2008年6月27日
vol.63 静岡県 PCガーベラ 他
安藤隊長、西山副隊長率いる、大田花き平成20年度の新入社員9名で探検する今回の産地新人探検隊。愛知県豊川市のJAひまわりで研修・取材を終えた後は、浜松PCガーベラに向かいます。
この一輪一輪を試験管にさす展示方法を最初に見たときには、このまま一式全部持って帰りたい!と思ってしまったほど。(弊社 展示にて撮影)
とってもかわいいオリジナルキャラクターのPiroro&Clara(ピロロとクララ)。パンフレットやダンボール箱、スリーブなどで活躍中!
浜松PCガーベラとは?
■どこにあるの?
浜松PCガーベラは、静岡県西部地方の浜名湖沿岸に位置する浜松市にあります。この地域は、気候が温暖で日照量も多く、農作物の栽培に
はとても適しています。
■PCガーベラのPCとはどういう意味?
「Packing Center」の略です。JAや地元ベンチャー企業と共同開発した世界初のキャップ掛け装置を設置。
■ガーベラの他には、何を栽培しているの?
キクやスイートピー等もたくさん栽培されています。
では、早速見学させて頂きましょう。ご紹介いただいたのは、浜松PCガーベラの部会長の古橋さん、副部会長の杉浦さんです。
写真は、部会長の古橋さん
まず、始めにご案内頂いたのは、ガーベラのキャップ掛け装置です。ガーベラは花弁が柔らかいので、輸送で傷がつきやすいため、一輪一輪ビニールのキャップがつけられています。通常であれば、手作業でする作業ですが、一日に考えられないほどたくさんの量のガーベラに一輪一輪キャップを着けるとなると、この作業にたくさんの時間が取られてしまいます。PCガーベラでは、平成5年に「パッキングセンター」を設立したことにより、ガーベラの出荷調整作業を各生産者の家庭から切り離して、ゆとりのある農業を目指されたそうです。
各圃場から、一度集められて、前処理中のガーベラ。12℃の冷蔵庫で一旦保存されます。
これが、世界初・ガーベラのキャップ掛け装置です。(ガシャ、ガシャ、ガシャ・・・)
どんどん進んでいく、ガーベラ
「ポトっ」落ちたー!!長さによって落ちる場所が異なるようです。
束ねて、箱に入れられます。
JAや地元ベンチャー企業と共同開発した、世界初のキャップ掛け装置を設置した施設へ一元集荷を行い、今まで手作業で出荷処理をしていた時間を高品質栽培やマーケティング等に費やし、品質や組織力の向上に繋げたそうです。
各生産者が「パッキングセンター」にガーベラを一度集めてから一元集荷する事で、他の生産者との比較を行い、パートさんが最終チェックを行うことで、常に最高レベルのガーベラを提供すること可能になりました。
このようなオリジナルキャップに入ります。これなら、市場、お花屋さんを経由しても、消費者までPCガーベラのガーベラと伝わりますね。
これが、パッキングセンターでのチェック表です。誰のガーベラが、何本良くない物があったかが記載されています。
続いて、ハウスを見学します♪
「土にビニールシートが被っていますが、これは何をしているのですか?」
「熱処理をして、土壌を殺菌しています。土壌を周期的に、殺菌・休憩させて土作りをして、十分に準備が整ったらまた新たにガーベラの栽培を始めます。」
この機械が、熱処理を行う機械です。作業時は熱くなるので注意が必要です。
土壌で栽培もされていますが、ロックウール栽培に変更されたいうのが、今回ご紹介頂いている杉浦さんです。とても清潔感のあるハウスですね。
ヤシ殻の上にロックウールを置いて栽培しています。通称「ヤシ殻ベッド」と言われ、やしの実の繊維の部分を細かくしたものを固めて作ったものです。ロックウールを使った水耕栽培の利点は、排水性の改善、病気の発生が少ないこと。収量が土耕より多いこと。連作が可能であること。肥培管理がしやすいことが言われています。
