2015年10月20日
vol.112 片桐農園様★カボチャをめぐる冒険 第6話<最終回>
片桐農園様の生産へのこだわりの途中でした。片桐農園様後編の今回は・・・
<第6話 目次>
◆生産
CHAPTER 4. こだわる?こだわらない?土のクオリティ
CHAPTER 5. 空飛ぶカボチャ
CHAPTER 6. ネズミとコオロギのカジリ対決
◆謎のコーヒー麻袋
◆そもそもどうしてカボチャ?
◆今後の方針
◆カボチャのトリビア
◆たかがカボチャ、されどカボチャ
をお届けします。
CHAPTER4: カボチャの土
片桐さん、カボチャの土にはどのようなものが適していますか?
「カボチャはそんなに土の好き嫌いはないんだよ。
極端な酸性、あるいはアルカリ性でない限りは問題ない。
日本の土壌は基本的には弱酸性。アルカリ土壌は栃木県の足尾の一部とか、局地的に限られたほんの何十ヘクタールくらい。あとはすべて酸性土壌だからおよそ問題ないんだ。」
なるほど、それがカボチャが作りやすいと言われるゆえんでもあるわけですね。
それでも尚、片桐さんはひと工夫。
もみ殻とブタちゃんの堆肥を混ぜています。堆肥は生まれたばかりの子豚ちゃんのもの。きめが細かすぎてそのままでは使えないので、もみ殻に吸着させて、これを圃場に混ぜ込みます。
「私たちは休耕田を使っているんだけど、田んぼの土はpHが5.5-5.8くらい。普通の野菜はできないことも多いんだけど、カボチャならできる。
土壌pHに対して適応性が非常に高いのがカボチャの良いところ。"塩害"にも強い。」
("円買い"ではありませんよ。円買いも強くなってほしいところではありますが)
CHAPTER 5 : 空飛ぶカボチャ
カボチャにはほかにも良いところがあると片桐さんはおっしゃいます。
「カボチャの生産は生長こそすれば土地面積が必要だけど、植える面積自体は少なくていいんだ。
だから、実はとても面積効率の良い農産物なんだよ。」
ホントですか?それはなんだか意外です。
「空飛ぶカボチャって知ってる?」
そ、空飛ぶカボチャ??ウーン (Θ_Θ;)想像できない・・・
こんなん??
いやいや、まさかね(;・・)ゞ
「北海道ならではなんだけど、ビニールハウスで栽培したものが収穫が終わると、ビニールをはいでそこにカボチャの苗を植える。
すると骨組みに沿って蔦が生長していくから、空中で実が成るんだ。だから空飛ぶカボチャって言われているんだよ。」
実は空飛ぶカボチャ、北空知の吉澤さんの圃場で拝見していました。
この骨組みに沿って這っているいる蔦はカボチャ。
一瞬目を疑いますが、確かにブドウのように宙に浮いてカボチャが成っています(゚O゚;!
↑こちらは生食用の坊ちゃんカボチャ。
↓観賞用もこのスタイルで栽培していました。
この方式で栽培すると、カボチャの実のうち地面と接するところがないので、むらなく均一に色が付きます。
「栽培面積がたとえ1平方メートルでも、太陽さえ当たれば、カボチャはどこでもできる。土地を選ばないし、カボチャは良い作物なんだよ。」
片桐さんのところでは現在はこの方法を採用していませんが、開拓時代からカボチャ生産に打ち込んできた北海道の先人たちの知恵をこのように説明してくださいました。
CHAPTER 6 : ネズミのコオロギのカジリ対決
片桐さんの頭を痛める原因の一つ・・・カボチャの傷。傷は商品価格に直結してきますから、本当に厄介な問題です(´ε`;)
みなさま、こちらをご覧くださいませ。
<キズA> <キズB>
これらは虫や動物などにガブリとやられたことを物語っています。
このキズAとBの違い、分かりますか?
この違いを見極めることが何者の仕業かを知る上でとても重要です。
傷の性質を見る→カブリついた時期がわかる→犯人が誰かわかるのです。
例えば、キズAは生育中の6-7月にかじられ、キズBは生育が完了してから8-9月にかじられたもの。
なぜわかるかというと、かじられてその跡がかさぶたになって、こんもりと盛り上がっているかどうか。
盛り上がっていれば6-7月にかじられたもの。北空知さんのお絵かきカボチャの原理と同じです。(カボチャをめぐる冒険第2話参照)
ところが、生長が終わってからかじられたものはその場所が凹むだけ。だからキズBのようになってしまうのです。
しかしまあ、どのような厄介者がカボチャをかじっていくのでしょうか。
「ネズミとコオロギだよ。」
うギャー!カンベーン(ノ_-。)
どちらがどちらをかじった跡でしょうか?
「キズAがコオロギで、キズBがネズミ。
ネズミは生育中の青いカボチャは絶対かじらない。完熟した糖分の高いカボチャばかりを狙っていくんだ」
えーーーー、ズルーーーイ(-ε-)ブーブー
ネズミってそんなふうに鼻が利くのですね。
「そうなんだろうね。ネズミは見事にペポを避けて、完熟したパンプキン、あるいはパンプキンとの交配種ばかりを食べていくよ。
コオロギの食害の原因は分かっているんだ。定植したときに敷く黒いマルチングのせい。
特に初期の生育をしっかりさせることが重要だから、この黒いマルチングは、カボチャ生産にとってはベストアイテム。
ところが、土とこの黒いマルチングの間の小さな隙間がコオロギにとってはとっても心地良いものなんだ。」
では黒のマルチングはどうしても施さないといけないのですか?何のため?
「黒いマルチングをすると日光が当たらなくなって、雑草が生えなくなる。雑草が生えると、カボチャの苗の生長を阻害するでしょ。4町歩の圃場だからマンパワーで雑草を処理しきれないからね。だから生えないようにするのが一番。」
これはなかなか頭の痛い問題です。
農資材メーカーさんには、是非コオロギ忌避剤入りのマルチングシートを開発していただきたいものです(懇願)!
★謎のコーヒー麻袋(またい)
んん?なんじゃ、なんじゃ?これは一体なんでしょう?なんでこんなところに麻の布が??
「これはカボチャを出荷するときの緩衝剤に使うんだよ」
ぬぁんと、この麻布は、片桐農園式カボチャ用クッション!しかも元はコーヒー豆を海外から輸入するときに使うバッグなんです。
それをカボチャ用緩衝剤に!
へ~、なんだかとってもユニーク~ッ!でも、どうして??o(゚◇゚o)?
「クッションはいろいろな素材でやってみたんだけど、小売店さんが"おしゃれでいいね"って喜んでくれるんだ。」
コーヒー麻袋は、コーヒーの生豆を生産地から消費国に運搬する際に使う袋。生産国や銘柄、等級など、あるいは生産国ならではの絵が描かれていて、とても趣深いものです。
絵柄もとってもシャレオツ~♪
なんだか遠く生産国のことを思ってしまいますね。一体、どこで仕入れるのでしょうか?
「小樽に袋物専門の古物屋さんがあるんだよ。お米の袋、菜種の袋、コーヒーの袋など、世界の農産物の袋を取り扱っているところなんだ。
この袋を裁断して使うんだけど、裁断中にコーヒーがぽろぽろ出てくるんだよ(笑)」
わッ!ホントだ。
コーヒー豆がカボチャ農園に転がっている!
「ちゃんと焙煎すると飲めるんだよ~!」
わー、おもろー。焙煎して飲んだことありますか?
「ない」
さすがに、そりゃないか・・・。
それにしてもカボチャとコーヒーなんて面白い組み合わせ。
そのコーヒーの袋をこれで裁断して、カボチャの緩衝剤としてちょうどいい大きさに仕立てます。
確かにかわいい。喜ばれるの、わかります。
「ケニアとかタンザニア、中南米とか、いろんな国からくるよ。
↓これなんかは日本向け専用にデザインされもの。」
あんりまあ、ホント、よく見ると鶯やら、富士山まで描いてあるではありませんか。
最近はコーヒー豆の価格も高くなり、コーヒー麻袋も入手しづらくなったとおっしゃいますが、それでも尚、小売店さんに喜んでもろえるようこの素材にこだわります。品種も梱包材も、お客様に喜んでもらうことが片桐さんの選択基準。お仕事の細部に至るまで、片桐さんの精神性と哲学を見て取ることができます。
みなさま、カボチャの箱を開けてコーヒー麻袋が緩衝剤として入っていたら、それは片桐さんのカボチャです。片桐さんのお客様への思いもカボチャと一緒に受け取ってください。
★そもそもどうしてカボチャ?
もともと片桐さんは園芸農家さん。花き専門なのです。今でも鉢物や苗ものを取り扱っています。
ですから、カボチャを作るといっても観賞用のカボチャに特化しています。
「やってみようかなと思ったのは20年くらい前かな。」
何かきっかけは?
