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2013年2月15日

vol.99 石井フラワーガーデン(埼玉県)

ボンジョールノ!

みなさま、ごきげんよう!(≧∇≦)italy_mw.gif


・・・と、すごいテンションで始めてしまいましたが、今回は記念すべき第99回!


特集は石井フラワーガーデンさんのフリフリパンズィ~です。
フリフリパンジーだなんて、想像しただけで気持ちがフリフリ・・・あ、いえ、ウキウキしてしまいます☆

やってきたのは、埼玉県川口市。
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大田市場から道のりにしてちょうど50km。
すぐ上には、首都高川口線が走っています。その高架の存在は初めて見る取材班にとっては結構な存在感に思えます。
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この周辺一帯の4,500坪(路地2,300坪・温室2,200坪)にて、ムーランやペチュニア(八重)などをメインに栽培しています。


こちらが石井フラワーガーデンの代表石井正義さん。
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苗生産一筋25年!

んて、あら?石井さん、ぱっと見25歳くらいかと思いましたが・・・この若さの秘訣は最後まで読んでくださった方だけに教えちゃいます!


さて、早速石井さんのフリフリパンジーを見てまいりましょう。
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このフリフリパンジーにはきちんとした名前があります。

それは「イタリア貴族のスミレ ムーラン」☆☆☆
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ここでは、略してムーランと呼ばせていただきますので、ご了承ください。


"あれ?ムーラン・ルージュじゃないの?"と思われた方へ。
ここは語れば長ぁ~いストーリーがありますので、短めにご説明いたします。
石井さんは一度「ムーラン・ルージュ」で商標登録され、特許庁からも登録証をもらいました。

しかーし、イタリアの本家本元、あのキャバレーのムーラン・ルージュがダメーッ!と言ってきて、登録拒否権が発動され>>>早送り>>>早送り>>>早送り>>>ナンチャラカンチャラ・・・
mourinR0046.jpg(写真はフリー素材より)

早送り>>>最後には、特許庁から「特許庁も万能ではない」と言われ、一度登録されたにもかかわらず、登録取り消しを余儀なくされました。

そして新しく生まれた名前が「イタリア貴族のスミレ ムーラン」というわけです。登録商標でR。


但し、商標や特許に関する登録のしくみは面白いもので、日本の園芸界におけるムーラン・ルージュの排他権は石井さんが持っていることになります。

商標に関して申し上げれば、花の名前で「ムーラン」の権者は石井さんにありますので、石井さんちのパンジーにしか使ってはいけないことになっています。
他産地から「ムーラン」の名前でパンジー、もしくはほかの花きが出荷されていたら、それはいわゆる商標違反で「ニセモノ」ってやつですから、ご注意ください。
生産者のみなさまも、ムーランは商標登録されていることをココでひとつご留意くださいますようお願いいたします。

はい、本題に戻りまして、このムーラン、ただのパンジーではありません。
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これがいかに普通のパンジーと違うか、ご説明させて頂きましょう。

まず、ムーランをどなたが育種したかというと、イタリアのファーメンという会社です。italy_sw.gif

経営者のファミリーネームファラオネ・メンネーラ、Faraone Mennellaの冒頭部分をとって「Far+Men」でファーメン。


ファーメン社は知る人ぞ知る世界最古の種苗会社!ご存知なかった方は、今ココで知ってください!
所在地はイタリアのナポリです。
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ナポリは、直径50km以内になんと4つの世界遺産を擁する歴史と情緒に溢れるところです。


その4つとは、
◆ アマルフィー海岸(Oh―!織田裕二の映画を思い出す~)
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◆ カゼルダ宮殿(圧巻!マリア・テレジアもマリー・アントワネットも親子でまっツぁお。映画「スター・ウォーズ」や「ミッション・インポシブル」の撮影にも使われました。)
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 ナポリ歴史自治区
(王宮や複数のナンチャラ城、チョメチョメ修道院を含む一帯が世界遺産として登録されている)
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◆ ポンペイ遺跡(西暦79年のベスビオ火山大噴火により、一夜にして時が止まってしまった繁栄の街ポンペイ。みなさんも一度は行ってください♪
↓向こうの山がベスビオ山です)
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う~、なんて羨ましい(≧∇≦)
このような場所だからこそ、「ナポリを見てから死ね」なんていう名言も生まれるわけです。