杉浦さん:「1品種は700株?2,000株までを目安に栽培しています。1品種を700株作る事によって、週3回1ケースは出荷することが出来ます。また、部会のルールとして、新品種%、色%など取決めがあります。これは、全量を共選共販として販売方針を一元化し、業務・小売用の特定品種の強制作付け、色別の作付けルールを制定しています。これによって自分の好みに偏らず、栽培することができます。時々、生産者もお花屋さんの意見を聞きに、直接出向くことがあります。自分でお花屋さんの意見を聞くことによって、新しい品種を入れるときの判断材料になりますし、ズレを防ぐことが出来るんですよ。」
もうちょっとゆっくりとお話を伺いたかったのですが、次の研修のためタイムアップとなってしまいました。
今回は突然の訪問で、名物広報の鈴木さんは別件でお仕事があり、お会いできない予定でしたが、お昼ご飯の時にわざわざご挨拶にと駆けつけて下さいました。
「男子はいいから。」と、新入社員の女の子たちと楽しく記念撮影をして嵐のように去っていかれたのでした。女性限定!!PCガーベラをよくご購入して下さる美人店長(?)がいる東京のお花屋さんには、よく出向かれるそうですよ。ここで書くまでもなく、みなさんよくご存知かもしれませんね(笑)
PCガーベラの皆様、お忙しい中、どうもありがとうございました☆
?KIRIN agribio 花き商品開発センター!?
続きまして、昨年10月にオープンされたという、KIRIN agribioの花き商品開発センターにお邪魔しました。浜名湖花博の跡地で、浜名湖ガーデンパークの隣に位置しています。
「今までは、新しい品種を開発しても実際に栽培をする圃場を持ち合わせていませんでしたが、花き商品開発センターが出来たので、自社内で栽培試験を行い、国内生産向けに優れた新品種を選び、生産者・卸売市場や小売店などの流通に対して新品種情報の発信を行う情報発信施設として、活用ていきます。」とお話頂いたのは、キリンアグリバイオの登坂さんと原さん。
キリンアグリバイオさんは、カーネーションをはじめ、スプレーマム、バラ、リモニウム、ガーベラ等の切花や、世界初の八重咲きカランコエ「カランディーバ」、母の日のポットカーネーション、世界の品種評価会で数々の賞を受賞しているペチュニアやニチニチソウ等の花壇用花き等、幅広い商品を全国の営利生産者様に販売されています。育種力とマーケティング力を融合した品種開発力をベースに、時代のトレンドに合った商品をいち早く消費者の元へ届ける仕組みを創っておられます。
昨年に無花粉ガーベラの“フルーツケーキシリーズ”を発表されています。今秋には、新品種のカスミソウ’ファンタイム’と、’ダブルタイム’が市場に出回る予定だそうです。
花き商品開発センター入り口で記念撮影です。
広?い商品開発センターです。
中でも、心打たれたのは、モカスイートです。名前もピッタリ!去年作付けされた新品種だそうで、今年から出荷が始まるそうですよ。
ウッドストックも同じく、去年初めて作付けされた新品種。やはり、ノスタルジックな色合いに惹かれます。
下田隊員のオススメは、ポエム
続いては、バラの試験圃場へ。
深紅のフリンジ咲きのバラを発見しました。トルコギキョウのコサージュシリーズのような咲き方です!
みんなのオススメは「これ!!」
香りに酔いしれる立石隊員♪高芯剣弁咲きのワイン色のバラ。リークを大きくしたような、スタンダードのバラです。香りもリークと同じようなダマスクモダン香でした。
最後は、ガーベラの試験圃場へ
各品種の上いは、写真・品種名・特性などが分かりやすく表記されています。
男性隊員も和気藹々のムード
この試験場から新しい品種が生まれるのですね!
キリンアグリバイオの皆様、お忙しい中ありがとうございました。
これで、栽培現場の研修は終了です。夕方になり、御殿場研修所へ急ぎます。
?橋本フラワー?