「娘が米国のテネシーに留学したとき、滞在先のおばちゃんチに、たまたま花きのカタログがあったんだよ。
それを娘がお土産にもらってきて見せてもらったら、そこからカボチャが載っていたんだ。
米国ではこんなに面白い品種がたくさんあるのかとウキウキして集め出したんだ。」
でかした!片桐さんのお嬢様^^!!なんて気が利くのでしょう。
「初めて作ったときに市場に出したら、思ったよりも良い値段で取引できてね。そこから栽培面積を広げていったんだ。」
片桐さんは、もう40年以上も花壇苗を中心とした花き生産に従事していらっしゃる生粋のフラワーピーポーなのですが、そこにお嬢様の米国留学がきっかけで、カボチャという生産品目が加わったというワケです。
では、なぜ米国にそんなに多彩なカボチャの種類があるのでしょうか。
「それは南北アメリカがカボチャの原産地だから」
・・・ということは、米国留学にお嬢様を見送られた片桐さんの采配の結果ということですね。
★今後の方針
カボチャ4町歩、30品種以上もある片桐さんに、今後の方向性を伺いました。
「1町歩あたり1-1.5万個くらいのカボチャが採れる。今ある4町歩からきちんと収穫できれば収量は十分なんだ。だからこれ以上圃場を拡大するつもりはない。
しかし、今の圃場に手間をかけて、きちんと収穫できるようにしなくてはいけないと思っているよ。
今年、収量が減ったのは長雨のせい。畑に水が入ったからダメになった。もし、圃場を少しでも高くしておいたら、その害はなかったはず。以前はそうしていたんだけど、面積が拡大するにつれやらなくなってきてしまっていた。うまくいっていたこともあるしね。
でも、"ズボラこく(※)"のは、農業では良くないことだと、今回はは身に染みて痛感した年だった。
※「手間を省いて、スボラをしてしまうこと。」注釈不要とは思いましたが、念のため・・・
来年から原点に戻って圃場を高く作るよ。プラオという農機具をいれて、土を起こして作るんだ。それをやれば、20cmくらいは高くできる。今回の大雨でもクリアできるようになる見込みだよ。もう今年のような思いは二度としないようにする。」
今年の痛手を胸に刻み、来年以降の対策を語る片桐さん。忸怩たる思いでいっぱいなのでしょうが、それを一切お顔に出さず、ニコニコと笑顔で答えてくれます。
それから、市場の変化に伴い、片桐さんのもう一つの方針。
「早い需要に応えられるように、早生品種を検討していこうと思うんだ。
着果日数110日の品種では、最早でも9月10日に収穫。でも65日の品種なら8月末くらいに収穫できる。
だから65日の品種を中心に取り入れていきたいね。」
是非、来年からも片桐さんのカボチャに注目したいと思います。
★(ちょっとだけ)カボチャのトリビア
片桐さんに教えていただいた、カボチャのトリビア。
カボチャはカンボジアから日本に渡ったからカボチャというのはご存知の方も多いと思いますが、元々は南北アメリカ原産。それをスペイン人が大航海時代に自国に持ち帰り、ヨーロッパに広めました。
栽培が容易なこと、栄養価が高い上においしいことなどで、拡散のスピードは速かったといいます。生産性が良くておいしければ、皆が作るのでその分、速く伝播するわけですね。
スペイン人が南インドシナに航海したときに、世界各地に落としていったか、置いて行ったかでアジアにもカボチャが伝わりました。そのうちの一つの国が現在のカンボジア。地球の裏側からヨーロッパを経由し、日本に渡来したわけですが、日本にとっては、カンボジアから伝わったので、"カボチャ"というわけですね。
日本で栽培し始めたときは救荒作物としてカボチャが作られました。天候不順で畑作や水稲のなどができないときはカボチャが作られたのです。
似たような野菜の命名例で面白いのが、サツマイモ。
サツマイモは中国から琉球を経て、鹿児島(薩摩)、本州へと伝わりました。
本州の人からすれば薩摩から伝わったので、"サツマイモ"と呼びます。
しかし、薩摩の人は琉球から伝わったので、"琉球イモ"と呼びます。
さらには琉球の人は、中国から伝わったので"唐イモ"と呼ぶのだとか。
野菜の伝来と命名の関係は面白いものですね。
★たかがカボチャ、されどカボチャ
片桐さんにとってカボチャってなんですか。
「ホント、たかがカボチャ、されどカボチャだって思うね。
カボチャ作りは楽しいよ。売れるともっと楽しい。
定植してみて何が生まれるかわからないっていうところが醍醐味だね。とりあえず品種の予定を立てて作るんだけど、実際には交配して違うものができるんだ。オレンジが出るはずだったのに、真っ黒けが出てきたり、真っ白のカボチャが出てきたり。
完全にメンデルの法則だね。カボチャは自家受粉はしないので、必ずハチが飛んできて、ほかの株の花粉と交配してくれないと着果しない。だから、雑種となるんだけど、先祖還りのような思いもしないカボチャが生まれてくる。
この面白さがあるからこそ、カボチャ生産は私のHOBBYでもあるんだ。真剣そのものだけど。
たかがカボチャなんだよ。でも私にとってはされどカボチャなんだ。人生を楽しくしてくれるもの!」
そんなスピリットで生産に携わっている片桐さんのカボチャを、みなさまには是非一度手に取って、楽しさをシェアしていただきたいと思います。
ウンチク探検隊のカボチャをめぐる冒険は、この第6話をもっておしまいです。
しかし、ハロウィン本番はこれから!この冒険の終わりが、みなさまにとっての始まりです!
・・・な~ンちゃって★
みなさま、今年もHAPPY HALLOWEENをお過ごしくださいませ
また逢ふ日まで、ごきげんよう。
蛇足的ですが、ハロウィンに関するトリビアはこちら・・・ハロウィン発祥の際は、カボチャではなく別の野菜を使っていたのです!その野菜とは?
<写真・文責>:ikuko naito@花研
2015年10月17日
vol.112 片桐農園様★カボチャをめぐる冒険 第5話
カボチャをめぐる冒険第5話は、北海道砂川市にやって来ました。(第4話はこちら)
砂川市は、札幌市と旭川市のほぼ中間に位置し、明治23年、この大地に開拓の鍬が下されて以来、交通の要衝として栄えてきました。また鉱工業も盛んで、かつては石炭産業でその名を馳せた町でもあります。
深川市から電車で滝川市を通り砂川市にやってまいりましたが、深川から逆次は旭川市・・・なんだか「●川」って地名、多くない??なーんて思ったら、「川」が付く自治体が4つ以上連続するのは、やはり全国でも珍しいのだとか。
共通している点は、これらの市が全て「石狩川」沿いにあること。
砂川の地名はアイヌ語の「オタ(砂)・ウシ(多い)・ナイ(川)」に由来するのだとか。
そんな砂川市は、知られざる日本一を持つ町でもあります。
美しい町づくりのために市を挙げて緑化に力を入れていて、なんと「市民一人あたりの公園面積が日本一!」(2014年)。
しかしこの町には、もう一つ日本に誇るものがございましてね。この度は砂川市が誇る、ある生産者さんを訪問するためにウン探が冒険に出たというわけです。
砂川駅から2キロくらいのところにあるこの看板。
そう、今回の訪問先はカボチャ生産の「片桐農園」さまです。
この看板に描かれたお顔の方を探していたら、すぐわかりました。
こちらが片桐農園のご主人・片桐光一(かたぎり・こういち)さん。ほんとそっくり!
片桐さんは、広さ4町歩(ちょうぶ)、30品種以上もオモシロカボチャを集めて、生産・出荷している大変ユニークな個選の生産者さんです。
この目の前に広がるカボチャ畑・・・カメラに収まらないケド
うンワー、広い!っていっても、4町歩ってどのくらい?
町歩とは、面積を示す単位の「町(ちょう;丁と書くことも)」のことなのですが、長さでも「町」という単位が存在するため、紛らわしいので、あえて「町歩」といって区別を付けることがあります。
1町歩はおよそ10反。
1反は300坪、990平方メートル、10畝(せ)となります。
ですから、1反×10が1町歩で、4町歩といえばその4倍ですから、
12,000坪、40,000平方メートル、400畝となります。あーもー、なんだかわからんくなってきた(*_*;
別の単位でいくとおよそ4ha(ヘクタール)あります。あ、つまりそういうことです。
東京ドームが4.7haなので、それよりひとまわり小さいくらいの圃場で、たった1軒でカボチャを作っていらっしゃるわけです。
北海道は大きく、収穫量のポテンシャルは果てしなく高い!
では早速、片桐農園さんとともにカボチャをめぐる冒険に出発です!
