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2012年9月24日
vol.97 JA利根沼田 片品村支店(群馬県) アジサイ(後編)
前編からの続きで片品村です。
次にお邪魔したのはアナベルの桑原ゑみ子(くわばら・ゑみこ)さん。
標高700メートルほどのこの土地で栽培しています。圃場の外では黄金の稲穂が首(こうべ)を垂れます。
一方、圃場の中では今か今かと出荷を待つ完成度の高いアナベルたちがひしめき合っています。
う~ん、あまりにも立派なアナベル、もうなんだかアフロヘアに見えてきました。
アフロもええけど、一体、何センチあるのでしょう??
■直径30cm以上のアナベル
どれどれ・・・
ぬあんと、驚異の40cm越え∑(≧∇≦)!
片品村では、30cm以上を3L、25cmから30cm未満を2L、20cmから25cm未満をL、15cmから20cm未満をMと規格しています。
しかし、ゑみ子さんの圃場では3L超級の大物揃い!!
■アフロなで回し法
圃場でゑみ子さんの動きを見ていると、なぜかいい子いい子とアナベルをなでて回っています。何をやっていらっしゃるのでしょうか。
「こうやってね、いい子、いい子って頭をなでるの」
単にアフロヘアをなでているように見えますが、これは大変意味のあることなのです。
それは---
① 換気目的。いい子いい子しながら空気を通してやり、蒸れをなくして、腐敗や虫付きを防ぐ。
② ゴミを払う。手でなでながら、ゴミを払っている。茶色のガクを取り除く。
③ ひとつひとつのクオリティをチェックしていく。なでながら一輪一輪と向き合う。
“アフロなで回し法”とは、一見誰にでもできそうな簡単な作業のように見えますがとても重要で、目の肥えたゑみ子さんならではのマネジメント業務も含んだ行為なのです!
出荷の際は、アフロを上から見るだけでなく、必ず裏からも覗きこむ。そしてゴミがなければ、出荷OK!
■風の谷のアナベル
ゑみ子さんの圃場のすぐ横には、清流の流れる沢があり、大変気持ち良い風が吹きそよぎます。この沢では岩魚や山女などのいい魚が釣れるそうですが、よく見れば沢の岩は一枚岩。地盤がとてもしっかりしているんですね。
(片品村の生産者さんの地盤もしっかりしています!)
「アナベルの栽培に風は必須条件。沢からの風が大切なのよ~。空気が滞ると灰色かび病の原因になりかねないからね~」
まさに“風の谷のアナベル”。
灰色かび病とはいわゆる“ボト”のことです。バラやトルコギキョウなどでよく見られる細菌性の病気で、これにかかると黒い斑点が花弁に表れます。加湿の状態で発生しやすくなる性質があります。
ちなみに、ここゑみ子さんの風の谷では、隣の畑で満開を迎えた××の花が一面に咲き乱れます↓↓↓
××とは↑この白い花のこと。さて何でしょう??
ヒント:アナベルのソバに咲いている花です。
勘の鋭いウン探読者の皆さまはもうおわかりですね。蕎麦(ソバ)の花です。
失礼いたしました・・・。
■遮光
はい、もう一度遮光です。アナベルにももちろん必要。
アナベルはもともとフレッシュの状態では白いガクをしています。
それが8月くらいから花粉が落ちる頃になると徐々にガクがしっかりして、色が載ってくるようになるのです。
こちらでは遮光は80-85%。同じアジサイ類といっても、ミナヅキやライムライトとは遮光加減が異なるのですね。それぞれに研究し尽くされた結果なのでしょう。
「そう、濃い緑を出すためにはこのくらい遮光しなくちゃいけないのよ~」
とゑみ子さんはいいます。
■圃場に入ったら、まず何を見る?
ゑみ子さん、朝圃場に入ったら、まず何を見ますか?
「葉を見るのよ。
葉を見て、水が足りているかどうかを確認するの。葉が垂れていたらパイプで水やり。
葉を見た後に花の艶を見るのよ」
アナベルは水やり作業があるようです。こちらがその潅水パイプ。
まず葉をみて健康状態をチェックして、次に花をの艶を見てご機嫌を伺うといったところでしょうか。
採花はどのようなタイミングですか?