最後は研修所の近く、いつもお世話になっているお花屋さんの橋本フラワーさんで見学させて頂きます。ときどき市場から代表者が、橋本フラワーさんに、水揚げ方法など花屋業の勉強でお邪魔させて頂いております。
お店の入り口では、芍薬が優しく出迎えてくれました。
たっぷりとした品揃え月・水・金の表日は毎回仕入れをされて、全ての花が入れ替わるそうです。道理で、お花がイキイキして見えます!バラのレッドイントュージョンや、アリアム、トルコギキョウのコサージュ、八重のクレマチスの鉢ものなど、新しい品種もたくさんあり、お花好きのお客様の目を楽しませてくれます。また、仏花や胡蝶蘭などもたくさん置いてあり、たっぷりとした品揃えが安心感を与えてくれます。
PCガーベラのスリーブ入りのガーベラを発見!
奥様:「うちは、いつもPCガーベラさんのガーベラを購入しているんですよ!」
橋本さんと奥様
あまり花は、レジの下のスペースでアレンジの参考として活用させます。「この方が素敵でしょ?一石二鳥です」と奥様。
最後には恒例の記念撮影!橋本フラワーさん、ありがとうございました☆
格言
一つの目的に向かう強い意志、部会の取決めがスゴイ!(PCガーベラ)
・新品種情報発信施設
・・・キリンアグリバイオの花き商品センターに注目すべし!(キリンアグリバイオ)
・お客様を満足させ、楽しませてくれる品揃え・雰囲気を参考にするべし!(橋本フラワー)
隊員は無事に研修を終え、御殿場研修所に向かったのでした。
新人探検隊のみなさん、花卉業界のスペシャリストたちから、たっぷり吸収しましたね!
初めての研修お疲れ様でした♪
(文責 Cimone♪)
2008年5月23日
vol.60 愛知県 JAひまわり
うんちく探検隊 記念すべき第60号!
今回は安藤隊長・西山副隊長率いる08年度入社の新人探検員9名が、新人研修を兼ねて、うんちく探検隊初参戦!
朝4時出発!新人探検員が「生まれて初めて見る生産現場」向かった先は・・・?隊員は西へ西へと車を走らせます途中、お茶畑や富士山を横目に高速を飛ばします。
安藤隊長:
「お茶畑にたくさんある、扇風機みたいなもの何か知ってる?」
「風力発電ですか?」
「ちがうちがう、霜にやられないように設置してあるんだよ」
「あれだけで、霜が防げるなら、ダリアなどお花でも活かせそうですね!」
と、会話は続きます。
しばし休憩です。
安藤隊長の指の先に見えたのは・・・
(左)内藤隊員(右)下田隊員
「ほら、浜名湖だよ!」
?JAひまわりに到着!?
東京を出て約4時間、隊員は愛知県の豊川市、JAひまわりに到着しました。
JAひまわりの知識
■どこにあるの?
愛知県の豊川市です。
■どんなお花をどのくらいの方が作っているの?
SPマム(75名)、キク(72名)、バラ(46名)、洋花(28名)です。
■ひまわりを作っているの?
ひまわりは、ごく少量しか作られていません。
■なぜひまわりってついたの?
昔、いくつかの生産地が合併をした際に、募集をかけて決まったのがJAひまわりでした。
今回、迎えてくださったのは、JAひまわり営農部花卉出荷センターの小林センター長です。
「このシールは、各生産者が一箱一箱貼って、出荷場に持ってこられます」「このシールを自動ローラーで分荷する前に、検査を一箱一箱行っています」
「えー!全部の箱を毎日チェックしているのですか?」
「生産者の当番がチェックしているんですよ」
これが「検査報告書」です。各品目ごとに報告書が異なります。これはキクの検査報告書です。ダニ、アブラムシ、白さび病、曲がり・・・様々な理由の項目。連絡事項には、検査員がコメントを書きます。チェック項目のランクは、連絡→注意→格下げ→返品。中には出荷場で、返品されることもあるそうです。これは昔から続いているJAひまわりの習慣だそうで、検査までが「自分たちの責任」という自覚をお持ちで、これに不平不満を言う方はいらっしゃらないそうです。
この検査報告書には「もう少し咲かせてください」とコメントが書かれています。市場でも、特にセリの際にはセリ人がお花を見て判断して、セリ機に「咲きすぎ」「曲がり」「葉悪し」・・・などを表示させて競ることがありますが、セリという限られた時間の中できっとこの「検査報告書」ほど細かくチェックできていないでしょうし、産地へのフィードバックも細かい対応はできていないでしょう。JAひまわりでは、ここまでは産地の仕事という認識から、毎箱毎箱チェックをされているそうです。
検査員の生産者の方々も、生産・出荷作業にプラスしてのチェック作業は、時間を作り出すのも大変だと思いますが、他の人が作っている花が見れたり、荷姿が見れたり、新しい刺激になっていると、小林センター長はおっしゃっています。
「1箱でもダメな物があったら、産地の信頼が崩れてしまう。ここでは、こんなに沢山箱があっても、結局、お花屋さんに届くのは1箱なのですから。」
このような認識があるからこそ、ひまわりのブランドが保たれているわけですね!