P2040022.jpg「ナポリの歴史はローマより古いんだ。
紀元前はイタリアの玄関口だった。紀元前4000年から3000年の遺跡がごろごろ残っているからね。」
とイタリア通の石井さんが教えてくださいました。

ナポリの繁栄はローマ帝国のずっと前からだったわけですね。
Napoliの語源はNeapolice(ネア・ポリス)、つまり「新しい都市」という意味ですが、まったくもって歴史ある古い都市なのですね。


そのナポリで種苗会社を営むファーメン社。
こちらが社長レナート・ファラオネ・メンネーラさん、73歳。
ボンジョルノ!
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この方なんと、自らを育種界のミケランジェロと称します。


イタリアで"あいつはミケランジェロ"といったら、奇人変人の代名詞。
つまり自分は変わったブリーダーなんだと自認していらっしゃるわけです。

その理由は後述させていただきます。


「そんな歴史ある街に、あんなとぼけたおじさん(←レナート社長のこと。石井さんの言です、あくまでも。信頼関係を構築した石井さんだからこその呼び方ですね)が生まれたのかってことなんだけど・・・そのようなところに貴族として生まれていれば、少しは違う感性を持ち合わせるっていうことなのかな。」


きッ、キッ貴族??
石井さん、今「貴族」とおっしゃいました?つ、つまり、メディチ家とかハプスブルク家みたいな??


「そうだよ。ファラオネ・メンネーラ家は貴族なんだ。」


ガーン( ̄Д ̄;) ||| ||| |||
ここで日本の花と欧州系の貴族とが結び付くとは!!憧れの欧州貴族、ついにウン探にご登場!

「ウン探さん、宝飾品のカメオって知ってるでしょ。何を隠そう、そのカメオを世に排出したのがこのファラオネ・メンネーラ家なんだ。

イタリアも敗戦国のひとつだけど、戦後はカメオで食い繋いできたらしいよ。
だから、レナート社長の息子さんは、現在ジュエリーデザイナーとして世界を舞台に活躍されているんだ。プライベートジェットで全米中を飛び回っているらしい。映画の中で女優さんのジュエリープロデュースもしているのだとか」


デッ、出た。世界級のセレブ(゚ロ゚;)!!

石井さんに見せていただいた写真には、そのジュエリーデザイナーのご子息が、ハリウッドの女優やスーパーモデルたちと笑顔で肩を組んでいるではないか・・・!
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中には、クリントン元米国大統領やオバマ大統領との一緒の写真まで!!
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(右側がレナート社長のご子息)

ワオオオーw(*゚o゚*)w!


3170.jpg(貴族様邸にあるワインセラー。レナート社長)


ここで一句。
貴族様   ああ貴族様   貴族様    ---うんちく探検隊


ところで、そのカメオや宝飾品などのキラキラ系★貴族様が、なぜ花の育種をされているのですか?
「貴族だから、王宮とか--つまりカゼルダ宮殿とかだよね、そういうところに出入りして、王家の方の身の回りのお世話をするわけ。日々出入りしているうちに、宝飾品だけではなくて、家の周りのこととか、花壇を整えたり、植栽のお世話などを幅広くしているうちに、そこからビジネスになって種苗もやるようになったという流れなんだ」

なるほど、さすが貴族様。オールマイティにお世話をしているうちに、ビジネスに発展させてしまうわけですね。うまくいく人は何をやってもうまくいくんだなー。


「そう、貴族様は多才なんだ。
レナート社長もヨットの設計なんかもやっちゃうんだ。趣味は船舶と車。最近は気功にもハマっているらしいよ!」

DSC04649.jpg(愛車の赤いFIATからムーランを掲げるレナート社長)

