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2012年6月29日

vol.95 皿井植物園(愛知県) 後編

pachira.gif★今後の展望と方向性

これからも観葉植物にとって厳しい時代が続くと思う」という社長の皿井さん。

ではどのように乗り越えますか。

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「売り方を変えていきたいと思う。
生産は会長に任せて、私は販売をもっと考えていきたい。
実際に5-6年前から出荷する時の鉢をオリジナルのものに変更したんだ。それまでは生産鉢といって、生産する時のプラスチック鉢のまま出荷していたんだけど、それをデザイン性のあるものに変えたんだ」


今まではこのように鉢の縁のあるもので出荷していました。
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これを飾るとき、多くの場合、おしゃれな鉢カバーを使うでしょう。
しかし、↓このようにファッション性のある鉢で提案することにより、商品としての完成度が高くなり、使う人もこのまま飾れるようになります。
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これは、・・・陶器鉢ですか?

「陶器鉢もあるけど、多くはプラスチック鉢」

でも一見陶器のように見えますね。


「陶器では重いし、せっかく納品しても割れていたりするでしょ。逆に出荷先で取り扱う人に迷惑をかけちゃうことになるんだ。
だから、数量限定で、本当に一部のみを高級品として陶器で出荷して、もっと気軽に楽しんでもらうためのものは、おしゃれにデザイン性を高めつつも取り扱いやすいようにしているんだ」

なるほど、デザイン性を重視しつつ販売者や消費者の便宜を図る。観葉植物としての完成度をより高めて出荷しているのですね。

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「お客様がどのような商品を買いたいかということをいつも考えるようにしているよ。
売れない商品を作っても仕方ないでしょ。売れる商品をいかに作って、いかに売っていくか。ヒット商品が出たとしても寿命は短いから、次の商品として何をどう提案していくか、常に考えるようにしている」

pachira.gif★会長インタビュー

花きの生産・販売を取り巻く環境がものすごいスピードで変化していますが、生産側としてはどのように対応していきますか?
「1+1=2までの理解能力の人に√(ルート)の計算を教えても、これは暖簾に腕押し。

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つまり一人ひとりが能力を持っていないといけない。オートメーションといっても、機械と同じなら機械がやればいいこと。少量多品種の時代は、全ての鉢物の管理が同じというわけではない。それぞれの商品の特性を理解して従業員が技術を上げていかないと、正しく水やりもできない。


個々の従業員の能力を高めてもらって、またそういう人に集まってきてほしいと思う。ここが私たちの生産のキーを握っていると思うんだ。

仕事は体が2割、頭が8割。

職場に行く前から既にやることは決まっていて、体を使って2割を体現していくだけ」

なるほど、頭を使わずして仕事はできない。しかも8割が仕事の外でインスピレーションを受けたりして決まっていく。2割はシンプルにアウトプットということですね。


「現場でも頭が働かなければ、なんぼ体が丈夫でも2割の仕事しかできない。
“百姓は馬鹿でもできる”と言われた時代もあったが、今は違う」


そうですね、農家さんは仕入れから生産、販売、マーケティング、経営も何でも全て自分でやらなくてはならないわけですから、オールマイティで頭の良い人でなければできることではありません。


「でも、うちの場合は例えば従業員が100人いたとしても、自分で考えて植物を育てられる人は片手ほどもいない。指示しなければ水をやることすらできない。」


会長もなかなかお仕事に厳しい方とお見受けしました。
それだけご自身に厳しいことを課して、実行してきたが故のことでしょう。厳しい実情を踏まえ、これからはもう従来のようにはいかないと、将来を案じます。


皿井植物園さんの未来は?


雇うことと育てること。一人ひとりの能力を開発すること。これが今後のカギを握る!」


つまり“人”ということですね。
どういう方に来てほしいと思いますか?採用されるときはどのようなところを見ますか?

