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2012年11月21日

vol.98 奥 隆善 氏(チョコレートコスモス)後編

前回の続きで、育種家の奥隆善さん後編です。

さて、ここでハボタンも少しだけご紹介いたします。奥さんはこれから旬を迎えるハボタンも育種、生産されています。
↓ハボタンの圃場
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大田花き営業担当のYモトによると、奥さんのハボタンは、こんな感じなんだと↓
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ナヌ??(・_・*)(*・_・)(*~^~)/??
全然わからん。ハボタンてこんな形だったっけ?
スプレー状に頭がたくさん付いていて、根も付いているってこと?(上も下もスプレー??)

「そうなんですよ」
とYモト。
これはただならぬ気配・・・

こちらが、奥さん的スペシャルハボタンの圃場。
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摘心をして、スプレーに仕立てています。
しかもこれだけきれいに高さも頭のサイズも揃って、巻きも美しい@@@
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「ハボタンをスプレーに仕立てるのはとても難しいんだ」と奥さん

Yモトに聞いても、現時点で奥さん以外にあれほどきれいなスプレー仕立てができる人はいないんじゃないかといいます。

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「普通のハボタンよりも栽培に2カ月長くかかるよ。その分、虫や病気のリスクも上がるし、台風対策もしなくちゃいけないし、コストがかかる割には製品率が低いからね、大変だよ。そして技術は意外とローテクなんだ。でも、できるだけ手間がかけずに製品率を高めるような技術を確立したんだ」


どうのようにやっていらっしゃるんですか?


「チッチッチ。それは言えないな」ヒミツ(o′З`)b☆


これは、ウンチク探検隊の切り込み術を以ってしても、スプレー仕立てにする秘密は門外不出と教えていただけませんでした・・・(+_+)チーン!修行が足りん!


では別のことを教えていただきましょう。
どうして根付きでご出荷されるのでしょうか。何か意味があるのでしょうか?

「① 日持ちが良い
② 気持ちが良い
③ 縁起が良い」

なるほど“良い”ことが三拍子揃いましたね。
効率も良いのですか?

「効率は悪いかな(笑)。
気を付けて慎重に抜かないといけないしね。
でもお正月は縁起物が大切。効率は関係ナシ!」

なるほど、あくまでもユーザー目線を離れない奥さんのポリシーは、何を作るにしてもぶれることがありません。

そしてハボタンの圃場でも見つけました!「外側が大きくなる」現象。
端の株が一回り大きくなっているのが、写真からご覧いただけると思います。
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この露地の場合は、そこだけ土質が砂地になっていて、水はけが良い分、生長も早くなってしまうのだそうです。それも「泥に交じって土質を研究し尽くしてわかったこと」。

輪サイズも測ってみると、直径が異なります。
↓圃場の中の方は、仕上がりの直径10cm程度。
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ところが、“外側”の直径は、なんと15-6cmにもなるのです。
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直径が小さい物の方がキュッと締まって、巻きも多い。しかし、外側はだら~ん、びよ~んと・・・(あ、失礼)・・・ってほどでもありませんが、プロが見ればわかるくらいの違いではありますが、巻きが甘く、全体的に大きくなってしまっているのです。
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「だから“外側の商品”は極力大田花きには出荷しない

ありがとうございます!


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話をチョコモスに戻しまして、みなさんが不思議に思っていらっしゃるであろうチョコモスの色についてご説明したいと思います。

101b.jpgチョコモスはなぜこんな色をしているの?

チョコモスの色はアントシアニンとカロチノイド
からできます。
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「アントシアニンは紫外線と酸素で誘導されるんだよ」

なるほど。奥さんの施設に張ってあるフィルムは、紫外線を透過するものなんだそうです。
同じ透明のフィルムに見えても、紫外線を通すものと通さないものとがあるのだとか。
施設内で作れば、昼夜の温度差も大きくなり、よく丈が伸びる上に、紫外線も着色に十分な強さを吸収することができるので、その分品質の良い物ができるのです。


101b.jpg増殖は?

チョコモスは挿し芽で殖やします。

「放っておいたら、生き残れない」と奥さん。

チョコモスは自然に殖えない品種です。美しい一面のコスモス畑はご覧になったことがあると思いますが、チョコモスは放っておいてもあのようにならないわけです。

なぜでしょう。

「自家不和合性が高く、・・・つまりチョコモス同士では、タネもできない。

野生のチョコモスは絶滅したとされている。チョコモスは園芸界のトキかパンダみたいなものなんだ」

それを人の手によって命を繋いで、生活者の皆さまが楽しめるようにする。 
そこにひとつのチョコモスのワンダーがあるのです!
この世のチョコモスはすべからく人の手によって種の保存が図られたもの。
種で殖やせるようになるのが次世代チョコモス育成の課題だと奥さんは言います。

こちらは奥さんの作業場。
あちらで作業をしていらっしゃるのは、奥さんの奥さんですか?
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「母です~」(*^-^*)


あ、お母様でいらっしゃいましたか。これまた失礼いたしました。
あまりにも若々しくハツラツとされていたものですから^_^;
奥さんのお母様で奥泰子(おく・やすこ)さんです。


泰子さんの主なお仕事は、こちらの出荷場で品質チェックと選別、梱包をすることです。
25本ずつ束にして、50本1ケースでご出荷いただいています。
しかし、奥さんはいつも26本と、1本多く入れていただいています。
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「保険だよ。お客様に迷惑かけちゃうといけないから」

なるほど、奥さん親子ならではのお心遣い。


アラ?なんだか出荷場の中を見ていると、不思議がたくさん!
まず1つはすんごい数の軍手、軍手、軍手!!!アッチ見ても、コッチ見ても!
一体、何人の従業員様がいらっしゃるのでしょうか。
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「私と母だけだよ。アルバイトもなし」

え!?
じゃあ、この軍手は何にご利用されているのですか?

「使い捨てなんだ。ウィルスとか入らないように、使い捨てにしているんだよ。

古くなるまで使っていては衛生面が保てない。
これらの軍手は手を守るためではなく、植物を守るための物なんだ。
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使い捨てなのに、洗濯して干してあるのはどうしてですか?