恐れ入りました、貴族様。コリャ本物だ。

レナート社長のムーラン作出のこだわりとは何でしょうか。


ムーランのこだわり◆その1 「全ての花の顔が違う」
ひとつの株から出ている花の顔が全て違う!同じ顔のものは二つない!
人間だって同じ顔が二つとないんだから、花だってそれぞれの個性を生かして、全て違って当然じゃないかっていうレナート社長のポリシーなんだ」
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↑本当に一つ一つの顔が全て違うんです!


はい、みなさん、ここがレナート社長がミケランジェロと自称する理由です。

ムーランが育種された頃は、園芸界では"いかに均一な花を作るか"ということに重点が置かれていました。効率主義、ムダ取りが加速し、"個性"なんて言葉はどこへやら。オンリーワンよりナンバーワンの時代で、そのナンバーワンをいかに均一化して量産するかということが重要だったわけです。

「ひとつの株から全部違う顔の花が咲くことをキメラ咲きっていうんだ。均一化重視の当時、世界的な潮流としてキメラ咲きは不良品として捨てられていたんだよ。」

ガーンΣ(゚口゚; ナント!

P2040040.jpg「でも、均一化された花には歴史や文化は反映されていないよね。
世の潮流に逆流するように、世界で唯一レナート社長がキメラ咲きが素晴らしいと言い続けて、ムーランを作出したんだよ」
と石井さん。

このナポリの歴史と文化がユニークな人を育てて、その家系と血統と個性が見事に反映されたのがこのムーランということですね。

「均一化でパンジーやスミレの変異の資源はどんどんなくなっていった。花業界だけではなくて、どの業界でも世界全体でそういう傾向にあったけど、効率主義でムダ取りが推進されたでしょ。その時にはみ出し系の要素はムダだと捨てられていったんだ。

キメラ咲きには変異が多いから、たまに黒い花が咲くんだ。その黒も青から生まれたり、赤生まれたり。またその黒から赤や青のパンジーが生まれる。
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赤を作るためには赤以外の品種で作る。青も青以外から作る。黒も同様で、黒以外の品種から作るんだ。
これはレナート社長だけが持っている秘密の育種ノウハウだよ」

黒の中には苦労が多分に含まれているのですね!(クロにクローが・・・あー、またダジャレ言ってしまった!スミマセン)

3600.jpg(ムーランフリル・ネロ)


ムーランの個性を見るポイントは?
花色、花姿、花脈、表と裏の色との違い、フリル加減などをよく見てごらん。香りもそれぞれだよ
どれひとつ同じではないことが分かるでしょ」
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ほんと、この色のグラデーション、水彩画のような色の載り方、表裏の色の違い、心揺れるフリル・・・それぞれが全て違い、ムーランの魅力を増しています。


従来、花壇苗としてのパンジーはメインになる大きな植物の手前を飾る彩(いろどり)で、色彩としてのパンジーでした。小花を集め、色で面を作り、その全体を見るものでした。もちろん今でも多くの場合そのように使われています。
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しかし、このムーランは"団体戦で面を作るパンジー"から、"個人戦で一輪一輪を見るパンジー"として進化&デビューした画期的な品種なのです。
だからこそ、パンジーの切り花化が実現したと言っていいでしょう。
背の低い花壇苗のパンジーがいつか切り花になる日なんて、みなさま想像していましたか??本当にすごい進化です。


ムーランのこだわり◆その2 「花と目が合う」
花と目が合うだなんて!
「人と人が話をするときに目を合わせるように、花とも目と目と合わせて話をしようっていうミケランジェロ、いや、レナート社長の思いが込められているんだ」