<第5話 目次> 片桐農園さん前編
★片桐農園さん流 品種選定
★昨今の人気と取引の傾向
★生産
CHAPTER 1. 天候とカボチャの密接な関係
CHAPTER 2. キュアリング❤
CHAPTER 3. 収穫のタイミングはどうみる?
★片桐農園さん流 品種選定
片桐農園さんで手掛けているカボチャの品種数は30品種以上。
しかし、いずれも見た目の面白さだけで選んでいるわけではありません。品種選びには、片桐さん流のノウハウがあります。では、どのあたりを基準に選ばれるのでしょうか。
「まず着果日数。
カボチャは、畑に定植してから着果・収穫まで100日というのが基準。
重量の競技用にも使われる巨大な品種"アトランティック・ジャイアント"は収穫までが長くて110日。
それ以上日数がかかる品種は北海道では作れない。」
なるほど、ここでどんなにカワイイと思ってもバッサリとふるいにかけるわけですね。
「北海道は秋の到来が早いから、着果日数が長いものは、実が完熟せず未熟なままで終わってしまうからね。基本的には100日以下の品種を選ぶ。
大型種で90-95日くらい、
中型種で70-80日くらい、
小型種なら65-70日くらいかな」
やはり小さい方が収穫までの日数が短いのですね。
「そうそう。
それからカボチャは開花から収穫まで最大品種でも45日、ミニなら25日くらいで収穫できる。ミニ品種は今年のような雨の多い年でもなんとか収穫できるわけだよね。
ミニの方が展開が早いから取り入れやすいというワケ。
例えばこれはネオン。カナダで開発された品種。定植後65日で収穫できる。
秋が早い北海道には、カナダの品種は結構合うんだよ。」
なるほど、このサイズで65日なら良い方でしょうか。
何より着果日数が北海道の気候に適っているかどうかが第一関門というわけですね。
2番目のポイントは?
「形。
昔は"ロングフェイス"といって縦長のものが喜ばれたんだよ。
なぜなら、置いておくと遠くから見て目立つからってことでね。だけど尖がっていると座りが悪いから、徐々に平べったいもの、安定性のあるものの人気が出てきたんだよ。」
なるほど、時流にあった形をしているかどうかということですね。
他にもポイントはありますか?
「それからカボチャの大敵はウドン粉病。これにかかりやすいかどうかを見るんだ。」
カボチャの宿命とでもいうべく、ウドンコ病はやっかいな植物の病気。カボチャウドンコ病という菌があるくらいです。
最初は葉にウドン粉を吹きかけたように白くなっていくのですが、放っておくと実にも伝染してしまうのです。どうしてもウドンコ病にかかってしまうものなのですが、できるだけかかりにくい品種であることがもちろん望ましい。
砂川や深川一帯はソバ粉の生産量が日本一だというのに、ソバ粉ではなくウドン粉病が付くなんてね(*_*;
「そこで、最近はウドン粉病に耐性のある品種改良が進んでいるんだ。
その代わり、そういう優良品種はタネ代が3倍になるんだけど、それでもやはりウドンコ病には強い品種の方がいいよね。」
ここで片桐さんの品種についてご紹介いたしましょう。
★品種について
「これはデイジーという品種」
"デイジー"だなんて、かわいい名前ですね。
「なぜかわかる?」
はて?「(゚ペ)
「上か見るとデイジー(ヒナギク)の花みたいでしょ。
私には桜に見えるから、チェリーでもいいんじゃないかと思うんだけど、デイジーっていうんだ。5-6枚の花弁が開いたような形なんだよ。」
あんりまあ、ほんと。桜かデイジーかって感じですね。
活躍中のラグビー日本代表のエンブレムを思わせます。生花店さんや生活者のみなさまにも喜ばれる品種に違いありません。
こちらはアラジン(左)とレッドターバン(右)。
本当にアラジンと魔法のランプに出てくるオジサン(アラジン)が頭にターバンを巻いたイメージが伝わりますね。
他のオレンジより色が濃い「赤ずきん」など、他では見つけられない品種があるのが片桐農園さんの特長です。
ところで、これらは食べられるんですか?
「カボチャは主に2つのカテゴリーに分けられるんだ。パンプキンとペポ。」
カボチャ=パンプキンだと思っていましたー!←<誤>
日本語ではパンプキンやペポなどの総称がカボチャとなるわけですね。←<正>
それにしてもペポって??聞き間違えたかな?
パピプペポのペポ??PEPO??
「そう、ペポというのはこういうグループ。
皮しかなくて、果肉がないんだよ。厚い皮の中にタネがある。」
そんな!?片桐さん、アタクシの乏しい想像力では、そういうの全くイメージできないんですけど・・・
「んじゃ、実を切ってあげるよ。」
え?いいんでしょうか??
ありがとうございます(涙)
鑑賞用のカボチャを割るのって意外と勇気入りますよね!?うんちく探検隊読者の皆様の中にも、切って中身をご覧になった方はどのくらいいらっしゃるでしょうか。
ということで、片桐さんの優しいお言葉に甘えて、パッカーンと切っていただきました!
パッカーンッ★
ペポを割るとこんな感じ。
実のように見える部分は皮。つまり食べるところがない。これがペポの特徴です。柔らかければ噛めるとしても、おいしくありませーん。
一方、パンプキンは、「皮+実+タネ」が基本的な構成。私たちが日ごろから食すタイプのもの。可食部がしっかりあるのです。これが大きな違い。
コチラはまた片桐さんらしいユニークな品種。片桐さんは観賞用に生産していますが、元来はタネを食べる品種です。
通常、タネは固い殻の中に柔らかい種子が入っていますが、こちらの品種は外側の固い殻がなくそのまま食べられるのです。
「炒って食べると、柔らかいピーナッツみたいですおいしいよ。ケーキ屋さんでよく使われるんだ。」
と言いながら、またまたパッカーン!と切ってくださいました。
タネはこんな感じ。これを炒るとそのまま食べられるのです・・・しかし、タネ以外可食部はありません。
「見た目としても模様がユニークで面白いかなと思って、観賞用に今年から作ってみたんだ。新品種だよ。」
そんな片桐さんのこだわりの面白品種を集めたのが「クレイジーミックス」。このような変り種のミニサイズカボチャが1箱35個セットになっています。
片桐さんの品種の多彩さを象徴したバラエティボックスです。是非一度お試しください。
★昨今の人気と取引の傾向
昨今の取引傾向に変化が見られるという片桐さん。
どのあたりが変わってきているのでしょうか。
「品種で言えば、小型種と形が極端に変わったもの、珍しいものという傾向に変わってきているかな。
例えば、こちらのペアストライプ↓
これは日本でも戦前から作られていて、100年も前からこの形でよく知られた品種なんだ。関東でも作っているし、真新しさに欠ける。
だから人気の点からはイマイチ。
どこでも採れるタイプよりも、北海道でしか採れない方がもちろん人気も価値もある。
ベレー帽タイプのレッドターバンとかは人気だよ。
とりわけ今年で言えば、白いミニが人気。」
品種のほかに何か感じる変化はありますか。
「取引でいえばタイミングが早くなった。年々市場からの注文が早くなってきているんだ。
ほんの5年くらい前まで、"9月23日前後のお彼岸が終わるまではカボチャは売れないから送らないで"と言われていた。」
なるほど、お彼岸が終わるまではカボチャは動かないからですね。
「ところが、特に若い世代にはお彼岸の商品よりハロウィンの方が受けるでしょ。だからお彼岸前からもう注文が入るんだよ。
お彼岸用品といえば、取引に関係してくるのは主にお寺さんとローソク屋さんと花屋さん」
ちょうどそのころ忙しくなるお仕事の方ですね。
「だけど、ハロウィンともなれば洋服屋さんに商業施設もおもちゃ屋さんもレストランもホテルも、あらゆる業種がハロウィンを意識して売り物にしようと考えるようになったでしょ。
規模も多いし競争にもなってくるから、やはりカボチャの動きは年々早くなってくる。
来年はもっと早くなるんじゃないかって予想しているんだ。」
ハロウィンのマーケットサイズは、今や1,100~1,200億円程度とも試算されていますが、今年あたりはさらに大きくなっているのではないでしょうか。1,150億円(2014年)といわれるバレンタインのマーケットに追いつけ追い越せの勢いです。
"当日"だけではなく、1か月以上前から街はハロウィンムード。取引の期間が長いということもハロウィンマーケットの特色と言えるかもしれません。
「しかし、これ以上取引のタイミングが早くなると、北海道の生産は間に合わなくなってくる。8月中に切り上げないといけなくなるから、その点の対応が難しくなってくるような気がする。
一般の消費者が買うタイミングが早くなったわけではなく、ディスプレイ用など商業利用している人たちのタイミングが早くなったからなんだけど。
じゃあ、早く出荷するためには、種まきを早くすればいいかというと、そういうことでもないんだ。」
何が問題なのでしょう??