「私が捨てると、父が拾ってきて、自分の趣味の園芸に使うんだよ・・・(笑)」

だからなんですね。奥さんが使う時はいつも新品を下ろします。
ハサミも圃場で使うものはさておき、親株に使うものは、1回1回必ず消毒をするそうです。
大きなトラブルを未然防ぐこと。これが大切。ウィルスとかの病気は一見わからないけど、ある日突然ドカーンとやってくるんだ。

例えばタバコにもウィルスがあるって知ってる?」

タバコですか?すみません、勉強不足で・・・(+_+)トホホ

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「乾いたタバコにも、タバコモザイクウィルスという、とても感染力が強いウィルスがいるんだ。
モザイク病という植物の病気を引き起こすウィルスだよ。

だから、スモーカーは圃場にも作業場にも立ち入り厳禁にしている。たとえお客様でもご遠慮いただいているんだよ」

いがっだぁ~、ウン探はノン・スモーカーです♪
その時にタバコを吸っていなくても、入場厳禁。なぜならスモーカーの手には、既にウィルスが付いているからです。
特に苗を管理したり、親株がある圃場は、一つ一つの作業でコマメに消毒をするのだそうです。
軍手といい、この徹底ぶりは奥さんのプロ意識の賜物!


この秘密の小部屋は何でしょうか。
作業場の奥でドア越しのぽわ~んと光る幻想的なスペースを見つけました。
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なにやらフラスコ苗らしきものがたくさん置いてあります。よもや・・・
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「私のバイテク室だよ」

やはりッ!さすがバイテク修了した奥さんだけあります!個人でバイテク室を所有している方は初めて拝見いたしました。

「培養(=殖やすこと)をしたり、バクテリアのあるなしをチェックしたり。時間も忘れて、夜な夜なここにこもって組織培養などの仕事をするんだ」

バクテリアが付いていたものと付いていないものをシャーレーでチェックすると、こんな感じ。

ギョ(@_@;)↓バクテリアが付いていた場合     ↓付いていない場合
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奥さんはこのくらい繊細に、一つ一つの苗が正常な状態であるかどうかをチェックしているのです。


その姿はこういう感じ。
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このようにして、新品種の開発や無菌の質の良い親を培養しているのです。

うわぁ~、ココ一帯だけ突然理系な感じ。
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この大きいタンクは「高温高圧滅菌機」
キッチンにある圧力鍋と同じ。これで煮物作るとおいしいんですよht17.jpg
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こちらは、マグネティックスターラーといって、マドラーのような棒やオタマジャクシを使わなくても、中身をグルグル撹拌できる秘密兵器。マグネットでこれがクルクル回ることで撹拌される。
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すんごいバリエーションに富んだピペット群!
“ピペット”という音自体が懐かしいなぁ。
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「ピペットもそれぞれに名前があって、これがコマゴメピペット、これがメスピペット、これがパスツールピペット、★Θ▲×Σピペット・・・」

あぁ、もうい~です。。。(+_+)ムズカシ


とまあ、ネット上のこのコーナーにご紹介させていただくには多いくらいの情報量、しかしアタクシのノートの中に眠らせておくにはもったいないくらいのオモシロ・ストーリーなのですが、ざっくばらんな性格代表のアタクシにえいやーとまとめさせていただければ、奥さんのチョコモスをスペシャル品質たらしめているのは・・・

“ひたむきな情熱と、この上なく緻密な仕事”です。

軍手やハサミの取り扱い一つとっても然り!


たとえば、この日、外国から仕入れた苗をプラグ苗用のトレイに入れる作業をしていました。
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その作業たるや、動きに無駄がなく、美しく、丁寧だけど素早く、この器用そうな手先ですいすいと仕事を片付けていくのです。
なんだかもう、犬で言う“腹をご主人様に見せて何でも言うこと聞いちゃいます”と言っているかのごとく、土も苗も意思を持った生き物のように、奥さんの思う通りに動いていくのです。
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そして、それほど能力のある奥さんが、例えば大企業でスター選手として活躍するでもなく、或いは独立されて大規模経営するでもなく、なぜこのようなスタイルで営まれているのか、・・・ま、愚問かもしれませんが、聞いてみました。

「自己責任でやれば、言い訳をしなくて済む。
また経営は、規模ではなく質を向上させたい」

というポリシーがあるからなのです。

このような独立心の強い奥さんがこの伊賀の里に生まれたのか・・・ということですが、これはあくまでも一探検隊員としての見解にすぎませんが、
“ココが伊賀の里であるから”だと思っています。


つまり、この辺りの忍者の里と呼ばれるところは、奥さんから教えていただいた通り、元々は土着の豪族が治める土地でした。しかし、朝廷や幕府などの国家勢力が山を越えて攻めてくるわけです。

そこで、豪族たちは「我らが土地だ!」と武装して、敵が山を越える前にゲリラ戦や奇襲戦で応戦していたのではないかと思います。応戦する際には山を目に見えぬ速さでシャカシャカと走り回っていたでしょうし、相手を罠にかけようと山に穴を落とし穴を掘ったりして様々な仕掛けを施したことでしょう。

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この辺りに忍者の里と言われる所が多いのは、このような武装した土着の豪族が元だったのではないかと思いました。
マンガのハットリ君のような「はっとトリック」のような忍術はどこまで本当か定かではありませんが、元々はそのような武装した土着の豪族から、忍者と呼ばれる人たちが生まれたのではないでしょうか。
また、奥さんのような独立心旺盛な方がこの地に生まれたのは、国家勢力に迎合することを潔しとしない、この辺りの里山気質を反映してのことではないかなと。

中でも伊賀忍者は、野草を薬草にすることを研究したそうです。つまり、伊賀忍者の末裔は薬屋さん。
奥さんの研究熱心なところも、この土地の気質を反映しているのかもしれません。

仕事の緻密さもひたむきな姿勢もまた、奥家のDNAとこのお土地柄が色濃く反映された結果ではないかという思いを馳せながら、帰路に就くウンチク探検隊でした。
推測が違っていたらすみません。


ところが「僕の祖先は忍者ではなく武士です」と。
なるほど、奥さんのご自宅は武家作り。脇の小道は、まるで帯刀した武士が、威風堂々歩く姿が見えてきそうです。
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101b.jpgそもそも、どうしてチョコモス?