目というのは、ムーランのこの中心部分。
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一般的にフリルが強いパンジーはフリルで目が隠れているものもありますが、ムーランは目が全て見えているというのがこだわり
是非ムーランと見つめ合ってみてください。目が合わなければムーランではありません。
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ムーランのこだわり◆その3 「花持ちが良い」
個人的な経験談になりますが、昨年の3月14日、フラワーバレンタインのお返しで社内の方にフリンジパンジーを差し上げたところ、その方は会社の机上に置いて楽しんでくれていました。
ところが、市場で買ったばかりなのに3日と持たずに(!)、私の目の前にみるみる枯れていってしまったのです。
これでは、初めて切りのパンジーを買う方には、「花持ちが短いもの」という印象を与えてしまうのではないかと心配していたのですが・・・

「ムーランはそんなことないよ。
それに、出荷するときにこのくらいのつぼみでも、
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開花するときちんと色が載るんだ。
ほかのスミレにはない特性だよ。だから、遠方に出荷しても流通段階で商品の価値が落ちることもない。花弁も厚いし、良い花でしょ~」

なるほど、実際にムーランの花持ちを会社で試してみると、鑑賞期間は12日を超えました。この記事を書いている現在においても尚、観賞価値があります。

こちらは、石井さんの圃場から頂いてきて11日目のムーランちゃん
オフィスで鑑賞していますので、終日暖房の中にもかかわらず元気です♪
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さすが、息の長い歴史の上に立った貴族様に育種されたものは、息が長いですね。

そのようなムーランと石井さんとの出会いはどのようなものだったのでしょうか。
そんなハイソなイタリアーノとお付き合いできるなんて、アタクシもアヤカリタイーノ!!

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「1999年から2000年にかけて花壇苗の価格が半値以下に暴落したことがあったんだけど、ちょうどその時、知人が一緒にイタリアに行かないかって誘ってくれてね。


でも、実を言うとそれほどイタリアに行くことに興味もなくて、イタリアに何かあるのかなぁ・・・?なんて、なんだか気は進まなかった。いつも行くのはドイツだったからね。

とはいえ、イタリアには行ったことがなかったし、今のこの苗の価格では何かしなくちゃいけないし、それならいつもと違うイタリアに行ってみようかとなったのが最初のきっかけ」

そこで出会ってしまったわけですね!?

「行ってみたらファーメン社にはパンジーとプリムラのメラコイデスとポリアンサがたくさんあった。

その時はこのムーランは試作中だったんだけど、レナート社長が情熱的に"いい花だ、いい花だ"とムーランを説明するんだ。
2016.jpg(ファーメンの圃場を歩くレナート社長)


それ聞いても、まだピンとこなくてね。
当時はパンジーのフリル咲きといえば"12月中には咲かない花"の代名詞だったんだ。
パンジーはあくまでも年明けの商材。しかも、その9割は3月に流通するものだから、"なぁ~んだ、咲かない代表のパンジーかよ・・・"って思ったんだ。

だけど、レナート社長の情熱的な説明は加速していった。

① これは秋にも咲く
② 丈が長く、切り花用にも転用可能
③ 花によっては香りもする
ってね。

んじゃあ、まあとりあえず日本に持って帰ろうかとなったのがきっかけだよ」


それまでの"12月中にはパンジーは咲かない"という日本のマーケットでの常識を超えて、レナート社長の熱心な説得に心揺らいだわけですね。

持って帰ってきて、日本のマーケットでの反応はいかがでしたでしょうか。


「それはねー、お花屋さんとかランドスケーパーとかお偉方の先生とか市場関係の人とか、ご意見番20人くらいに聞いてみたんだけど、一人もいいと言った人がいなかったんだ!」

ガーン(@_@。ショック・・・
なぜなのでしょうか!?こんなにかわいらしいものを・・・と今だからこそ思ってしまいますが。

「みんな経験値が高い分、"この手のものは売れないんだよね"と答えは同じだし、早い。」

そこまで異口同音に同じ答えを出されて、くじけなかったのはなぜですか?

