2015年1月15日
vol.108【番外編】病院への生花持ち込みについて◇後編◇青山フラワーマーケット鴨川・亀田メディカルセンター店
前編の亀田総合病院の亀田信介院長へのインタビューに引き続き、青山フラワーマーケットさんにお邪魔いたしました。
鴨川・亀田メディカルセンター店です。
一見、市中の青フラさんと全く変わらないように見えますσ(゚・゚*)ウム・・・
香りのブーケも置いてあるし、
ふむふむ、置いてあるものも同じに見えます。
鉢植え商品までクリスマスとお正月と季節商材をきちんと揃えています。
ハサミやその他小物なども置いてあり、通常の駅前店と変わらないように思います。
おっと、売り場内のPOPで発見!こちらの横顔は榎本バラ園さま(千葉県君津市)ではありませんか!
榎本バラ園さまの特設コーナーがありました。
う~ん、でも何か大きく違うところはるのかな~(゚ペ)?
ショップマネージャーの小川ふみ江さんに直撃インタビュー!
・・・ですが、大変控えめな方なので、写真は接客中の後姿のみにて(*´ェ`*)テヘ
「基本的にはほとんど同じです。特に今はクリスマスシーズンなので、赤い花やクリスマス商品が多めです。キク類は少ないかもしれませんが、お正月、お盆やお彼岸のシーズンになれば、もちろんキクも販売しますよ。
そのほか、市中の店舗ではお持ち帰り用に花を保水ゼリーに入れてお包みしていますが、こちらでは花瓶にそのまま挿してお部屋に持って行かれる方も多いので、そのようなご要望に対応した提案をしています。」
確かに"花瓶に入れてそのまま持っていきまーす"というようなニーズが多いのは想像できますね。
「その際には必ず切り花栄養剤を使います。ウチでは、花瓶の水にもカゴに入ったアレンジメントに使う水にも全てに切り花栄養剤を入れているのです。」(もちろんこれは他店舗でも同様です)
"切り花栄養剤"とは、抗菌剤と花が長持ちする栄養とが入った切り花専用のフラワーフードです。これが入っていれば毎日水を取り換えなくても、花を長く楽しむことができ、且つ花自体も大きく開花するのです。病院内で花を楽しむには本当にちょうどいいですね!(ご自宅でもこれを使うのがスタンダードですが)
青山フラワーマーケットさんでは、適切に希釈した水を事前に作っておきます。
「それから人気は明るい色ですね。赤や濃いピンク、それにオレンジや黄色などのビタミンカラーも人気です。」
と小川さん。やはり元気が出る色じゃなくちゃ!
お客様は、お見舞いにいらした方ばかりではありません。入院されている方がご自分用に車椅子で買いにいらしたり、地元の方がご自宅用にご購入されたりもします。
ですから、ほらこの通り!土まで販売しているんですよ。
病院から何か言われていることやお客様が何か気にするようなことはあるのでしょうか。
「病院から特に厳しく言われていることはありません。お客様もお見舞いの生花について、あまり細かいことを気にされている様子はありません」
ま、確かにそりゃそーか。病院が禁止していないのだから、お見舞いする方も好きな花を自由に買って行かれますよね。
「香りを楽しみたい人もいるので香りのブーケも用意します。今でしたらバラのほかにヒヤシンスやスイートピーなど」
亀田院長がおっしゃっていた"厳密に無菌コントロールする"ために、生花持ち込みを控える必要のある病棟に関しては、このようにレジ横のボードで案内しています。
ウン探が拝見したところ、他の駅前店と異なる点はこのポイントくらいです。
このように青山フラワーマーケットさんが院内に出店したのも、亀田院長の熱い思いがあるからこそ。
「都会の人たちと同じセンスで、鴨川にいても同じような生活を楽しんでほしい。
花は芸術。病院の生花店には豊かな感性で提案してほしい」
と、青山フラワーマーケットを運営されるパークコーポレーションの井上社長に会うため、亀田院長自ら足を運びました。
それまで「都市部の駅中・駅前にしか出店しない」と銘打っていた井上社長も、亀田院長のコンセプトにたちまち共感。あっという間に意気投合し、亀田クリニックさんでの出店が決まったといいます。
そして、この店舗あり。亀田クリニックさんの1階にあります。
外来の受付フロアですが、お店の周りも決して病院独特の堅苦しさや直線的な冷たさがありません。