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「優しい人に来てほしい。他人と植物と全てに対して優しい人。それはもうヘルパーの気持ちでね。

植物は自分力では歩くことも食べることもできない生き物。自力で身動きの取れない人をお世話するのと同じ。
植物を扱う時も乱暴にするのではなく、優しくいたわれる人であってほしい。

そして、そういう人たちをまとめる立場の人になってほしいから、頭のいい人に来てほしいと思う。
通知表で“5”ばかりという意味ではなくて、“常に考えている人”ってこと。全てのことには意味があるのだから」


というお父上のお考えの一方で、社長の喜清さんはご自身の方針を明確に持っています。


「一人ひとりの技術を高めていくことは必要。だけど、もっと大切なのは、個人の能力に頼らなくても同じ品質の物を大量生産できるという仕組み作りだと思うんだ」


なるほど、誰でも同じように生産できる仕組み作りですね。


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「昔は生産の品種数が少なかった。生産効率もいいよね。
だけど、現在は嗜好の多様化から生産品種が多くないといけない」

観葉植物も切り花と同じで少量多品種ですね。消費に目を向けた品種のラインナップが必要です。


「となると、例えば5品種を一つの施設で温度とか光量とか同じような環境で育てないといけなくなるよね。だけど植物の性質や対応はそれぞれ異なる。管理が大変だし、対応も難しい。結局一人の能力に頼らざるを得なくなる。だから会長はもっと従業員一人一人の能力や技術を向上させたいっていうわけだけど、私としてはそれをいかにシンプルに行っていく仕組み作りをするかが課題だと思っている」


これは一見逆のことをおっしゃっているように見えますが、まったく矛盾していません。
消費の多様化でそれぞれの植物に合った管理をしていくこと、また誰でもそれができるように、仕組み作りをしていることは、植物の大規模生産を行う上で企業にとって必要条件でしょう。

しかし、誰でもできるようなしくみがあったとしても、一人ひとりの意識が低く、言われたことだけをやっていては、植物を育てることなどできません。
気象状況は毎年変わりますし、植物は工業製品ではありません。些細な環境や状況の変化に気付いて対応する力。これは仕事に携わっている限り、どのようなポジションであっても必要とされていることかと思いますが、植物栽培であれば、なおさらそれが必要なのです。

誰でもできるようしつつ、従業員一人ひとりが考える力を付ける。
これが会社のボトムアップに繋がることはどの企業でも言えることではないでしょうか。

新しい消費形態の時代に生まれた新しい課題。そこに取り組む若社長!
皿井植物園さんは観葉植物を作るだけでなく、栽培の仕組み作りにもチャレンジしています!



いろいろと皿井植物園さんのポリシーやリバイバル大作戦について教えていただきましたが、これらの苗はどこから仕入れるのですか?
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「マッサンやユッカなどの観葉植物の原木はコスタリカから、パキラやミリオンバンブーは中国・台湾から、チューリップやヒヤシンスの球根はオランダから仕入れるんだ。」

もしかしてご自身で海外に行って買い付けていらっしゃるのですか?

「いやいや、そこまではできないよ。私たちは生産
ほとんどは私たちのビジネスパートナーさんから購入するんだよ」

どこか輸入されているパートナーさんをご紹介いただいてもよろしいでしょうか?

「いいよ。ひとつは豊橋にある株式会社タクトさん」

あ!なんと、ちょうど豊橋にあるのであれば、えーい!行ってしまえ!トツゲキ探検隊!!
探検隊の血が騒ぐぅ~!いざタクトさんへGO――――!