「北海道では5月15-20日くらいにかけて霜が降りるんだよ。遅霜(おそじも)っていうんだけどね。
本州では藤の花が満開を迎えるころ、北海道では雪が降ったりするからね(笑)
だからそういう時期に定植すると、カボチャは霜に弱いからダメになっちゃう。」
早く出荷したいなら、早くタネまきをすればいいというほど単純にはいかないわけですね。これは、なおさら着果日数の短い品種を選ぶ必要がありそうです。
では、カボチャの生産についても伺ってみましょう。
★片桐農園さん流のカボチャ生産については、以下の順でご紹介します。
CHAPTER 1. 天候とカボチャの密接な関係
CHAPTER 2. キュアリング❤
CHAPTER 3. 収穫のタイミングはどうみる?
CHAPTER 4. あなどる?あなどらない?土のクオリティ
CHAPTER 5. 空飛ぶカボチャ
CHAPTER 6. ネズミとコオロギのカジリ対決
ではまず天候から。
CHPATER1 : 天候
カボチャの生産は天候に大きく明暗を左右される品目の一つです。その年の作柄は何より天気が主導権を握ります。
注意すべきは雨と暑さ。
「今年は雨でやられちゃったけど、去年は暑さでやられちゃってね」
カボチャという言葉はカンボジアからきているだけに、温かいところでできるイメージですが、そうでもないのですね。
「生産国は熱帯でも、標高の高い高原とか涼しいところが好ましい。夜温がしっかり下がることも大切。
夜温が22℃を超えると、ツボミの中で花粉が分解して開花しなくなるんだ。」
ぶ、分解??空中分解ならぬ、花中分解?
「花の中にはめしべとおしべがあるでしょ。
めしべは暑くても大丈夫なんだけど、おしべの場合、暑いとその鞘の中の花粉が死んでしまうんだよ。
花が開くと花粉鞘も開いて、受粉できるようになるんだけど、それまでの間に温度が高いと鞘の中で花粉ができなくなっちゃうんだ。たとえ蜂がブンブン飛んでいてもね。すると着果しなくなっていまう。」
なるほど、だから夜温がしっかり下がることが大切なんですね。
国内でも鑑賞用カボチャを考えると、高冷地が多いですね。北海道が圧倒的にシェアが多いのですが、ほかに長野や岩手、群馬などで生産されています。
「一方、今年は雨で頭が痛かったよ。
7月10日から8月10日くらいまでほとんど雨が止まなかった。本州の梅雨みたいな時期が北海道でもあったんだよ。北海道は本来梅雨はないのにね。」
片桐さんのところでは、水田転作でこのように少し低くなっているところがあります。
↑周りの畔が高いのに対し、圃場が一段低くなっているのがわかるでしょうか。それだけに長雨で水が溜まってしまい、カボチャに腐れが出てしまうのです。水が溜まっていると、除草剤も効かなくなってしまいます。
カボチャの場合、多湿より雨が降らない方が良い。今年の長雨は作柄に大きく影響してしまいました。 (詳細後述)
CHAPTER 2 : キュアリング
カボチャたるもの、収穫したらすぐに出荷というわけにはいかない!・・・ということは、「カボチャをめぐる冒険第1-4話」でご紹介させていただきました。
もちろん片桐農園様でもきちんと風乾させてから出荷しています。
片桐さんはこの工程を「キュアリング」とおっしゃいます。なんだかとってもカッチョエエ響き~(´▽`)!!
「治療する」を意味する英語の"CURE"からきているのですか?
「そうそう、"養生"とかそういう意味ね」
なるほど、収穫後に養生させるからキュアリング。キュアリングの際、気を付けないといけないのは、
① 風通し
② 遮光
このうち、どちらを優先するかといえば、実は②。カボ様に直射日光は大敵なのです。 日光が当たりすぎるとどうなるのでしょうか。
「黒くなってしまうんだよ。直射日光が強ければ、1日で真っ黒けだよ。
昨年は1棟分、まるまる廃棄したんだ・・・(*_*;)トホホ」
気温は9月で太陽が出ればハウスの中は最高で30℃以上。夜は17-18℃。洗って、並べて、キュアリング。
片桐農園さんでは品種ごとに棟を分け、中型以上はベンチ式にして、キュアリングしていらっしゃいました。
↑仕事が楽しくなりそうなタワシ。
CHAPTER 3: 収穫のタイミングは?
タイミングを計るために見るところは二つあります。一つは、実の上部の色。
「このカボチャの実の緑色がなくなったときが収穫期。」
これはまだ未熟。
「だけど、今年は雨でやむを得ずフライング収穫をしたんだ。」
その場合はキュアリングをしながら追熟させます。このカボチャは若い時は緑色のカボチャで徐々にオレンジ色になっていく品種なので、緑色が完全に抜けたこちらが本来の収穫期。
「中型種は、色が徐々に変わるから、実の色を見ることが重要なんだよ。
一方、小型種は最初から本来の色をしているので、実の色でタイミングを図ることはできない。」
はて(*゚・゚)、ではどうしたらいいのでしょうか。
「軸の色を見る。」
なるほど、この軸の部分ですね。
「軸の部分にグリーンのマーブル模様が入るようになったら収穫期。
もしくは、マーブル模様の入らない品種は、軸を持って折ってみるといいんだ。ポキッと折れれば収穫期。」
そう、二つ目のポイントは軸を見るということ!
マーブル模様になってきたら収穫OK。品種の性質上マーブルにならないものは触ってみる、あるいは折ってみる。
柔らかくてグジュッと折れてしまう場合は、収穫はまだ早いのです。
例えばこちらの写真↓のうち、手前のカボチャは完熟になって収穫したもの。軸がしっかりしています。
「完熟してから収穫したものは、乾いてからも軸が細くならないんだ。」
一方、奥のカボチャは雨のためやむを得ず未熟のまま収穫したもの。軸が柔らかく、力なく折れたまま乾いています。
このようにヘタが折れてしまうこともあるのだとか。
ではヘタに収穫できませんね(*´ェ`*) テヘ
ですから、まずヘタを触ってみるということが収穫のポイントになります。
まだまだ「生産」の途中ではありますが、ここで一旦まとめ。
◆片桐農園さん流品種選びは・・・
①着果日数
②ユニークな形 ~人気品種に変化あり~
③病気に強いもの
最近の取引は、タイミングが早くなってきているため、早生品種も重要になってくる見込み!
◆生産は暑さと雨に注意せよ!
キュアリングは、風通しと、何より遮光に充分留意すべし!
◆収穫のタイミングは?
①中型種は完全に色が載ってから!
②色に変化のない品種は軸を見る!
<写真・文責>:ikuko naito@花研
2015年10月12日
vol.111 北空知広域連様★カボチャをめぐる冒険 第4話
カボチャをめぐる冒険第4話は、まだまだ尽きない北空知のカボチャのうんちく!"これまで伝えきれなかった諸々"についてご紹介いたします。
CHAPTER1 成長街道まっしぐら!~北空知の新規就農者さんたち~
前回までのお話の通り、北空知広域連様は需要の変化に対応してきたからこそ生産拡大に成功してきました。また、逆説的ではありますが需要の変化に対応するために、生産者さんを増やしてきたとも言えるでしょう。
「私は今年1町歩から1.8町歩に増やしたよ。
最初は、生食用で作っていたカボチャの生産者さんを中心に、6軒から始めた観賞用のカボチャ生産だったけど、現在は67軒になった。」とおっしゃる山本さん。
生産者さんの人数も増えていますし、お一人あたりの生産面積も増えています。
みなさま、67軒か・・・と流さないでくださいね。
67軒といっても、ただの67軒ではありません。
前年比150%の伸びの67軒ですよ。今年は新規で25-27件ほど参入されているのです。
このご時世の下、花き生産でこれほどまでの伸びを見せる品目はそう簡単に見つけることはません。
相変わらずカボチャ色のタオルを首にかけた佐藤さん曰く、
「異様ですよね(笑)」←嬉しそう
それだけカボチャ生産に魅力があるということでしょう。
初期投資を抑えつつ、一定の収益が見込める農産物として、鑑賞カボチャという選択肢はとても魅力的です。
水稲など自分の主力品目と並行しながら、サブ品目として着手できるなど、スタートしやすい条件がそろっているということも理由の一つでしょう。
そしてぬぁんと偶然にも取材中にカボチャを農協の集荷所に持ってきてくださった若手跡継ぎさんと新規の生産者さんにお会いできました!
こちらは日本のハロウィンを支える北空知の若手後継者、土田さん。
ププーッと軽トラにプッチーニを運んで、慣れた手つきで荷降ろしを行います。
「北空知はカボチャ作りもうまいけど、イケメンもたくさんいるんだ」と誇らしげな佐藤さん。
なぬッ?!イ、イケメン?( ̄ー ̄)ニヤリ
土田さーん、お仕事中すみません。ウン探読者の皆様にご紹介したいので(あるいは、自分の目の保養が本来の目的か?)、少しだけこちらを向いてください!