アタクシ自身の経験から、どこの病院に行っても多少緊張するものですが、こちらは天井にお魚ちゃんが泳いでいたりと、海の街鴨川らしさがあり、明るく、柔らかく、温かい雰囲気に包まれています。
亀田メディカルセンターさんには、ローソンもタリーズ・コーヒーも、都心の美容室もネイルサロンもパン屋さんもあり、更には画竜点睛的に青山フラワーマーケットさんが入店され、都心と変わらないような生活ができるひとつの街(と言っても過言ではない!)が院内に創生されているのでした。
おまけ◇ギフトマーケットについて考える◇
2012年、病院のお見舞い品ギフトマーケットは2,300億円(前年比ダウン↓)。これは花だけではなくあらゆるギフトを合わせたマーケットサイズです。
快気祝いの花ギフトマーケット1,800億円、バレンタインデー1,150億円より大きいマーケットです。(出典:『月刊パーソナルギフト』ビジネスガイド社)
と考えると、病院でもう少しお見舞いの生花を容認してもらえるような動きが出れば、花ギフトのマーケットも伸びしろがあるというものです。しかし、それでも尚、花き流通に携わる私たちは病院に従事されるみなさま、患者さまやその周りのみなさまのお考えや立場に立脚し、利便を図った商品をご提案する必要があります。ユーザー目線に立つからこそ、マーケットのシェアを伸ばしていけるものでしょう。
◇編集後記◇その①
亀田総合病院さんを訪問し、ホスピタルの語源をしみじみと思ってしましました。患者さまやその周りの方への温かいホスピタリティを提供される本当のホスピタル。取材でお邪魔させていただきたい旨をお伝えすれば、先回りをして有難いご提案をしてくださる広報の松元さん。これもホスピタリティ。
このホスピタリティという言葉もホスピタルも、ついでに言えばホスピス、ホステル、ホテルもすべてラテン語のhospes(「お客様」の意味)に由来しています。ホスピタルとはもともとお客様をもてなすところ、宿泊所という意味でしたが、そこで旅の傷や心を癒す行為が生まれ16世紀ころから「病院」という意味で使われるようになりました。亀田総合病院さんは限りなく高級ホテルのようなおもてなし(hosipitality)を施す最高のホスピタルであると痛感しました。
「ただ、ホテルはお金を払えば相応のサービスが受けられるもの。米国の医療がそのようになっています。しかし、日本は国民皆保険ですので、当院ではすべての人に平等に満足していただける究極のパーソナルサービスを提供しています」という松元さん。
その大きな視点に立てば、生花持ち込み是非の議論は本当に小さなことにように思えてきました・・・。
そしてみなさま、この度の番外編の記事を前編からご覧になってお気づきになったでしょうか。
亀田総合病院の皆様は(恐らくグループの皆様全員だと思いますが)、患者「さま」とお呼びになるのです。いかに患者さまを大切にして、たとえ一瞬だとしても亀田総合病院さんで過ごされるひと時を楽しんでいただこうという思いが、その一言に詰まっているように思います。その姿勢にただただ頭が下がります。
産業規模も業種も全く異なりますが、社会に貢献すべく仕事に従事する者として、ウン探は今回の取材で大変意義深い勉強をさせていただくことができました。
◇これで終わりかと思いきや、しつこくてすみません的編集後記◇その②
亀田総合病院さんでは、インターンシップというのでしょうか、研修医の受け入れをしていて、全国から先生たちが研修に来ては元の病院に帰られるそうです。
「ここは学校でもあるんですよ。うちに在籍していた先生も、研修していた先生もみんな亀田フェローだよ」と亀田院長がおっしゃっていました。全国でも現役でご活躍されている先生は亀田フェローの方も多く、例えば今上天皇の心臓手術の執刀医も、亀田総合病院で心臓外科を学ばれた方なのだとか。
このように亀田スピリットが全国に浸透すれば、徐々にでも院内に生花禁止の風潮も緩和されるのではないでしょうか・・・と将来に期待しています♪
これで本当におしまい。長い間お付き合いいただき、ありがとうございました。
<写真・文責>:ikuko naito@花研
2015年1月 8日
vol.108【番外編】病院への生花持ち込みについて◇前編◇亀田総合病院
みなさま、新年あけましておめでとうございます!