「20人聞いて20人とも駄目だったんだけど、そのほかに2人だけ"いいね!"って言ってくれた人がいたんだ」

どなたでしょうか?

「1人はうちのパートさん。切り花デザインの先生をやっている人なんだ」

なるほど。身内に応援してくれる方がいらっしゃるのは心強いですね。
もうひとりは?

「ワタシ。」


なるほど!
そこですよね、ソコ!

やはりご自身がいいと思わないといけませんし、信念を持って伝えれば、マーケットは響いてくれる!
実際に出荷されて、マーケットの反応はいかがでしたか?

「咲かせてはちょっと売ってなんてやっていたんだけど、思うように売れなかったんだよ、2年くらい。

ところが、折しもパンジーは徐々に春から秋の商材にシフトし始めてきて、さらにサカタのタネさんからリカちゃんスミレが発売になって、パンジーの高値のマーケットを創出してくれたんだ。

このときに"もしかしたらムーランもいけるかも"って思って、花をたくさん付けて出荷したんだ。すると店頭で少し動き始めてね、チョロチョロではなく、秋口からまとめて出荷するようにしたんだ。

まとめて出荷したら実際に買う人の意見を伺うことができて、そこからまた改善してはまとめて出荷して、歯車が回るようになったんだ」


なるほど、それがムーラン誕生秘話ですね!
ありがとうございました。
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このままでは生産ウンチクが全くなくなってしまうので、ウン探の本質を見失わないためにも少しだけご紹介します。


b3.gif土壌
切り花用のムーランは、パンジーといえども、このように8寸の大きな鉢に2株を植えて栽培します。
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土は何を使うのですか?

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「堆肥、赤土、鹿沼土、ピートと肥料をオリジナル比率でブレンドしている。同じムーランでも切り花用と鉢物用とで少しバランスを変えるんだ。」


そうすると、切り花用に少し丈が取れるようになるのだとか。


しかし、もともとムーランは普通のパンジーよりも背が高くなる性質があるそうです。

「立ち上がって枝が伸びていく性質が強いんだ。」
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↑左側が切り花用に栽培しているムーラン。
だからこそ切り花にも向いているわけですね。


a3.gif暖房
圃場をぱっと拝見したところ暖房装置は一切ないようですが、パンジーは寒くても大丈夫なのでしょうか。
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花の組織の中にアルコール成分が入っていて、一時的になら気温が氷点下になっても大丈夫なんだ。
でも氷点下続きで、ずっと凍りっぱなしはダメ。{{{{(+ω+)}}}}寒ぅ!
だから北欧とか1日中気温がプラスにならないところではNGなんだけど、日本のように1日の中で氷点下になったり、昼間にはプラスになったりするところであれば、花の組織は死なずにいられるんだよ。」

パンジーは日々の中で凍る⇔解凍があるのはOKなんだそうです。
そういう意味では寒さに強いって言っていいのですね。しかし、暑さは苦手なので管理の際は要注意です。

c3.gif電照
蛍光灯は電照用ですか、それとも夜業用ですか?
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「電照だよ。12月から夕方4時間くらい電照するんだ。」

むむ、パンジーにも電照が必要だったとは・・・その心は?

花首が急に伸びないように。」

パンジーは相対的長日植物。つまり、日が長いほど花芽の形成が促進される植物です。

植物の生長は、体を大きくするための栄養生長子孫を残すために花芽を付ける生殖生長とに分けられます。この二つの生長は切り替わりるもので、同時に二つをすることはありません。
パンジーは日照が少ないと花芽を付けないということは、日照が少ないと、栄養生長に走ってしまうわけです。

そこで、12月の最も日照量の少ないときに電照することによって、花芽の形成を促進し、同時に花首もやたらに伸びることなく締まった植物体ができて、一石二鳥というわけです(゚∇^*) b

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「無理に早く出荷しようとせずに、自然にゆっくり育てた方が花持ちが良くなる。
それに、急いで育てると花期が終わり萎れたときに茶色になってしまうんだ」

つまり・・・もしかして、ひょっとして?ムーランは枯れても花色が残るってことですか?