「午後2時30分から3時の間にするの。
すぐ桶に入れて群馬のおいしい水を2-3時間飲ませるのよ。
午前中に切るとなぜか水が上がらずに、葉が垂れてしまうの」
“なぜか午前中に切ると水が上がらない”というゑみ子さん。
ほぉ、これは何か植物生理学に関係しているのでしょうか。なぜかはわからないと言います。
理論はさておき、全ては経験に裏打ちされた結果なのです。
■選別
出荷の時は葉を3枚残して農協に持ち寄ります。
はい、ここを見逃してはいけません。
“葉を3枚残して農協に持ち込む”のです。
農協の集出荷場ではその葉を見て(花ではなく!)、水が十分に上がっているかどうかをチェック。
その葉がピンとしていなければ、農協から先に出ることはありません。
水が上がっていれば、その葉は全て選別者が取り除いて、葉が付いていないアフロの状態だけで出荷するのです。
つまり、葉は水が上がっているかどうかのリトマス紙としての役割のためだけに残して農協に持ち込むのです。
更に!
その選別は生産者さんとは何の利害関係もないパートさんたちが行います。
部会長の出荷物であろうが、新人生産者さんの出荷物であろうが、全て同じ基準で第三者によって仕分けされるのです。
そうおっしゃる農協の星さん。
え~、星さん、そんなことおっしゃって、実はそのパートさんが生産者さんの奥さんだったなんてこと、よくありますよねぇ~( ̄ー+ ̄)ニヤリ
↑わざと意地悪な質問。
「あはは、片品村はそんなことないよ。みなさん、完全に第三者。徹底的にフェアにやっていくし、厳しく選別していくんだ。
“そこまでしなくても”っていう声もあるけどね。でもこの厳しさも必要」
この選別の厳しさがあるからこそ、毎年驚異のクレームゼロ!
スゴイ!∑(゜◇゜;)
このような高級品、しかも繊細な高級品
且つシーズン物でクレームゼロですか!
しかも片品村は共選共販です。
共選共販とは、各農家さんが生産したものを出荷所へ持ち込み、全員同じ基準で企画を揃えて出荷するということです。
(作業後の選別所の様子) (片品村の広い冷蔵庫)
枝物という特殊な品目で共選共販というのは大変珍しいのです。
その理由は!( ^―゜)b
枝物というのはひとつひとつの個性が大変出やすい商材ですね。その個性が良かったりもするのですが、片品村はその個性が出やすい枝物で、35軒いらっしゃる生産者さんの規格を1つに統一し、厳しい選別基準をくぐりに抜けてご出荷されているのです。
まあ、実はそのディレクションもこの星さんの腕によるところが大きいのです。
↑決して全面に立ってぐいぐい引っ張っていくのではなく、片品村の協調を重視しつつ、要所要所で的確なアドバイスを行い、片品村のブランド化を実現する星さん。
今の片品村があるのは、星さんの手腕によるところが大きい。片品村の影の立役者。
「枝物の生産者が何十人いても、どのお客様がどの箱を開けても同じという信頼を得たいと思っているんだ。チームで団結して喜ばれる花を作っていきたい」
という星さん。ここが片品村がキラリと光る理由なのです。
はい、ココで片品村3軒目の石橋範明さん。奥様と一緒に主に秋色アジサイを生産出荷しています。
こちらの石橋さんご夫妻は、標高850メートルほどの高原において、てまりアジサイの在来品種を秋色に仕立てます。
実はお二人は千葉県ご出身。そもそもは片品村のスキー場に働きに来て、アジサイに魅せられてそのままココに住むことになってしまったという面白い経歴の持ち主。
大のアジサイ好きで、ご自宅の前はアジサイストリートと化しています。
秋色になるプロセスはどのようになっているのでしょうか。
「日が当たるところは、“アントシアニン”が出やすくなって、赤くなるみたいよ」とおっしゃるのは奥様の順子さん。
(日に当たったところは紫色に変化、↑ガクが重なり日が当らなかったところは緑色のまま)
結果的に・・・こちらをご覧ください。
同じアジサイでも日が当ったか否かで、同じ球形の中でもこのように色の差が出てくるのです。
「同じ品種なのに、光の加減で色々な色を演出してくれるのよね。場所が違うと全然違う」
と奥様。
秋色アジサイに必要なものは、
① 日照量
つまり「日焼け」が大切なのです。
② 湿度
高原ならではのこのカラッと加減!