今年もウン探をよろしくお願いいたします。
さて、2015年の記念すべきウン探第1回!なんとも気持ちのいい快晴の日に太平洋を臨む海岸線にやってきました~!
ここは人口約34,000人、東京からおよそ2時間の千葉県鴨川市。
鴨川の花の生産者さんといえば・・・!?c(゚.゚*)エートー
ッといきたいところですが、今日はウンチク初の番外編。
ぬぁんと「あの!」亀田総合病院さんに来てしまいました!v(≧∇≦)v
というのも、なぜか最近メディアがこぞって病院のお見舞いで生花はよろしくないモードの情報を流している!!!∑(゚ロ゚!(゚ペ?)???ナンデ、ナンデ?
でも生花禁止って何か根拠があってのことなのだろうか・・・一方で生花OK、まったく問題なし!というところもあるし、この差はなんでしょう??(・_・*)?
花き業界としてもきちんと勉強しなくては!と思いまして、日本が誇る最高峰医療施設、亀田総合病院さんにやってきたわけです。亀田総合病院さんでは、お見舞いの生花を快く受け入れていらっしゃいますし、生花持ち込み禁止どころか併設される外来施設の亀田クリニックさんの中に生花店を設置するほど!これはいろいろお考えを伺う甲斐がありそうです♪
どなたにお話を伺えるのかと思いきや、なんとご登場されたのは院長の亀田信介先生!!
w(゚ー゚;)wワオッ!!
ドキンチョー。その場でフリーズしてしまったウン探【・・;】
ところが!院長先生のとてもお優しそうな表情と、フランクなお声掛けにいくらか緊張が解け、取材を敢行することができました(´▽`) ホッ。ありがとうございます!
みなさま、ここで亀田院長と亀田総合病院さんについて予習いたしましょう。
亀田院長の亀田家は、1644年(・・・といえば、英国では清教徒革命の時代であり、中国では清の支配下になり、日本では江戸の寛永年間!徳川第3代将軍家光さまの時代。ナンカわかんないけど、スンゴイ昔)から370年にわたり、この地で医療を営んでいらっしゃるお医者様の家系なのです。
現在の亀田院長はその11代目(驚)!ホンモノな感じ~((◎д◎*)) というかホンモノです。
外来診療から入院治療、在宅医療まで地域の基幹病院として機能しています。
また同じ鴨川に、関連法人が運営する亀田医療大学や亀田医療技術専門学校などの看護師養成施設や、亀田院長が理事長を務める社会福祉法人「たいよう」、障害者支援施設「しあわせの里」などもあり、鴨川を中心に医療・介護福祉・教育の3つを柱とした事業を展開しています。雇用も促進され、人口流出にも歯止めがかかります。まるで一つの街の創生にも貢献しているかのようです。その功績が評価され、2013年「ふるさと企業大賞(総務大臣賞)」を受賞されています。
以上、ほんのさわりにすぎませんが概要がわかったところで、院長にインタビューしてみましょう。
(・∀・*)ノGO━━━ッ!!!!