「そう、ゆっくり育てると、萎れても花の色が残るんだ。こういう感じにね」
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あ、ほんまや。ウン探で取材ご観察していたムーラン。萎れて花弁が落ちるところまでいった個体でさえも尚、花色が変わることはありませんでした。
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ドライフラワーのように往年の彩色をそのまま残したかのよう。なるほど、美しいまま天寿を全うした感じですね。

b3.gif黒い物体
ところで、石井さん、天井からぶら下がっているこの黒い物体は何ですか?
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「あー、バレてしまったか・・・。これは隠し技なんだ」
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ドキッ!(゚∇゚ ;)
"隠し技"とか"秘密の小道具"とか、そーゆー響き好きだな~ρ(´ε`*)

「二酸化塩素を揮発させるものなんだ」

ニサンカエンソ???・・・何のためにですか?

「ボト※が発生するのを防止するんだ。」

※ボト:加湿の状態で発生しやすい植物の病気。茎葉が溶けるように腐ったり、花弁に黒っぽい斑点などの症状が出て、観賞価値を失う。病原菌をボトリチスということからボトという。


「例えばこれと比べてごらん」と見せてくださったのは露地に置いたムーラン。
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写真では分かりにくいのですが、露地に置いていたムーランは朝露などで湿度が上がり、ボトが発生していました。茶色くなって、溶けたり、腐ったように見えたりします。


「この装置を付けてから、ボトは殆ど発生しなくなったよ。


んでコッチが"秘密の小道具"」

と見せてくださったのは、長い柄のついたもの。先端がL字に折れて、なにか不織布か毛糸のようなもので巻いてある。

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ん??なんじゃコレ!?「(゚ペ)


「水やりをするためのものだよ。
こうやって、花に水がかからないように水やりをするんだ。
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先端にクッションが巻いてあれば、水圧も柔らかくなるし花を傷つけることなく水やりができる」

なるほど!石井さんの創意工夫の小道具だったのですね!


そして最後は、石井さんの手によって丁寧に摘み取られ、丸いミニブーケのように束ねられます。
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出荷の際は、足元はこのようなカップに水とフラワーフード入れ、ムーランちゃまにとって完璧な状態が図られます。
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とまあ、こうして貴族のレナート社長が生み出したムーランちゃまも、石井さんとの信頼関係を基に日本のマーケットに流通するようになりました。
信頼の証に、石井さんは生産ばかりではなく、ファラオネ・メンネーラ家の貴族の紋章まで利用を許可されました。まさに、日本で唯一、この紋章の利用を許可されたのは、石井正義さんだけ!
↓こちらがファラオネ・メンネーラ家の紋章です。
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左上から時計回りに、ミツバチ、トラ、ハト、城、人が描かれています。
ムーランの苗に挿してあるラベルには、この紋章が描かれています。皆様も手にとってご覧になってみてください。

多くの世界文化遺産を擁したナポリのミケランジェロ様のご意思を川口市の石井様が一身に受けて生産された、その重みを感じることができるかもしれません。


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あ、ところで石井さんはミケランジェロ様のようなニックネームあるのですか?

「ビンテンツォー・グラディアトーレ」

WOW!∑(゚□゚;)   オオソレミーヨォ!


そのミケランジェロ様から頂いたニックネームなんだそうです!
いただいたのは、紋章の使用許可と種苗だけではなかったのです!

貴族様のもとに通い続けて4年目にしてもらったのだとか。これぞ信頼の証。


ッで、何か意味はあるのですか??
ビンテンツォーは"勝、勝男"など勝利を意味する名前、グラディアトーレは"グラディエイター、剣闘士"って意味なんだよ。

つまり日本語風に言えば『剣闘士 勝男』

戦って、花を売ってこいとの命令付きニックネームなんだよ」
  

あはは^_^;
剣闘士勝男様、これまた結構なプレッシャー付きのお名前ですが、それだけ信頼を得てのことだと思います。さすがです。
DSC04650.jpg(2013年1月撮影)

d5.jpg石井さんにとってムーランとは何ですか?