③ 寒暖の差
片品村では日中は30―33度、夜は15度になります。
片品村では、この①―③を特別に人の手でコントロールすることなく、アジサイの栽培にいいように片品の自然によって管理されているのです。
①の日照量ですが、アジサイのあの美しいグラデーションは、日焼けの賜物なのです。
でも西日はNGx_(・ェ・)ダメダメ
石橋さんのところは、午前中の太陽はウェルカムでも西日を除けるために、このように遮光をしています。
「その奥はカラマツによる自然の遮光をしているんだよ」
なぬ??自然の遮光?どういうことでしょうか。
ふと上を見上げると・・・
あ、ほんまや~。自然の遮光ができとる(≧∇≦)/
ここは、カラマツ林を石橋さんの手で自らアジサイ栽培用に切り拓いた場所。
西にカラマツ林を残して、このようにカラマツによって自然に遮光するようにしています。なるほど、石橋さんのお名刺には“秋色アジサイと暮らす日々”と書いてあります。
「アジサイを生産する」というよりは、自然の中で共に生活しているという感覚なのかもしれません。
石橋さんのところは、カラマツの森の自然の腐葉土があるため雑草もあまり生えず、何も肥料を与えずとも、ふかふか柔らかい理想的な土が自然のうちにできているのです。
「アジサイは土壌が酸性になると青っぽくなって、アルカリ性になると赤っぽくなるでしょ。
でも赤っぽくなると秋色の発色が悪いから、青から作って秋色を出すんだ。
ここ片品の土は火山灰土でできているんだからアルカリ性になりやすい。そこで、酸性にするのに普通は肥料を入れるんだけど、ウチはカラマツの腐葉土が自然にできるからこれが天然の肥料になる」
火山灰??
えーとσ(゚・゚*)ンート・・・、浅間山(あさまやま)ですね!( ^ー゜)b
上毛カルタでいうトップバッター「浅間のいたずら 鬼の押し出し」。浅間山は標高2,524メートル、現在でも活発に火山活動をしています。
「そう、浅間山などの火山灰でできているから、水はけもいいし、水持ちもいい。
アルカリ性は自然の腐葉土で解消出来るんだ。
地力があるから大きいアジサイができる。あとはこの気象条件だよね。
①日照 ②湿度 ③寒暖差これが三拍子揃わないといいものはできない」
木々の紅葉に合わせて、自然の力を借りて徐々に変化してくのが私たちのアジサイ。
アジサイは簡単に収支が取れるものではないけど、私たちの夢なんだ。アジサイだけで食べていきたいっていうね。
今は労力を先行投資していると思っているんだよ。
新商品のスターバーストも出るから、こちらもよろしく!」
↑スターバースト
なるほど、石橋さんのこの笑顔ですよ。
正真正銘のフラワーピーポーですね。
石橋さんの圃場でそのようなお話しを伺い、あまりの気持ち良さに土を踏みながら、どんどん山に分け入っていったウン探でしたが、ふと我に返り・・・
あ、ヘビ出ませんよね?!
「ヘビは出ないけど、クマは出るよ!」
なんと、ギョギョーーーーーッ∑(゜◇゜;)
ク、クマですか・・・!
そういえば、これはなんだか不思議な倒れ方をしている・・・
よもやクマが“ごろん”か。
クマは基本的には夜行性のようですので、昼間のうちはまず大丈夫。
片品村を夜散歩する時は、クマに注意です!
今年で枝物生産12年目という片品村。
以前はトマトなどの野菜中心だったと言います。
ところが片品村のキーパーソンで星さんが東京の市場に研修にいらしてからというもの、枝物に目を付け、作付けを始めたことが枝物生産のきっかけとなりました。
初めは18人だった枝物も現在は35人、花全体でいえば63人にまで増えました。
標高と立地条件に合った品目を選んだ星さんの目論見は大当たり☆☆☆(←星三)
このように片品村は個人の高い技術とチームワークとで、全国に誇るアジサイを出荷しているのです。
【片品村の格言】
・ アジサイ類は水が好き。
でもミナヅキなどのピラミッドアジサイは、“片品村理論”に裏打ちされたオリジナルハウスで、水やりは朝露にお任せしよう!
・ アナベルはわが子のように“いい子、いい子”して空気の流れを作ってあげよう!病気も防げるし、クオリティチェックもできて、一石二、三鳥!!
・ 秋色アジサイに太陽の恵みを!日焼けで美しいグラデーションを作るべし!但し西日はあかん!
・ 個体差のある枝物といえども、規格は全員で統一。徹底した選別でパーフェクト産地を実現すべし!
・ 片品村という高原で、自然の恵みを最大限に生かして生産すべし!
