2013年6月18日
vol.100 JAみなみ信州 【後編】品目紹介と日本農業賞おめでとうの巻
前編に引き続きJAみなみ信州の後編は、ダリア以外をご紹介していきまーす!
★オキシペタルム
みなみ信州は花でいえば元々オキシペタルムから始まった花き産地です。
・・・ん?オキ△★_ΩΘ?
ソレ何の花?と思われた方へ、ここがこの花が残す大きな課題の一つ。
↓この花のことです。
え?ブルースターじゃないの?!と思われた方へ。
厳密にいうとブルースターというのは品種名です。つまり、バラの中のローテローゼにあたる名前です。
従いまして、例えばこの写真の品種名はピュアブルーなので、ブルースターではありませんということになります。しかもブルースターという品種は現在ほとんど流通していません。
むしろ、ブルースターとは全く別の花といっていいほどあらゆる点が改良され、生まれ変わっています。
そう考えると、こんなにかわいらしい花の名前が、なんとも難しい学名のオキシペタルム(以下「オキシ」と呼ばせていただくことがあります)という名前で流通しているのが何だかミスマッチに思えてきます。馴染みの薄い名前を使って消費拡大を推進していくのは、大変な障壁になります。この名前はオキシ自身のためにもなんとかしたい課題の一つです。(最近、学名はTweediaトゥイーディアが使われることがあります)
なんて、ブーブー(-ε-)言っている場合ではなく、こちらはJAみなみ信州でオキシ一筋30年の池田毅さん。
生産のみでなくオキシの育種家さんでもあり、白、ピンク、紫など様々な色と形と性質のものを生み出されているのです。
ダリアの周年栽培を方針の軸に据えてから、多くの農家さんがダリア生産に切り替えましたが、オキシの魅力に取りつかれ、今でもなお、オキシの育種、生産から手掛けていらっしゃる、まさに日本を代表するオキシペタルムのトップブリーダーなのです!
池田さんの心を離さないオキシの魅力とは何ですか?
「初めて見たときにね、"なんだこの絵具を垂らしたような色は!?"っていうスゴイ衝撃を覚えたんだ。片面だけに花をつける面白さと、水彩画のような濃淡。
オキシと意見が合ったというか、美意識が通じたっていう感じかな」
オキシを一目見た瞬間に電流が走ったような感覚ですか?!
いわゆる一目惚れというやつですね、い・け・だ・さん❤
ぬぁんと、早速見つけてしまいました!
さすが育種家さんの圃場には、まだ見ぬ潜在パワーに溢れた逸材が隠されていますね~!
池田さんの圃場で見つけたのは初めて見るオキシペタルム。
ブルーでもなくピンクでもホワイトでもなく、なんとパーポー(←パープル)!
まさに第4の色Σ(゚口゚;
しかも、この品種は巷で有名なAKB48のおねーちゃんがある日池田さんの圃場を訪れて、「私の名前を付けてください!」ということになり、命名された"マリヤンヌパープル"。
なんだか仮想物語のような流れですが、現実のお話。事実は小説より奇なり・・・ですね!
"鈴木まりや"さんという方だったそうで、ニックネームを「マリヤンヌ」というそうです。まりやさんは、今上海のAKBでご活躍中だとか。いーまーい~ずこぉ~♪(「荒城の月」風)
しかし、この品種はまだ固定しているところで、すぐ出荷とはなりません。
オキシの品種固定は誕生から10年かかると池田さんはおっしゃいますので、マリヤンヌパーポーのデビューはまだまだ当分先となります。とはいえ、日々花に従事する私たちに将来の楽しみと夢を提供してくださっていますね。
ところで、オキシペタルムの魅力の一つがこの花の中心部分、それぞれの品種が持つ色のコントラストが美しい~(≧∇≦)!
ん?でもなんでしょ?中心を囲む王冠ぽい部分?!
これは副花冠(ふくかかん)という部分で、雄しべの一部が変形したものです。その中にスカイツリーのようにそびえ立つのが雌ずい(しずい)、つまりめしべのこと。
ん?では本当の雄しべは?
「雄しべは中の方にあり外からは見えないんだ。そこに花粉塊が付いていて、蜂が来たときにしたに押し込んだりして受粉するんだよ。人工的に授粉する場合は、筆を使うんだよ」
変わり枝を見つけたらそこから10年。オキシの育種はなにしろ気の長い道のりです。時間もかかるし、一度始めたら止められないというのが、池田さんがオキシに30年傾注している理由の一つでもあるかもしれません。ウン探も30年続いて、池田さんの新品種をまたいろいろとご紹介したいですね。
池田さんのオキシは、花弁が固く、花付きが良く、花持ちも良いのが特徴です。
↑切れ目なく連なる花が美しいですね。
花つきの良さ、透き通るような白、品の良さ、ブライダルで使ったら1輪は小さいながら断然目を引きますね。
色によっても全く性質が異なるという池田さん。
それは純粋に遺伝子レベルの品種特性なのですが、例えばピンクとブルーの品種は、形は似ていても「人と猿くらい違う!」のだとか。
なるほど、池田さんは性質を知り尽くしている分、私たちには似ているように思える部分も、全く違うことが分かるのかもしれません。西洋の人からしたら、見た目では日本人と近隣アジア人の区別がつかないというのと同じでしょうかね?
私たちとは遺伝子レベルで全く異なるその猿に悪さをされて、池田さんは頭を痛めています。実はサルだけではなく、シカやイノシシなど強敵揃い。
みなさんアレをご覧ください!LOOK UP!!
補修されたハウスの天井。なんとサルが飛び込んで来た跡なんだそうで、飛び込んできてハウスが損傷したことがこれまでに5回もあるのだとか。ほんとサル相手に損害賠償請求したいくらいですね!
池田さん、ところでオキシの良い水揚げ方法を教えてもらえませんか?(ケッコウナヤム・・・)
「オキシは切り口から白い樹液が出てくるからね、生ける前にそれを流しきった方が長持ちするよ。
一般家庭では切り口を20秒水に浸けて樹液を洗い流せば大丈夫。湯揚げの必要もない。基本的には出荷前に産地で水が上がるように処理しているからね。
今は品種改良されて、以前のオキシとは全然水揚げも花持ちも違うんだ。いわゆるブルースターと言われていた時代とは姿が似ていても、植物としてのポテンシャルは全く違う」
お~!オキシの世界に改革が起こったということですね。
池田さんとしては、今後オキシの育種の方向性をどのように進めていきたいと思われますか?
「一般家庭用の鉢物になる品種創出を目指す!」
なんと頼もしい、将来はオキシの新しいマーケットが生まれそうですv(≧∇≦)v
みなさん、みなみ信州から出荷されるオキシに大注目ですよ~!
JAみなみ信州からの月別オキシ出荷推移(大田花き取扱;2010-2012年)
★アストランティア
またまた難しい名前の花と思われたかもしれませんが、こちらの花のことです。
見たことある方もない方も、今回のうんちく探検隊で覚えちゃってください!
名前はラテン語のアストラ(astra=星)からきています。その名の通り星のように放射状に光を放つ形をしていらっしゃるではありませんか!
星の意味から命名された草花はたまに見かけますね。
例えばステルン・クーゲル。ステルンが「星」で、ドイツ語の「星の球」という意味。五角形が集まりひとつの球を形成しています。
キク科のアスターもasterも同様です。
花と星というのは、古来から人々が夢や希望を抱く対象となっていたという点において、何か共通するものがあるのかもしれません。
さて、本題に戻りますが、その人々の憧れの的アストランティアを栽培するのが、こちらの坂井貞敏さん・美加子さんご夫妻。
鋭いウン探読者の皆様なら、お気づきの方もいらっしゃるかもしれません。 普通のアストランティアより少し色が濃く見えませんか?
この品種は坂井さんが自ら選抜されたもので、みなみ信州のオリジナル商品なのです!
その名も「みなみレッド」。
写真↑の上がみなみレッドで、下がみなさんがよく見るアストランティアに近い色だと思います。
坂井さんのところでも淡い品種を栽培していましたが、突然変異で濃い品種が生まれ、引き寄せられるように花に近づいて行ったといいます。
「それを株ごと引き抜いて、鉢に植え替えて、大切に増やすんだ」
という坂井さん。色ばかりでなく、輪も大きく、どれもその直系は4cm近くあります。
取材中も休みなく働かれる美加子さんの手を拝見すると・・・
なんと"アストランティア・タコ"ができているではありませんか!?
↑中指の関節に2個!わかりますか?
でも、どうして手にタコができるのでしょうか。
「こうやってね、手で採花していくのよ。
そうするとね、だんだんここの皮膚が硬くなって、タコができちゃうの」うふふ^^
その口調から、美加子さんは掛け値なくアストランティアに対して愛情を注いでいる様子が良く伝わってきます。
美加子さんは「アストランティアは形が可愛いだけでなく、散らないし、花粉も落ちない便利な花でもあります。色々なシーンに使ってください」と話します。
みなみレッドは5-6月を中心に出荷されます。
大田花きでの取扱は以下の通り。(2010-2012年実績)
★フサスグリ
そして今回、最後の品目、フサスグリ。
こちらは圃場のみご覧ください。こんな風に高い標高の平らな場所で作っているのですね。
今年の作柄はまずまず。
実付きもなかなかよろしゅうござんしょ!葉も小粒できれいです。
フサスグリへの要望などございましたら、是非忌憚ないご意見をお寄せ下さい♪
大田花きでの取扱は以下の通りです。
★集荷所と清水芳実(しみず・よしみ)部会長
こちらがみなみ信州の集荷所です。
広いみなみ信州(なんてたって香川県と同じくらいの面積ですから!)では、このような集荷所がいくつかあり、まず生産者さんたちはここに自らの商品を持ち込む、もしくは農協のトラックが生産者さんの商品を集めて回り、集荷されます。
↓生産者さん自ら持ち込む様子
↓生産者さんのところに集荷に回ってきて到着したトラック
集荷所に届けられた商品をチェックをしているのは、ベテラン選手の佐々木さん。
「ダリアは全量検品します。
きれいだなと思って見るのではなく、何かあるかもしれないと注意しながら、丁寧にチェックします」
どのようなところを見るのですか?
「虫などは付いていないか、花傷みはないか、規格に合っているか(ボリューム・長さ)、添付された伝票と申告内容があっているかなどをチェックします。
長さが合っていない場合には市場への送り状の内容を修正したり、虫付きなどがあれば取り除いて入り数を変えたりします」
口調は優しい佐々木さんですが、お仕事は真剣そのもの!ちょっとしたシミや虫付きも見逃しません。
←例えばこの白い"かまくら"という品種。
右側の花弁に黒いポツポツがあるのがわかるでしょうか。佐々木さんは針でつついたようなこのようなシミも見逃すことなく、規格外としてはじかれます。
ここでの選別もみなみ信州のブランド維持に一役買っているわけですね。
佐々木さんのプロチェックをパスした商品は、行先を清水さんの采配によって決められ、全国の卸売市場に出荷されます。
どれどれ、大田花きはあるかな~・・・・・
ありました、ありました!写真左はダリアの久保田直人さん(前編にて紹介)と右側がオキシの池田さんの商品です。
大田花きにご出荷くださりありがとうございますm(_ _)m
こちらはみなみ信州の花き部会を取りまとめる部会長の清水芳実さん。清水さんご自身はダリアとリンゴを栽培されています。
みなみ信州の花き部会の部会長をされていて、大変なことは?
「なんてったって570軒近い部会員がいるからね、顔と名前が一致しない人がたくさんいる。部会長の任期は2年で、私は今1年たったところだから、全員と会ったわけではないし、一度くらい会っても覚えるのは難しいよね。
それから、花も200品目以上作っているから、この花の顔と名前を覚えるのがまた大変なんだよ」
花も1年中出荷されているわけではありませんからそうですよね。大きい部会だけに、人も花も覚えるのが大変ということですね。
「生産者さんの高齢化が問題だったけど、こちらは後継者も出てきて明るい兆し。
今年は6億を目指し、将来的には8億円の部会になっていきたいと思うよ」
出ました「8億円宣言!」w(゚ロ゚;w(゚ロ゚)w;゚ロ゚)w オォォーーー!!
もうこれは必達ですね。
◆清水部会長より消費者の皆さまへ一言
「JAみなみ信州の花を知って、どんどん使ってください。みなみ信州にご注文いただければ、品目もたいていのものは揃います」
これは頼りになります。みなさん、是非みなみ信州の花を使ってください。
◆急斜面を活用した農耕地
標高900メートル付近まで上がってきたところで、ふと目の前に開けた急斜面・・・よく見ればなんとここでも花を作っているではありませんか!?