「何か価値あるもの、つまりブランドを作りたいと思っていたんだけど、その扉を開いてくれた花といえる。

言葉を換えれば"希望"ともいえるかな。
子供のころに金賞とか一等賞とかとると嬉しかったでしょ。そういう経験に近いかも。
だってムーランを導入するときは、誰に聞いてもダメって言われたのに、今はこうやってみんなに受け入れてもらっているわけだから」

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ムーランはとても良い花だと思うので、石井さんが日本の種苗代理店になって生産を拡大するってのはいかがでしょう・・・?愚案でしたらすみません。

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「それも考えなかったわけではないよ。
でも、複数の生産者で作ると、その商品への思いも技術も複数あるから、結局うまくいかなくなってしまったという過去の例を結構見てきたんだ。」

なるほど、レナート社長の思いを120%理解して一身に受け継いだ石井さんとしては、決して日本での販売で失敗したくないし、良い花だからこそ無駄にしたくない。
そのような思いから、全てご自身の責任でやっていこうという選択なわけですね。

ここにも剣闘士勝男さんとしての意気込みと責任感を見て取ることができます。

「ドイツで開催される展示会のIPM(アイピーエム)※などに行っても、ひとつの種苗を扱っているのは、多くの場合一人(あるいはひとつの組織)なんだよ。

一人ではいくつも扱えないし、一人がひとつの種苗をマーケットの中で大切に育てていくイメージ。寡占化し尽くされているという印象を受ける人もいるかもしれないけど、それがマーケットの作り方なんだと思うよ」
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その口調からは「独占」や「寡占」という言葉のイメージとは程遠く、むしろイタリアの貴族が愛し、こだわりを持って作出したムーランを、日本のお客様にもより良い形でお届けするために交通整理して、大切にブランド化しているという印象を受けます。


※IPM・・・Internationale Pflanzenmesse(=ドイツ語で「国際園芸見本市」)のこと。
ドュバイや上海など世界各地で定期的に開催されるが、会話の中でIPMというと1月のエッセン(ドイツ)の開催を指すことが多い。

d5.jpgイタリアやIPMなど、毎年ヨーロッパやそのほかの国などを見て、思うことは何ですか

「おしゃれでセンスの良いお店が多いよね。お花屋さんだけでなく、何のお店にしても街中に、また少し郊外に外れたとしても当たり前に存在する。
翻って日本は何にしても地域格差が大きいかな。

でもそういうことは、外国に行かなくても国内でも観察できる。
都心のデパートの売り場や見せ方は、20-30年前と大きく変わったよね。販売経路も小売り形態も変わった。生産する方も販売もそれに合わせて変えていかなくちゃいけないことがあるよね」

そうか、外国で何を見てくるかではなく、日々の生活の中に観察ポイントはたくさんあるということですね。
街を見ても、店を見ても、人を見ても、鋭い観察力で見識を広める。これが石井さん流のひとつの勉強法といえるようです。


d5.jpgそういえばレナート社長は貴族様らしく趣味が多彩でいらっしゃいましたが、石井さんのご趣味は何でしょうか

「そうだねぇー、・・・
一、 シゴト
一、 変わった人と会うこと
一、 食べ歩き
一、 料理 (料理教室の◎◎クッキングで最上級のライセンスを取得。その腕によりをかけて、イタリアに行けばシェフたちと料理をするし、日本でもときどきイタリア料理をふるまう!)
IMG_9429.jpg←カッチョええー!
一、 街に出て新しいものに触れること。刺激に満ち溢れた世界を楽しむこと

・・・かな」

なんでも石井さんは人に会ったり、新しいものを見たり出来事があったりすると幸福感を得て、それをご自身の活動燃料にしていらっしゃるのだとか。
P2040066.jpg


「そういうことがあるとβエンドルフィンが噴水のように出てくるんだ」

ゥヲーーーーー!
このβエンドルフィンが、冒頭で石井さんが25歳に見えた若さの秘訣だったのかもしれません。
なるほど、石井さんのエネルギーは人との出会いと日々の刺激でしたか。ここに生産意欲の源もあったわけですね!