「はい、土田です」
ぬぁ~んと爽やかスマイル★
間違いなくイケメン!迷彩柄のお帽子と秋色のつなぎが良くお似合いです。このような方が作っていらっしゃると思えば、カボチャを見る目も変わってくるというものです。
もう1軒、ププーッとワンボックス車でご登場されて、カボチャを降ろす方が・・・。
「私はやめて~!」と笑顔で小走りされるお母さま。
今年からカボチャ生産を始めた新規の生産者、岩田さんです。ぬぁんと、この日が岩田さんにとって人生カボチャ初出荷!
ドキドキのうちに荷を降ろし、佐藤さんの顔色を窺います。品質、選別、梱包等、いかがでしょうか・・・。
「岩田さぁん・・・」とため息交じりで佐藤さんが語りかけます。
不安そうなまなざしの岩田さん。
傍で見ているこちらもドッキドキです((o(б_б;)o))dokidoki
まるでクイズミリオネアでファイナルアンサーの後、みのもんたさんの「タメ」をじっと待っているかのようなバックバクの瞬間。
佐藤さん、いかがでしょう。そろそろお答えを・・・
「カンペキ」
ワーイ!「カンペキ」をいただきました!
佐藤さんからお墨付きを得て岩田さんは大喜びです。・・・ていうか、ウン探が大喜び。
「これまでお米生産ばかりで、こういうの出荷したのは初めて!」
と岩田さん。カボチャ生産はいかがでしたか?
「楽しかった~❤
だんだん大きくなっていったり、オレンジに色付いていったり、生長とともに変化する姿を見るのが、本当に楽しかった。」
北空知には頼もしい生産者さんが続々登場しています。カボチャ生産はまだまだ成長路線まっしぐらです!
CHAPTER2 物流改善と多機能パッケージ
こちらは北空知広域連さんのおもちゃカボチャ用共通箱です。
しかしこの箱、オバケっぽいおじさんの顔が書いてあるただの箱ではありませんぞ。実は"しかけ"がたくさん。
商品を保護する役割、積載効率や持ち運びが考慮された形・・・まではほかの梱包と同様ですが、北空知が違うのは次のポイント。
①ハロウィンのあれこれを伝えた情報媒体でもあること
ふたの耳には、このような情報が記載してあり、情報伝達型の梱包箱と言えるでしょう。一つ一つの箱にハロウィンについて説明書を入れることなく、それと同様の効果を提供できています。同じパフォーマンスでありながらコスト削減にもつながっているのです。
②店頭での陳列の手間を省く作業効率を考えた便利な什器としての機能を備えていること
↓ミシン目で切って折り立てると、ポップアップ式に立体的な什器に変身!
量販店や小売店さんなど、販売に忙しい方々が展示で過剰に時間を割かれることのないようになっています。
これはかなりユーザーフレンドリーなしかけですね。
③ハロウィンパーティに活用できるカボチャのお面付き!"体験"を提案するパッケージ
コチラもミシン目で切り取ると、お面や室内装飾としてチョックラ使えるカボチャグッズ誕生。まさに楽しいハロウィンを提案する遊び心満載の梱包箱。運んでいるのは、カボチャだけじゃないんです。
④もちろん自産地のPRも忘れない署名入り
一口に北海道といっても言っても広いからネー。やはり「北育ち元気村」という場所を覚えてもらわないと。そのためには、こーゆー情報って重要。
たった6面しかない箱(耳を入れれば8面ですが)のはずなのに、もうなんだかスンゴイしかけw( ▼o▼ )w
シャレオツな展示什器でもあり、消費者に対してもアピール力の高い広告&情報媒体でもある、まさに多機能パッケージなのです。
ハロウィンの後はおもちゃ収納箱として使っちゃえば!って思ってしまいますが、いずれにしても極めて高い付加価値のあるパッケージと言えます。
これはかなりの優れモノです
CHAPTER3 意表を突くカボチャたち ~今さらだけど知っておきたい彼らの本当の性質~
★"ファイト一発ッ!" カボチャのクルクル
よく見るとカボチャにも電話線のようなクルクルヒゲが出ていることがわかります。
持ち上げようとすると、地面やほかの蔓にしっかりと絡まり、意外と力が必要。無理して抜こうとすると、地面から離れるより先に蔓が切れてしまう。
佐藤さん、な、なんですか、コレは?
「巻蔓(まきづる)だよ」
カボチャにとって必要なんですか?
「それが必要なんだ。これで自分の身体がグラグラと動かないように、ほかの誰かにつかまるんだよ。
地面に自分自身を固定したり、実際地面に刺さるように伸びていくんだけど(!)、ほかのものと絡んで、自分自身を固定するんだ。」
そんな性質があるのですね。カボチャにとっては蔓の伸長が安定するんですね。
「私たちにとってもカボチャの実が動かなくなるから、地面に擦れてできる傷を減らすことができる」
わー、これなんて、あっちとこっちの蔦のクルクルがお互いに絡み合っている!
崖に落ちそうな仲間の腕をしっかり握ってなさない"ファイトーッ!一発ッ!"の絡み合う腕のようだわ!
よーく見てみると、クルクルだけでなく、なんだか蔓の途中から根も出ている??ナンデ?
「これを不定根(ふていこん)というんだ。
株元の根ではなく、本来の根の場所ではない(不定期な)ところから出ている根だから不定根。
こうして伸びた蔓のからも発根するから、株元から切り離されたとしても先端の植物体だけで生きていけるんだ。」
ンわッ!スゴイ生命力。フテイ植物だ!
いや、だからこそ栄養価の高いカボチャができるというもの。日本でも戦時中は食糧を確保するために、
「何が何でもカボチャを作れ! 必勝食糧 絶対確保!」
と東京都がポスターまで作って、カボチャの生産を奨励したものです。生産からここまで見てくると、「何が何でもカボチャを・・・」と言っていたのもうなづけますね。
★カボチャのトゲ
痛ッ!(@_@;)!!
カボチャの葉に触れてみたものの、あまりの痛さにびくっとして、腕を引いてしまいました。
よくみると、指に小さなトゲが刺さっているではありませんか!
葉の裏や茎からはトゲが・・・!
しかも結構キツイとげ。なにやらピラニアの口の中を見ているみたい。・・・見たことないけど。
美しくないものにもトゲがあるんですか?
「そうなんだ、カボチャには茎にも葉にもとげがあるんだよ」
しかも結構大きくて鋭い。これ、どのように対処するんですか?
「作業の時は革の手袋と、腕抜きと呼ばれる腕カバーを装着。しかも2枚。
そのくらいしないと、刺さるし肌が荒れるし・・・
でも、収穫の時など夢中になって顔を突っ込んで仕事をしているうちに、顔にトゲが刺さっちゃったりするんだけどね(笑)」
うわ~、アタタタッ(ノ◇≦。) !!(痛)
すると突然佐藤さんが・・・
「あ、ヘビ」
どれどれどれ・・・(」゚ロ゚)」(。ロ。)ドコドコ??
ぎょえーーー!Σ(=д=ノ)ノ
ウンわーーーッ!ヘッ、ヘッ、ヘビじゃ! 逃げろーーーーーε=ε=ε=┌(;*´Д`)ノ
っと逃げた先には、ヘビの抜け殻が∑(゚m゚=)!!ドキッ
ヘビも出るし、鹿も出る。ハロウィンになったらオバケも出んのかな~ ~(m´ρ`)mヒュードロドロ
鹿には電流鉄線で対応していますが、何しろ生産者さんは生産そのもの以外においてもいろいろと大変なのです。
それなのに、自らは大変だと決して口にせず、笑顔でカボチャへの思いだけを語る。生産者さんたちには本当に頭が下がるばかりです。
CHAPTER4 みんなが知りたいQ&A集!"もっと知りたいこと"
Q1:北空知さんの今年のカボチャの作柄はいかがですか?
A1:「まあまあ」(ニコッ^^)
と佐藤さん。
昨年は、収穫期の長雨で空前絶後の大不作に悩まされたといいますが、それに比べたら、今年は順調ということですね。皆様からのご出荷を楽しみにしていますよ!
Q2.:カボチャって野菜じゃないの?どうして花き市場で販売されているの?
A2:口に入れずに見て楽しむ観賞用の植物をすべて「花き(かき)」といいます。
その植物に花がついていなくても、例えば葉物、枝物、根だけのもの、植木盆栽類、芝、カボチャもす含め、口に入れずに見て楽しむ植物は「花き」として、花き市場で取り扱われるのです。
ですから、ハロウィンのカボチャのように、見たり、触ったりして楽しむものは、「花き」の分類となり、大田花きのような花き市場で取引が行われます。
Q3:ハロウィンのカボチャを買って、タネを採ってまいたら、来年同じカボチャがたくさんできる?