「ヒペリカムとシュウメイギク、栗の木の木陰でアジサイ、ワラビなど、こういうところで70歳代、80歳代の人たちが花生産をしているんだよ」
と説明してくださる塩澤さん。
ワラビも作っていらっしゃるんですね。
「ここはマツタケの名産地でたくさん採れるんだけど、ワラビを乾燥させて、マツタケを出荷するときに箱の下に敷くんだ」
みなみ信州はいろいろ収穫できていいところですね。
それにしてもこの傾斜!
あたくしのフォトテク(写真の技術)ではなかなか伝わらないのではないと思うので、どのくらいのきつい傾斜か、試しにJAみなみ信州にこの4月に入社したピチピチの22歳、中島香奈さんにこの傾斜にトライしてもらっちゃいましょう!
ほら!この傾斜を登るのに、苦闘されている様子が伝わりますか?
ピチピチガールの中島さんがこれほど苦戦するほど本当に急斜面なのです!70-80歳代の方たちがその傾斜を克服してこの地で農業を営んでいらっしゃるとは・・・!
この急斜面を克服する工夫はいたるところに。
トロッコレール
それにしても、この渡し板・・・幅25cmくらいのこんな細いところをご高齢のおじーちゃま、おばーちゃまたちが渡って日々農作業をされていらっしゃると思うと、心配でなりなりません。くれぐれもお気を付けて!
「猫の額のような狭い場所も、更には急斜面であっても、こうやって農耕地にして 活用することができるんだ」
570軒近いみなみ信州の生産者さんは、大規模に花生産されているばかりではなく、傾斜のある小さな面積も花き生産のために耕している方もいらっしゃいます。耕地面積の大小、環境の有利・不利にかかわらず、意欲的に農業に取り組み、鋭利生産されているのです!
そしてなんと、この功績が称えられ、2013年3月、全国でも花き部会は初の日本農業賞(NHK、JA全中などの主催)で大賞を受賞されたのです!
こちらが栄誉ある農業大賞カップ
JAみなみ信州といえば、前編で述べた通り元々はオキシペタルムの産地でしたが、オキシ自体はバラやキクほど消費の多いものではありません。つまり、花だけでそれほど稼げるものではありませんでしたが、生産の主軸をダリアに据え、且つ施設栽培を利用して周年栽培を確立することで、生産金額を劇的に増やすことに成功しました。
また、みなみ信州の広大なエリアと標高差を生かした200品目以上の供給を拡大、結果的に長野の産業を盛り上げ、国内に多い山間部を有効活用するビジネスモデルをも作り上げたわけですね。
部会発足当初は3.6億円だった販売金額は2011年には5.4億に飛躍。まさに戦略に基づいたみなみ信州の躍進があったわけです。
さらには猫の額ほどの土地でも花作りを可能にし、おじーちゃま、おばーちゃまたちが生き甲斐をもって、元気に農業に励んでくれるようにした。
なんと言ってもこの功績が大きいのです。
平成25年厚生労働省発表の都道府県別寿命ランキングを見ると、長野県の寿命は男女ともにぬぁんと堂々第1位!
そのくらいご高齢のみなさまがお元気でいらっしゃるということですね。
元気が先か、やり甲斐が先かわかりませんが、もしかしたら花き生産という農業でみなさまの生き甲斐を作ったことも、本年発表で男女ともに1位に輝いたことに貢献しているのかもしれません。
そして、彼らの燃える花魂に火を点けたのがチャッカマン塩澤さんなのです。
プラス部会全体の団結力と実行力なしではこのような名誉ある賞はもらえません。この賞を受賞したことが、また生産意欲向上に繋がり、みなみ信州の大車輪は大きく前進しているのです。
日本の花き産地としてピリリと辛い、そして大きな存在感を誇るJAみなみ信州なのでした。
◆JAみなみ信州の格言 「日本農業賞受賞おめでとう記念」バージョン
・ダリアは電照栽培を使い、周年出荷を確立すべし。全国唯一の産地になる!
・ダリアの土は団粒構造がベスト!ダリアは土が作る!んだども、土はオラたちが作る!
・ダリアとの出会いは神様の贈り物。歯を食いしばって頑張れば、きっといい出会いがある!
・傾斜のきつい山間地も有効活用すべし!農作物は花がいいね!
・JAみなみ信州をJAみなみ信州たらしめているのは、地の利と技術とやる気とネットワーク!
おじーちゃま、おばーちゃまから20代の若手選手まで、みんな「明るく楽しい花生産」に取り組んでいます!
花作りの生き甲斐が生産者に活力を与え(・・・かどうか定かではありませんが、願わくばYES!)、長野県は全国1位の長寿県という実績を誇ります!
◆ホットなニュース
ちょうどみなみ信州に取材に伺った6月3日、14年後の2027年に開通予定のリニアのモデルがお目見えしたとニュースになっていました。このリニア、正式名称を「リニア中央新幹線 LO(エルゼロ)系」といい、東京から大阪間を時速500キロの猛スピードで結ぶ夢の特急網です。
そんなハイパー特急リニアが、なんと飯田に停車しみなみ信州の管内を横断するようになるのです!東京-名古屋間が40分だというので、飯田へは東京から30分程度で着いてしまうということでしょうか(驚)!
今回は飯田まで新宿から高速バスで4時間かけてお邪魔しました。人口約10万人の飯田市、みなみ信州の管内では17万人の商圏でありながら、住民のみなさんにとっては県外へのアクセスは大変不便なものでした。
ところが14年後には東京への日帰り出張をも実現してしまう夢のリニアなのです!
開通するころには飯田の産業もインフラも大きく様変わりすることでしょう。
全国一の長寿県にありながら、国内でも随一の成長株、みなみ信州!
これはもうみなみ信州の発展に目が離せません!
みなみ信州の花からも目を離さないでください(≧∇≦) !
2013年2月15日
vol.99 石井フラワーガーデン(埼玉県)
ボンジョールノ!
みなさま、ごきげんよう!(≧∇≦)
・・・と、すごいテンションで始めてしまいましたが、今回は記念すべき第99回!
特集は石井フラワーガーデンさんのフリフリパンズィ~です。
フリフリパンジーだなんて、想像しただけで気持ちがフリフリ・・・あ、いえ、ウキウキしてしまいます☆
やってきたのは、埼玉県川口市。
大田市場から道のりにしてちょうど50km。
すぐ上には、首都高川口線が走っています。その高架の存在は初めて見る取材班にとっては結構な存在感に思えます。
この周辺一帯の4,500坪(路地2,300坪・温室2,200坪)にて、ムーランやペチュニア(八重)などをメインに栽培しています。
こちらが石井フラワーガーデンの代表石井正義さん。
苗生産一筋25年!
んて、あら?石井さん、ぱっと見25歳くらいかと思いましたが・・・この若さの秘訣は最後まで読んでくださった方だけに教えちゃいます!
さて、早速石井さんのフリフリパンジーを見てまいりましょう。
このフリフリパンジーにはきちんとした名前があります。
それは「イタリア貴族のスミレ ムーラン」☆☆☆
ここでは、略してムーランと呼ばせていただきますので、ご了承ください。
"あれ?ムーラン・ルージュじゃないの?"と思われた方へ。
ここは語れば長ぁ~いストーリーがありますので、短めにご説明いたします。
石井さんは一度「ムーラン・ルージュ」で商標登録され、特許庁からも登録証をもらいました。
しかーし、イタリアの本家本元、あのキャバレーのムーラン・ルージュがダメーッ!と言ってきて、登録拒否権が発動され>>>早送り>>>早送り>>>早送り>>>ナンチャラカンチャラ・・・
(写真はフリー素材より)
早送り>>>最後には、特許庁から「特許庁も万能ではない」と言われ、一度登録されたにもかかわらず、登録取り消しを余儀なくされました。
そして新しく生まれた名前が「イタリア貴族のスミレ ムーラン」というわけです。登録商標でR。
但し、商標や特許に関する登録のしくみは面白いもので、日本の園芸界におけるムーラン・ルージュの排他権は石井さんが持っていることになります。
商標に関して申し上げれば、花の名前で「ムーラン」の権者は石井さんにありますので、石井さんちのパンジーにしか使ってはいけないことになっています。
他産地から「ムーラン」の名前でパンジー、もしくはほかの花きが出荷されていたら、それはいわゆる商標違反で「ニセモノ」ってやつですから、ご注意ください。
生産者のみなさまも、ムーランは商標登録されていることをココでひとつご留意くださいますようお願いいたします。
はい、本題に戻りまして、このムーラン、ただのパンジーではありません。
これがいかに普通のパンジーと違うか、ご説明させて頂きましょう。
まず、ムーランをどなたが育種したかというと、イタリアのファーメンという会社です。
経営者のファミリーネームファラオネ・メンネーラ、Faraone Mennellaの冒頭部分をとって「Far+Men」でファーメン。
ファーメン社は知る人ぞ知る世界最古の種苗会社!ご存知なかった方は、今ココで知ってください!
所在地はイタリアのナポリです。
ナポリは、直径50km以内になんと4つの世界遺産を擁する歴史と情緒に溢れるところです。
その4つとは、
◆ アマルフィー海岸(Oh―!織田裕二の映画を思い出す~)
◆ カゼルダ宮殿(圧巻!マリア・テレジアもマリー・アントワネットも親子でまっツぁお。映画「スター・ウォーズ」や「ミッション・インポシブル」の撮影にも使われました。)
◆ ナポリ歴史自治区
(王宮や複数のナンチャラ城、チョメチョメ修道院を含む一帯が世界遺産として登録されている)
◆ ポンペイ遺跡(西暦79年のベスビオ火山大噴火により、一夜にして時が止まってしまった繁栄の街ポンペイ。みなさんも一度は行ってください♪
↓向こうの山がベスビオ山です)
う~、なんて羨ましい(≧∇≦)
このような場所だからこそ、「ナポリを見てから死ね」なんていう名言も生まれるわけです。
「ナポリの歴史はローマより古いんだ。
紀元前はイタリアの玄関口だった。紀元前4000年から3000年の遺跡がごろごろ残っているからね。」
とイタリア通の石井さんが教えてくださいました。
ナポリの繁栄はローマ帝国のずっと前からだったわけですね。
Napoliの語源はNeapolice(ネア・ポリス)、つまり「新しい都市」という意味ですが、まったくもって歴史ある古い都市なのですね。
そのナポリで種苗会社を営むファーメン社。
こちらが社長レナート・ファラオネ・メンネーラさん、73歳。
ボンジョルノ!
この方なんと、自らを育種界のミケランジェロと称します。
イタリアで"あいつはミケランジェロ"といったら、奇人変人の代名詞。
つまり自分は変わったブリーダーなんだと自認していらっしゃるわけです。
その理由は後述させていただきます。
「そんな歴史ある街に、あんなとぼけたおじさん(←レナート社長のこと。石井さんの言です、あくまでも。信頼関係を構築した石井さんだからこその呼び方ですね)が生まれたのかってことなんだけど・・・そのようなところに貴族として生まれていれば、少しは違う感性を持ち合わせるっていうことなのかな。」
きッ、キッ、貴族??
石井さん、今「貴族」とおっしゃいました?つ、つまり、メディチ家とかハプスブルク家みたいな??
「そうだよ。ファラオネ・メンネーラ家は貴族なんだ。」
ガーン( ̄Д ̄;) ||| ||| |||
ここで日本の花と欧州系の貴族とが結び付くとは!!憧れの欧州貴族、ついにウン探にご登場!
「ウン探さん、宝飾品のカメオって知ってるでしょ。何を隠そう、そのカメオを世に排出したのがこのファラオネ・メンネーラ家なんだ。
イタリアも敗戦国のひとつだけど、戦後はカメオで食い繋いできたらしいよ。
だから、レナート社長の息子さんは、現在ジュエリーデザイナーとして世界を舞台に活躍されているんだ。プライベートジェットで全米中を飛び回っているらしい。映画の中で女優さんのジュエリープロデュースもしているのだとか」
デッ、出た。世界級のセレブ(゚ロ゚;)!!
石井さんに見せていただいた写真には、そのジュエリーデザイナーのご子息が、ハリウッドの女優やスーパーモデルたちと笑顔で肩を組んでいるではないか・・・!
中には、クリントン元米国大統領やオバマ大統領との一緒の写真まで!!
(右側がレナート社長のご子息)
ワオオオーw(*゚o゚*)w!
(貴族様邸にあるワインセラー。レナート社長)
ここで一句。
貴族様 ああ貴族様 貴族様 ---うんちく探検隊
ところで、そのカメオや宝飾品などのキラキラ系★貴族様が、なぜ花の育種をされているのですか?