来てしまった・・・突然すみません。ウンチク探検隊改め、トツゲキ探検隊と申します。

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ムチャな訪問にもかかわらず、ご親切に迎えてくださったのが、株式会社タクトの代表取締役社長西川滋(にしかわ・しげる)さんです。
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タクトさんの主な業務は、球根・苗・観葉植物の原木等の輸入販売のみならず・・・
● 鉢物コチョウランなどを中心にした花きの生産出荷、販売
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● 切り花商品(ブーケやアレンジメントなど)の加工、卸

● 輸入した球根のパッキング(↓このパッキング機械は国内でも3社くらいしかもっていないのだとか)
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などなど、幅広くビジネスを展開されています。

そもそもどうしてタクトさんという会社が生まれたのでしょうか。

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「私は20代の頃は大阪で繊維の輸入業務に携わっていてね。そこで貿易のノウハウを培い、29歳の時に出身地の豊橋で今の会社を設立したんだ。


幸福の木が売れている時に、コスタリカに原木があるって聞いて、独りでコスタリカに発った」


その時西川社長はおいくつくらいだったのですか?

「31歳くらいかな」

まだ中南米の情報など入手しにくい時代。未知の国に独りで行くのは怖くなかったのですか?

「今のようにネットもなかったからね。まずマイアミまで行って、そこからどうするか考えた。
ロサンゼルス経由で、そこからメキシコシティ→エルサルバドル→ガテマラ→コスタリカというルートで行ったこともあるよ(笑)。

六カ国語辞典を片手になんとかコスタリカの種苗会社と取引できるようになった」


すごいバイタリティ!!


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「皮切りが中米でなんとかうまくいったから、その後海外の取引開拓の自信になったと思うよ。
でも、逆に国内の営業は若かったし、できたばかりの会社だし、生産者さんの間では知られていなかったから、信頼されて取引が始まるまでに時間がかかった」

どうやって信頼を獲得したのですか?

「生産者さんのところに毎日通うとか、お客様のご要望を何でも聞くとか・・・そうやって困っているお客様のリクエストを“なんとかしましょう”と引き受けてお役立ちしてきたことかな。

なんとかしましょうとご要望を叶えるうちに、こうして業務が多岐にわたるようになったんだ」


タクトさんの特色は何ですか?


「生産側と販売側とにたくさんの繋がりを持っている。
大田花きにも出荷者として、また同時に買参人としても登録している。だから、川上と川下の両方の意見を聞くことができ、それをマッチングさせることもできるんだ。」

ワオ!種苗供給会社でありながら、大田花きの出荷者さんでもあり、また買参人さんでもあるなんて・・・どうも、いつも大変お世話になっておりますm(_ _)m


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「それから、差別化として他社にできないような仕組みを作らないと生き残れないよね。
シンプルなブローカーだけなら誰でも真似できる。私たちはブローカーでスタートしたけど、今ではそう簡単には付いて来れないような機能が備わったと思う」


そのタクトさんは、この7月から第30期がスタートします。30周年おめでとうございます。
会社にも寿命があり、30年が一つのターニングポイントなるという説もありますが、30周年を迎えた今、どのように思われますか?

「やっとスタートラインに立ったと思うよ。当社の場合はスタートがゼロだったから、まだまだやることはたくさんある。30年続いたということは、ひとまず業界で認められたということかなと思う。ここからが心機一転、もう一度スタートしたいと思う」


2012年、タクトさんは再スタートを切ります。



★皿井植物園の格言!

① 品質の良い観葉植物は、良いリレー栽培から生まれる。
  リレーする段階で誰かが自分だけ儲けようとすると、ずみが出て、良いものを安定的に供給することはできません!そのためには良いビジネスパートナーを持つこと。

 フェアーに仕入れて、フェアーに販売!
 良いリレー栽培をするには、よりよいリレーションシップを構築することが大切!
 (あー、オヤジギャグ最近毎回やな~。スミマセン^_^;)


② “お客様が求める商品を、買いやすい価格で、安定的に供給し続ける”---これがモットー!
そのためには、オートメーション化と同時に従業員一人ひとりの能力開発を行うべし!


pachira.gif★名前の由来と管理方法

みなさん、今回の記事に出てきた「マッサン」という名前、耳にしたことありますか?
初めてこの名前を聞いた時は、アタクシも「“マッサン”てなによ?!」と思ったものでしたが、マサヒコさんかマツイさんのニックネーム・・・ではありません、はい。