A3:Yes and Noです。
できるときもありますが、観賞用の花きは見た目が良いように交配してあります。
タネをまいても、その親の血が強くて、どちらかの親の姿が出てしまう可能性大きいのです。
あるいは、近くで別のカボチャを栽培していることがあれば、交配する可能性も。
しかし、その姿に拘らなければ、タネをまいて収穫すればカボチャの実は成るので、面白いかもしれません。4月ころに播種してみてくださいね。
Q4:生花店を経営していますが、10月になってから注文しても大丈夫?
A4:ハロウィン直前の急なご要望には、お応えしきれないことがあります。
夏から計画的に生産して、収穫して、洗って、磨いて、風乾してという行程を踏み、出荷できる量は決まっているのです。
注文を受けてから、圃場にあるものを切って、出荷というわけではないので、是非十分余裕を持ってオーダーしてください!
北空知広域連様からのお知らせ
「北空知広域連からはカボチャだけではなく、これからスズバラにダリアにナナカマドなどをはじめとした秋素材、ハロウィン素材が今が旬とばかりにたくさん出荷されています。
是非北空知広域連のカボチャとともに、楽しいハロウィンをお迎えください。」
北海道から「カボチャをめぐる冒険」シリーズは、次回第5話は舞台を「片桐農園様」に移してお伝えいたします!
2015年10月 7日
vol.111 北空知広域連様★カボチャをめぐる冒険 第3話
北空知広域連様のカボチャをめぐる冒険、第3話。(第2話はこちら)
今回は、「なぜ北空知のみなさまがカボチャを作っているのかからとカボチャ研究会発足の秘密までを紐解いていきたいと思います。なんと大田花きで最も有名な"あの人!"がウンチク探検隊vol.111にして初登場です!是非最後までご覧くださいませ。
最初にご紹介したいのは、北育ち元気村の組合長・石田隆広(いしだ・たかひろ)さん、身長184cm。なんだかどこかの俳優さんみたいですね。
"北育ち元気村"とは、北空知広域連様(農協)に出荷する花き生産者グループのことです。石田さんはそのグループの長(おさ)です。元気村のみなさまについて伺いました。
「北空知広域連の生産者さんは、99%が水田転作で花きを生産しているんだよ。花は他の農作物に比べて反収(1反あたりの収穫高)が良いんだよ。だからみなコメを生産しながらも、一方で花を生産するんだ」
なるほど、ここ深川は日本随一の米所ですからね。
石田さんの場合、全ての生産物のうち花きとカボチャはどのくらいですか?
「花きは6割から7割くらいかな、カボチャは全体の28分の1」
つまりカボチャは3.6%くらいですね。
わー、まるで「カボチャの宝石箱や~」
・・・ってどこかで聞いたような表現ですが、これだけ山積みあっても3.6%。
全体に占める割合は少ないように感じますが、結構力入れている感じ。ちょうど奥様がカボチャの選別中です。
へー、こちらでもこのようなサイズ測定治具を使っています。
メジャーを使う必要はありません。手作りっていうのがいいですね。しかし、実際には奥様は熟練の技で、これをイチイチ使わなくても、もうサイズもわかってしまうのですが。
サイズのほかにはどのようなことをチェックするのでしょうか。
「腐れをみるのよ。」と奥様。
「こういうのは、腐れになる可能性があるの。」
ひとつひとつくるっと回して見ていくなんて、大変ですね。
「もう触ったらわかるのよ~。」
と選別専門の石田さんの奥様。見なくても見えているってことですね。ここで小さい腐れでも、流通過程でこんなふうに徐々に大きくなってします。
石田さんがギュッと親指で押してみると・・・
「ほれ、汁が出てきた!」
これが生花店さんや生活者のみなさまのところで発生してはいけないからこそ、出荷前に念入り検品するわけです。こういうのは、ハロウィンまで持たない可能性がありますので。
実はこういうの、一見わからないんですよ。でも奥様は、一つ一つ手に取り、何千個と検品しているので、チョット触ればわかるのです。
と言っている間に、カボチャを一つ放り出した奥様。今のは何がダメだったんですか?
「私にはわからない」と石田さん。
奥様は「このカボチャは腐る"予感"がする」
その予感の元は、針の穴サイズの点ですよ。腐りそうなポイントを見つけて、すかさず預言とともにカボチャを放り出す。もうここまで来たら、預言者です。
でも、石田さんはなぜカボチャを作っていらっしゃるのですか?
「だって面白いからさ!楽しいじゃん、カボチャを出荷するのって。」
どのあたりがそのように思わせるのでしょう?
「そもそも15-20年前に作り始めたときは、ハロウィンは日本に定着していなかったわけよ。
だけど今の浸透ぶりをみたらカボチャを作っていてもやりがいがあるでしょ。つまり、新しい文化の創生に大きく寄与しているっていう実感があるんだよ。」
北空知の地域のご自宅では、ハロウィンの季節ともなると、どこでも玄関に大きなカボチャを飾ります。
こんな感じで↓
素敵なおうちに黄金色に染まった稲穂、秋の豊作を象徴するかのように置かれたカボチャが北海道の大地に映えますね。そこで生活される人々の幸せを物語っている光景のようにも見えます。
「そうでしょ。こうやって町全体が盛り上がるんだよ。商店街も郊外もどこでも1か月ずっとカボチャを飾るんだ。
文化になったってことだよね。」
なぜカボチャに着目されたのですか?
「今から13年前の2002年11月、農協の研修でシカゴに出向いたんだ。
ハロウィンを過ぎてもなお、大小のカボチャが街中にごろごろと装飾されているのを見て驚いたよ。街が明るく、人々が楽しそうだったことが忘れられない。
ハロウィンの仕掛け人の一人として、いつかその文化が日本に定着したら、日本中の人々が楽しくなるに違いないと確信したよ」
それ以来、石田さんは「日本中、ハッピー・ハロウィン!!」を目指して、コツコツとカボチャ生産に励んできたのです。
そんな石田さん曰く、
「カボチャ生産は"楽しい"が基本。作っている人が楽しくなかったら楽しさを生活者のみなさまにお届けすることはできないから。」
しかし生活者のみなさまに楽しんでいただくためには、ここで石田さんがしっかり選別。
ご主人とお話しさせていただいてる間に黙々と選別を進めます。真剣に楽しむ。
私たちには楽しんでいると言いながらも、生産者さんのこの地道な取り組みがあるからこそ、私たちがハロウィンを楽しめているというわけですね。
もうおひと方、北空知のカボチャ生産を牽引してきたキーパーソンをご紹介いたしましょう。
北空知広域連の「カボチャ研究会」一代目会長の山本時雄(やまもと・ときお)さん。
花きとしてのカボチャ生産の発足当初から歴史と生産の全てを知り尽くす方。北海道でもカボチャ生産の先生と呼ばれています。
【カボチャ大産地の成り立ち】
そもそもなぜ、北海道のみなさんがハロウィン用のカボチャを作ろうと思われたのですか?
「研修で東京に行ったときに、大田花きの磯村社長に"カボチャを作ってくれないか"と言われてね。
"外国ではハロウィンの盛り上がりがスゴイ。恐らく10年後、もしくは10年経たないうちに、日本でも盛り上がりを見せるだろうから、それに向けてカボチャを植えてみないか"という話があったんだ。」
え?ホントですか?本当に大田花きの社長磯村からの話がきっかけだったのですか?
むむむ・・・ということで、大田花き社長の磯村に聞いてみました。(もしかして、当コーナー初登場??)
「本当です。」
あ、やはり本当だったのですね。なぜカボチャをお願いしたのですか?