奥さんはどのようにしてチョコモスに出会い、育種人生を懸けるまでになったのでしょうか。

「腐れ縁だよ」

あ、今、4,000字くらいのストーリーを“腐れ縁”の3文字で片付けようとしましたね(-ε-)

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「うん、まあ簡単に言うとね、最初の出会いは学生の時に見たカタログだったんだけど、写真も不鮮明だし、妙に黒いし、フェイクだろうと思っていたんだ。だけどアルバイトをしていたお花屋さんで仕入れた実物を見てみると、本当に黒くてかわいくて、本物のチョコレートのような香りがあった。
 ↓
そこで、試験管の中で挿し芽をしてみたら、うまくいった。
 ↓
殖やしていたら、研究室の教授にチョコモスは「野生の条件下では絶滅したものだ」と教えもらった。
人工的に殖やそうとしなければ、生き残れない品種だってこと。“自家不和合性”が強く、花粉が付いても、種ができないんだ。でも、チョコモスでもあっちとこっちの品種だったら、受精できるのではないかと教授が背中を押してくれた。
 ↓
別の准教授に「キバナコスモスを育ててみない?」と勧められて、チョコモスの隣に植えた。
 ↓
するとある日、子房が膨らんでいてね。“もしかして、タネできた?”って思った。
 ↓
でも結局枯れて、タネは採れなかった。胚珠培養(※)ならいけるかも!?と思ってやってみたら、うまくいったんだ。

※胚珠培養
異なる品種の間で交配すると、受精はしても胚(=エンブリオ、人間でいうところの胎児)が発達しにくい場合がある。そのようなケースにおいて胚珠を人工培地に移して培養する方法。子房ができれば、そこから胚珠を取り出すのは比較的容易。


でも“チョコモスの子供ができた!”と研究室で報告したら、“大丈夫、何か間違いだよ”と皆に一蹴された(笑)。
 ↓
そこで花を咲かせてみたら、見たこともない赤い花だった。
虫がキバナコスモスと受粉してくれていた。虫はチョコモスだろうが、キバナだろうが関係なく花粉を運んでくれる。
チョコモスとキバナコスモスとを隣に植えさせてもらったことが運命だった」
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それ以来、奥さんのチョコモスに対する飽くなき探求が続いているというわけです。

「チョコモスの件でメキシコの大学の先生のところにお話しを伺いに行ったり、今度はその先生がココ伊賀の里まで遊びに来てくれたりしたこともあったよ。
コスモスを通じてインターナショナルな付き合いが始まったんだ」

花は言語を越えて、人と人とを結び付ける。・・・奥さん語録④


あ、ちょっと待ってください!
お話を伺っている間に・・・あれれ~???!!!∑(゚ロ゚!)
奥さん!一斉にチョコモスの元気がなくなってきちゃいました!
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大丈夫ですか、この状況?
水不足?
それとも寒くなったから?どうしよ、どうしよッ??(汗)アワワ

「チョコモスは夜になると寝るんだよ。

たまに“首が曲がっているから”と返品になったりするんだけど、それはチョコモスの性質なんだ。太陽が上がればまたピンとする。

チョコモスの首が曲がってきたら、夜になった証拠。一緒寝てください」

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chocomos.jpg奥さん語録集

“外側”の商品は極力出荷しない・・・特に大田花きには、よく選別して出荷していただいています。奥さんのチョコモスは信頼の印!

花生産はP-Q-S!・・・Price(価格)、Quality(品質)、Style(形態、流通面)をお客様の求めるものにシフトせよ!

泥の気持ちは泥になってみないと分からない・・・農業を始める時は、泥まみれになってでもその土地の地形や地質を徹底的に調べるべし!土質のみならず、全てに対する飽くなき探求心が必要!

花は言語を越えて、人と人とを結び付ける・・・すヴぁらすぃ!(≧∇≦)

湖は生きている・・・農業はその土地の歴史を知ることに始まる。Explore Japan!


chocomos.jpgチョコモスを小売店頭であまり見かけたことのない方へ

チョコモスはこの時期よくウェディングブーケなどによく使われます。
“え?赤黒いのが?”と思われるかもしれませんが、この時期のウェディングブーケで“シックな秋”と“大人なニュアンス”を演出するのに、チョコモスの品の良さがピカイチなのです。
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(写真ご提供:pianta様)


chocomos.jpg奥さんから消費者の皆さまへひとこと


・ チョコモスは鮮度保持剤を必ず使ってください。
  そうすれば決して日持ちの短い品目ではありません。

・ 夜は首を曲げて寝るので、枯れたと思って驚かずに、一緒に寝てください。

・ 伊賀の里から情熱を込めて作られたチョコモスを是非使ってください。


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超おまけ的 伊賀の里雑学のススメ☆☆☆

そしてここは何と松尾芭蕉生誕の地でもあるのです。
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ここが芭蕉の生家。正保元(1644)年、次男としてこの家に生まれたそうです。

そしてその隣が奥さんが生まれた病院!昭和52(1977)年、奥家のご長男として生まれました。
只今、花嫁さんを大募集中です。奥さんのところにお嫁に行ったら、きっと幸せになれますよ。
丸1日お世話になったウン探が保証しますht17.jpg

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<写真・文責>:ikuko naito@花研illust2018_thumb.jpg

2012年11月20日

vol.98 奥 隆善 氏(チョコレートコスモス)前編

は~い!みなさん、お久しぶりでございます(≧∇≦)!
今回は、近年人気急上昇のチョコレートコスモスを特集しちゃいます!
しかも、取材先はチョコレートコスモスの育種からやってしまうという三重県の奥隆善(おく・たかよし)さんです!


“あ!その人知ってる!”とか、“どこかで見たことあるなぁ~”という方は、なかなか冴えていますね。なんと奥さんはNHK番組の『趣味の園芸』などにもご登場される業界の有名人なのです!若きホープなのです。

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さすが、撮影慣れしていらっしゃるのか、
そのスマイルは爽やか~ン≧(´▽`)≦
この爽やか奥さんがどのような思いでチョコレートコスモスを育種、生産されていらっしゃるのか、その秘密に迫ります!


その前にチョコっと一言、チョコレートコスモスは長い名前なので、流通に携わる人の間では略して「チョコス」とか「チョコス」などと呼ばれます。
仮にここでは「チョコモス」と呼ばせて頂きたいと思いますので、宜しくお願いしモス!!

さて、その奥さんのチョコモスですが、現在市場ではどのような評価を得ているのでしょうか。大田花きの営業担当S藤(イニシャルトークの必要ないんだけど^_^;)に聞いてみました。

「ピンと立つんですよッ!茎の下の方を持つと、こうやって、ピンッて」(ゼスチャー付き)
なるほど、イメージ的にはとても細い茎なのに、背筋を伸ばして自立しちゃうんですね。


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「それから買参人さんに“チョコモスいかがですか?”とご紹介させていただくと、
“え~、欲しいけど、奥さんのじゃないといやだぁ~ht17.jpg”って言われたりするんですよ~☆ウフ
ピンと立つ茎、胸がキュンとする輪サイズと色載り、奥さんのチョコモスはピカイチですね」

S藤からかなりの高評価!
antiquered.jpg(品種:アンティークレッド)
ウン探のスイッチが入りましたモチベーションUP☆いざ出陣です!


やってきましたのは三重県伊賀市。
そう、伊賀と甲賀の伊賀です。ニンニン!!
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ここは周囲を山に囲まれた伊賀の里。
あの山の4087.jpg向こうが甲賀の里
近くには信楽(しがらき)が。タヌキの信楽焼で有名ですね。

そしてこの先が4088.jpg柳生の里
おっと、柳生十兵衛の柳生の里ですかぁ?あの全盛期の千葉真一が扮する柳生十兵衛??