「貴族だから、王宮とか--つまりカゼルダ宮殿とかだよね、そういうところに出入りして、王家の方の身の回りのお世話をするわけ。日々出入りしているうちに、宝飾品だけではなくて、家の周りのこととか、花壇を整えたり、植栽のお世話などを幅広くしているうちに、そこからビジネスになって種苗もやるようになったという流れなんだ」
なるほど、さすが貴族様。オールマイティにお世話をしているうちに、ビジネスに発展させてしまうわけですね。うまくいく人は何をやってもうまくいくんだなー。
「そう、貴族様は多才なんだ。
レナート社長もヨットの設計なんかもやっちゃうんだ。趣味は船舶と車。最近は気功にもハマっているらしいよ!」
(愛車の赤いFIATからムーランを掲げるレナート社長)
恐れ入りました、貴族様。コリャ本物だ。
レナート社長のムーラン作出のこだわりとは何でしょうか。
ムーランのこだわり◆その1 「全ての花の顔が違う」
ひとつの株から出ている花の顔が全て違う!同じ顔のものは二つない!
「人間だって同じ顔が二つとないんだから、花だってそれぞれの個性を生かして、全て違って当然じゃないかっていうレナート社長のポリシーなんだ」
↑本当に一つ一つの顔が全て違うんです!
はい、みなさん、ここがレナート社長がミケランジェロと自称する理由です。
ムーランが育種された頃は、園芸界では"いかに均一な花を作るか"ということに重点が置かれていました。効率主義、ムダ取りが加速し、"個性"なんて言葉はどこへやら。オンリーワンよりナンバーワンの時代で、そのナンバーワンをいかに均一化して量産するかということが重要だったわけです。
「ひとつの株から全部違う顔の花が咲くことをキメラ咲きっていうんだ。均一化重視の当時、世界的な潮流としてキメラ咲きは不良品として捨てられていたんだよ。」
ガーンΣ(゚口゚; ナント!
「でも、均一化された花には歴史や文化は反映されていないよね。
世の潮流に逆流するように、世界で唯一レナート社長がキメラ咲きが素晴らしいと言い続けて、ムーランを作出したんだよ」
と石井さん。
このナポリの歴史と文化がユニークな人を育てて、その家系と血統と個性が見事に反映されたのがこのムーランということですね。
「均一化でパンジーやスミレの変異の資源はどんどんなくなっていった。花業界だけではなくて、どの業界でも世界全体でそういう傾向にあったけど、効率主義でムダ取りが推進されたでしょ。その時にはみ出し系の要素はムダだと捨てられていったんだ。
キメラ咲きには変異が多いから、たまに黒い花が咲くんだ。その黒も青から生まれたり、赤生まれたり。またその黒から赤や青のパンジーが生まれる。
赤を作るためには赤以外の品種で作る。青も青以外から作る。黒も同様で、黒以外の品種から作るんだ。
これはレナート社長だけが持っている秘密の育種ノウハウだよ」
黒の中には苦労が多分に含まれているのですね!(クロにクローが・・・あー、またダジャレ言ってしまった!スミマセン)
(ムーランフリル・ネロ)
ムーランの個性を見るポイントは?
「花色、花姿、花脈、表と裏の色との違い、フリル加減などをよく見てごらん。香りもそれぞれだよ
どれひとつ同じではないことが分かるでしょ」
ほんと、この色のグラデーション、水彩画のような色の載り方、表裏の色の違い、心揺れるフリル・・・それぞれが全て違い、ムーランの魅力を増しています。
従来、花壇苗としてのパンジーはメインになる大きな植物の手前を飾る彩(いろどり)で、色彩としてのパンジーでした。小花を集め、色で面を作り、その全体を見るものでした。もちろん今でも多くの場合そのように使われています。
しかし、このムーランは"団体戦で面を作るパンジー"から、"個人戦で一輪一輪を見るパンジー"として進化&デビューした画期的な品種なのです。
だからこそ、パンジーの切り花化が実現したと言っていいでしょう。
背の低い花壇苗のパンジーがいつか切り花になる日なんて、みなさま想像していましたか??本当にすごい進化です。
ムーランのこだわり◆その2 「花と目が合う」
花と目が合うだなんて!
「人と人が話をするときに目を合わせるように、花とも目と目と合わせて話をしようっていうミケランジェロ、いや、レナート社長の思いが込められているんだ」
目というのは、ムーランのこの中心部分。
一般的にフリルが強いパンジーはフリルで目が隠れているものもありますが、ムーランは目が全て見えているというのがこだわり。
是非ムーランと見つめ合ってみてください。目が合わなければムーランではありません。
ムーランのこだわり◆その3 「花持ちが良い」
個人的な経験談になりますが、昨年の3月14日、フラワーバレンタインのお返しで社内の方にフリンジパンジーを差し上げたところ、その方は会社の机上に置いて楽しんでくれていました。
ところが、市場で買ったばかりなのに3日と持たずに(!)、私の目の前にみるみる枯れていってしまったのです。
これでは、初めて切りのパンジーを買う方には、「花持ちが短いもの」という印象を与えてしまうのではないかと心配していたのですが・・・
「ムーランはそんなことないよ。
それに、出荷するときにこのくらいのつぼみでも、
開花するときちんと色が載るんだ。
ほかのスミレにはない特性だよ。だから、遠方に出荷しても流通段階で商品の価値が落ちることもない。花弁も厚いし、良い花でしょ~」
なるほど、実際にムーランの花持ちを会社で試してみると、鑑賞期間は12日を超えました。この記事を書いている現在においても尚、観賞価値があります。
こちらは、石井さんの圃場から頂いてきて11日目のムーランちゃん。
オフィスで鑑賞していますので、終日暖房の中にもかかわらず元気です♪
さすが、息の長い歴史の上に立った貴族様に育種されたものは、息が長いですね。
そのようなムーランと石井さんとの出会いはどのようなものだったのでしょうか。
そんなハイソなイタリアーノとお付き合いできるなんて、アタクシもアヤカリタイーノ!!
「1999年から2000年にかけて花壇苗の価格が半値以下に暴落したことがあったんだけど、ちょうどその時、知人が一緒にイタリアに行かないかって誘ってくれてね。
でも、実を言うとそれほどイタリアに行くことに興味もなくて、イタリアに何かあるのかなぁ・・・?なんて、なんだか気は進まなかった。いつも行くのはドイツだったからね。
とはいえ、イタリアには行ったことがなかったし、今のこの苗の価格では何かしなくちゃいけないし、それならいつもと違うイタリアに行ってみようかとなったのが最初のきっかけ」
そこで出会ってしまったわけですね!?
「行ってみたらファーメン社にはパンジーとプリムラのメラコイデスとポリアンサがたくさんあった。
その時はこのムーランは試作中だったんだけど、レナート社長が情熱的に"いい花だ、いい花だ"とムーランを説明するんだ。
(ファーメンの圃場を歩くレナート社長)
それ聞いても、まだピンとこなくてね。
当時はパンジーのフリル咲きといえば"12月中には咲かない花"の代名詞だったんだ。
パンジーはあくまでも年明けの商材。しかも、その9割は3月に流通するものだから、"なぁ~んだ、咲かない代表のパンジーかよ・・・"って思ったんだ。
だけど、レナート社長の情熱的な説明は加速していった。
① これは秋にも咲く
② 丈が長く、切り花用にも転用可能
③ 花によっては香りもする
ってね。
んじゃあ、まあとりあえず日本に持って帰ろうかとなったのがきっかけだよ」
それまでの"12月中にはパンジーは咲かない"という日本のマーケットでの常識を超えて、レナート社長の熱心な説得に心揺らいだわけですね。
持って帰ってきて、日本のマーケットでの反応はいかがでしたでしょうか。
「それはねー、お花屋さんとかランドスケーパーとかお偉方の先生とか市場関係の人とか、ご意見番20人くらいに聞いてみたんだけど、一人もいいと言った人がいなかったんだ!」
ガーン(@_@。ショック・・・
なぜなのでしょうか!?こんなにかわいらしいものを・・・と今だからこそ思ってしまいますが。
「みんな経験値が高い分、"この手のものは売れないんだよね"と答えは同じだし、早い。」
そこまで異口同音に同じ答えを出されて、くじけなかったのはなぜですか?
「20人聞いて20人とも駄目だったんだけど、そのほかに2人だけ"いいね!"って言ってくれた人がいたんだ」
どなたでしょうか?
「1人はうちのパートさん。切り花デザインの先生をやっている人なんだ」
なるほど。身内に応援してくれる方がいらっしゃるのは心強いですね。
もうひとりは?
「ワタシ。」
なるほど!
そこですよね、ソコ!
やはりご自身がいいと思わないといけませんし、信念を持って伝えれば、マーケットは響いてくれる!
実際に出荷されて、マーケットの反応はいかがでしたか?
「咲かせてはちょっと売ってなんてやっていたんだけど、思うように売れなかったんだよ、2年くらい。
ところが、折しもパンジーは徐々に春から秋の商材にシフトし始めてきて、さらにサカタのタネさんからリカちゃんスミレが発売になって、パンジーの高値のマーケットを創出してくれたんだ。
このときに"もしかしたらムーランもいけるかも"って思って、花をたくさん付けて出荷したんだ。すると店頭で少し動き始めてね、チョロチョロではなく、秋口からまとめて出荷するようにしたんだ。
まとめて出荷したら実際に買う人の意見を伺うことができて、そこからまた改善してはまとめて出荷して、歯車が回るようになったんだ」
なるほど、それがムーラン誕生秘話ですね!
ありがとうございました。
このままでは生産ウンチクが全くなくなってしまうので、ウン探の本質を見失わないためにも少しだけご紹介します。
土壌
切り花用のムーランは、パンジーといえども、このように8寸の大きな鉢に2株を植えて栽培します。
土は何を使うのですか?
「堆肥、赤土、鹿沼土、ピートと肥料をオリジナル比率でブレンドしている。同じムーランでも切り花用と鉢物用とで少しバランスを変えるんだ。」
そうすると、切り花用に少し丈が取れるようになるのだとか。
しかし、もともとムーランは普通のパンジーよりも背が高くなる性質があるそうです。
「立ち上がって枝が伸びていく性質が強いんだ。」
↑左側が切り花用に栽培しているムーラン。
だからこそ切り花にも向いているわけですね。
暖房
圃場をぱっと拝見したところ暖房装置は一切ないようですが、パンジーは寒くても大丈夫なのでしょうか。
「花の組織の中にアルコール成分が入っていて、一時的になら気温が氷点下になっても大丈夫なんだ。
でも氷点下続きで、ずっと凍りっぱなしはダメ。{{{{(+ω+)}}}}寒ぅ!
だから北欧とか1日中気温がプラスにならないところではNGなんだけど、日本のように1日の中で氷点下になったり、昼間にはプラスになったりするところであれば、花の組織は死なずにいられるんだよ。」
パンジーは日々の中で凍る⇔解凍があるのはOKなんだそうです。
そういう意味では寒さに強いって言っていいのですね。しかし、暑さは苦手なので管理の際は要注意です。
電照
蛍光灯は電照用ですか、それとも夜業用ですか?
「電照だよ。12月から夕方4時間くらい電照するんだ。」
むむ、パンジーにも電照が必要だったとは・・・その心は?
「花首が急に伸びないように。」
パンジーは相対的長日植物。つまり、日が長いほど花芽の形成が促進される植物です。
植物の生長は、体を大きくするための栄養生長と子孫を残すために花芽を付ける生殖生長とに分けられます。この二つの生長は切り替わりるもので、同時に二つをすることはありません。
パンジーは日照が少ないと花芽を付けないということは、日照が少ないと、栄養生長に走ってしまうわけです。
そこで、12月の最も日照量の少ないときに電照することによって、花芽の形成を促進し、同時に花首もやたらに伸びることなく締まった植物体ができて、一石二鳥というわけです(゚∇^*) b
「無理に早く出荷しようとせずに、自然にゆっくり育てた方が花持ちが良くなる。
それに、急いで育てると花期が終わり萎れたときに茶色になってしまうんだ」
つまり・・・もしかして、ひょっとして?ムーランは枯れても花色が残るってことですか?
「そう、ゆっくり育てると、萎れても花の色が残るんだ。こういう感じにね」
あ、ほんまや。ウン探で取材ご観察していたムーラン。萎れて花弁が落ちるところまでいった個体でさえも尚、花色が変わることはありませんでした。
ドライフラワーのように往年の彩色をそのまま残したかのよう。なるほど、美しいまま天寿を全うした感じですね。
黒い物体
ところで、石井さん、天井からぶら下がっているこの黒い物体は何ですか?
「あー、バレてしまったか・・・。これは隠し技なんだ」
ドキッ!(゚∇゚ ;)
"隠し技"とか"秘密の小道具"とか、そーゆー響き好きだな~ρ(´ε`*)
「二酸化塩素を揮発させるものなんだ」
ニサンカエンソ???・・・何のためにですか?