「米国文化の流入と日本の人口動態を考えてのことだよ。
今から18-19年くらい前といえば、米国で仮装パーティとして盛り上がり始めたハロウィンが、日本の生活者にもさまざまな形で届くようになり、徐々にハロウィンについての認知が高まっていったころ。
ちょうど東京ディズニーランドでもハロウィンイベントはこのころからスタートしたでしょ。それで国民の誰もが知るイベントとなった。
一方、人口動態を考えれば、団塊ジュニアが大学を卒業して、社会に出てお金を稼ぐようになった頃。彼らが消費のボリュームゾーンとして経済に影響を与え始める。米国の新しいもの、楽しいものを積極的に取り入れる彼らが、将来家族を持ったり、子供が生まれたりする頃になれば、さらに需要のパイが拡大する。またその子供たちが通う幼稚園でもカボチャを使うようになるだろうしね。
だから花き業界としてはきちんとカボチャを供給できるようになっておかないといけないと考えたんだ。
折しも、七五三や秋の菊花展なども、ちょうど盛り上がりに欠けるようになってきて、新しい文化が入りやすい土壌があった。メインの要素に加え、これらの周辺要素も合わせて考えると、ハロウィンは日本人にとって楽しいイベントとして受け入れられるようになるだろうと考えたんだよ」
このような社長磯村の見通しもあり、大田花きでは1997年から「カボチャ大市」を開催するようになりました。1997年といえば、ちょうど東京ディズニーランドがハロウィンイベントを始めた年でもあります。いずれも今年で19回目。
でも山本さん、作ってほしいと言われて、みなさん、すぐ作ろうと思われましたのでしょうか。
「すんなり提案を受け入れることができたよ。
もともと生食用を作っていたこともあるしね。」
北海道では開拓時代からカボチャは主食として盛んに生産されてきました。収穫しておけばある程度保存も利きます。北海道の厳しい冬を越すのに、栄養価の高いカボチャは大変価値のある農産物なのです。ですから、北海道の皆様はカボチャを生産していらっしゃる方が多いのです。
「生食用をたくさん作っていたところに、メキシコやニュージーランドなどからも輸入カボチャが増えてきたでしょ。
国産の価格が下がって私たち生産者は、新しい道を探していたんだよ。そこに磯村社長からその話・・・。
北海道に戻ってきて、部会のみんなにカボチャ生産に興味があるかって聞いてみたら、"アルッ!"ていうんだ。
おまけに、既におもちゃカボチャを作っている人がいるよって話になってね。」
その方ががカボチャをめぐる冒険第1-2話の吉澤さんだったというわけです。
そこで、山本さんと吉澤さんが初めて鑑賞用のカボチャ栽培をされる方をリードして、何人か有志を集めてカボチャ生産に踏み切りました。
当初は有志6軒ほどでスタート。
「たった6軒程度だったけど、いきなり900万くらい売ってね(爆)!
ハロウィン前の短期間のうちに。」
初年度でいきなりスゴイですね。
「ワオッ!てことで面白くなっちゃったのよ。これがきっかけでどんどん生産を増やしていってね」
現在、北空知広域連様でカボチャ生産に携わる農家さんは67軒。今は、花きのカボチャでは全国一の生産量を誇るまでになりました。
スタート時の10倍以上に増えました。花きばかりでなく、あらゆる農産物の中でも、これほど伸びている品目をリストアップするのはなかなか難しいことでしょう。
「今、伸びている品目ってあまりないでしょ。そんな中で、足らないと言われる品目・商品を作るというのは、生産者としては最高の悦びだよ。将来があるわけだから。」
必要とされている実感はやりがいに直結しますね。
【近年の需要変化】
最近の需要の変化は感じられますか。
「最近の変化と言えば、ハロウィン文化の地域への広がりだね。
東京ばかりではなく関西方面にも。USJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)のハリポタ効果が大きいかも。西と東が始めたら、全国に広がるのはもう時間の問題だろうと思うんだけど。
ここできちんと花きとしてのカボチャを供給できないと、工業製品などのカボチャに流れて行ってしまい、ハロウィンに生のカボチャという文化が定着していかない。普及が一気に広がっている今こそが重要。きちんと納品していくことがウチの産地の義務だと思っているよ」
吉澤さんにも同じ質問を伺ってみました。
「ここ10年で変わってきたことは、花屋さんと量販店の2パターンの2パターンの需要が生まれたということだね。
産地としてはその両方の需要に応えていくというのが、難しいながらも重要なこと。
量販店からしたら、店頭での手間が省けるよう装飾性のあるパッケージに入っていることが重要だし、定番商品で数をしっかり揃えることが何より先決。従来からあるプッチーニ、フルーツミックスなど、クオリティを落とさず量的に供給していく。
一方で生花店さんは、一つ一つを見たときに面白いもの、ユニークで珍しいものであることが重要。規格の統一性よりも希少性が評価される。
どちらが先に広まったかといえば、それは小売店。
ここからすそ野が広まって量販店でも扱うようになったわけだけど、後から拡大した量販店需要にも対応していったのが、ハロウィンカボチャ拡散のコツだったと言えるかもしれないね。」
6軒で誕生したカボチャの産地も、変化する需要を理解して、適切に対応していったのが、67軒まで成長した秘訣というわけですね。北空知広域連さまのカボチャ生産地誕生と成長秘話でした。
北空知のカボチャ産地形成に大きく寄与された方々。
(左から、相変わらずカボチャ色のタオルがトレードマークの北空知広域連・佐藤さん、生産者の吉澤ご夫婦、山本さん)
2015年10月 1日
vol.111 北空知広域連様★カボチャをめぐる冒険 第2話
9月28日(月)に開催された「第19回 大田花きカボチャ大市」は、北空知広域連様から若手のイケメン3人組が応援に駆けつける中、とても盛り上がった大市になりました。
北空知広域連の大野智(嵐)こと販売課課長・白峰真樹(しらみね・まさき)さん。"北空知の花のことなら、なんでもお任せあれ!"
そして、登場した「今年の人気者」は・・・?
ぬぁんと「アナと雪の女王」さまたち。
スイカだと思っていたら、魔法が解けて、色鮮やかなカボチャに大変身!みなさま、今年もたくさんカボチャを使ってくださいと締めるストーリー。
日本流ハロウィンはいつも人々を楽しませるものなのですね
さて、女優達(中身は男性)の舞台(寸劇)の後もしっかりお仕事です。
←働く金髪の女王エルサ。違和感なし。
アナは妙に市場が似合っていて、これまた違和感なし。普段このままいても、全くおかしくない感じです。
オラフも大田市場までよく来てくださいました。
こんな風にハロウィン1か月前くらいに大田市場では「カボチャ大市」が立ちます。1年の中でも見応えのあるセリの一つ。
そんな舞台に立つまでの「カボチャをめぐる冒険 第2話」の今回は、前回のカボチャ生産の行程に引き続き、北空知広域連の吉澤さんに品種選びとプレミアムと呼ばれるスペシャルなカボチャについてご紹介いたします。
吉澤さんのところでは栽培品種20種以上。一体、どのように品種選びをしているのでしょうか。
【品種選び】
ステージ1 ◆ まずはカタログを見て、外観によるファーストインプレッション。面白そうかどうか。
ステージ2 ◆ 次に、作ってみて形状や色など写真通りに育つ品種かどうか。
同時に、収量は十分かどうか、あるいは北空知の大地で栽培したときに、ハロウィンに合わせて出荷できる品種かどうか、栽培しやすいかどうかという生産効率の問題をクリアしたもの。
ステージ3 ◆ それから、作ったものを大田花きなどの市場に出荷して、マーケットの反応を見る。ニーズと合っているようだったら本格的な生産に入るんだ。
なるほど、この3段階をクリアしたものがマーケットで生き残るんですね。
ステージ1はカボチャを使う側にとって、ステージ2が生産側にとってどうか、ステージ3でテストマーケティングということですね。
例えば、こちらはマットで陶器のような質感が特徴のオータムクラウン。
マットな質感で、何とも言えない上品なホワイトです。
このオータムクラウンは今ステージ3。マーケットの反応を見ているところです。
「こういう風合いはいままでにない品種だから面白いなって思ったし、作ってみても大丈夫そうだった。実際にお花屋さんにもこれいいねと言ってもらえたので、今後増やしていこうかなと思っているところ」
←カボチャを語るとき(だけではありませんが)何ともお優しそうな表情の吉澤さん
ここで今年の隠し玉品種をウン探だけにナイショで見せていただいてしまいました。
「リールオレンジモン。
こういう濃いオレンジって、ありそうでなかったでしょ」
なるほど、このオレンジ、確かになかったかも。かなり濃い。表面は若干艶があります。こちらもステージ3。
数年前から手掛ける"ギャラクシー・オブ・スター"。
上から見ると星形に見えるばかりでなく、ヘタの断面も不思議と星形をしています。
「これはヘタを少し長く採れるところが特徴なんだ。実が小さい分、ワイヤーを使えば、つるして使ったりできる。カボチャも置くばかりでなく、いろんな方法で使えるからいいんだ」
ハロウィンも毎年同じではありません。カボチャも毎年次から次と吉澤農園さんから新しい品種が誕生するのです。
なんだか、握って指先を刺激するボケ防止トレーニングにも使えそうな形↑ですね^ ^;
【プレミアム】
あれれ~!?ぬぁんですか、これは??
吉澤さんの作業場で見つけました。みなさん、表面に絵が描かれたカボチャってご覧になったことありませんか?
こーゆーの↓
人の名前から誰かの顔まで、なんだかカボチャに自由自在に描いてあります!
すんごいたくさんありますけど、これは一体・・・・?
「これらが北空知で取り組んでいるお絵かきパンプキンだよ」
"こんな感じの文字や絵を描いてくださーい!"と注文してから作る、オーダーメイドで唯一無二のプレミアム商品として出荷するので、「プレミアム」と呼んでいます。
でもどうやって描いているのでしょうか?