キャーッ!懐かしい~(≧∇≦)って、あまりいうと年代がばれるのでホドホドにしつつ、
「そう、この辺りは全部忍者の隠れ里だよ」
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と今回の主役兼ナビゲーターの奥隆善さん登場!


「●賀とつくのはその昔、忍者が住んでいたところなんだ。

でも伊賀は忍者云々の前に、地方豪族が住んでいたところ。忍者の里というよりは、土着の豪族の土地なんだよ。古墳もたくさんある。前方後円墳もいくつかあるよ。畑にしちゃってるけどね」

(; ゚ ロ゚)ギョッ!えッ?前方後円墳、つまり古代の御墓の上で何か作っちゃってるってことですか?
いいんですか?そんなことッ??(・_・;)_・;) ナントッ!!

「いいも何も、ダメって言われる前からそうしているんだよね。だから今更ダメッて言えない。
石室が残っているのに、前方後円墳の“円”側で果樹を作って“方”で野菜を作ってたりね(笑)。
これがまたよくできちゃんうだよ、土がいいから。」

土がいい・・・?

「この辺は大昔、琵琶湖の底だったんだよ」

び、琵琶湖っ??
琵琶湖って2つあるんでしたっけ?「琵琶湖1」「琵琶湖2」とか?
滋賀県にある琵琶湖はドッチなんだろ?あっちが本家の「琵琶湖1」かな。
あれ、ココ何県でしたっけ?あ、三重県か。「琵琶湖1」まで何キロあるんだろ。あー、もう全然ワケわかんなくなってきました。

奥さん、琵琶湖って、あの琵琶湖ですか?滋賀県の?

「そうだよ。湖って移動するんだ」

えッ∑(゜◇゜;)

そ、そんな。学校では誰も教えてくれませんでした。(多分)
奥さんのお話によると、“湖は生きている”
琵琶湖の誕生はおよそ400万年前。バイカル湖、カスピ海に次いで古い世界有数の古代湖なんだそうです。もともとはココ伊賀に生まれ、それが地殻変動で北に移動して、現在の琵琶湖になったということです。

なんて物知りな方なんだ。(T_T)感動

「湖の底に土だったから、粘土質なんだよ。だからたいていの物は締まってよくできる。

ただ、さっきの“古墳”ていうのは、粘土質の土に黒ぼくという肥沃な土を盛り上げて築かれているみたいで、とても排水が良かったりするんだけど、排水の悪い粘土質だと育ちにくい植物にも向いているということなんだ」

なるほど、粘土質ということは、近くの信楽で焼き物の技術が発達したのもその影響があるのですかね。

さて、この辺りのことを少し知ったところで、こちらが奥さんの圃場です。
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奥さんの育種生産に関するこだわりの要素は、「日月火水木金土」に象徴されます。
曜日とは関係ないのですが、なぜかハマりました。ですから、これに沿ってご説明したいと思います( ^―゜)b


101b.jpgまずはから。
潅水について。株元にパイプを通して潅水します。
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「でも1週間に1回くらいかな。それ以上やると、よく丈は伸びるけど、茎が柔らかくなってしまうんだ」


なるほど、この通り、水をやった直後でも土の表面は乾いています。
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「施設内でも外側の畝を見てごらん。そっちの方が全体的に背が高いでしょ」

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あ、ほんとだ!どうしてですか?

「雨が降ると、どうしても外から水が入ったり、地面に浸み込んだ水を吸い込んで、丈が伸びやすくなるんだ。早く育って丈は採れるけど、茎が柔らかい。
このような外側の商品は極力大田花きには出さず、場合によっては廃棄したりするよ

なるほど~!
水のやりすぎは厳禁!意図していなくても、自然に水を吸って育ってしまう“外側の商品”は、茎が柔らかいだけでなく、日持ちにも影響してくるそうです。
大田花きには施設の中央のものからご出荷いただいています。
S藤が言っていた細くてもピンッと立つ茎の秘密は、1つここにありました。
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“外側の商品”は極力大田花きには出荷しない・・・奥さん語録①

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株の育て方です。


ピンチをして生かす花芽を考えたり、バランスを整えたりするのですか?

「ピンチはしていないよ。
ピンチをする必要のないものを育種段階で作っていくんだ。」

つまり、育てやすい品種を育種するというわけですね。

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そして“花はPrice-Quality-Style”という奥さん。
Price(価格)小売に合った価格で提供する。また提供できるよう、生産コストを管理する。

Quality(品質)=お客様が求める品質になるよう作り方をシフトする。自分が求める最高を目指すのではなくて、お客様が求めるものであることが重要。

Style(形態、流通面における要素)=流通のための箱、形態、作業効率、梱包時刻や出荷時間など、どのようなスタイルを採るのが最適かを考える。

これらの点のそれぞれを追求してチョコモスを生産する。持続可能な農業生産を行うには、これが大切な要素だと奥さんは言います。

花はP-Q-S・・・奥さん語録②

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ところで奥さん、千葉大大学院をご卒業されたということですが、何を専攻されていらしたのですか?

植物細胞工学だよ。
英語でPlant Cell Biotechnology(プラント・セル・バイオテクノロジー)だから、略してバイテクって言われたりするんだ」

へー、ザイテクですか。

「ザイテクじゃないよぉ。バ・イ・テ・ク
財テクなんてやり方全然わからないよ。お金には縁がない」

円には縁がないんですか・・・。(デタデタ^_^;)

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「ここで農業を始めたときは、大学院を出たばかりでお金ないし、実家は農家じゃないし、農機具も揃っていないし、施設もない。ゼロからだったよ」

就農資金も十分にない状態でどのように始められたのですか?

「水田の土地だけは少し持っていたからね、そこを耕して露地で始めたんだ。
アサガオ、ケイトウ、エリンジウム、モルセラ、ミント、カラー、グラジオラス、麦ナデシコ、フウセンカズラなどなど、色々やったよ」


奥さんは、現在切り花ではチョコモスとハボタン、ナズナをご出荷くださっています。
この3つに辿り着いた理由は何ですか?