「ボト※が発生するのを防止するんだ。」
※ボト:加湿の状態で発生しやすい植物の病気。茎葉が溶けるように腐ったり、花弁に黒っぽい斑点などの症状が出て、観賞価値を失う。病原菌をボトリチスということからボトという。
「例えばこれと比べてごらん」と見せてくださったのは露地に置いたムーラン。
写真では分かりにくいのですが、露地に置いていたムーランは朝露などで湿度が上がり、ボトが発生していました。茶色くなって、溶けたり、腐ったように見えたりします。
「この装置を付けてから、ボトは殆ど発生しなくなったよ。
んでコッチが"秘密の小道具"」
と見せてくださったのは、長い柄のついたもの。先端がL字に折れて、なにか不織布か毛糸のようなもので巻いてある。
ん??なんじゃコレ!?「(゚ペ)
「水やりをするためのものだよ。
こうやって、花に水がかからないように水やりをするんだ。
先端にクッションが巻いてあれば、水圧も柔らかくなるし花を傷つけることなく水やりができる」
なるほど!石井さんの創意工夫の小道具だったのですね!
そして最後は、石井さんの手によって丁寧に摘み取られ、丸いミニブーケのように束ねられます。
出荷の際は、足元はこのようなカップに水とフラワーフード入れ、ムーランちゃまにとって完璧な状態が図られます。
とまあ、こうして貴族のレナート社長が生み出したムーランちゃまも、石井さんとの信頼関係を基に日本のマーケットに流通するようになりました。
信頼の証に、石井さんは生産ばかりではなく、ファラオネ・メンネーラ家の貴族の紋章まで利用を許可されました。まさに、日本で唯一、この紋章の利用を許可されたのは、石井正義さんだけ!
↓こちらがファラオネ・メンネーラ家の紋章です。
左上から時計回りに、ミツバチ、トラ、ハト、城、人が描かれています。
ムーランの苗に挿してあるラベルには、この紋章が描かれています。皆様も手にとってご覧になってみてください。
多くの世界文化遺産を擁したナポリのミケランジェロ様のご意思を川口市の石井様が一身に受けて生産された、その重みを感じることができるかもしれません。
あ、ところで石井さんはミケランジェロ様のようなニックネームあるのですか?
「ビンテンツォー・グラディアトーレ」
WOW!∑(゚□゚;) オオソレミーヨォ!
そのミケランジェロ様から頂いたニックネームなんだそうです!
いただいたのは、紋章の使用許可と種苗だけではなかったのです!
貴族様のもとに通い続けて4年目にしてもらったのだとか。これぞ信頼の証。
ッで、何か意味はあるのですか??
「ビンテンツォーは"勝、勝男"など勝利を意味する名前、グラディアトーレは"グラディエイター、剣闘士"って意味なんだよ。
つまり日本語風に言えば『剣闘士 勝男』。
戦って、花を売ってこいとの命令付きニックネームなんだよ」
あはは^_^;
剣闘士勝男様、これまた結構なプレッシャー付きのお名前ですが、それだけ信頼を得てのことだと思います。さすがです。
(2013年1月撮影)
石井さんにとってムーランとは何ですか?
「何か価値あるもの、つまりブランドを作りたいと思っていたんだけど、その扉を開いてくれた花といえる。
言葉を換えれば"希望"ともいえるかな。
子供のころに金賞とか一等賞とかとると嬉しかったでしょ。そういう経験に近いかも。
だってムーランを導入するときは、誰に聞いてもダメって言われたのに、今はこうやってみんなに受け入れてもらっているわけだから」
ムーランはとても良い花だと思うので、石井さんが日本の種苗代理店になって生産を拡大するってのはいかがでしょう・・・?愚案でしたらすみません。
「それも考えなかったわけではないよ。
でも、複数の生産者で作ると、その商品への思いも技術も複数あるから、結局うまくいかなくなってしまったという過去の例を結構見てきたんだ。」
なるほど、レナート社長の思いを120%理解して一身に受け継いだ石井さんとしては、決して日本での販売で失敗したくないし、良い花だからこそ無駄にしたくない。
そのような思いから、全てご自身の責任でやっていこうという選択なわけですね。
ここにも剣闘士勝男さんとしての意気込みと責任感を見て取ることができます。
「ドイツで開催される展示会のIPM(アイピーエム)※などに行っても、ひとつの種苗を扱っているのは、多くの場合一人(あるいはひとつの組織)なんだよ。
一人ではいくつも扱えないし、一人がひとつの種苗をマーケットの中で大切に育てていくイメージ。寡占化し尽くされているという印象を受ける人もいるかもしれないけど、それがマーケットの作り方なんだと思うよ」
その口調からは「独占」や「寡占」という言葉のイメージとは程遠く、むしろイタリアの貴族が愛し、こだわりを持って作出したムーランを、日本のお客様にもより良い形でお届けするために交通整理して、大切にブランド化しているという印象を受けます。
※IPM・・・Internationale Pflanzenmesse(=ドイツ語で「国際園芸見本市」)のこと。
ドュバイや上海など世界各地で定期的に開催されるが、会話の中でIPMというと1月のエッセン(ドイツ)の開催を指すことが多い。
イタリアやIPMなど、毎年ヨーロッパやそのほかの国などを見て、思うことは何ですか
「おしゃれでセンスの良いお店が多いよね。お花屋さんだけでなく、何のお店にしても街中に、また少し郊外に外れたとしても当たり前に存在する。
翻って日本は何にしても地域格差が大きいかな。
でもそういうことは、外国に行かなくても国内でも観察できる。
都心のデパートの売り場や見せ方は、20-30年前と大きく変わったよね。販売経路も小売り形態も変わった。生産する方も販売もそれに合わせて変えていかなくちゃいけないことがあるよね」
そうか、外国で何を見てくるかではなく、日々の生活の中に観察ポイントはたくさんあるということですね。
街を見ても、店を見ても、人を見ても、鋭い観察力で見識を広める。これが石井さん流のひとつの勉強法といえるようです。
そういえばレナート社長は貴族様らしく趣味が多彩でいらっしゃいましたが、石井さんのご趣味は何でしょうか
「そうだねぇー、・・・
一、 シゴト
一、 変わった人と会うこと
一、 食べ歩き
一、 料理 (料理教室の◎◎クッキングで最上級のライセンスを取得。その腕によりをかけて、イタリアに行けばシェフたちと料理をするし、日本でもときどきイタリア料理をふるまう!)
←カッチョええー!
一、 街に出て新しいものに触れること。刺激に満ち溢れた世界を楽しむこと
・・・かな」
なんでも石井さんは人に会ったり、新しいものを見たり出来事があったりすると幸福感を得て、それをご自身の活動燃料にしていらっしゃるのだとか。
「そういうことがあるとβエンドルフィンが噴水のように出てくるんだ」
ゥヲーーーーー!
このβエンドルフィンが、冒頭で石井さんが25歳に見えた若さの秘訣だったのかもしれません。
なるほど、石井さんのエネルギーは人との出会いと日々の刺激でしたか。ここに生産意欲の源もあったわけですね!
ココ川口で花生産ビジネスをするということはどういうことを意味しますか?
「あ、それはね、遠路はるばる東京にいらした方から呼び出しがかかっても、すぐに駆けつけて合流できることだよ。人と会うチャンスを逃すことも少なくなるし、川口で生産するメリットは大きい」
ここでも石井さんが人とのご縁をいかに大切にしているかが表れています。
最初はイタリアに行くことすらも気が進まなかった石井さんですが、レナート社長との出会いを大切にしたことにより、篤い人望を得て国内で唯一ファーメンの紋章を利用することを許されました。商機はやはり人との出会いの中にあるということですね。
石井さんが最も大切にしているのは、何より"人"であるような気がします。
みなさまもご存知の通り禅語に「一期一会」という言葉があります。
イタリア×禅ときて、まあなんと接点のなさそうな程遠い要素を掛け合わせたものだと思われるかもしれませんが、つまり真実は世界共通だということでしょうか。
ね?剣闘士勝男さん??
ムーランの取り扱い方法について・・・から学ぶ、剣闘士勝男さんこと石井正義さんの金言!
苗も切り花も暑さに弱いので気を付けて!
夏は亜熱帯化してきているこの日本列島では、苗も暑さで溶けかねません!
昨夏は異常な暑さから9月に一度苗がダメになってしまったのだとか。それでも、今まで考えもしなかった方法で、従来より劇的に良い花を付ける良い栽培方法を見つけたのだそうです。
「失敗から学ぶことも大切。失敗はやりたくてやっているわけではない。自分の意志ではないわけだから、ある意味それも運といえる。
そこから生まれる何かを掴めるかどうか。失敗から生まれる成功だってあるんだ。それも人との出会いの中にあたりするんだけどね。」
"失敗から生まれる成功がある"だなんて、石井さん、エジソンみたいですね!
「失敗は成功の母」――by トーマス・エジソン
「私の人生は振り返るとその繰り返しだよ。
トライ(Try)&エラー(Error)・・・で終わらず、&リカバリー(Recovery)&インプルーブ(Improve)アーンド サクセス(Success)!」
PDCA(Plan-Do-Check-Action)ならぬTERIS(テリス)といったところでしょうか。
石井フラワーガーデンの格言
■ ムーランは、何千年もの歴史を持つナポリの地で、貴族様が類稀なる感性で作出した世界の逸品。
手にしたときはナポリの風を感じてください。
そうそう、ムーランは登録商標です。石井さん以外は、「ムーラン」、あるいは「ムーランルージュ」の名前で花を出荷できませんのでご注意ください。
■ 商機は人と人とのつながりにあり!商機を勝機と捉え、人とのご縁を大切にせよ!
■ 街を見ても人を見ても、生活の中には観察ポイントがたくさん!
一歩外に出たら、観察眼を光らせて、時代の変化をキャッチせよ!
■ 人生はTERIS!
失敗から生まれる成功がある。by 剣闘士 勝男
最後に「イタリア貴族のスミレ ムーラン」の美しい画像をお楽しみください。
(合成ではありません)
向こうに見えるのはベスビオ山です↑
それではみなさん、Enjoy your life!!
アリベデルチ! ciao, ciao~!
※数々の貴重な写真は石井フラワーガーデン様からご提供いただきました。
2012年11月21日
vol.98 奥 隆善 氏(チョコレートコスモス)後編
前回の続きで、育種家の奥隆善さん後編です。
さて、ここでハボタンも少しだけご紹介いたします。奥さんはこれから旬を迎えるハボタンも育種、生産されています。
↓ハボタンの圃場
大田花き営業担当のYモトによると、奥さんのハボタンは、こんな感じなんだと↓
ナヌ??(・_・*)(*・_・)(*~^~)/??
全然わからん。ハボタンてこんな形だったっけ?
スプレー状に頭がたくさん付いていて、根も付いているってこと?(上も下もスプレー??)
「そうなんですよ」
とYモト。
これはただならぬ気配・・・
こちらが、奥さん的スペシャルハボタンの圃場。
摘心をして、スプレーに仕立てています。
しかもこれだけきれいに高さも頭のサイズも揃って、巻きも美しい@@@
「ハボタンをスプレーに仕立てるのはとても難しいんだ」と奥さん
Yモトに聞いても、現時点で奥さん以外にあれほどきれいなスプレー仕立てができる人はいないんじゃないかといいます。
「普通のハボタンよりも栽培に2カ月長くかかるよ。その分、虫や病気のリスクも上がるし、台風対策もしなくちゃいけないし、コストがかかる割には製品率が低いからね、大変だよ。そして技術は意外とローテクなんだ。でも、できるだけ手間がかけずに製品率を高めるような技術を確立したんだ」
どうのようにやっていらっしゃるんですか?
「チッチッチ。それは言えないな」ヒミツ(o′З`)b☆
これは、ウンチク探検隊の切り込み術を以ってしても、スプレー仕立てにする秘密は門外不出と教えていただけませんでした・・・(+_+)チーン!修行が足りん!
では別のことを教えていただきましょう。
どうして根付きでご出荷されるのでしょうか。何か意味があるのでしょうか?
「① 日持ちが良い
② 気持ちが良い
③ 縁起が良い」
なるほど“良い”ことが三拍子揃いましたね。
効率も良いのですか?
「効率は悪いかな(笑)。
気を付けて慎重に抜かないといけないしね。
でもお正月は縁起物が大切。効率は関係ナシ!」
なるほど、あくまでもユーザー目線を離れない奥さんのポリシーは、何を作るにしてもぶれることがありません。
そしてハボタンの圃場でも見つけました!「外側が大きくなる」現象。
端の株が一回り大きくなっているのが、写真からご覧いただけると思います。
この露地の場合は、そこだけ土質が砂地になっていて、水はけが良い分、生長も早くなってしまうのだそうです。それも「泥に交じって土質を研究し尽くしてわかったこと」。
輪サイズも測ってみると、直径が異なります。
↓圃場の中の方は、仕上がりの直径10cm程度。
ところが、“外側”の直径は、なんと15-6cmにもなるのです。
直径が小さい物の方がキュッと締まって、巻きも多い。しかし、外側はだら~ん、びよ~んと・・・(あ、失礼)・・・ってほどでもありませんが、プロが見ればわかるくらいの違いではありますが、巻きが甘く、全体的に大きくなってしまっているのです。
「だから“外側の商品”は極力大田花きには出荷しない」
ありがとうございます!