2012年9月23日
vol.97 JA利根沼田 片品村支店(群馬県) アジサイ(前編)
この時期大田市場の仲卸通りを歩いていると、威光を放ちながら店頭に並べられているアナベルやピラミッドアジサイたち。
あまりにも大きな存在感に驚いて、どこからきているのかスリーブのシールを見れば「片品)JA利根沼田」と書いてある。
大田市場の中央通路の展示でも、圧倒的なインパクトを残しているではないか!
おっと、これはウンチク探検隊に新たなるミッションが生まれた気配です。
花ファンの皆さまのためにも、このアジサイがどこでどのように作られているのか、旅に出なくてはなりません!
重要な使命を背負って、ウン探いざ出陣です!
やってきたのは、うん探読者の皆さまならもうお馴染みの“鶴舞う形の群馬県”。
(↑群馬県民なら全員暗唱している「上毛カルタ」)
新幹線で高崎を過ぎて次の駅「上毛高原」。
なるほど、ここは日本でも屈指の温泉メッカか。
と思いきや、目指す場所はここからさらに1時間車を走らせた群馬県利根郡片品村。
ココはどういうところかというと、かの有名な尾瀬の群馬県側の入り口にあたります。
尾瀬は群馬県・福島県・栃木県・新潟県の4県にまたがる湿原で、いわゆる「表玄関口」と言われる群馬県側の入り口があるのが片品村なのです。
今まで片品村をご存知なかったあなたも、片品村は全国的に有名なところだということがお分かり頂けたかと思います!
そう、今回あの威光を放つグリーンアナベルなどのアジサイ類は、ここ片品村にあるJA利根沼田の片品村支店の生産者さんによって作られているのです。
農協名は以前JA片品村だったのですが、農協の合併でこのような名前になりました。
以下「片品村」と呼ばせて頂きます。
ここ片品村の近くには岩鞍スキー場があるほど冬場は雪がドカドカ降る。
「日中でもマイナス10度なんて日はザラにあるんだ。12月下旬から3月下旬くらいまではよく降るよ」
教えてくださったのは、JA利根沼田の星信弘(ほし・のぶひろ)さん。
では、ここで花を生産される方は豪雪をどのように捉えているのでしょうか。
「夏場に農業で稼ぐ我々としては、豪雪にもいいこともあるんだ」
例えばどのようなことかというと・・・
① 土壌が偏栄養になりにくい
雪が溶けていく時に塩分などが流され土壌がキレイになる。
すると、植物体が畑に入れた肥料を偏りなく吸収するから、こちらが期待した通りの効果が出やすい。その分良い品質の物を作ることができるということです。
WOW!ラッキー(≧∇≦)!
さすが高原片品村!
② 連作障害が起こりにくい
①のような理由により、結果連作障害も起こりにくいというわけです。
さすが自然を味方につけた片品村オリジナル農法。
③ 花芽を守る
雪の中に埋もれたアジサイたちは程良い湿度の中、寒さから新芽や花芽を傷めることなく、雪の中で守られる。
これが標高が高くても雪が降らないところだったりすると、寒さにやられてしまうんだなぁ~。
村内は標高700-1,000メートルくらいに生産者さんが点在しているので、それぞれの標高に適した品目を選んで作付しています。
また、同じ品目でも時期をずらしながらリレーして出荷できるため、出荷期を長くできることがメリットです。
まずお邪魔したのは、標高800メートルの高原でアジサイのミナヅキとライムライトを中心に生産される花き生産部会長の星野一郎(ほしの・いちろう)さん。そのほかにもアナベルや秋色アジサイ、スモークツリーなどを生産しています。
こちらはその星野一郎さん。
あ、あれ?どこかで聞いたようなお名前ですが・・・
そうか、銀河鉄道999の主人公が星野鉄郎だったかな。
ココは夜になれば星もきれいに見ることができそうだし、もしかして銀河鉄道999の発着地点て片品村だったのか??
星野さん、星野鉄郎さんとご親戚か何かですか?
「知らない」
あは~・・・^_^;
そうですよねぇ~。唐突に大変申し訳ございません。
夢と現(うつつ)とが混乱しがちな最近のウンチク探検隊を、現実にググッと引き戻してくださいました。
ググッと戻ったところで、アジサイ生産の真髄に迫りましょー!