【ウン探】病院によっては、お見舞いの生花を禁止するところもある中、亀田総合病院さんではお見舞いの生花を禁止せず、また生花店を設置するほどですが、それはどのようなお考えに基づくものなのでしょうか。
【亀田院長】
それにはむしろ、なぜ生花OKかというよりも生花を全面禁止していることに対して「禁止することに合理性を持ってやっていますか」と伺ってみたいですね。
院内で生花が良くないという明確なエビデンス(確証)もないのに、患者さまの心の安らぎを奪うべく、本当に生花を一律ダメと言っていいのでしょうか。全か無かで生花を拒絶するのは未熟な議論のような気がします。
確かに、きちんとした感染管理・リスク管理と医療サービスというのは相反するところがありますが、このバランスを取り、医療機関としてのコンセプトを持つことが重要です。どこまでを許可し、そのためには病院として何をするべきか。「医療とはどういうものか」という原点を思えば、一律禁止とはならないでしょう。
【ウン探】生花持ち込みを全面禁止している病院はなぜそこまでナーバスになるのでしょうか。
【亀田院長】
感染管理の面から禁止しているのだと思いますが、感染管理というものは世界標準からいっても時間とともに考え方が全く変わってきています。病院ごとに取り決め、禁止しているのだと思いますが、それがエビデンスに基づいた判断なのかと疑問に思います。
例えば、30年くらい前、病院でICU(集中治療室)を作るとき多くのことを禁じました。しかし、エビデンスもなく禁止していることが多く、米国では意味なく禁止していることは2-3年で止めたんです。一方、日本は一度作った制度は止められなくて10-20年と続きました。いくらなんでも、かえって禁止する方がマイナスということもでてきて、米国で2-3年で止めたことを日本では10年以上たってやっと止めたりしたこともあるんですよ。
ウン探さんね、今はICUに土足で入っていいのですよ!
【ウン探】(゚ロ゚;)エェッ!? ド、土足でICUに??(そういえば、つい数年前は某病院でスリッパに履き替えて入らせていただいたような・・・)
【亀田院長】
そう、土足でも何の問題もないということになっている時代。一般の方はびっくりするかもしれないけれど、一番大事なのは手を洗うこととマスクをすること。それから空気感染するもの、接触感染するものに対してそれぞれに国際的に対処法が決まっているんです。
今のスタンダードでも、恐らくやりすぎなどで今後変わっていくでしょう。現時点である一定のコンセンサスがとれたインターナショナル・スタンダードというものがある。当院は最新のインターナショナル・スタンダードに則った感染管理を行っていて、日本でも恐らくベストプラクティスの病院。つまり感染管理には最も厳しい病院のひとつでしょう。
【ウン探】そのベストプラクティスの病院が生花を禁止していないところに意味がありますね。
【亀田院長】
じゃあなぜと言ったら"医療とは何ですか"というところが原点ですよ。病院がどうやって医療をするかというと、病院でも治せる病気と治せないものがあるけど、当然治せるものはうまく治さなくてはいけない。病院にいるその間の生活そのものだって、ある人にとっては大事な時間を過ごすことになるかもしれない。そういうところで"あなたは病気なんだから、おとなしくしていなさい"と厳しく制限することばかりが良い医療でしょうか。
患者さまの中にはお酒を飲むのは良くないという人もいますが、一方で入院中でもお酒を飲んでいい方はたくさんいる。何食べても何をやっても問題ないという方もいるでしょう。ただ自分が病気というだけで、元気がなくなりますよね。例えばガンと聞いただけでショックを受けますし。体の一部を切り取られた人はさらにがっかりする。そういう方々にあれはやっちゃいけない、これはやっちゃいけないとは言えません。
だから当院は(院内に)コンビニエンスストアのローソンもあれば、
タリーズ・コーヒーもあるし、
←おいしいと好評のパン屋さんミコミコ
レディースフロアにアロママッサージからネイルサロン、ビューティサロンも、ウィッグ(医療用かつら;化学療法で脱毛してしまった人に対応するもの)、パーマもフェイシャルまでぜーんぶやれるところが病院の中で揃っている。医療とは究極のパーソナルサービスなのです。
←院内にあるビューティサロンの看板
そう、亀田総合病院さんは院内での飲酒を許可している病院としても有名です。(もちろん治療上許可されていない方は別です。)
【ウン探】亀田総合病院さんの中で、生花持ち込みが禁止されているのはどのようなケースでしょうか。
【亀田院長】
それは徹底した感染コントロールが必要な場合。例えば、
・骨髄移植に関係した方
・化学療法をやっている方
・ものすごく感染しやすい状態の方
・真菌症の方
・・・など。真菌症の方だって、生花がどうというよりは自宅や病院が汚いということの方がよっぽど問題。
このような方たちにはフロア全体で完璧な無菌コントロールをしています。
必要に応じてNASA(アメリカ航空宇宙局)で開発されたヘパフィルター(高性能フィルター)を使い、外気も入らないように完全遮断します。半導体工場のように全てにヘパフィルターが付いたフロアになっているんです。そういうところで生花を禁止するのであれば意味があります。
でもそうでない方は、病室に花があろうがなかろうが関係ないんです。普通にテーブルを指で撫でても菌はありますよ。お見舞いだって、外を歩いた人がそのまま来ているわけでしょ。それで生花の持ち込みはいけませんというのは、やることと言うことに矛盾があるんですよ。生花を禁止するなら、窓を開けさせないのですか?その必要がない人まで、病院中、全員監禁して治療を行うのですかと問いたくなります。
【ウン探】芳香のある花なども問題ありませんか?