“マッサン”とはドラセナ・マッサンギアナの略名で、別名「幸福の木」。こういえばピンとくる方もいらっしゃるかもしれません。
ではなぜ「幸福の木」なのか。
どうやら、それはハワイでは、マッサンを玄関に置いておくと幸福になると言い伝えられているからだそうです。
なるほど、マッサンはラッキーツリーなのですね。

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マッサンの管理方法
暖かいところが好きなので、エアコンの冷風や冬の冷気に当てないよう気を付けてください。
最低気温は15度くらいを目安に。 また、夏の直射日光に当てると葉が焼けてしまうので、室内でお楽しみいただくのがお勧めです。

水やりは、やりすぎるくらいなら、乾いている方が◎。水をやりすぎると、根腐れを起こし、栄養を吸えなくなってしまいます。葉に異変が現れたら、既に根がダメージを受けている可能性大!設置場所にもよりますが、夏でも1週間に1回水をやれば十分。水をやって根を傷めるくらいなら、極力やらない方が安全。

10月以降は2週間に一度でも大丈夫かも。愛情過多は禁物系植物なので、冬場は放置系がお勧めです(*^-^)ノ
でも寒いのはダメ!


では、「ユッカ」って何?「ユッケ」と似ているけど肉じゃないし、「ユカちゃん」でもないし?何語??

はい、お答えいたしましょう。
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「ユッカ」とはその学名をユッカ(Yucca)・エレファンティペスといい、別名「青年の木」とも呼ばれます。
なぜ青年の木かというと、若い芽がつぎつぎと芽吹いてくるからなのだそう。命名の父はなんと皿井勝喜会長。

リュウゼツラン科です。アガベとかサンスベリアなどもリュウゼツラ科なので、比較的暖かいところが好きな植物ですね。アガベといえばテキーラの原料ですし、テキーラといえばなんといってもメキシコ!
管理方法は、メキシコのイメージで!!ってどんな?
水やりは1ヵ月に一度くらいでもOK!乾燥には比較的強いけど、水のやりすぎや寒いところはNGです。1-2月に暖房を切り、5度以下になる場合は要注意です。


そして最後に「マジナータ」。
“マジ、アナタ??”ではありません。本名はドラセナ・コンシンネ・マジナータといいます。愛称は「真実の木」。こちらも会長が命名されました。

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ハワイで生まれた幸福の木のように、縁起の良い名前の方がいいだろうという会長の思いがこもっています。
こちらもリュウゼツラン科。原産地はマダガスカルですから、やはり暖かいところ好き♪
水のやりすぎよりは乾燥気味にしておいた方がいいでしょう。


pachira.gif★おまけ

最近の研究結果によると、観葉植物をオフィスに置いておくと、以下のような効果が期待できるそうです。(Dutch Flower Councilより)

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・ 空気清浄効果

・ 心の鎮静効果
・ 仕事の効率アップ
・ 健康維持
  (湿度を保つことによるドライアイや乾燥肌、のどの痛み、頭痛などの防止)

・ 騒音吸収

・ 癒し効果
  (同じ症状の入院患者であれば、緑の見える部屋にいる患者の方が、回復が早いという実験結果も出ている)


もちろん観葉植物と一口にいっても何を置くか、また置いた植物のコンディションにもよると思いますが、観葉植物を置くことによるメンタル的な効果がいろいろと発表されています。

心と体の健康のために、是非身近にグリーンを置いて楽しんでくださいませ~(*^-^)ノ


まずい、今回も長くなりすぎてしまった(+_+)スミマセン
いつも気長に最後まで読んでくださるウン探読者のみなさま、どうもありがとうございます!


次回を是非お楽しみに❤



<写真・文責>:ikuko naito@花研illust2018_thumb.jpg


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