話をチョコモスに戻しまして、みなさんが不思議に思っていらっしゃるであろうチョコモスの色についてご説明したいと思います。
チョコモスはなぜこんな色をしているの?
チョコモスの色はアントシアニンとカロチノイドからできます。
「アントシアニンは紫外線と酸素で誘導されるんだよ」
なるほど。奥さんの施設に張ってあるフィルムは、紫外線を透過するものなんだそうです。
同じ透明のフィルムに見えても、紫外線を通すものと通さないものとがあるのだとか。
施設内で作れば、昼夜の温度差も大きくなり、よく丈が伸びる上に、紫外線も着色に十分な強さを吸収することができるので、その分品質の良い物ができるのです。
増殖は?
チョコモスは挿し芽で殖やします。
「放っておいたら、生き残れない」と奥さん。
チョコモスは自然に殖えない品種です。美しい一面のコスモス畑はご覧になったことがあると思いますが、チョコモスは放っておいてもあのようにならないわけです。
なぜでしょう。
「自家不和合性が高く、・・・つまりチョコモス同士では、タネもできない。
野生のチョコモスは絶滅したとされている。チョコモスは園芸界のトキかパンダみたいなものなんだ」
それを人の手によって命を繋いで、生活者の皆さまが楽しめるようにする。
そこにひとつのチョコモスのワンダーがあるのです!
この世のチョコモスはすべからく人の手によって種の保存が図られたもの。
種で殖やせるようになるのが次世代チョコモス育成の課題だと奥さんは言います。
こちらは奥さんの作業場。
あちらで作業をしていらっしゃるのは、奥さんの奥さんですか?
「母です~」(*^-^*)
あ、お母様でいらっしゃいましたか。これまた失礼いたしました。
あまりにも若々しくハツラツとされていたものですから^_^;
奥さんのお母様で奥泰子(おく・やすこ)さんです。
泰子さんの主なお仕事は、こちらの出荷場で品質チェックと選別、梱包をすることです。
25本ずつ束にして、50本1ケースでご出荷いただいています。
しかし、奥さんはいつも26本と、1本多く入れていただいています。
「保険だよ。お客様に迷惑かけちゃうといけないから」
なるほど、奥さん親子ならではのお心遣い。
アラ?なんだか出荷場の中を見ていると、不思議がたくさん!
まず1つはすんごい数の軍手、軍手、軍手!!!アッチ見ても、コッチ見ても!
一体、何人の従業員様がいらっしゃるのでしょうか。
「私と母だけだよ。アルバイトもなし」
え!?
じゃあ、この軍手は何にご利用されているのですか?
「使い捨てなんだ。ウィルスとか入らないように、使い捨てにしているんだよ。
古くなるまで使っていては衛生面が保てない。
これらの軍手は手を守るためではなく、植物を守るための物なんだ。
使い捨てなのに、洗濯して干してあるのはどうしてですか?
「私が捨てると、父が拾ってきて、自分の趣味の園芸に使うんだよ・・・(笑)」
だからなんですね。奥さんが使う時はいつも新品を下ろします。
ハサミも圃場で使うものはさておき、親株に使うものは、1回1回必ず消毒をするそうです。
大きなトラブルを未然防ぐこと。これが大切。ウィルスとかの病気は一見わからないけど、ある日突然ドカーンとやってくるんだ。
例えばタバコにもウィルスがあるって知ってる?」
タバコですか?すみません、勉強不足で・・・(+_+)トホホ
「乾いたタバコにも、タバコモザイクウィルスという、とても感染力が強いウィルスがいるんだ。
モザイク病という植物の病気を引き起こすウィルスだよ。
だから、スモーカーは圃場にも作業場にも立ち入り厳禁にしている。たとえお客様でもご遠慮いただいているんだよ」
いがっだぁ~、ウン探はノン・スモーカーです♪
その時にタバコを吸っていなくても、入場厳禁。なぜならスモーカーの手には、既にウィルスが付いているからです。
特に苗を管理したり、親株がある圃場は、一つ一つの作業でコマメに消毒をするのだそうです。
軍手といい、この徹底ぶりは奥さんのプロ意識の賜物!
この秘密の小部屋は何でしょうか。
作業場の奥でドア越しのぽわ~んと光る幻想的なスペースを見つけました。
なにやらフラスコ苗らしきものがたくさん置いてあります。よもや・・・
「私のバイテク室だよ」
やはりッ!さすがバイテク修了した奥さんだけあります!個人でバイテク室を所有している方は初めて拝見いたしました。
「培養(=殖やすこと)をしたり、バクテリアのあるなしをチェックしたり。時間も忘れて、夜な夜なここにこもって組織培養などの仕事をするんだ」
バクテリアが付いていたものと付いていないものをシャーレーでチェックすると、こんな感じ。
ギョ(@_@;)↓バクテリアが付いていた場合 ↓付いていない場合
奥さんはこのくらい繊細に、一つ一つの苗が正常な状態であるかどうかをチェックしているのです。
その姿はこういう感じ。
このようにして、新品種の開発や無菌の質の良い親を培養しているのです。
うわぁ~、ココ一帯だけ突然理系な感じ。
この大きいタンクは「高温高圧滅菌機」
キッチンにある圧力鍋と同じ。これで煮物作るとおいしいんですよ
こちらは、マグネティックスターラーといって、マドラーのような棒やオタマジャクシを使わなくても、中身をグルグル撹拌できる秘密兵器。マグネットでこれがクルクル回ることで撹拌される。
すんごいバリエーションに富んだピペット群!
“ピペット”という音自体が懐かしいなぁ。
「ピペットもそれぞれに名前があって、これがコマゴメピペット、これがメスピペット、これがパスツールピペット、★Θ▲×Σピペット・・・」
あぁ、もうい~です。。。(+_+)ムズカシ
とまあ、ネット上のこのコーナーにご紹介させていただくには多いくらいの情報量、しかしアタクシのノートの中に眠らせておくにはもったいないくらいのオモシロ・ストーリーなのですが、ざっくばらんな性格代表のアタクシにえいやーとまとめさせていただければ、奥さんのチョコモスをスペシャル品質たらしめているのは・・・
“ひたむきな情熱と、この上なく緻密な仕事”です。
軍手やハサミの取り扱い一つとっても然り!
たとえば、この日、外国から仕入れた苗をプラグ苗用のトレイに入れる作業をしていました。
その作業たるや、動きに無駄がなく、美しく、丁寧だけど素早く、この器用そうな手先ですいすいと仕事を片付けていくのです。
なんだかもう、犬で言う“腹をご主人様に見せて何でも言うこと聞いちゃいます”と言っているかのごとく、土も苗も意思を持った生き物のように、奥さんの思う通りに動いていくのです。
そして、それほど能力のある奥さんが、例えば大企業でスター選手として活躍するでもなく、或いは独立されて大規模経営するでもなく、なぜこのようなスタイルで営まれているのか、・・・ま、愚問かもしれませんが、聞いてみました。
「自己責任でやれば、言い訳をしなくて済む。
また経営は、規模ではなく質を向上させたい」
というポリシーがあるからなのです。
このような独立心の強い奥さんがこの伊賀の里に生まれたのか・・・ということですが、これはあくまでも一探検隊員としての見解にすぎませんが、
“ココが伊賀の里であるから”だと思っています。
つまり、この辺りの忍者の里と呼ばれるところは、奥さんから教えていただいた通り、元々は土着の豪族が治める土地でした。しかし、朝廷や幕府などの国家勢力が山を越えて攻めてくるわけです。
そこで、豪族たちは「我らが土地だ!」と武装して、敵が山を越える前にゲリラ戦や奇襲戦で応戦していたのではないかと思います。応戦する際には山を目に見えぬ速さでシャカシャカと走り回っていたでしょうし、相手を罠にかけようと山に穴を落とし穴を掘ったりして様々な仕掛けを施したことでしょう。
この辺りに忍者の里と言われる所が多いのは、このような武装した土着の豪族が元だったのではないかと思いました。
マンガのハットリ君のような「はっとトリック」のような忍術はどこまで本当か定かではありませんが、元々はそのような武装した土着の豪族から、忍者と呼ばれる人たちが生まれたのではないでしょうか。
また、奥さんのような独立心旺盛な方がこの地に生まれたのは、国家勢力に迎合することを潔しとしない、この辺りの里山気質を反映してのことではないかなと。
中でも伊賀忍者は、野草を薬草にすることを研究したそうです。つまり、伊賀忍者の末裔は薬屋さん。
奥さんの研究熱心なところも、この土地の気質を反映しているのかもしれません。
仕事の緻密さもひたむきな姿勢もまた、奥家のDNAとこのお土地柄が色濃く反映された結果ではないかという思いを馳せながら、帰路に就くウンチク探検隊でした。
推測が違っていたらすみません。
ところが「僕の祖先は忍者ではなく武士です」と。
なるほど、奥さんのご自宅は武家作り。脇の小道は、まるで帯刀した武士が、威風堂々歩く姿が見えてきそうです。
そもそも、どうしてチョコモス?
奥さんはどのようにしてチョコモスに出会い、育種人生を懸けるまでになったのでしょうか。
「腐れ縁だよ」
あ、今、4,000字くらいのストーリーを“腐れ縁”の3文字で片付けようとしましたね(-ε-)
「うん、まあ簡単に言うとね、最初の出会いは学生の時に見たカタログだったんだけど、写真も不鮮明だし、妙に黒いし、フェイクだろうと思っていたんだ。だけどアルバイトをしていたお花屋さんで仕入れた実物を見てみると、本当に黒くてかわいくて、本物のチョコレートのような香りがあった。
↓
そこで、試験管の中で挿し芽をしてみたら、うまくいった。
↓
殖やしていたら、研究室の教授にチョコモスは「野生の条件下では絶滅したものだ」と教えもらった。
人工的に殖やそうとしなければ、生き残れない品種だってこと。“自家不和合性”が強く、花粉が付いても、種ができないんだ。でも、チョコモスでもあっちとこっちの品種だったら、受精できるのではないかと教授が背中を押してくれた。
↓
別の准教授に「キバナコスモスを育ててみない?」と勧められて、チョコモスの隣に植えた。
↓
するとある日、子房が膨らんでいてね。“もしかして、タネできた?”って思った。
↓
でも結局枯れて、タネは採れなかった。胚珠培養(※)ならいけるかも!?と思ってやってみたら、うまくいったんだ。
※胚珠培養
異なる品種の間で交配すると、受精はしても胚(=エンブリオ、人間でいうところの胎児)が発達しにくい場合がある。そのようなケースにおいて胚珠を人工培地に移して培養する方法。子房ができれば、そこから胚珠を取り出すのは比較的容易。
でも“チョコモスの子供ができた!”と研究室で報告したら、“大丈夫、何か間違いだよ”と皆に一蹴された(笑)。
↓
そこで花を咲かせてみたら、見たこともない赤い花だった。
虫がキバナコスモスと受粉してくれていた。虫はチョコモスだろうが、キバナだろうが関係なく花粉を運んでくれる。
チョコモスとキバナコスモスとを隣に植えさせてもらったことが運命だった」
それ以来、奥さんのチョコモスに対する飽くなき探求が続いているというわけです。
「チョコモスの件でメキシコの大学の先生のところにお話しを伺いに行ったり、今度はその先生がココ伊賀の里まで遊びに来てくれたりしたこともあったよ。
コスモスを通じてインターナショナルな付き合いが始まったんだ」
花は言語を越えて、人と人とを結び付ける。・・・奥さん語録④
あ、ちょっと待ってください!
お話を伺っている間に・・・あれれ~???!!!∑(゚ロ゚!)
奥さん!一斉にチョコモスの元気がなくなってきちゃいました!
大丈夫ですか、この状況?
水不足?
それとも寒くなったから?どうしよ、どうしよッ??(汗)アワワ
「チョコモスは夜になると寝るんだよ。
たまに“首が曲がっているから”と返品になったりするんだけど、それはチョコモスの性質なんだ。太陽が上がればまたピンとする。
チョコモスの首が曲がってきたら、夜になった証拠。一緒寝てください」
奥さん語録集
“外側”の商品は極力出荷しない・・・特に大田花きには、よく選別して出荷していただいています。奥さんのチョコモスは信頼の印!
花生産はP-Q-S!・・・Price(価格)、Quality(品質)、Style(形態、流通面)をお客様の求めるものにシフトせよ!