なんだか線の部分が膨らんでいるようにも見えますケド・・・σ(・・?)
糊で何かをくっつけるとか??
「カボチャを傷つけることによって、絵を書くんだよ」
なぜカボチャに傷をつけると、お絵かきできるのですか?
「そうそう。人がちょっと怪我したときに"かさぶた"ができるイメージかな。
カボチャが傷をふさごうとして、中から果汁が出てきて、それが乾くとこんもりと盛り上がった跡ができる。
これがお絵かきラインだよ。」
実はこのお絵かきライン、マスクメロンの網目模様ができる原理と同様なのです。
マスクメロンは、栽培過程で中の果肉が短い間にグワッと生長するために、表皮が割れる。そのひび割れをふさぐために、内側から果汁が出て傷跡を保護する。それが乾いてできるのがあのアミアミ⇒
カボチャのお絵かきは、外から人工的に傷をつけて、果汁を出し、模様を作っているのです。
傷をふさぐように"かさぶた"ができて、その傷を背負っては大きくなっていく・・・ってなんだか別の話をしているみたいですが、たくましいカボチャの生長にも励まされますね。
カボチャお絵かきが上手なのは、なんといっても吉澤さんの奥様・真由美さん。
どのように描くのでしょうか?
「100円均一ショップで売っているキウイナイフで描くのよ」(笑)
こちらがそのキウチナイフ。しかも"ヒャッキン!"とは、結構お手軽道具で描いてしまうものなのですね。
刃先がかぎ状になっています。丸いキウイの断面をほじる感じが、絵の曲線を描くのに動きが似ていて、適しているのでしょうか。
お絵かき、難しくありませんか?
「難しいわよ~。深く傷つけすぎちゃったりして」
深く掘り過ぎちゃうとどういうことになるのでしょう?
「そこだけ生育が止まってしまうの。かさぶたができるどころか、切り過ぎちゃうわけだから、その部分の生長が止まってしまう。全体としては、部分的にえぐれたようないびつな形になるの。
深さは5-7ミリメートルがちょうどいい。10ミリまで深く行ってしまうとアウトなのよ。」
傷が皮を通り越して、実まで到達してしまうとNG。 その加減は1cm未満がぎりぎりのところのようです。
「かといって浅すぎると、細い線しか浮かび上がらず、かわいくなかったり」
その加減がワザ。
真由美さんが今年失敗したのってありますか?・・・あったら、ナイショでウン探でお披露目しちゃおうかと。
「ないわよ❤ふふ」
あ、そうでしたか^ ^; さすが。絵も上手でお手先が起用な真由美さんは、お絵かきの失敗率は今のところゼロパーセント。
何よりお仕事が丁寧な吉澤夫妻は信頼の商品です。
「それからもう一つ大切なのは、お絵かきのタイミングなの!」
栽培過程でどのタイミングでお絵かきするかってことですか!?
「そうなの。傷つけの作業は、カボチャの実がまだ若いうちに行うのよ。」
へー、大きくなってからではないのですね。タイミングは7月上旬くらい。
まだカボチャがカボチャ色をしていない、こんなに実の青い時に、圃場で膝をついて腰を曲げて、カボチャ畑に顔をうずめて描くのです!!
サイズもまだカボチャサイズになっていません。直径はまだ15-20センチくらいでしょうか。
カボチャは、最初薄い緑から徐々に濃い緑、そこからオレンジに色付いていきます。お絵かきのタイミングは、緑が徐々に濃くなる頃、まだ「あなた瓜(ウリ)ですか?」と問いかけたくなる頃がベスト。(そう、カボチャはウリ科なのです!)
「まだ若い緑が残っている頃までに傷つけを完了するのよ。
早すぎると実が若いから、傷から雑菌が入る可能性が高くなる。さらに雨が続いたりすると傷から腐っていって商品率が低くなってしまうの。
かたや、 遅すぎるとかさぶたが上手にできないし、線が細くなったり、絵が浮かび上がらない可能性があるの。」
なるほど、お絵かきのタイミングというのがプレミアムの価値を左右しているわけですね。
写真をよーーーくご覧ください。実はこのカボチャたち↓いずれも既にお絵かきしてあるんです。
お絵かき仕立ての瞬間です。
描いたばかりの時は、どこに絵を描いたのか、もしくはなにを描いたのかわからないくらい。
それが徐々に傷が乾いて線が浮き出てくるというわけです。
「お絵かき適した品種というのもあるのよ!」という真由美さん。
その一つがこちら。"ベビーベア"という品種です。
【特徴3つ】
- きれいな真ん丸になりやすい(ほんまや。丸くて、しわがなく、ツルンとしています!)
- 軸が太い(軸が太いのは良質である証拠!見た目にもバランスが良い)
- 傷をつけた後に、きれいに絵が浮かびやすい
このとおり↓
お絵かきが浮かびやすいのは、実の糖分が高いことも関係しているようです。
確かに線が太く浮き上がって、絵が映えますね。
このようにカボチャに絵をかいたら面白いかも!?とやり始めたアイディアウーマンはもちろん真由美さん。
それにしても、なぜこのようなアイディアを思いついたのでしょうか、真由美さん??(゚ー゚*?)オヨ?
「カボチャを傷つけたら絵が描けるっていうのは前から知っていてね。
遊びで遠慮がちに時折描いて市場に送っていたんだけど、そしたら2014年から大田花きと一緒にお客様のご要望に応じた絵を描きましょうってことになってね。
お客様のご注文をいただいて、それに沿った文字や絵を描くようになったの。」
早速注文がたくさんあるようですが、畑で腰を曲げて小さなカボチャにナイフで絵を描くのって、スンゴイ大変だと思うんですけど・・・(-"-;A ...
「絵を描くのは、大変なカボチャ生産の中でも、楽しみな作業の一つなのよ~」
このように、メッセージから会社のロゴマークわがままで難しい注文も快く引き受けて描いてくださった吉澤さんの作品はたっくさん!
大田花きのロゴマークは、こんな風に描いてくださったのですね。
大田市場花き部仲卸の「大森花卉」さまのロゴマークを描けば、こちらはなんともアーティスティック★
未だに圃場に残っている「田中カボチャ」(中田カボチャか?)もあったり。ちょっとシュールな光景。
こちらはある報道番組用に描いたもの。一つのカボチャにその番組名が一つ文字ずつ刻んであります。
もちろんその番組名を明かすことはできませーん( ̄b ̄)シーーッ!!
ぜひハロウィン前の秋の夜長に報道番組に注目してみてください。
いや、ちょっと待ってくださいヨ。なんですか?あれは??(←大根役者風)
吉澤さん、そのあたりにあるカボチャ、その絵、何でしょうか??ちょっと変わった絵のようにお見受けするのですが。
どれどれ・・・カボチャの間を縫って行き、指さしたカボチャを担ぎ上げてくれた吉澤さん。
何ですか、その絵は?
「あ、これ?スナフキン。この注文があったんだよ。」
よ、よ、ヨ、よッ、よもやこれは!? w(゚ロ゚;w(゚ロ゚)w;゚ロ゚)w
大田花きの子会社である大田花き花の生活研究所のK所長がオーダーしたと言われるスナフキンカボチャではないか!
なんとまぁ、よくできている!
実は、こちらは大田花き花の生活研究所のK所長が自分でスナフキンを描いて「この通りに!」とお願いした無理難題お絵かき。
こちらがお願いしたときの絵。A4の紙にマジックで描いて提出。
今まで文字や会社のロゴマークはあっても、「絵」の注文を受けたのは、初めてなのだそう。
しかしまあ、これをよく上手に描いてくださったものです。しかも圃場で!
このウンチク探検隊がHPにアップされる頃には、大田市場に届いている頃でしょう・・・
と思っていたら、本当に届きました。スナフキンカボチャ!
おめでとうございます。大田花き花の生活研究所所長Kもご満悦❤
しかもスナフキンの絵以外の傷は一切なく、失礼してひっくり返してお尻を拝見しても、あのフルーツ皿の効果か、変色もでこぼこも一切見受けられません。
軸も太くて、表面もピッカピカ☆
スゴイ!なんという美品でしょうw(゚o゚*)w
吉澤さんご夫婦のカボチャに対する愛情とスピリットが表れていますね。
みなさまも何か希望がありましたら、是非お取引の仲卸さんや近くのお花屋さんにリクエストしてみてください。
ただーし!ご注文は6月までにお願いいたします。
ナンデ?
「お絵かきの作業は、6月頃に行うからです。」
7月になってからではお絵かきは間に合わないことをお忘れなく~♪
このように、新しい品種や大変なお絵かき作業など、生産してくださる方が楽しんで新しいものと次々とご提案くださることで、私たちのハロウィンもさらに楽しいものになっているのかもしれませんね。