売れたことにはならない」


小売店で売れるためにはどうしたらいいと思われますか?


「もちろん消費者に買ってもらうこと。
そのためには、
① デザイン性の充実・・・今ある素材をどう使うか

② 販売店との連携

こういうポイントを考えなくてはならないと思うよ。生産担当といえども、生産だけをしていればいい時代ではない。

近年は本当に売りにくくなった。単価も下がったし、数量も出ない。従来のように作っているだけじゃだめなんだ


本当に単価も下がり、数量も減ったのでしょうか。
平成3年から20年までの鉢物の卸売推移を見てみましょう。
↓こちらが鉢物全体の卸売数量と単価です。(クリックで拡大)
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そしてこちら↓が観葉植物の卸売数量と単価です。(クリックで拡大)
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(データ元:『フラワーデータブック』 財団法人 日本花普及センター)


観葉植物(下のグラフ)を見ると、平成15年をピークに生産は一気に減少。
通常、供給量が減れば価格は上がるのが市場原理というものですが、平成15年以来単価がほとんど上がっていないのが現状です。
また、平成20年の卸売取扱量は平成5-6年とほぼ同じなのに、卸売単価は半分とまでいかないまでも、55%ほどになっています。


「平成14、15年ころから売りづらくなってね。需要に対して生産量が多かったんだよね。急に売れなくなったわけじゃないんだろうけど、そんな感じを受けたよね。だから1割生産量を減らしたのに、売りにくさに変わりはなかった。

このころまでは生産者は作るところまでやっていればいいと思っていてね、誰からの注文かも気に掛けなかったんだけど、このころから“まずい!どうやって売っていこう!?”と思うようになったんだ。そのタイミングで出会ったのが、鉢皿付きの品の良いプラスチック鉢。
表面の土が見えるのも良くないと思って、化粧石を敷くようになった。


こうして商品を作り上げて、徐々に

これからもみなさんに“カジュアルに楽しんでいただけるもの”を作っていきたいと思う」

ナショナルブランドである皿井植物園さんは、こうして会長・社長足並みをそろえて、観葉植物のリバイバルに取り組みます。
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後編に続く・・・

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