泥の気持ちは泥になってみないと分からない・・・農業を始める時は、泥まみれになってでもその土地の地形や地質を徹底的に調べるべし!土質のみならず、全てに対する飽くなき探求心が必要!
花は言語を越えて、人と人とを結び付ける・・・すヴぁらすぃ!(≧∇≦)
湖は生きている・・・農業はその土地の歴史を知ることに始まる。Explore Japan!
チョコモスを小売店頭であまり見かけたことのない方へ
チョコモスはこの時期よくウェディングブーケなどによく使われます。
“え?赤黒いのが?”と思われるかもしれませんが、この時期のウェディングブーケで“シックな秋”と“大人なニュアンス”を演出するのに、チョコモスの品の良さがピカイチなのです。
(写真ご提供:pianta様)
奥さんから消費者の皆さまへひとこと
・ チョコモスは鮮度保持剤を必ず使ってください。
そうすれば決して日持ちの短い品目ではありません。
・ 夜は首を曲げて寝るので、枯れたと思って驚かずに、一緒に寝てください。
・ 伊賀の里から情熱を込めて作られたチョコモスを是非使ってください。
超おまけ的 伊賀の里雑学のススメ☆☆☆
そしてここは何と松尾芭蕉生誕の地でもあるのです。
ここが芭蕉の生家。正保元(1644)年、次男としてこの家に生まれたそうです。
そしてその隣が奥さんが生まれた病院!昭和52(1977)年、奥家のご長男として生まれました。
只今、花嫁さんを大募集中です。奥さんのところにお嫁に行ったら、きっと幸せになれますよ。
丸1日お世話になったウン探が保証します
2012年11月20日
vol.98 奥 隆善 氏(チョコレートコスモス)前編
は~い!みなさん、お久しぶりでございます(≧∇≦)!
今回は、近年人気急上昇のチョコレートコスモスを特集しちゃいます!
しかも、取材先はチョコレートコスモスの育種からやってしまうという三重県の奥隆善(おく・たかよし)さんです!
“あ!その人知ってる!”とか、“どこかで見たことあるなぁ~”という方は、なかなか冴えていますね。なんと奥さんはNHK番組の『趣味の園芸』などにもご登場される業界の有名人なのです!若きホープなのです。
さすが、撮影慣れしていらっしゃるのか、
そのスマイルは爽やか~ン≧(´▽`)≦
この爽やか奥さんがどのような思いでチョコレートコスモスを育種、生産されていらっしゃるのか、その秘密に迫ります!
その前にチョコっと一言、チョコレートコスモスは長い名前なので、流通に携わる人の間では略して「チョココス」とか「チョコモス」などと呼ばれます。
仮にここでは「チョコモス」と呼ばせて頂きたいと思いますので、宜しくお願いしモス!!
さて、その奥さんのチョコモスですが、現在市場ではどのような評価を得ているのでしょうか。大田花きの営業担当S藤(イニシャルトークの必要ないんだけど^_^;)に聞いてみました。
「ピンと立つんですよッ!茎の下の方を持つと、こうやって、ピンッて」(ゼスチャー付き)
なるほど、イメージ的にはとても細い茎なのに、背筋を伸ばして自立しちゃうんですね。
「それから買参人さんに“チョコモスいかがですか?”とご紹介させていただくと、
“え~、欲しいけど、奥さんのじゃないといやだぁ~”って言われたりするんですよ~☆ウフ
ピンと立つ茎、胸がキュンとする輪サイズと色載り、奥さんのチョコモスはピカイチですね」
S藤からかなりの高評価!
(品種:アンティークレッド)
ウン探のスイッチが入りましたモチベーションUP☆いざ出陣です!
やってきましたのは三重県伊賀市。
そう、伊賀と甲賀の伊賀です。ニンニン!!
ここは周囲を山に囲まれた伊賀の里。
あの山の向こうが甲賀の里。
近くには信楽(しがらき)が。タヌキの信楽焼で有名ですね。
そしてこの先が柳生の里。
おっと、柳生十兵衛の柳生の里ですかぁ?あの全盛期の千葉真一が扮する柳生十兵衛??
キャーッ!懐かしい~(≧∇≦)って、あまりいうと年代がばれるのでホドホドにしつつ、
「そう、この辺りは全部忍者の隠れ里だよ」
と今回の主役兼ナビゲーターの奥隆善さん登場!
「●賀とつくのはその昔、忍者が住んでいたところなんだ。
でも伊賀は忍者云々の前に、地方豪族が住んでいたところ。忍者の里というよりは、土着の豪族の土地なんだよ。古墳もたくさんある。前方後円墳もいくつかあるよ。畑にしちゃってるけどね」
(; ゚ ロ゚)ギョッ!えッ?前方後円墳、つまり古代の御墓の上で何か作っちゃってるってことですか?
いいんですか?そんなことッ??(・_・;)_・;) ナントッ!!
「いいも何も、ダメって言われる前からそうしているんだよね。だから今更ダメッて言えない。
石室が残っているのに、前方後円墳の“円”側で果樹を作って“方”で野菜を作ってたりね(笑)。
これがまたよくできちゃんうだよ、土がいいから。」
土がいい・・・?
「この辺は大昔、琵琶湖の底だったんだよ」
び、琵琶湖っ??
琵琶湖って2つあるんでしたっけ?「琵琶湖1」「琵琶湖2」とか?
滋賀県にある琵琶湖はドッチなんだろ?あっちが本家の「琵琶湖1」かな。
あれ、ココ何県でしたっけ?あ、三重県か。「琵琶湖1」まで何キロあるんだろ。あー、もう全然ワケわかんなくなってきました。
奥さん、琵琶湖って、あの琵琶湖ですか?滋賀県の?
「そうだよ。湖って移動するんだ」
えッ∑(゜◇゜;)
そ、そんな。学校では誰も教えてくれませんでした。(多分)
奥さんのお話によると、“湖は生きている”。
琵琶湖の誕生はおよそ400万年前。バイカル湖、カスピ海に次いで古い世界有数の古代湖なんだそうです。もともとはココ伊賀に生まれ、それが地殻変動で北に移動して、現在の琵琶湖になったということです。
なんて物知りな方なんだ。(T_T)感動
「湖の底に土だったから、粘土質なんだよ。だからたいていの物は締まってよくできる。
ただ、さっきの“古墳”ていうのは、粘土質の土に黒ぼくという肥沃な土を盛り上げて築かれているみたいで、とても排水が良かったりするんだけど、排水の悪い粘土質だと育ちにくい植物にも向いているということなんだ」
なるほど、粘土質ということは、近くの信楽で焼き物の技術が発達したのもその影響があるのですかね。
さて、この辺りのことを少し知ったところで、こちらが奥さんの圃場です。
奥さんの育種生産に関するこだわりの要素は、「日月火水木金土」に象徴されます。
曜日とは関係ないのですが、なぜかハマりました。ですから、これに沿ってご説明したいと思います( ^―゜)b
まずは水から。
潅水について。株元にパイプを通して潅水します。
「でも1週間に1回くらいかな。それ以上やると、よく丈は伸びるけど、茎が柔らかくなってしまうんだ」
なるほど、この通り、水をやった直後でも土の表面は乾いています。
「施設内でも外側の畝を見てごらん。そっちの方が全体的に背が高いでしょ」
あ、ほんとだ!どうしてですか?
「雨が降ると、どうしても外から水が入ったり、地面に浸み込んだ水を吸い込んで、丈が伸びやすくなるんだ。早く育って丈は採れるけど、茎が柔らかい。
このような外側の商品は極力大田花きには出さず、場合によっては廃棄したりするよ」
なるほど~!
水のやりすぎは厳禁!意図していなくても、自然に水を吸って育ってしまう“外側の商品”は、茎が柔らかいだけでなく、日持ちにも影響してくるそうです。
大田花きには施設の中央のものからご出荷いただいています。
S藤が言っていた細くてもピンッと立つ茎の秘密は、1つここにありました。
“外側の商品”は極力大田花きには出荷しない・・・奥さん語録①
木
株の育て方です。
ピンチをして生かす花芽を考えたり、バランスを整えたりするのですか?
「ピンチはしていないよ。
ピンチをする必要のないものを育種段階で作っていくんだ。」
つまり、育てやすい品種を育種するというわけですね。
そして“花はPrice-Quality-Style”という奥さん。
Price(価格)=小売に合った価格で提供する。また提供できるよう、生産コストを管理する。
Quality(品質)=お客様が求める品質になるよう作り方をシフトする。自分が求める最高を目指すのではなくて、お客様が求めるものであることが重要。
Style(形態、流通面における要素)=流通のための箱、形態、作業効率、梱包時刻や出荷時間など、どのようなスタイルを採るのが最適かを考える。
これらの点のそれぞれを追求してチョコモスを生産する。持続可能な農業生産を行うには、これが大切な要素だと奥さんは言います。
花はP-Q-S・・・奥さん語録②
金
ところで奥さん、千葉大大学院をご卒業されたということですが、何を専攻されていらしたのですか?
「植物細胞工学だよ。
英語でPlant Cell Biotechnology(プラント・セル・バイオテクノロジー)だから、略してバイテクって言われたりするんだ」
へー、ザイテクですか。
「ザイテクじゃないよぉ。バ・イ・テ・ク。
財テクなんてやり方全然わからないよ。お金には縁がない」
円には縁がないんですか・・・。(デタデタ^_^;)
「ここで農業を始めたときは、大学院を出たばかりでお金ないし、実家は農家じゃないし、農機具も揃っていないし、施設もない。ゼロからだったよ」
就農資金も十分にない状態でどのように始められたのですか?
「水田の土地だけは少し持っていたからね、そこを耕して露地で始めたんだ。
アサガオ、ケイトウ、エリンジウム、モルセラ、ミント、カラー、グラジオラス、麦ナデシコ、フウセンカズラなどなど、色々やったよ」
奥さんは、現在切り花ではチョコモスとハボタン、ナズナをご出荷くださっています。
この3つに辿り着いた理由は何ですか?
「まず一つは育種をしたかった」
バイテクを修められたわけですから。
「だけど一般的に“育種は10年不採算”と言われるほど収益性は見込めない分野。だから一方で何かを生産しなくてはならない。
自分の持っている水田で露地でこの気候でできるものは何かって考えて、色々やってみて、その結果だったんだよ」
伊賀は三重県ですから、ひょっとしたらみなさんは暖地性の気候というイメージを持たれるかもしれませんが、奥さんによると実は内陸性で結構寒いといいます。春の到来は遅く、冬は早い。この気候と限られた資金と持ち合わせた土地という条件で、トライアンドエラーを繰り返して今の奥さんがあるのです。
土
この辺りは先述のように粘土質(伊賀古層)で、関東ローム層とは異なり花崗岩に水や空気が入りながら風化したものなのだそうです。
う~ん、さっきも粘土質で何でも締まってできるとおっしゃっていましたが、粘土質だとなぜ何でも締まってできるのでしょうか。σ(゚・゚*)ンート・・・
「砂地っていうのはサラサラしているから、水はけがいい分、肥料の持ちも悪い。
粘土質はその逆で、肥料や水の持ちが良く、また根が伸びるのに力が必要な分、ゆっくり根が発達する。時間をかけて生長するから、株ががっちりと固く生長するんだ。
でも、伊賀の土が他と違う分、同じ花や野菜でも育てる品種が違ってくるし、使う農機具も異なってくる。
種まきひとつから伊賀地方に合った育て方をしないと、本やテレビで紹介している一律の方法ではうまくいかないことがある」
なるほど~、伊賀には伊賀の農業があるわけですね。この土地だけの最適農業が。
そこで奥さんは「伊賀農業の伝道師」として、地元のケーブルテレビにレギュラー出演されたり、地元の公民館で園芸教室をされたりして、伊賀農業の啓蒙活動を行っています。
「少なくとも失敗しなければ園芸は楽しいはずでしょ。だからその地域に合った農業を提唱して、楽しい園芸を伝えていきたい。
延いては消費アップに繋がるわけだから。各地域でそういう最適農業を伝授できる人がいるといいなと思うよ」
ヌァント素晴らしいスピリット!
「それに粘土質って言っても、何でも一辺倒じゃないんだ。
砂利採取なんかで土を移動させてる場所もあるから、同じ水田の中でも土は違ったりするんだよ。
だから、最初は雨が降ったら長靴を履いて、泥まみれになってこの水田の土の性質はどうなっていて、どこに水が溜まって、どこにどんな畝立てをしたらいいのかなど、徹底的に調べたよ。泥の気持ちは泥になってみないと分からないからね」
蓋し、名言!!(≧∇≦)
普通は泥になれんもんなぁ。そもそも泥になろうとも思わんて。この名言が出るっちゅうことは、それだけご苦労されて土質を研究し尽くしたということやろな。
「この施設は農業高校で非常勤講師などをやって、コツコツとお金を貯めてやっと建てたんだよ。最初から良い施設があったら徹底的に土質を調べるところまではやらなかっただろうね」
もう、奥さんに脱帽です。
実際、チョコモスの場合は、どのような土が適しているのですか?