【亀田院長】
問題ありませんよぉ(笑)。
だって花の自然な香りが好きで、それによって癒される方、元気が出る方もいらっしゃるわけでしょ。名古屋から定期的に治療でいらっしゃる方で、ご自分が病室に到着する前に大好きなカサブランカを置いておくように注文しておいて、遠路からの治療にも耐えられるよう、ご自分を勇気付けていらっしゃる方もいますよ。カサブランカの香りが好きだからと。
【ウン探】病院内には観葉植物も置いてありましたね。
←造花ちゃうでー。本物の観葉植物です!
【亀田院長】
観葉植物などで土のリスクが高いといわれるケースは、強い抗ガン剤で治療を始めた人くらいです。
観葉植物を置くのにどのようなケースが適していないかなども含め、受付のコンシェルジュがきちんと勉強して、患者さまやその周りの方にアドバイスできるようになっています。
・・・とその時!
おっと、部屋のドアがおもむろに開き、ドアの向こうから白い手袋をした手が声なく振られている。
あれッ??゚◇゚)?
"Merry Christmas!"
と言いながら突然登場したのは、なんとサンタクロース!しかも結構ホンモノ!北欧からのサンタさんのようです。
そう、取材したその日はクリスマス。院内にも大きくて立派なクリスマスツリーが装飾されていました。
WOW!わお~ッ*゚▽゚)ノノ*゚▽゚)ノノ!!なんということでしょう☆☆☆
今日はクリスマスなので、このように外来や病棟を回ってみなさんを楽しませていらっしゃるとのこと。もうずいぶん前から亀田総合病院さんには季節のお楽しみでサンタさんが登場するそうです。
聞いてみれば、このサンタさんは米国出身で、病院管理学(MHA)の専門家である特命副院長ジョン・C・ウォーカー氏。海外の病院事情にも詳しいので、亀田院長から米国の病院における生花取扱いについて聞いてくださいました。
【亀田院長】
今、サンタの彼に聞いてみたけど、生花から菌が感染するのはノーエビデンス(根拠のないこと)で、米国でも院内の特別な区域以外は禁止していないそうです。
つまりね、生花でもなんでもall or nothingじゃないんですよ。何より感染管理をきちんとするということが重要。「管理」というのは全部一律にすることではありません。全部一緒にやろうと思ったら全員檻の中に入ってもらう以外方法はないんです(笑)
この人は感染しやすい、あるいは医療スタッフが感染する可能性がある場合には手当てをする際にきちんと対処するとか。だけど全員にそうするわけではない。例えば最低限1回患者さまに触ったら手を洗うという、「スタンダードを実施すること」と「リスクに合わせて執り行うこと」が感染管理なんです。
この感染管理とリスク管理の中で、医療というのはどこまで行っても究極のサービスであり、究極のサービスとはつまりパーソナルサービスなんですよ。
【ウン探】パーソナルサービス??「(・_・*)
【亀田院長】
そう。人それぞれに適した対応をするということ。
病気と診断され気持ちも落ち込んでいるときに、あれはダメこれはダメなんて禁止していたら、良くなりませんよね。当院はパーソナルサービスを提供するために、ペットさえも連れてこられるようにペットラウンジを作ったんですよ。その名も「ONE」(ワン)!