こちらは星野さんのミナヅキとライムライトの圃場。
“豊満”と形容したくなるほどたわわに花が付いています。
わお~、どれどれ。1輪は何センチくらいあんのかな。
驚異の40セ~ンチ!みなさん、お手元で40センチがどのくらいか測ってみてください。
それを縦にしてみると、40cmの立体の花がどのくらい圧巻か、想像していただけると思います。
アジサイは頭が大きくなると、首を垂れて倒れてしまいます。
その時に花と花がぶつかると、そこに湿気がたまって腐敗の原因になっていまうので、このように花をあっちとこっちとで固定して、ぶつからないようにしています。
これひとつ大事な点ですね!
う~ん、何の仕掛けもなさそうですが、どうしてもこのアジサイを留めているテープが気になる・・・ムム、どうしてでしょう。
星野さん、このテープは普通のテープですか?
「普通のテープじゃないよ」
やはり!キラーン( ̄∀ ̄*)
「生分解するんだ」
生分解するテープ?
世の中、何でも土に還るように開発されているんですね~。スゴイ!
「そうだよ。ほら、最初はしなやかな普通のテープ、これでアジサイの枝をフラワーネットに留める。
このままじっとしていると固くなって、
アジサイを出荷し終わった頃にはパリパリボロボロに砕けるんだ。
最後は下に落ちて土に還るというわけ」
にゃるほどぉ~(≧∇≦)
さすが、持続可能な農業を実現していらっしゃいます!
■潅水は?
アジサイの別名はハイドランジア=「水の器」というくらいですから、アジサイ類は何をとっても水が好き。
潅水は大変だと思いますが、自動で行われたりしているのですか?
「潅水はしてない」
え??
“し、してない”??∑(゜◇゜;)
アジサイは水が好きなのに、水やりをしないってどーゆーことですかッ??
「このハウスに仕掛けがあるんだ」
このハウスね~・・・何も仕掛けがないように思いますが、確かにあまり見たことのないサイズかもとか、そのくらいしか気が付かないな~^_^;
「これは幅2.5メートルの片品村用特注ハウスでね」
とッ、特注ですか!アジサイ専用の?
「そうだよ、これのお陰で水をやらなくてもいいんだ。屋根に雨や朝露がこの袖の部分に溜まって、徐々に下に落ちていくんだ。これは片品村のオリジナル手法だよ」
おっとぉ、それで地面を自然に濡らしているから、潅水は必要ないわけですね。
むしろ、潅水をすると生長が促進されてしまい、締りのある良いものができなくなるのだとか。
「地面は乾いているように見えるけど、ちょっと掘れば十分に湿っているし、根はここまで来ているからね。
ウン探さん、よく見てってよ。ここまで根が来ているんだ」
と地下足袋を履いた足で示す星野さん。
「この土の中もしっかり湿っているよ!」
んまった~、星野さんたら!
こんなに表面が乾いて見えるのに、この中が湿っているわけ・・・
「ほら、見てごらん」
あ、ほんまや!!湿っとる!!w( ̄Д ̄;)wワオッ!!(驚きのあまりいきなり関西弁)
表面は一見乾いているように見えても、表土を1センチめくると、湿った違う色の土が出てきたのです!
「あ、見えた。ほれ、これが根だよ」
え!?この白いひげみたいのが・・・ですか?
「そう、これが株からぴょろろ~んて伸びてここまで来ている。深いところにはもっとしっかり根が張っているよ。古い根ほどよく張っている」
Σ(゚д゚;) ヌオォ!?ひょえ~。ちょっと掘っただけで根の先端がチョロチョロと。
しかも掘れば掘るほど根っこがジャンジャカ出てくるぅ~!
貴重なものを見せていただきました。
片品村オリジナルハウスを以ってして、潅水は邪道であるということが納得できました。
「その水が届いて、根が十分に張って、ハウスの中の方まで水をやらなくてもいい距離っていうのが、2.5メートルなんだ。
昔は2列で植えたりもしていただけど、2列は混み過ぎてダメ。そこで結果的にこのスタイルがいいということが分かった。
ハウスの天上のカーブもほかのものとちょっと違う。パイプも丈夫だし、全てが片品村オリジナルなんだ」
ちょうど取材に訪れた日は、9月7日で二十四節気のうち、白露に当たります。
白露とは「大気が徐々に冷えてきて、露ができ始めるころ」。つまり、星野さんのところでは、この露を使って栽培しているわけです。
でも、白露が来る前の真夏は露ができないのでは?
「大丈夫、真夏でもできるんだ。ここは高原だからね。朝露は毎日のことだよ」
Oh,イッツ・ミラコー!(←ミラクル)でございます。さすが高原!
考え抜かれた手法と理論に裏打ちされた数字。片品村ならではの黄金律が隠れていたのです!