「少しアルカリ性の土がいいね。だから少量の石灰を入れて、ミネラルを供給する。そうすることで固くしっかりしたものができる。
しかし、何よりも堆肥を中心に混ぜることが重要なんだ。堆肥を入れることにより、植物の生長に必要なアンモニア態窒素を絶えず必要な分だけを供給することができるんだ。
しかも株の勢いが保たれるし、老化しにくい」
つまり、堆肥を入れることでアンチエイジングの秘薬のようなものが手に入るってことですね!
アタシもほしぃーーー!
「でも化学肥料も使うよ。
有機農法の良いところと化学肥料や近代農法の良い所を組み合わせているんだ」
ところで何の堆肥ですか?
「伊賀牛の牛糞と・・・(なんて高級そうな響き≧∇≦!)豚糞と伊勢赤鶏の鶏糞のミックスだよ」
うわぁ!地元の高級そうな響きの畜産ブランドのミックスによって最適な土が作られているわけです。
泥の気持ちは泥になってみないと分からない・・・奥さん語録その③
日
太陽ですね。
露地で作っていると太陽の光が強すぎて、品質が頑丈になりすぎてしまうといいます。
「だから、施設の中でフィルム一枚通した光がベスト!もっとも細くて美しい姿をしていながら丈夫なものができる。
それからコスモスは短日(たんじつ)植物※、しかも“量的短日植物”といって、少しでも日が弱いと“日が短くなった”と感じて早く花を咲かせる。だから、フィルム1枚くらいがあるとちょうどいいってことなんだよ※」
※短日植物:ザックリ説明すると、日が短くなってくると花芽を付ける植物のこと。しかし、本当は夜の長さを感じて花を咲かせるようになるので、“長夜植物”というのが正解。
量的短日植物:これに対し、“質的短日植物”というのがあり、絶対値として●時間暗くしないと花芽が付かないという植物のこと。ポインセチアなどがこれに当たる。
月
月の巡りに合わせて、毎年同じようなタイミングで植え付け作業をしていきます。
「植え付けるサイクルは大切」という奥さんは、毎月第何週に何をするという作業スケジュールは最初から決まっているのだといいます。
これを忠実に実践していくところが当たり前のように見えて、とても大切なことなのです。
そして最後に火
これは冬の暖房・・・と思ったみなさん!イヤイヤ
それも確かにあります。出荷を急ぐために、暖房をジャンジャカ使えば、その分収量もスピードも上がりますが、茎は柔らかくなってしまいます。
いかに暖房を使うかというのも大切なポイントではありますが、ここでは「火」を奥さんの情熱に喩えたいと思います。
元を辿れば、幼いころは金魚のブリーダーになりたかったという奥さん。それが小学校5年生の時に、園芸好きのお祖父さまからもらったハボタンの種をきっかけに植物の道にハマって行きます。
これはまさに隔世遺伝!
そのタネをまいて出てきた芽を見た瞬間、奥隆善少年は、
「美しい!」*(о☯‿☯о)*キラキラ
と思い、植物へのスイッチが入ったといいます。
中学生になってからは、短日植物のアサガオを題材にして、“日が短くなったのを感じるセンサーは植物体のどこにあるのか、本葉ではなく双葉にもそのセンサーは備えてあるのか”を自ら研究するため、本葉が伸びてきてはちぎって・・・という実験をしていたといいます。
アタシャ、チューガクでなにやっとったかな。スゴイナ
それで、双葉だけでも開花したのでしょうか。
「したよ。奇形だったけどね」
その感動は現在に至っても忘れることなく、心の中に秘められた植物に対する情熱は、表に現れた温厚な笑顔に反して、とても熱いものがあると感じました。
伊賀には伊賀の農業がある。それぞれの地域で、それぞれのやり方がある。テレビや雑誌などで紹介されるやり方と同じやり方をしていたのでは、うまくいかなくなって園芸離れを起こしてしまうと、自ら地元の園芸伝道師を買って出る気概と熱意。金儲け主義に走らず、強いポリシーで地元で育種と生産をコツコツ続けながら、ひたむきに植物を愛するピュアな心。
もうこれは、ウン探は“恐れ入りました”と頭を下げるしかありませんでした。
☆後編に続く・・・
後編はハボタンや奥さんとチョコモスの出会いなどについても語ってもらっちゃいます!
2012年7月16日
vol.96 ワイルドプランツ吉村(長崎県)
ウンたん、長崎に初上陸ぅ~!!
♪あぁ~、長崎はわぁ~あ~あ~、今日もぉ~、あめぇ~~~だったぁ・・・♬♫
(若い世代の方、わからなかったらスミマセン!)
ほんまに雨ですわ
それも半端ない。分厚い雲が立ち込めて、お天道様はどこへやら。
長崎ではちょうど田植えが終わったところ。
ここ数週間続く大豪雨で農作物への被害は深刻。
これからお邪魔する産地さんは大丈夫かな~と思いを巡らせつつ・・・。
さてみなさん、長崎で有名な場所といえば??
島原の乱の島原に普賢岳で有名な雲仙、干拓で有名な諫早、江戸時代唯一の貿易地出島(既に埋め立てられていますが)、オランダの町を再現した魅惑のハウステンボス、核兵器の根絶と世界平和を祈る平和公園などなど。
自分の出身地でも居住地でもないのに、これほどいくつもを知っている県もそういくつもないでしょう。
・・・もしかして、長崎県て有名??
長崎県出身の有名人・・・若林豪、美輪明宏さん(なぜか美輪さんだけ“さん”付け)、立花隆、役所広司、前川清ぃ~、草野仁君、村上龍、蛭子能収、さだまさし、福山雅治、長与千種(ぅわ!ナツカシ!女子プロレスラーです)、力道山、大仁田厚も長崎、オリンピック直前!体操選手の内村航平などなど・・・
いや~、結構いらっしゃいますね~。しかも大物揃い~!!
長崎県の現在の人口は140万人であるにもかかわらず、これだけの偉人を輩出してきたとは、まさに“小さな大国”!欧州におけるオランダのようだ!
全国で最も海岸線がぶっちぎりに長いのも長崎。
え?面積は全国第37位なのに??
長崎県には多くのミラコー(←ミラクル)がありそうです!
そして花き業界では、この方をなくして長崎県は語れません!長崎といえばなんといっても
ワイルドプランツ吉村さんでーす!
長崎県は佐世保市から季節の草花を生産出荷してくださっています。
↑これを見ると海岸線の長さ全国第1位も納得です。
こちらがプロデュースマネージャーの吉村圭さん。う~ん、ワイルドプランツだけに黒いTシャツの袖をまくりあげる姿が“ワイルドだぜ~”!
この肩書はつまり新しい物を作り出して、みなさんにご提案していくというポリシーの表れですね。
吉村さんといえば草花作りの敏腕プレーヤー!品目はアスターからマトリカリア、ヒペリカム、ベロニカ、ケイトウ、ワレモコウと多岐にわたり、品種数にして140種類にも上ります。
2011年4月から2012年3月に大田花きに出荷していただいた品目だけでもこ~んなに!
しかも、さらにこの中で「ソノタノクサバナ」にはベロニカやワレモコウ、ハボタン、スモークグラス、ルドベキア、トウガラシなどなど何品目にも分かれていますので、全体として40-50品目を常に作付していることになります。
その栽培面積たるや、施設6,000坪、露地8,000坪。
これってどんだけ?(@_@;)
施設と露地を足して14,000坪。
これはちょうど東京ドームと同じくらいの広さになります。
商品は季節により変わりますが、現在はアマランサスやワレモコウなど、早速秋に向けた商材展開が始まっています。
こちらはアマランサスの圃場。
←写真撮影:吉村圭さん
ホットチリ(赤)、ホットビスケット(茶色)などハンギングタイプも合わせ6品種を栽培。
栽培の特徴は何でしょうか。
「茎を太く作らないこと。その方が美しいし、デザイナーさんも使いやすいでしょ」
そうなんです。茎が細い方がほかの花材と合わせたときに束ねやすいし、立ち姿も美しいのです。
デザイナーさんや小売店さんの御苦労まで見通したかのような心配りはさすがです。
吉村さんのアマランサスは最も太いところでもボールペンより細いくらいです。
「細くするためには、一番軸をピンチするんだ。
ピンチする分栽培日数は長くなるけどね。通常60日で出荷というものも90日くらいかけて栽培するよ」
なるほど、主軸をバチッと切ってしまえば、次に出てくる側枝になりますから細くなりますね。
←主軸をピンチした跡
収穫してきたアマランサスは、出荷場にて手で下葉を取ります。
出荷目前のアマランサスは、細い足も揃ってこんなにキレイ!↓
下葉を取る理由は主に2つ。
① 葉からの蒸散が抑えられる分、花持ちが良くなる。
② 小売店さんの手間が省ける。すぐ使える。
また、手で取るのは、機械では傷が付くからという理由によります。あくまでもユーザー目線を離れません。
こちらはワレモコウ。こちらの品種も吉村さんのオリジナル品種。
「日本でこの“ピンク色のワレモコウ”の品種を作っているのは私だけだよ」
なんと、ワレモコウもオリジナル品種ですか。
しかもピンク色。ワレモコウといえば、本来は深い赤紫色で、秋を象徴するアイテムの一つですが、ピンクであればもう少し早い段階で使えますね。
なぜそのような品種をお持ちなのですか?育種されたのでしょうか??
「某大手の薬品会社から譲り受けたんだ」
や、薬品会社???(゚_。)?(。_゚)?ハニャ??
どうして薬品会社から苗をもらう受けるのでしょうか。
「ワレモコウは漢方薬にも使われるでしょ」
あ!なるほどぉd(^-^)!
ワレモコウの根はタンニンやサポニンを多く含むらしく、生薬や漢方薬に使われるのです!
品種によっては若い葉を食用に使うものもあるのだとか。
アンテナも高いし、色々な方面にコネクションをお持ちですね~。
ワレモコウ生産のポイントは?
「一般的には主軸をピンチしたら側枝が出てどんどん枝ぶりがよくなっていくイメージだけど、ワレモコウのような宿根系は芽かきをしても枝ぶりはあまり変わらないんだ。
つまり本来の株のエネルギーが枝の出来を左右する。だから、土をしっかり作り込んで、株を充実させたらあとは放任主義さ」
放任主義だなんて、さすがワイルドプランツ、ワイルドだぜ~。
ところで、今「土を作り込んで」っておっしゃいましたか?
やはり吉村さんのところでも土作りにこだわっていらっしゃるのですね。
吉村さんの土作り ~減農薬栽培~
吉村さんは有機肥料を使った栽培に取り組んでいます。
有機肥料とは鶏糞や菜種カス、魚粉、骨粉、大豆かす、米ぬかなどの有機物から作られる肥料のことです。これらを土とを混ぜて10-20日発酵させて吉村さん流ワイルドソイル(←ウン探が勝手に命名しました)のできあがりです♪
このこだわりのワイルドソイルを年に2回しっかり作り込むのが、吉村さん流農業の基本中の基本。
「土中のバクテリアがゆっくりと時間をかけて分解した栄養分だけを、ゆっくりと根が吸収するんだ。
いわゆる“遅効性肥料”(ちこうせいひりょう)といってね、ゆっくりと栽培する分、よく締まった苗ができるんだよ。」
へ~、有機肥料を使って時間をかけてゆっくり栽培すると丈夫な苗ができるんですね。
「有機肥料を使うから、ウチは土壌消毒もしない。この20年間したことないよ」
有機肥料を使うと土壌消毒をしなくてもいい理由はなんですか?σ(゚・゚*)
「土壌消毒は雑菌を殺すためのものだけど分解に必要なバクテリアまで殺してしまう。
そうすると有機肥料が分解されなくなっちゃう。
つまり土壌消毒をすると結局は化学肥料を使ったり農薬を使ったりしなくちゃいけなくなるんだ」
なるほどそうすると、ワイルド吉村さんのポリシーに反しますね。
「野原や草原の花は100年土壌消毒しなくても毎年きれいに咲くでしょ。
連作障害は化学肥料を使うから生まれる。
植物は好きなものだけ吸い上げ、嫌いなものは残す。だからその植物が必要な栄養素が土壌に残っていないから、同じ品目を作れなくなる。
連作障害をなくすために違う品目を栽培するでしょ」
作る品目を変えるのはそういう理由からなのですね。
「このような微生物農法をしているとね、川の水や雨水が栄養になるんだ。
“雨水は天水(あまみず)”というほど栄養豊富。リン酸やカリなどの多くの植物の育成に欠かせないミネラルを含んでいる。
雨上がりに見る山の緑は深くてきれいでしょ。あれは雨水を吸うことによってミネラルを補給できるからなんだよ」
お~!!なるほど!!w|゚ロ゚|w そういうことだったのか!