ココ川口で花生産ビジネスをするということはどういうことを意味しますか?

「あ、それはね、遠路はるばる東京にいらした方から呼び出しがかかっても、すぐに駆けつけて合流できることだよ。人と会うチャンスを逃すことも少なくなるし、川口で生産するメリットは大きい」

ここでも石井さんが人とのご縁をいかに大切にしているかが表れています。


最初はイタリアに行くことすらも気が進まなかった石井さんですが、レナート社長との出会いを大切にしたことにより、篤い人望を得て国内で唯一ファーメンの紋章を利用することを許されました。商機はやはり人との出会いの中にあるということですね。

石井さんが最も大切にしているのは、何より"人"であるような気がします。

みなさまもご存知の通り禅語に「一期一会」という言葉があります。
イタリア×禅ときて、まあなんと接点のなさそうな程遠い要素を掛け合わせたものだと思われるかもしれませんが、つまり真実は世界共通だということでしょうか。

ね?剣闘士勝男さん??


d5.jpgムーランの取り扱い方法について・・・から学ぶ、剣闘士勝男さんこと石井正義さんの金言!
苗も切り花も暑さに弱いので気を付けて!
夏は亜熱帯化してきているこの日本列島では、苗も暑さで溶けかねません!

昨夏は異常な暑さから9月に一度苗がダメになってしまったのだとか。それでも、今まで考えもしなかった方法で、従来より劇的に良い花を付ける良い栽培方法を見つけたのだそうです。

「失敗から学ぶことも大切。失敗はやりたくてやっているわけではない。自分の意志ではないわけだから、ある意味それも運といえる。

そこから生まれる何かを掴めるかどうか。失敗から生まれる成功だってあるんだ。それも人との出会いの中にあたりするんだけどね。」

"失敗から生まれる成功がある"だなんて、石井さん、エジソンみたいですね!

「失敗は成功の母」――by トーマス・エジソン

「私の人生は振り返るとその繰り返しだよ。
トライ(Try)&エラー(Error)・・・で終わらず、&リカバリー(Recovery)&インプルーブ(Improve)アーンド サクセス(Success)!」
PDCA(Plan-Do-Check-Action)ならぬTERIS(テリス)といったところでしょうか。


d5.jpg石井フラワーガーデンの格言

■ ムーランは、何千年もの歴史を持つナポリの地で、貴族様が類稀なる感性で作出した世界の逸品。
 手にしたときはナポリの風を感じてください。
 そうそう、ムーランは登録商標です。石井さん以外は、「ムーラン」、あるいは「ムーランルージュ」の名前で花を出荷できませんのでご注意ください。


■ 商機は人と人とのつながりにあり!商機を勝機と捉え、人とのご縁を大切にせよ!


■ 街を見ても人を見ても、生活の中には観察ポイントがたくさん!
  一歩外に出たら、観察眼を光らせて、時代の変化をキャッチせよ!


■ 人生はTERIS
失敗から生まれる成功がある。by 剣闘士 勝男


最後に「イタリア貴族のスミレ ムーラン」の美しい画像をお楽しみください。
(合成ではありません)
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                                向こうに見えるのはベスビオ山です↑

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それではみなさん、Enjoy your life!!
アリベデルチ! ciao, ciao~!


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<写真・文責>:ikuko naito@花研

※数々の貴重な写真は石井フラワーガーデン様からご提供いただきました。illust2018_thumb.jpg

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