みんなも納得!(してるよね?)
左から、石井隊員、吉田隊員、矢作隊員、依田隊員
「他にも、組織で役割分担がきっちり決まっていて、抜き打ちでバラのバケットのバクテリアチェックをしたり、広報活動や、開封検査など、ローテンションで役割が決まっています」
では、JAの山田さんと金子さんに圃場をご案内いただきましょう!今からガーベラと、バラと、SPマムの圃場をご案内頂きます。
その前に、記念撮影。
お忙しい中、朝からありがとうございました!
?市川さんのガーベラ!?
早速、ガーベラを生産されている市川さんのハウスにお邪魔しました。とても広く、設備の整ったハウスには、出荷前の赤・黄色のガーベラが沢山ありました!初めてガーベラの栽培現場を見る新人探検隊も「きれい!」「すごい!」と感動の嵐。
市川さん:「今までは鉢で栽培をしてきましたが、今年からはロックウールの栽培に変更しました。肥料や原油の高騰から、どちらも量を少なめにしてしまったことが影響して、今年の栽培は良かったとは言えませんでした。肥料を吸い上げるのにも、ある程度の温度が必要!ということが分かった一年でした。」
ハウスの温度を保つのに、一日最低50ℓ?80ℓもの油が必要だそうです。
原油の高騰したからと言って、花が高く売れるわけではない、というのが残念ながら今の花卉業界の現状。弊社では、そのためにも「一円でも高く売れ!」というシールを営業全員のパソコンのデスクトップに貼ってあります。
市川さん:「ロックウールで栽培するメリットは、太くていいものができることです。」
←去年まで使われていた鉢
市川さん:「ロックウールのメリットは、本数は切れること。1?から400?500本/年間切れます。アルミ箔のようなものをかけることで、蒸散や微生物の繁殖を防ぐことができるんですよ。デメリットは重みが少ないように思います。」
黒い線のようなもので、自動的にお水をあげることができます
光を当てないと、このように何も生えてこない
ガーベラの花保ちをよくする方法memo
市川さん:「ガーベラは、花びんに活けるとき、水は茎の5cmくらい使っていれば十分です。毎日少しづつ、足してあげるのがガーベラにとって良いんだよ。」※ガーベラは水浅で活けることは常識でしたが、もっと少なくて良かったのですね。
市川さんから、お花屋さんへ一言☆
ガーベラは使いやすく、手ごろ。色々な方面で活躍できる花だと思います。冠婚葬祭にも、もっともっと使って頂きたいし、その方法を考えて下さればと思います。
わたしたち生産者は、いいものをがんばっていい花をつくります!
近年のブライダル重要についてのmemo by 安藤隊長
「大人婚」という言葉が持てはやされている今、結婚しても仕事を続ける女性が増えています。企業で働く人にとって、春先は転勤や異動で何かと忙しいので、結婚式は秋にするカップルが増えているようです。人口減少から、結婚式の需要も年々少なくなりますが、春の式は減少傾向にあっても、秋の式は横這いのままです。ブライダル需要に合わせてお花を作るなら、「秋」ということですね!
写真左:倉持隊員
市川さんと記念撮影!