「まず一つは育種をしたかった」

バイテクを修められたわけですから。

「だけど一般的に“育種は10年不採算”と言われるほど収益性は見込めない分野。だから一方で何かを生産しなくてはならない。

自分の持っている水田で露地でこの気候でできるものは何かって考えて、色々やってみて、その結果だったんだよ」

伊賀は三重県ですから、ひょっとしたらみなさんは暖地性の気候というイメージを持たれるかもしれませんが、奥さんによると実は内陸性で結構寒いといいます。春の到来は遅く、冬は早い。この気候と限られた資金と持ち合わせた土地という条件で、トライアンドエラーを繰り返して今の奥さんがあるのです。

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この辺りは先述のように粘土質(伊賀古層)で、関東ローム層とは異なり花崗岩に水や空気が入りながら風化したものなのだそうです。

う~ん、さっきも粘土質で何でも締まってできるとおっしゃっていましたが、粘土質だとなぜ何でも締まってできるのでしょうか。σ(゚・゚*)ンート・・・

「砂地っていうのはサラサラしているから、水はけがいい分、肥料の持ちも悪い。

粘土質はその逆で、肥料や水の持ちが良く、また根が伸びるのに力が必要な分、ゆっくり根が発達する。時間をかけて生長するから、株ががっちりと固く生長するんだ。

でも、伊賀の土が他と違う分、同じ花や野菜でも育てる品種が違ってくるし、使う農機具も異なってくる。
種まきひとつから伊賀地方に合った育て方をしないと、本やテレビで紹介している一律の方法ではうまくいかないことがある」

なるほど~、伊賀には伊賀の農業があるわけですね。この土地だけの最適農業が。

そこで奥さんは「伊賀農業の伝道師」として、地元のケーブルテレビにレギュラー出演されたり、地元の公民館で園芸教室をされたりして、伊賀農業の啓蒙活動を行っています。

「少なくとも失敗しなければ園芸は楽しいはずでしょ。だからその地域に合った農業を提唱して、楽しい園芸を伝えていきたい。
延いては消費アップに繋がるわけだから。各地域でそういう最適農業を伝授できる人がいるといいなと思うよ」

ヌァント素晴らしいスピリット!


「それに粘土質って言っても、何でも一辺倒じゃないんだ。
砂利採取なんかで土を移動させてる場所もあるから、同じ水田の中でも土は違ったりするんだよ。

だから、最初は雨が降ったら長靴を履いて、泥まみれになってこの水田の土の性質はどうなっていて、どこに水が溜まって、どこにどんな畝立てをしたらいいのかなど、徹底的に調べたよ。泥の気持ちは泥になってみないと分からないからね」
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蓋し、名言!!(≧∇≦)
普通は泥になれんもんなぁ。そもそも泥になろうとも思わんて。この名言が出るっちゅうことは、それだけご苦労されて土質を研究し尽くしたということやろな。

「この施設は農業高校で非常勤講師などをやって、コツコツとお金を貯めてやっと建てたんだよ。最初から良い施設があったら徹底的に土質を調べるところまではやらなかっただろうね」
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もう、奥さんに脱帽です。


実際、チョコモスの場合は、どのような土が適しているのですか?

「少しアルカリ性の土がいいね。だから少量の石灰を入れて、ミネラルを供給する。そうすることで固くしっかりしたものができる。

しかし、何よりも堆肥を中心に混ぜることが重要なんだ。堆肥を入れることにより、植物の生長に必要なアンモニア態窒素を絶えず必要な分だけを供給することができるんだ。
しかも株の勢いが保たれるし、老化しにくい」

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つまり、堆肥を入れることでアンチエイジングの秘薬のようなものが手に入るってことですね!
アタシもほしぃーーー!


「でも化学肥料も使うよ。
有機農法の良いところと化学肥料や近代農法の良い所を組み合わせているんだ」


ところで何の堆肥ですか?
「伊賀牛の牛糞と・・・(なんて高級そうな響き≧∇≦!)豚糞と伊勢赤鶏の鶏糞のミックスだよ」
うわぁ!地元の高級そうな響きの畜産ブランドのミックスによって最適な土が作られているわけです。


泥の気持ちは泥になってみないと分からない・・・奥さん語録その③

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太陽ですね。
露地で作っていると太陽の光が強すぎて、品質が頑丈になりすぎてしまうといいます。

「だから、施設の中でフィルム一枚通した光がベスト!もっとも細くて美しい姿をしていながら丈夫なものができる。
それからコスモスは短日(たんじつ)植物※、しかも“量的短日植物”といって、少しでも日が弱いと“日が短くなった”と感じて早く花を咲かせる。だから、フィルム1枚くらいがあるとちょうどいいってことなんだよ※」

※短日植物:ザックリ説明すると、日が短くなってくると花芽を付ける植物のこと。しかし、本当は夜の長さを感じて花を咲かせるようになるので、“長夜植物”というのが正解。
量的短日植物:これに対し、“質的短日植物”というのがあり、絶対値として●時間暗くしないと花芽が付かないという植物のこと。ポインセチアなどがこれに当たる。


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月の巡りに合わせて、毎年同じようなタイミングで植え付け作業をしていきます。

「植え付けるサイクルは大切」という奥さんは、毎月第何週に何をするという作業スケジュールは最初から決まっているのだといいます。
これを忠実に実践していくところが当たり前のように見えて、とても大切なことなのです。


101b.jpgそして最後に

これは冬の暖房・・・と思ったみなさん!イヤイヤ
それも確かにあります。出荷を急ぐために、暖房をジャンジャカ使えば、その分収量もスピードも上がりますが、茎は柔らかくなってしまいます。

いかに暖房を使うかというのも大切なポイントではありますが、ここでは「火」を奥さんの情熱に喩えたいと思います。


GF.jpg元を辿れば、幼いころは金魚のブリーダーになりたかったという奥さん。それが小学校5年生の時に、園芸好きのお祖父さまからもらったハボタンの種をきっかけに植物の道にハマって行きます。
これはまさに隔世遺伝!

そのタネをまいて出てきた芽を見た瞬間、奥隆善少年は、
illust311_thumb.gif「美しい!」*(о☯‿☯о)*キラキラ

と思い、植物へのスイッチが入ったといいます。

中学生になってからは、短日植物のアサガオを題材にして、“日が短くなったのを感じるセンサーは植物体のどこにあるのか、本葉ではなく双葉にもそのセンサーは備えてあるのか”を自ら研究するため、本葉が伸びてきてはちぎって・・・という実験をしていたといいます。
アタシャ、チューガクでなにやっとったかな。スゴイナ

それで、双葉だけでも開花したのでしょうか。
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「したよ。奇形だったけどね」

その感動は現在に至っても忘れることなく、心の中に秘められた植物に対する情熱は、表に現れた温厚な笑顔に反して、とても熱いものがあると感じました。


伊賀には伊賀の農業がある。それぞれの地域で、それぞれのやり方がある。テレビや雑誌などで紹介されるやり方と同じやり方をしていたのでは、うまくいかなくなって園芸離れを起こしてしまうと、自ら地元の園芸伝道師を買って出る気概と熱意。金儲け主義に走らず、強いポリシーで地元で育種と生産をコツコツ続けながら、ひたむきに植物を愛するピュアな心。
もうこれは、ウン探は“恐れ入りました”と頭を下げるしかありませんでした。

☆後編に続く・・・
後編はハボタンや奥さんとチョコモスの出会いなどについても語ってもらっちゃいます!
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<写真・文責>:ikuko naito@花研

2010年12月 3日

vol.79 JA紀の里 那賀支所 ハボタン ~和歌山県産地シリーズ 前編~

11月24日、羽田空港はすっかりクリスマスぅ~!