【ウン探】なるほど、犬だけにONEとはうまいネーミングですね!d(゚ー゚*)
【亀田院長】
家族同様にペットと暮らしていらっしゃる方も多いでしょう。しかし、病院内ではペットの感染コントロールができないので、院内の敷地にペット預かりショップを作ったんです。何が良いとか悪いとか単純な話ではない。
例えば、手術をしても食事制限のない人や、体の一部を仕方なく切り取ったとしても、心さえ回復すれば体は十分健康な人はたくさんいる。そういう人たちに心を元気にしてもらわないといけません。女性だったら少しでもきれいになれるようエステに行くとか、脱毛をカバーするためにフィットしたウィッグ(医療用かつら)を用意するとか。ウィッグというのはちゃんとやらないとお帽子になってしまいますが、そのためにはフィッティングやカッティングをやって初めて自信を持って外に出られるようになる。そこまできちんと病院内でやって元気になって帰ってもらいましょうということが私たちの考えです。
ぬぁんと、みなさまご存知でしたでしょうか。
亀田総合病院さんには表参道ヒルズにある人気美容室のパ・ド・ドゥが入店していたり、
ネイルサロンも完備されていたり、
その人に最適なウィッグを作ってくれる場所があったりと、健康な人も健康まであと一歩という方も、美容を意識していつでも再び輝きを取り戻す準備ができるようになっているのです!
【院長】
何しろナンバーワンを目指すというのは結構大変なんですよ。わからないこともあるし。
でも、よくわかって易しいのはオンリーワンなの(笑)患者さまにも優しいでしょ。
だからウチは患者さまのためにスタッフから提案されたことは、できるだけ取り入れるようにしているのです。
合言葉は"Always Say YES!"
患者さまの生活を思って提案されたことであれば、よほどのことがない限りダメとは言わない。ダメと言ったらそこで止まってしまうから。
【ウン探】なるほどそこに亀田総合病院さんの大きな成長の一つの理由があるように思えますね。
こちらがそのAlways Say YES!のバッジ。
院長先生はじめ、スタッフの皆様が胸に付けています。"ダメ"とか"できません"と、一刀両断に断らないことが社訓のようになっているのです。
【亀田院長】
そういう考えの中で、限られた病棟以外で生花を禁止する必要なんて全くありません・・・というのがひとつ。
それから、生花店や美容室を院内に設置したもう一つの理由は、従業員のより豊かな生活を願ってのことなんです。
亀田メディカルセンター(亀田総合病院を中心にした医療サービスの総称)はこの辺りでも最も若い女性がいるところ。看護師さんだけで1,000人いるわけですから。しかも、ものすごく大変な仕事を24時間交代勤務でやっているわけです。そういう若い女性たちに田舎だからこそ少しでも都会的な生活やゆとりを体験してほしいという願いから、そのようなお店に入ってもらっているんです。
【ウン探】亀田クリニックさんには生花店の青山フラワーマーケットさんが入店されていますが、そのコンセプトからでしょうか。
【亀田院長】
そうですよ。青フラさんは都会でも"Living With Flowers Everyday"というのがテーマになっていて、400円から700円くらいまでの日常用の花を誰でも気軽に買っていけるようにしたビジネスモデルがありますね。
ぜひ、当院にも出店してほしいと思ったのですが、都会の駅前などにしか出店しないとホームページに書いてあったんですよ。(当時)
"いやこれは断固として交渉してくる!"と言って(笑)、青山フラワーマーケットを展開する㈱パーク・コーポレーション社長の井上さんのところに会いに行ったんです。
【ウン探】院長自らですか?