市川さんから、新入社員へメッセージ☆
市川さん:私は昨年新しい栽培方法にチャレンジして失敗をしました。しかし、失敗で得た経験は大きく、そこから利益を生んでがんばっていこうと思います。会社でも、失敗やミスをすることはあると思いますが、同じ失敗を繰り返さずにそこから何かを学べば、上司や先輩も、皆さんのことを怒らないでしょう。皆さんも失敗を恐れずに、がんばってください。
市川さん、素晴らしいメッセージをありがとうございます。
ガーベラを頂きました。気分もhappy☆よかったね!!
ガーベラ@car
ちゃんとお水入りのペットボトルに入れて、車の中でも水揚げします。車に花があるのも気分が明るくなって良いですね!
?河合さんのバラ!?
続いて向かったのは・・・
バラの生産をされている河合さんのハウスです。
河合さん:「バラの生産をしています河合です。15年ほど前からバラのロックウール栽培を始めました。現在では、バラを63?栽培していて、43?がフィルム・20?がガラスのハウスで栽培しています。栽培を始める際にはハードにお金がかかり、ガラスのハウスを作ることには、周りからとても反対されましたが、今となってはよかったと思っています。」
屋根が高?い!
河合さん:「これまではロックウール栽培でうまくやってこれたけど、楽をしすぎてきてしまったのではないか?という考えのもと、3年くらい前から一個一個解析して、努力をしている最中です。」
(後姿の畑中隊員)
みんなも真剣にメモをとります。
わたし:「ロックウールで栽培しているバラは、今までに見たことがありますが、こんなに木化しているのは初めて見ました。何年くらい栽培すると、木化するのですか?」
河合さん:「3年くらいですね。普通は、2?3年で植替えをする方が多いですが、私は4?5年周期で植替えします。また、植替えをするなら、植物にとって春が良いと思いますよ。株の出来もいいです。よく、夏に植替えをする方もいますが、夏に植え替えると、その年の年末までに出荷するのはおそらく無理でしょう。それもあって、春に植替えするのが良いです。」
わたし:「これはなんですか?」
河合さん:「除湿機です。これを入れることによって、葉がしまったような印象になります。重量のあるしっかりしたバラが作れるんです。湿度は70?75%に保つようにしています。今日は雨が降ってないから、水がポトポト落ちるところがお見せできなくて、残念ですよ(笑)」
ちなみに雨の日は90?92%になるそうです。
河合さん:「ただし、落とし穴があって、20℃以上ないと除湿できないので、冬はそのためにも油を焚く必要があるんですよ」(相対湿度の問題)
「新しい機械やヒートポンプを入れると、その業者がなんと言おうと、自分で感じて試してみる。これが一番大事ですね。なので、去年は3日くらい、ハウスに寝泊りしました。これをやった時どうなる?秋にこれをしなかったら?品種によっても異なるし、これからも試行錯誤です。」
除湿機を入れたことによって出来た厚みのある葉
社会や環境を背景に、花きの生産者も国際競争で戦わなければなりません。継続性のある経営とは?
河合さん:「私は、定番品種を1/3、可能性を秘めた新品種を1/3、自分の好きな品種を1/3の割合で栽培しています」「やっぱり、食べていくために稼ぐことも必要だけど自分の好きな品種も作らないと、おもしろくないじゃない?ただし、これは1,000坪以下では出来ないと思います。1,000坪以下なら1/2を定番にする。もしくは、8割を定番に。1割好きなもの。1割あたしいもの。という比率が良いのではないでしょうか。」
後に、車で移動中に・・・
安藤隊長:「河合さんは安定して生産されていらっしゃるから、理想の比率で生産されていますね。私がもし、生産者なら始めは7割を食べていくために。残りの3割で新しいものと好きなものを作りますね」
「作りやすい」「作りにくい」「自分の好きなもの」「市場性」・・・比率を決めて生産をすることがキーワードですね!