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さすがHANEDA、クリスマスツリーもきれいです~。

クリスマスの次はお正月kadomatu.png
新年を迎えるのに欠かせないアイテムであるハボタン産地にウンチク探検隊初上陸!
お正月用のアイテムは今の仕込みが正念場。

やってきたのは和歌山け~ん!
和歌山県のJA紀の里です。

・・・っとその前に、皆さんのハボタン理解度チェック!
問題1 ジャジャン!
ハボタンとキャベツはどこが違うの?


【解答】
同じです・・・は言い過ぎですが、キャベツもアブラナ属アブラナ科でハボタンも同様ですから、仲間というか家族ですね。ファミリーです、ファミリー。

問題2 ジャジャン!
“ハボタン”て外国の人に説明しようと思ったんだけど、英語でなんていうの?

【解答】
英名ではornamental cabbageとかflowering cabbageといいます。
ま、直訳すると“観賞用キャベツ”とか“花キャベツ”とでもいいましょうか。
そう考えると、日本語で「キャベツ」という言葉をあえて使わずに「葉牡丹」としたのは、なかなかロマンティックでうまい命名ですね。


日本の花卉マーケットにおけるハボタンといえば、今や松千両に並ぶお正月のマストアイテム。昨今の需要の伸びで、小さいものも流通していますから、ちょっとしたアレンジに入れても、バラやカーネーションなどの主役を邪魔せず、和の雰囲気を醸し出す良いアイテムです。
大きいものも存在感がありつつ、松とも合わせやすいので、とっても重宝します( ^ー゜)b

そこで第3問 ジャジャン!
日本にはいつ伝わったのでしょう??日本古来の植物ではなさそうですが・・・?


【解答】
そもそもハボタンは江戸時代前期にオランダから日本に渡来し、栽培されていたようです。しかし、食用として広まることはなく、園芸が盛んだったこの時期に観賞用として改良が進み、ハボタンが生まれました。
また、ハボタンはもともとケールの品種のようですから、実際に渡来したのはキャベツではなくケールのようです・・・う~ん、食用として広まらなかったのもケールならなんとなくわかりますね。
ちなみに、キャベツは江戸時代後期の1850年代に日本に伝わったようですが、やはり食用としてはあまり広まらず、大正から昭和かけて食の西洋化と同時に広まっていったようです。

それでは次に第4問です。ジャジャン!
和歌山県のJA紀の里でハボタン栽培を始めたきっかけは何でしょう。


チチチチチチチチチチチチチ・・・・watch.jpg
「(ーヘー;)え~と、え~~~~~・・・

って、いやいや、ここからはウンチク探検隊のお仕事ですね。失礼いたしました。

というわけでJA紀の里のハボタン栽培にまつわるストーリーを取材してまいりました。

紀の里がハボタン栽培を始めたのは、フルーツ王国fruit09.jpgである紀の里(当時の那賀町農協)で農閑期を利用した花栽培に着手しようとしたのがきっかけでした。

農閑期を利用した花栽培ですから、あまりコストはかけられない。
とすると施設なしで収穫できるハボタンがいいのではないかと試作を始めた生産者がいらして、その単価が結構よかったheart1.png うほッv(≧∇≦)v


そこで、産地として組織力を生かして出荷していこうじゃないかということで、みんなで作るようになりました。その場所が今の紀の川市にあった旧「那賀(なが)」という地域です。四国にも那賀という所がありますが、こちらは和歌山の那賀です。

ここでハボタンの産地が確立され、紀の里の中心産地になっているので、箱には「那賀の葉ボタン」と書いてあります。そして、そのブランド名も「那賀の葉ボタン」なのです。

現在のハボタン生産の師匠はこちらの木村勝己さん(JA紀の里那賀支所 葉ボタン部会顧問)です。
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それまでハッサクやみかんなどの柑橘類を作っていましたが、産地を作るために“ハボタンを作って♪”と依頼され、“お小遣い欲しさに”(←正直ですね!)ハボタン栽培を始めたという木村さん。

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「最初はカミさんなんて見向きもしなくってよぉ、うら(私)一人でやっていたんだよ。でも今は地道な努力が実り、産地も確立されたしよかったよ」


生産品目にハボタンを導入するときは抵抗感もあったのでは?何せ果樹生産から花、しかもハボタンなんて、ちょっと接点が見当たりません。

「そやな、それはあったけど、先輩に教えてもらって、失敗を重ねて試行錯誤しながらやってきたんよ」

圃場を見渡すと・・・

おっとこれは、思ったより密植(苗と苗の間隔を空けずに植えること)されているのですね。
それには何か理由があるのですか?
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「そうそう、あるでぇ~。
密植したらギュウギュウな中で育つやろ。芯があまり大きくならずに、小さくてコンパクトなものができるんよ。」
と教えてくださったのは、JA紀の里那賀支所葉ボタン部会の部会長の杏西(あんにし)徳昭さん。

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なるほど、でもどうして小さいものを作っていらっしゃるのですか?
一般の人からすると、大きいものの方が単価が良いのではないかと思ってしまいますが・・・?
「お客様のリクエストやわ。アレンジとかに使うから小売店さんとしては小さい方がええんよ。
直径は10cmから14cmからをメインに作っとる。13cmがベストやな。」
8cmだったらミニとして出荷するんよ。」

ご覧の通り、今の段階で殆どは10-11cmに仕上がっています。
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「7月下旬から8月にかけて種を撒くんやけど、その時に6cm四方に一つの種を撒くんよ。そしたらちょうど大きくなったときに頭が大きすぎないええ子ができるわ。11月までにこの大きさになるんや」

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ぬぬッ!!(゚_。)? (゚_。)?
この風車は一体何でしょう!?
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ハボタンの栽培にも風向きが関係しているのでしょうか、それとも夏の暑い時に種撒きをするから、作業中に少しでも暑さが緩和できるよう設置するのか・・・むむむムムムxxx


「それは“モグラ撃退用”風車だよ」
とおっしゃったのは和歌山の高倉健こと、JA紀の里代表理事組合長の厚地諭(あつちさとる)さん。
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なんと!∑(゜◇゜;) モ、モグラ撃退装置ですか!?
でも、風車を回してどうしてモグラを退治できるのですか?「(゚ペ)??