【亀田院長】
そう。私、自分ですぐやっちゃう方だから。それで、意気投合して、30分で決めた(笑)。
井上さんもすぐに賛同してくださいました。基本的には当院の若い女性たちに、疲れたときなどにお部屋にちょっとお花を買って帰ろうと思ってもらえるようにと思っています。
そして今、亀田グループの全職員・・・今は4,000人以上いますが、男性も女性も含めてお誕生日には病院から全員に花をプレゼントしています。
【ウン探】ぬぁんと、亀田院長!゚+。感:.゚(O*p´∀`q*)゚.:動。+゚
なーんてお話しているうちに、ぬぁんと救急の患者さまを運んだドクターヘリが到着!chop-chop-chop-chop.....
そうです、亀田総合病院さんは救命救急センターにも指定されているのです。
テレビを通してみることはあっても、実際に病院のヘリポートやドクターヘリを目にするのは初めて☆
亀田総合病院さんのヘリポートは、海岸線付近のこのようなところにあるのです!
こちらは亀田総合病院広報企画室長の松元和子さん。先代の院長の時から30年にもわたり亀田総合病院を支える大きな柱のおひとりです。
【松元さん】
先代の院長の時からずっと言われていました。"田舎の病院であることを言い訳にするな"と。
その言葉を肝に銘じて、ヘリポートを作るなどソフトとハードを充実させてきました。そして、病院にいらした患者さまにはいかに快適に日常を感じていただくかを考えて成長を続けてきたのです。
【亀田医長】
医療というのはそういうものなんです。治せるものは治さないといけない。いわゆるコアビジネスサービスという治療のクオリティは絶対に手を抜いてはいけない。その意味では感染管理やリスク管理、あるいは手術、人員配置、一人一人の技術から何から教育が非常に大切。教育という点においても日本で最も有名な病院のひとつである理由は、そこに力を入れて一生懸命やってきたというのがひとつ。
一方では、パターナリスティック(制約的)にならないということが大事。治せるものは治さないといけないのですが、痛い・苦しい治療はご本人にとっても大変なことですね。だからどうやってできるだけ痛くない治療をするかを考える。そして、病院での生活をいかに楽しく送っていただくかお手伝いをするのが医療の役割でもあるんですよ。
だから病院に入ったからってお酒はダメ、花はダメだなんてひどい話で、病院側がきちんと管理をすればいいのです。もちろん肝炎を患っている方やアルコール依存の方にお酒飲んでいいよなんて言いません。でも飲んでもいい方もたくさんいる。食事も、制約のない患者さまは毎日14種類のメニューからタッチパネルで選ぶことができるのです。お部屋で買い物ができて、更にお部屋まで届けてくれるルームサービスもありますよ。
生花も、制約の必要のない方に持ち込みを禁止することはありません。患者さまのQOL(Quality of Life :生活の質)の向上を目指して取り組んでいるからこそ、当院からさまざまなご提案ができるのです。
そのほか、病院にいること自体患者さまにとっては非日常ですから、少しでも日常を感じて心の安らぎを得てもらえるよう、多くの病室はオーシャンビューですし、
庭に憩いのベンチを置いたり、
←まるでリゾート地のよう!
ナチュラルガーデンという無農薬の家庭菜園を作ったりしています。四季折々に花が咲き、実が成る植物などを育てています。
【松元さん】
色々な方に楽しんでいただけるよう、もちろん農薬などの薬類は一切使用していません。皆さまに生命を感じていただけるように。季節になればプチトマトなども収穫できるたりするんですよ。すると患者さまから、
「このトマト、食べてもいいのでしょうか」と聞かれるので、
「どうぞ、召し上がってください」とお答えするんですよ(笑)
うわーーー。
もうなんということでしょう。毎日部屋から海岸線を昇る朝日や夕日を見ながら、日々14種類のメニューからお食事が選べる上に、お庭のプチトマトも食べちゃっていいなんて!エステにも行ける~♪
むしろアタシャ病気になってココに住みたい(≧∇≦)!