「河合さんの好きなバラはどの品種ですか?」
河合さん:「マダムヴィオレです。香り・色、最高でしょ?咲くともっと違って見えますよ」
「いい香り?☆」
出荷前のものなので、蕾の状態でしたが、ほんのりいい香り!他のバラとは違う香りがしました。
病気に弱いマダムヴィオレ。それでも市場に「いつもあるように」という考え方のもと、栽培・出荷されています。
マダムヴィオレと、ラ・カンパネラは、栽培するのに腕が試されるバラ。
わたし:「次々と新しい品種が出るバラ。それを待ち望んでいる顧客が大勢いる中、市場からは栽培上の視点から、同じ品種を10年くらい作って欲しいという要望があります。河合さんはどのようなご意見ですか?」
河合さん:「そうですね。やはり、品種特性を掴むのに3年はかかるでしょう。それから多少栽培方法の修正をして、4年周期、4年周期と繰り返せば、10年ですからね、その通りだと思います。しかし、商品性については新しい品種がないと、デザイナーが寂しがりますね。」
河合さん:「いろいろとありますが、私は生産をする上で、いつも初心に返れるようにと心がけています。」
立石隊員:「河合さんの初心とは、どのようなことですか?」という鋭いツッコミ。
河合さん:「自分の作った花で、みなさんに喜んで頂くことです。」
河合さん、たくさんのメッセージをどうもありがとうございました!
とても勉強になりました☆
?JAひまわりのSPマムと輪菊?
最後はスプレーマムと輪菊の温室へ
残念なことに、輪菊の生産者の小林さん・スプレーマムの生産者の林さんは出荷作業のため留守にしていましたが、JAの金子さん・山田さんにご紹介頂きました。
こんなに背丈があるのですね!
コガネハマ(写真の花はあと2日くらいで出荷です)
この品種は、「芽かきなしで良いという作業性、冬場にあまり油を焚かなくていい」という生産性の良さから、これからますます出荷量が増えていきそうです。
ダッチライトという、花の生産に適した高い屋根のハウス。
オランダでは、このハウスが主流だとか。湿気がたまりにくいそうです。
ここで自動的に温度や湿度を測って管理しているそうです。
レミダスプリンス
突然の取材で、SPマム生産者の小林さんと林さんにお会いできず残念でした。次回は是非、いろいろと教えてください。
また、お忙しい中JAの金子さん、山田さんご案内・たくさんのご説明頂き、ありがとうございました。
最後は、JAひまわりの周辺の風景!
JAひまわりの皆様、ありがとうございました!
JAひまわりの格言
・一人一役(JAひまわり)
・新しいことにチャレンジして、たくさん学ぶべし!(ガーベラ・市川さん)
・自分の作った花で、皆さんを喜ばすという心を持つべし!(バラ・河合さん)
このあとも、新人探検隊の旅は続く・・・
(文責 Cimone♪)
2005年3月 9日
Vol.2 神奈川県平塚市 松木さんちのガーベラ 編
浜田さんのバラに引き続き、ウンチク隊またまた平塚市です!今回は、引く手あまたの大輪ガーベラを作っている松木園芸さんにおじゃまします。
松木さんのガーベラの特徴は大輪種ガーベラを主に作っていらっしゃること。
大輪種ガーベラを作る産地は前に比べて多くはなってきましたが、ガーベラ=ミニというのがまだまだ主流です。松木さんは早くから大輪系を導入したベテランです。しかも花保ちや品質などでも優れた評価を得ています。
今回のウンチク探検隊は営業本部ガーベラ担当Y垣部員にくっついて出動です!運転もしてもらってラークラク。しかし平塚市ってこんなに遠かったでしたっけY垣部員?・・・って地図見ながらじゃないですか!あなたホントに横浜生まれなんですか!?