「風に吹かれて回る風車の足元がカタタカタいうとるやろ。」
・・・・ほんまや。 カタカタカタカタッ
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「その音が地中に響いて、モグラが寄らなくなるんよ。」
なるほど!そういうことですね。
土壌内に劇薬を使わずにモグラバイバイ。すばらしい。mogurabyebye.jpg


「ところで、紀の里の皆さんはハボタンを食べたことありますか?」
・・・あるわけないか、あれへんよな~(独り言)


「あるでぇ~。キャベツが高騰したときにな。しかも生(なま)で。」


ええええぇぇぇ!∑( ̄Д ̄;)なぬぅっ!!あ、あるんですか???

え?誰?誰、誰?キョロ (((゜◇゜; )(;゜◇゜))) キョロ  
どなたですか~、今「ある」って言ったの??


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ハボタンを召し上がったご経験があるとおっしゃるのはJA紀の里の田村升さん。
ハボタン部会の事務局をご担当されています。

しかも“キャベツが高騰したとき”てそれ・・・そんなときに召し上がってしまうんですか?
キャベツの代わり???


「でもな~、苦いし、硬いわ!」


そうですよね~。ヾ(~∇~;) アラアラ
あの姿でおいしかったらとっくに食用です。
もしかしたら、おせち料理とかに入っていたかも??


ハボタンは観賞用です。
ですから、皆さんは絶対に食べないでください。


ハボタンは夏の暑い時に種を撒いて、虫が多い時に育ちますので、虫が大敵です。
ハボタンの芯は柔らかく、虫ちゃんの大好物。
しかし、芯を食べられた瞬間に、そのハボタンは商品にならなくなるわけです。
P1000200.jpgハボタンの栽培とはまさに生産者さんと虫ちゃんの一進一退の攻防線、種を撒いた瞬間から出荷まで激戦の日々なのです。

yudoto.jpg←虫対策の誘導灯です。


ざっと圃場を拝見したところ、虫喰いはなさそうですが・・・・あ、ありました!
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あえてお願いして見つけてもらいました。どうもすみません。


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そうそう、こうやって虫に食われてしまったら一気に商品価値を失ってしまうわけです。
そのために生産の段階で秘密の魔法をかけていますので、試しでもハボタンを召し上がることのないようお願いします。

食べたあなたまで魔法にかかっちゃうかも!?(*゚ー゚*)
ハボタンの試食はハボタンの生産者さんにお任せしましょう!・・・ってちょっと違うか。

104s.pngハボタン生産の大変なことは何ですか?


「そうやな~、雨が少ない時の水やりと葉かきやな」

水が切れると十分に丈が伸びず、出荷できなくなってしまいます。今年の夏は特に暑かったので、水を切らさないようたくさん水を遣って丈を伸ばしました。
そして、丈が充分に伸びて茎も目標の太さになったら下葉を取り除きます(葉かき)。

DSC03424.jpg出荷の際は上から15cmくらい(葉4-5段)で出荷します。


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この葉かきも一つ一つ手作業ですし、中の方に生えている葉ボタンは奥の方まで手を伸ばして葉をかく必要があるので、これまた大変な作業です。もしこの作業を怠り、葉が密集しすぎてしますと、今度は病気にかかりやすくなってしまうのです。
間伐と同じ考えでしょうか、本来の葉が太陽の日を浴びて元気に育っていくためには、密植しながらもある程度の風の通り道と太陽光を確保していあげないといけないのです。

104s.png反対にハボタン栽培の魅力は何ですか?

「そらぁ、きれいやろぉ~。これはもうきれいやわ。ものすごく美しいでなぁ」
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「こんだけ美しかったら、これを触りながら喧嘩する必要あれへんわ。イライラせーへんし、カミさんと仕事していても、怒る必要ないわ」
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なるほど、ハボタン栽培は夫婦円満heartdouble.jpgの秘訣なのですね!(゚▽゚)(。_。)(゚▽゚)(。_。)ウンウン


「ま、美しいのもあるし、忙しゅうて喧嘩しているヒマなんかあれへん」

あッ、あら、そういうことですか(;´▽`A``


104s.png紀の里のハボタンは需要に合わせて良く導入品種等が変わると伺いました。

「毎年出荷が終わると、全ての取引市場の担当者にアンケートをするんよ。
そうすると担当者が仲卸さんからもヒアリングしてくれて、自分の意見も含め良かったことと改善点などを忌憚なく書いてくれるんよ。全国のおよそ30社からの意見が集まるやろ。結構な反省材料やで、これ。」

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これらのアンケート結果に基づき、3月の反省会で次の出荷の方針を決めるのです。

A市場はもっと赤が欲しいという、B市場は節間がもう少し詰まっていて巻きが多いものが欲しいという・・・そこでもっと葉の詰まった赤い品種を入れてはどうかと2010年に導入したのが「初紅」。本年デビューです。
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「消費者がいらんもん作っても仕方ないやろ。だから消費者やマーケットの声を聞く」
なるほど、これぞ紀の里の鉄則ですね。

104s.png皆さんにとってハボタンとは??

「生活の一部やな~。辞めようったって、辞められへん」

「安定しとるしな、生活そのものやな」

「着火剤やな!」
ちゃッ、着火剤??w|;゚ロ゚|w??fire.jpg


「そうや、紀の里の生産物でハボタンほど右肩上がりのものはないで。ハボタンの時期になるとみんな一気に熱くなって、急に必死になるんよ。ハボタンは短期勝負やからね」
なるほど、短期集中型の商品なのですね。
しかも、紀の里の農産物の中でも販売成績の成長率ナンバーワンのハボタンは、生産者さんのモチベーションを高いところで維持しているのです。
紀の里のハボタン生産者さんは、裏作に留まらないハボタン栽培への意欲を燃やします。

今年の出荷は12月15日から25日の10日間に集中やで。この間に140万本を収穫、出荷するんよ。

そらもう、ハボタン以外のことは何も考えず、寝食も忘れ出荷に没頭するんよ」
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オォォーーー!! w(゚ロ゚;w(゚ロ゚)w;゚ロ゚)w オォォーーー!!
140万本てちょっと想像できませんが、1日何ケースくらい出荷されるんですか?

「そやな、1日3,000ケース以上を全国に出荷すんねん。そらもう夜もヘルメットにライトを付けて収穫したりもする。そやないと間に合えへん」
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この短期間集中の出荷の際、農協の方は1箱1箱全て検品します。

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「え~!?ホントに全て検品するんですか?全てやっているふりして、100箱に1箱だったりするんじゃないですかぁ?」(←疑いの目)

「いえ、全部やります」

あ、これはどうも大変失礼いたしましたm(_ _;)m
抜き打ちでいくつか行うのではなく、1日およそ3,000ケース全て検品するのです。


検品のポイントは?
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① 色のノリ、発色の良さ

今年はどうですか?