「こうしてゆっくり育てると細胞の構成がしっかりして、大雨で冠水しても大丈夫な植物体になるんだ。華奢に見えるけど芯は強い。雨にも流されない」
なんだか一般的な社会人のことをおっしゃっているようにも聞こえますが、そういう人はどこでも頼られますよね。
そういえば、梅雨入りしてからここ2,3週間長崎では大雨警報が出たり大変ですが、圃場は大丈夫ですか?
「大丈夫。施設の中までは水はなかなか入らないし、露地は水はけがいい。大きい被害は全くないよ」
さすがワイルド吉村さんが育てる花たちも、何のこれしきと頑張る野生児に極めて近いワイルドプランツであった。
ワイルドプランツの日本一繊細な染め技術
吉村さんといえば、草花の生産のみならず、その高い染め技術を持っていることでも有名です。
ワイルドプランツ吉村さんで有名な染めアイテムといえば、このマトリカリアのタマゴピンク。
(写真ご提供:吉村圭さん)
そのかわいらしさに心を躍らせた方もいらっしゃるのでは?
あまりの自然さと完成度の高さに、実は染めていることに気づかれなかった方も少なくないでしょう。(実はアタシクシモ・・・^_^;)
現在は流通期ではないので、実物を見ることはできませんが、いつもはここで染色作業をしています。
「染料は60種類近く持っているけど、色の配合はその日の天気や植物の吸水度合いによっても異なる。日本の切り花染色の技術は成熟していない」
という吉村さん。
「木綿と絹の染め方が異なるように、例えばマトリカリアとカラーの染め方も異なるんだ。
品目によっても違うし、その日の温度、湿度、風のあり/なしというような気象条件も大きく影響してくる。
追い水(染色液を吸わせた後の吸水)をどのくらい吸わせるかなども全く違う。
ひとつ一つ工夫しないと消費者の人に満足してもらえる染め品目はできないんじゃないかと思う」
染めの技術は「吸わせる」だけではなく、上からスプレーをかける方法もあります。
「スプレーもただかけるだけじゃダメなんだよね。
中心をあーしてこーして、その周りをこう吹きかけて・・・という技術がいるんだ。染めはまだまだ将来に対して可能性を秘めているから、これからも良く研究していきたいと思う」
染色ノウハウの詳細は吉村さんのトップシークレット!"d(-x・)チッチッチ
吉村さんはこの繊細、且つ多岐にわたる高度な技術で、マトリカリアのみならず、カラーやフウセントウワタ、ハボタンなども染めて出荷されます。
(写真ご提供:吉村圭さん)
このようなワイルドプランツ吉村さんがここ長崎に誕生したきっかけは何だったのでしょうか。いくら有名な吉村さんでも、その裏話までご存知の方は少ないのでは??( ̄皿 ̄) イヒヒ
実は圭さんのお祖父さまが戦後すぐ佐世保で花を作り始めたことに端を発します。
戦後すぐ・・・ですか(゚ペ)?
戦時中といえば花を作っている人は非難の対象になりかねなかった時代。
それが終わってすぐに花を作ろうという気運があったとは思えないのですが、なぜ花だったのでしょう。
「実を言うと、祖父は消防署員だったんだ」
これまたナント。その消防署員だった方が花とどのように接点を持たれたのでしょうか。
「ある日、どこぞのおばーちゃんがリヤカーで花を売っていてね。
佐世保は米軍基地で有名でしょ。米国では花文化が日本より先に成熟していたからね、米兵がそのリヤカーおばーちゃんのところに花を買いに来たんだって。
まだほかに誰も花を作っていなかった時代、そのおばーちゃんのリヤカーの花はあっという間にザル満杯のお金に変わったらしいよ」
あ、そうか、佐世保は米軍基地があるのですね。
そのおばーちゃんはどこから花を仕入れたのか、なかなかいいところに目を付けましたね。
「そう、あの頃は1ドル270円くらいだった」
※1945-1973年までは戦後の固定相場制。
1945年9月には1ドル=15円、その後インフレにより1947年3月に1ドル=50円、1948年7月に1ドル=270円、1949年には1ドル=360円になる。
「米兵はよく花も使うし、金銭感覚も当時の日本人とは違うしね。
祖父ちゃんはすぐに消防署員を辞めて花生産を始めたんだ。そりゃもう米兵相手に荒稼ぎ!
3か月で3年分を稼ぐ勢いだったらしいよ」
∑(゜◇゜;) ギョ!!
それからというもの、花作りは素晴らしい職業だ!ということで、佐世保で吉村一族のみなさまは花生産に従事するようになったそうです。
圭さんも昔から花作りに憧れていらしたのですか?
「そうだね、小学校6年生の時の卒業文集に、
将来の夢は“日本一の花作りになる”って書いたよ」φ(・ェ・o)~カキカキ
おっと、これはドラマチック❤
幼い頃からの夢を実現されたなんて、なんと素敵なお話。
「そしてずっと花作りになるための生き方をしてきた」
高校、大学でも花作りになるために勉強を積み重ね、花生産一筋に走ってきたといいます。
しかし、圭さんはそのような自分を「花を愛していない」と客観的に見ます。
「草花に対する愛が強すぎると目が曇る。世間のいう親バカと同様。
かわいすぎてどれもこれも好きで取っておきたくなるから、本当の育種ができなくなってしまう。
私は“好きだけど愛してはいない”」
蓋し名言!
育種は「愛が全て」ではないのだー!
圭さんは次々と生まれる珍種を「商品として見て」、取捨選択することを忘れません。
このように圭さんの磨かれた審美眼で新しい品種を商品として出荷したものは100品種以上にも及びます。そのうち種苗登録も30-40品種はしているのだとか。
作出した商品がマーケットで受けるかどうかはどのように判断しますか?
「自分の目で見て良いと思ったものは流行るよ。
自分の感性を信じて紹介すると、お花屋さんが付いてきてくれる」
育種が得意で、新しい品種を次々と世に輩出する圭さんでも、“新しいものであることよりもっと重要なことがある”といいます。
それは日持ち。
「日持ちを最重要視している。
品種の取捨選択はむしろこれに特化しているといっても過言ではない。
育種の段階で日持ちのするものを選ぶこと、そして栽培技術でそれをさらに改善する」
なるほど、①長持ちする品種を選ぶこと
②栽培技術でさらに長持ちするよう改善すること
この2つがポイントですね。
栽培技術で長持ちするようにとはどういうことですか??
「植物の本来あるべき姿に育てるということなんだ。
これが人の感性で自然に最もきれいと感じる姿だと思う。
肥満体で育てた豪華だけが取り柄の花とは違う。無理に大きく育てているから、ストレスも大きいし、体力もない。ほんと肥満体そのもの。
私が目指しているのは、“丈夫な細マッチョ”」
丈夫な細マッチョ・・・植物にとって最も良い姿だといいます。
「通常肥満体にするには、土の肥料として窒素を多く入れる。
でも植物が持つ組織体の細胞数は同じわけでしょ。細胞分裂の回数は同じなのだから。
それを大きく肥満体にするということは、細胞壁がぶよぶよに厚くなるんだ。豪華に作られた花は茎も太い場合が多いでしょ。
一方、窒素も少なめにして、長い時間をかけて緩やかに育てる。そうすると茎の固い締まったものができる。
水揚げの際は毛細管現象で細い方がよく上がる。花持ちは細マッチョの方が断然良いんだ」
なるほど、栽培で花持ちを改善するとはそういうことですね。
マトリカリアも触ってみると非常に芯がしっかりしています!
「それぞれの花にベストの大きさがある。
無理に大きくすると花にストレスがかかるんだ。ストレスのかかった花は長持ちしない」
商品の良し悪しはどこで見分ければいいのでしょうか。
「葉の色を見るのがポイントだよ。
葉が黒々としているのは養分(窒素)が多すぎる証拠。一見ボリュームがあって分かりにくいかもしれないけど、草花の葉はグリーンが淡いくらいが自然」
そんな圭さんは、“何回生まれ変わっても花を作っているんじゃないかな”といいます。
「う~ん、強いて別のことをするとしたらバーテンダーとか、人と接する仕事じゃないかな」
バ、バーテンダーーーー!!!
既にその雰囲気ありますね、ワイルド圭さん。
今後どのような花生産をしていきますか?
「花は自分を表現するツールの一つ。
“吉村さんらしいね”といわれる花を作っていきたい。
親父から代替わりした10年くらい前に、“花が変わりましたね”って言われたんだ。嬉しかった。
もちろん品目も変わっているんだけど、“イメージが違う”って言われた」
ちなみにこちらが泣く子も黙る業界の重鎮で、圭さんのお父上、吉村人志さん。
圭さんはどのようなイメージで作っているのですか?
「草花は本来野原で風に揺られているものでしょ。
だから、風に揺れたりそよいだりする優しい雰囲気を残しながら、尚且つデザイナーさんたちが使いやすいよう芯がしっかりしているもの」
なるほど野原に自然に立つ柔らかさと人が使う利便性とを同時に実現する花ですね。
「そういう“イメージを形にしていく”ことが私たちの仕事。
そして業界の若手が元気いっぱい花を作れる業界にしていきたい。これこそが私の任務だと思っている」
ワイルドプランツ吉村のワイルド圭さんは、できるだけ農薬を減らした有機栽培で、持続可能な農業とユーザーのことを考えつつ、フラワープロデューサーという立場で絶えず新しい物を提案し、消費の底上げと花の価値向上のため、花持ちを第一優先に考える。
業界全体を底上げしていくという気概に満ちた熱い方なのでした。
ワイルドプランツ吉村のワイルド圭さんの格言
・ こだわりは土!有機肥料を使った吉村流ワイルドソイルを研究すべし!
・ 目指すは細マッチョ!
植物の本来の姿を作り出す。これが長持ちする美しい花の条件。
遅効性肥料を使いゆっくりと育て、細いながらも丈夫な草花を作るべし。
足元が細ければ、美しいばかりでなく、毛細管現象で水揚げも抜群◎good!!
・ 育種家としての目を曇らせることなかれ!花は好きでも愛してはいけない。
親バカになるべからず。自分の感性を信じて取捨選択を重ねるべし!
・ 日本の花き染色技術はまだまだ発展途上。 圭さんの研究し尽くされた染色技術を見習うべし!でも細かい方法はナイショ×ナイショ( ^―゜)b
小売店の皆さまへひとこと
・ 必ず良く日持ちのするものを仕入れてください。
短命の花を仕入れるなら、その性質を理解して消費者の皆さまに説明してください。
・ 毎年、母の日にはカーネーションの仕入れトラブルの話の話を聞きますが、小売店さんはもっと花を見る目を養ってください。
カーネーションなら、①葉の筋、②茎、③花首を見ればいつ採花されたものかだいたいわかります。
買ってみたら花がほとんど持たなかった・・・では花離れの消費者を増やすだけです。
直接消費者の方との接点を持つ小売店さんの力をお借りして、もっと花の需要を伸ばしたいと思っています。
消費者の皆さまへひとこと
是非、その花の裏にあるストーリーに興味を持っていただけると嬉しいですね。
その開発秘話や由来など、おもしろいストーリーが秘められていることがあります。
■□■お・ま・け♪■□■
うわ~!長崎の空港に降り立つと、真っ先に目に入るのが、巨大な長崎ちゃんぽん!
・・・のオブジェ。
ちゃんぽんにトビウオが飛んでるぅ~・・・ってなんで??
本場の長崎ちゃんぽんには、トビウオが載ってるものなのか??
試しに注文してみると・・・
載ってない・・・(-ε-)
じゃーなんで??
トビウオのことを長崎では「あご」というらしく、漁業が盛んな長崎では「あご」もまた特産品の一つ。
長崎の本場のちゃんぽんは、この「あご」でダシを取ることがよくあるのだとか。
これを「あごだし」といい、このオブジェではそれを表現するために、トップにトビウオを飛ばせたということなんだそうです。
ナットク!(゚ー゚)(。_。)ウンウン
何気にベンチもカステラだったりする・・・。
空港はまさにザ・ナガサキ!
マーケティングのためにお土産も含めよくコーディネートされています。
さすが、“観光で行きたい都道府県 人気トップ10”にランクインするだけあります。
雰囲気ありますね~。↓長崎の空に響き渡る天主堂の鐘が聞こえてきそうです!
最後に、このたびの九州地区の大雨で被害に遭われた方々に謹んでお見舞い申し上げますとともに、1日も早い天候の回復を心よりお祈り申し上げます。