(あ、いえいえ、みなさまは決して病気にはならないようご自愛ください。そして病気になっても、亀田総合病院さんに住めるわけではありません。くれぐれも)
【院長】
実際にアメリカや英国などヨーロッパなどのがんセンターに行ったら、ヒーリングガーデンの存在は非常にポピュラー。抗がん剤治療をしている人がヒーリングガーデンを散歩しているんですよ。ヒーリングガーデンは散歩してもOKで部屋の中の花は禁止だなんてナンセンスでしょう。ただ非常に強い治療をするときは別ですよ。無菌室に入りますので。だけど一般のところで、外にも出るな、ローソンにも行くな、窓も開けるな、ずーっとそこに寝ていろとなんて言われたとしたら、それが良い病院ですか?その挙句治りませんなんてことになったら大変でしょう(笑)
何がいいとか悪いとかではありません。きちんとした管理の下、常にインターナショナル・スタンダードに則り、世界の学界での情報を集めて、その範囲の中でいかに病院として患者さまのQOLに貢献できるのかを考えながら医療を施していくというもの。患者さまの価値観はまさにパーソナルでそれぞれに異なるし、バックグラウンドも違うのです。それにいかに合わせていくかがパーソナルサービスであり、あるいはホスピタリティの最も重要なことと考えます。
このようなお考えの元、外来施設の亀田クリニックさんの1階の受付フロアに生花店を設置しています。
その生花店こそ、先述の通り表参道に本社を置き、全国に多店舗展開される「青山フラワーマーケット」さん。2013年11月28日に亀田クリニックさんに入店しました。
【院長】
私のところでは、青山フラワーマーケットさんの入店前から生花店を院内に置いていたんだよ。花の名産地でもある南房総で、市民のみなさまにとっては花のある生活が当たり前。また花を見る目も高いのです。
もう一つ着目すべき点があります。
それは、亀田総合病院さんは国際的な医療機能の評価機関であるJCI (Joint Commission International:国際病院評価機構)の認証を、国内に先駆け取得されたことです。
JCIとはざっくりと申し上げますと、国際的な基準において医療機関としてのクオリティの高さを第三者から評価されるということです。つまり医療機関の国際認証。亀田総合病院さんは国内でもぶっちぎりで(!)いち早く取得され、現在においても国内で最高レベルで認証されています。
このJCI、日本国内で認証された病院は10施設ほど。(2014年12月時点)
「病院」が全国に9,000施設近くある中のお手本的な10施設と言えるのではないでしょうか。
そこで!ウンチク探検隊はこの10施設すべてに電話をして伺ってみましたd('-'*)
「貴院にお見舞いで生花を持って行ってもよろしいでしょうか?」
その答えは・・・
10施設全て同じ。
「結構ですよ」^^
全ての病院から快くOKをいただきました。もちろん、亀田総合病院さんと同様に患者さまの容体や加療状況により、特別な管理が必要な病室は別です。
しかし、最初からall or nothingで生花を禁止しているところはどこもありませんでした。世界的な基準において、医療機関としての質の高さを評価されているその病院です。患者さまの安全を図った上で、患者さま目線、あるいは患者さまのご家族目線で心のケアをしながら医療を提供される優れた病院であるともいえるでしょう。生花の持ち込みは国際認証を取得する上で、何ら抵触していないのです。
■ウン探的「病院への生花持ち込み可否」についての結論■
患者さま目線の温かい病院は、生花持ち込みを禁止しない!
患者さまの心の安らぎを鑑み、温かいホスピタリティの下、二進論で◎か×かではなく、条件設定しつつもここまではOKと幅のある論理的なアプローチをされているところは、本来の患者さま目線に立った医療を行っているところといえるのかもしれません。
(病院によって性質やそれぞれのお考えがあってのことですので、あくまでもウン探の単眼的な見地です)
亀田総合病院さんの場合、院内に生花店を設置しているのは、患者さま、並びに従業員の皆様への亀田院長の愛(思う心)によるものなのでした!
■花き業界の方へ■
人の生命を預かる医療機関として病院の考え方はそれぞれです。私たちは医療の専門家ではないので、医療関係の先生方にご意見を伺いながらも、生花禁止という病院のお考えも理解し、尊重していきたいと思います。
その上で、花き業界として病院や患者さまをケアしてくださるスタッフの方の手間や患者さまの安らぎを考えた商品を提案していくことを考えるのが役割なのではないでしょうか。
<写真・文責>:ikuko naito@花研