今年は秋がなかったでしょ。急に寒くなったし発色はいいねぇ。
白のハボタン(晴姿など)は最低気温13度が1か月続くとスイッチが入って色が載るんだよ。
初紅などの赤い品種は最低気温15度が2週間続くとスイッチがONになる。
今年は10月が寒かったからよかったよ。でも11月に気温が高い日が続くと“色戻り”をしてしまうこともあるんだよ。
今年は大丈夫。良く着色したハボタンはバラみたいだよ。
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ほんと、確かにこうしてみると、バラのようです。
日々ハボタンと向かい合っている人が「バラみたい」とおっしゃるということは、「葉牡丹」という名前ではなく「葉薔薇」の方がよかったのでは?と思いつつ・・・いやいや、やはり「葉薔薇」では情緒に欠けるし、「葉牡丹」がいいですね。


② 軸の太さ
太すぎても細すぎてもダメ。
直径が15mm程度がバランスがとれていて美しいのです。ミニなら10mm以下。


③ 虫食いの有無

もちろん虫食いは那賀のハボタンとして規格外!言語道断です!


④ 大きさが揃っているか


⑤ 巻きは十分か


これらをチェックします。

そのあとは出荷に向けた最終作業に入ります。


ハボタンにとって乾燥は虫と並んで大敵です!
出荷の際は箱詰めした後必ず水を打ち新聞紙を被せて保湿します。

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生産者の杏西さんはハボタンだけでなく桃も生産出荷しています。
「桃を出荷する癖で、ハボタンもつい丁寧に扱ってしまうな。桃はハボタンとは比較にならないほど傷つきやすいから、ハボタンはそこまでやらんくてもいいのかもしらんけど・・・」


いえいえ、杏西さん、ぜひぜひ丁寧にお願いします。美しいハボタンは出荷者の皆さんのお嬢様か奥様かといったところでしょうから。その丁寧さはきっとご利用になるお花屋さんや消費者の皆さんに伝わりますよ( ^―゜)b


JA紀の里の葉ボタンは、本年一切台風に遭わなかった縁起の良い商品です。

花言葉は「祝福」「利益」。
そして、紀の里のハボタンは露地栽培された健康で丈夫な優良品。丈夫ですからロング・ローング・ライフ(Long Life=長持ち、永生き)です。まさに縁起物で、新しい1年を迎えるにあたりふさわしいアイテムですね。


106d.pngJA紀の里 葉ボタン部会の格言

・  ハボタンの生産は虫と乾燥との戦い。夏の暑い時に播種、栽培する品目だからこそ、葉かきもまめに行い、よく面倒を見てあげるべし。

・  検品は全ケース入念にすべし。

・  短期集中決戦に備え、体力を温存すべし。

・  出荷後はマーケットの声を聞くべし。毎年反省に基づき出荷品種もマイナーチェンジ。出荷形態も改善に次ぐ改善。一歩一歩前進すべし!

・  ハボタンは美しい。これほど美しいものを作っていたら、夫婦喧嘩にはなりません!


106d.png消費者の皆様へひとこと

・ ハボタンはお正月のお飾りだけでなく、花保ちもするので仏花にも使っていただけます。お値段も手頃なので、一度お試しください。

・ 今年の発色はベストです。それは夏から今までの気候が良かったからです。まずは今年の那賀のハボタンを使ってみてください。

・ 3年後はハボタンで売上1億円を目指します。(おっと、宣言しましたよ!これは期待できます)


DSC07730.jpgそれからウン探の取材班がおじゃまするということで、なんと取材当日に駆けつけてくださいました紀ノ川市の理事兼農林商工部長の田中卓二さんから消費者の皆さまへひとこと。

「JA紀の里は周年果物を出荷するフルーツ王国です。ウメに始まり、モモ、キウイ、イチジク、ブドウ、ナシ、カキ、ミカン、ハッサク、リンゴなどなど、パイナップルとバナナ以外は何でもできると自負しています。ぜひ紀の里のフルーツをお試しください」
田中さんは現在農林水産省から紀の川市へご出向されています。

JA紀の里の方が全員集まってハイ、ポーズ!
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お・ま・け↓↓↓

104s.pngこちらはJA紀の里が作った日本最大級のファーマーズマーケットです。

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おっとこれは珍しい、普通は居酒屋さんなどの飲食店に付いている緑提灯。もちろん★5つ!
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平成12年12月3日にオープンした「めっけもん広場」は、本年ちょうど10年目を迎えます。(祝!)
JA紀の里の先々代組合長が取り組まれ実現したプロジェクトですが、初年度売り上げ目標5億だったところ、実際には14億と軽く3倍近くの実績を打ち出し、翌年には早くも20億円を達成してしまったのだとか。現在は設立当初から拡張を重ね、26-27億の売上で推移しているとのこと。

さすが和歌山、ミカンが所狭しと並べられています。
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こちらは花売り場。
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その売上の秘密は随所に見られます。一般的に言われる“ご高齢の農家の方はパソコンに弱い”という課題を簡単なバーコードやタッチパネルを導入し、生産者さんがご自身でシールを発行し商品に貼付、ラクラクカンタンなシステムを構築しました。
こうして人件費を削減していることも成功の秘訣の一つです。

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和歌山県内だけでなく近隣の県からもお客さまが多く、ライバルのスーパーマーケットの存在を心配してしまうほどの盛況ぶりです。

JA紀の里のめっけもん広場は、広く一般に農の素晴らしさを知っていただくためのお店なのです。
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104s.png貴志駅のたま駅長
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和歌山電鉄貴志駅の駅長さんをご存知でしょうか?
こちらが日本で最も有名は駅長さんのお1人(・・・うんにゃ~・・・一匹?)でいらっしゃるたま駅長でございます。
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業務は部下に任せて、駅長様はご休憩の様子でしたが、なんとも色気のあるお背中を撮影させていただきました。

あ、ちょっと起きた!
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あ~、また寝ちゃったよ・・・(-.-)
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たま駅長は元祖動物駅長さんで、もともとは駅の売店の飼い猫さんだったのに、駅長さんにまで昇進され、大きな躍進を遂げられました。

和歌山県に行ったときには、是非こちらの名物たま駅長にも会いに行ってみてくださいませ。illust1112_thumb.gif

↓貴志駅は駅舎全体もネコちゃんのデザイン。すごい懲りようです。
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和歌山電鉄HP 

ウン探をご愛読いただいている皆様、いつもありがとうございます(*^-^*)
次回は和歌山産地シリーズ後編です。どうぞおたのしみに!


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<写真・文責:ikuko naito@花研>

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