■遮光
アジサイ類は、遮光も大事。
うまくいくかどうかの成功ラインは「遮光率40%」だといいます。
遮光率40%て結構遮っているように思いますが、このくらい遮光しないとミナヅキは焦げてしまいますキョエ~!!
って、火は出ませんよ。念のため。
ガクが焼けてしまってきれいなピンク色にならないということです。
ところがだからと言って、遮光率を上げて光が届かなくなると、ガクがもろく、ふにゃふにゃに・・・柔らかすぎてしっかりとしないわけです。
「モヤシの原理と同じだいねー」と星野さん。
この40%も、たった3年前に結論付けられた数字。
10年前に始めたミナヅキの生産も、何とそれまでは遮光30%くらいだったそうです。ところが、太陽の活動が活発化した現在では、30%ではうまくいかなくなったのだとか。
「5-6年前から、“あれ?”と思い始めてね。30%と50%とトライしてみたけど、両方うまくいかなかった。我々にとっちゃあ1年に1回しかチャンスないし、気象条件も毎年少しずつ違うでしょ。やっと3年前に40%がいいということがわかったんだ」
このきわどいパーセンテージでうまく“遮光”されたミナヅキだけが、晴れて“社交”の場に登場するというわけです。
あはは、ダジャレマンめ、今回も登場したか。
■ライムライトの構造をチェック!
ライムライトやミナヅキは1株から15本くらい枝を立ち上げます。
“その気になれば”もっと立ち上げることはできるのですが、1輪のサイズが小さくなってしまうので、ちょうどよい大きさにするために15本という数字が◎
株が持っているエネルギーは5本立とうが10本立とうが同じわけですね。
そのエネルギーを5本で割ればそれだけ1枝に与えられるパワーが大きくなる。10本ならその分1本分のエネルギーが小さくなる。というだけの大変シンプルな理論です。
そして、私たちが思う“1輪”の構造はどうなっているのかというと・・・
じゃじゃーん!(ツボミの時点で見てみましょう)
1段に3輪小さい花序が出て、それが3-4段ある。
つまり小さな12輪が集まって大輪1つを形成しているわけです。
またその小さな一輪の花序は更に小さなガクの集まり。まさにスイミー的先方で圧倒的な存在感を演出しているのです!
■高原栽培
片品村の枝物生産者さんは、標高700-1,000メートル周辺で栽培しています。
星野さんのところも夜温は真夏でも15度くらいまでストン!と落ちます。
あ~、高原だなぁ(´∀`)・・・全く以っていい所です。
夜温が下がれば、昼暑くてもそれだけ植物もゆっくり体を休められるので、株がしっかり出来上がってきますし、色も載るようになってきます。
なるほど、このクオリティは高原という片品村の特性を生かして作られているのですね。
■星野さんにとってアジサイの魅力は?
「製品になるまでどんどん表情を変えていくのが魅力だな。
ライムライトであれば緑から白、白からピンク。ミナヅキは白から緑、緑からピンク。アジサイの別名を七変化っていうけど、本当にその意味がわかるよ。」
そうです、皆様も良くご存知の通り、アナベルやこれらのミナヅキなどアジサイ類は一見花に見えるこの部分は実はガクなのです。
本来の花は、小さくて大変観賞価値が低く、花期もすぐに終わってしまいます。色が変化して様々な表情を見せるのは、このガクの部分。そのままドライにしても形を保ち続けます。
あ!このあたりは既にピンクがかっています!
大きな三角形ができてから、ピンク色になるまでなんと2カ月くらいかかります。ここがほかの花きとは違うところ。気長に色の変化を待ち、出荷まで大切に育てないといけないのです。
確かに、星野さんは気長で優しそうなお顔をしていらっしゃいます(*^-^*)
「アジサイ類は水がなくても長い間持つもの。だから1本単価が一見高いと思っても、実は長い間楽しめるから、決して高いものではないんだよね。だから買って長く使ってほしい。
ちなみに水揚げは外側の厚い皮をむいて、タコ足に割くといいよ」
と、星野鉄郎の親戚ではない星野一郎さんは消費者の皆さんにメッセージを送ります。
これからの季節は、同じミナヅキでもグリーンではなく目が覚めるほど鮮やかなピンクに色づいたミナヅキが登場します。是非片品のピラミッドアジサイをお楽しみください。
・・・JA利根沼田 片品村支店 後編に続く・・・
(後編は、アナベルの桑原ゑみ子さん、秋色アジサイの石橋範明さん、そして、片品村の格言です!)