Y垣:「だってわかんないんだもん。しかもオレさ、松木さんとこ行くの初めてなんだよね。」
ガーベラ担当して2年も経つというのに初めてって・・・。
住宅地をさまよいながらやっと松木園芸に到着。松木さんが穏やかな笑顔で出迎えてくれました。
「Y垣くん、いつかは来てくれると思ってたよ(微笑)。」
松木さんは見た感じと同じやさしい方です。
実はワタクシ、ガーベラの圃場見学は初めてです。一歩ガラス温室の圃場に入るとうぉぉ広い!一面お花畑です。ガーベラたちがベンチでお行儀よく並んでいます。
市場では透明なキャップをかぶってくるので、実際咲いているのを見るとその大きさにびっくり!とってもゴージャスですね。
「キャップしてないほうがきれいなんだけど、やっぱり傷むからね。」
松木さんが一本とって渡してくれたのを持つと、おっ、重い!大輪系ガーベラの迫力恐るべし・・・。
草本の一輪咲きででこんなに重量を感じる花も珍しいかも。
「やすっぽちい花だとお金とれないからね。」
ワタクシの手は男並に大きいのですがこの通りの迫力です!
ガーベラを摘むときはいつも手なんですか?
「ハサミは使わないよ。とってみていいよ。根元をこう折って・・・」
と松木さんが実演して見せてくれました。ガーベラって手で簡単に摘めるんですね。
しかしY垣部員かなりの苦戦。ガーベラ担当なのにヘタクソすぎです。
バラの感覚でガーベラを育てる
松木さんのガーベラはベンチ栽培なのですね。しかしガーベラの根元をよく見ると、プラスチックの鉢に入ってベンチに並んでいます。これはなんという作り方ですか? 「ロック(ウール)っていうかね、水耕栽培。」しかし普通のロックウールの水耕栽培で、鉢の中に植えられているのを初めて見ました。
鉢の中はなんですか?
「こういう形でね、サイコロみたいなロックに植えてんの。培地をいろいろ試したんだけどようやくこれに落ち着いたかな。」
これは松木さん開発の作り方なのですか?
「違うよ。メーカーが作って売ってるよ。」
あっ、そうなんですか…。これはスタンダードなガーベラの作り方なのですか?
「もちろん土耕で作っている人もいるよ。ガーベラって特に決まった作り方ってないんじゃないかな。」
なぜこの作り方を選んだんですか?
「下がつながっていると、病気が出てきたときにすぐ移るからね。ひとつひとつ鉢に植えると病気が出たとき他の株に移らないですむでしょ。ポットにしてからずいぶんよくなったよ。」
なるほど?。ポットの大きさは産地によって違うらしいです。
「あとは溶液の点滴がどれだけ・・・水のかけ方だね。結局。水少しだけやってあと肥料だけやったらぜんぜんダメだしね。」
おおっ、ここらへんで企業秘密のにおいがしてきたのですが。ズバリその秘密は?
「秘密!?うちに秘密なんてないよー。オープンだよ。でも他の人に言ってもみんな頑固だから直さないだろうしね。水やりはあんまり多くかけるともったいないしね。こぼれちゃうし。うちは昔バラやってたから。バラやってたときの感覚でやってるね。」
そう、実は松木さん、初めからガーベラ生産者ではないんです。
「ガーベラの前はバラを作っていたんだよね。やめてもう5年くらい経ってるかな。」
今では圃場にはバラの影も形もありません。松木園芸のバラってけっこう評判も良かった・・・って聞いているのですが。ガーベラに移ったワケは?
「ガーベラの花はきれいだからだね。近所でガーベラやってる人がいて、それ見てたら色合いもきれいだし。特に大輪がきれいだったからね、いいな?と思って。」
ガーベラに惚れてうつっちゃったんですね。
控えめで、柔軟で、絶妙な感性の人 松木さん
ガーベラは一年中お花屋さんに出回っている周年品目です。見た感じ丈夫そうだし、圃場でも年がら年中ドンドン伸びて咲いてくるのでは?と失礼なことを思っていましたが、よーく見ると、花が全然咲いていない品種のものもチラホラ・・・品種によって周年で切れるものとそうでないのがあるんですか?
「ガーベラはもともと休みがないはずなんだけどね、次に出るまで時間がかかっちゃうのとかもある。よく咲く品種よりか半分しか切れないものもあるよ。」
しかも1?2年で新しい苗に植え替えをするそうです。
「花は咲くんだけど、3年くらい経つとやっぱり樹勢が落ちるね。品質もよくなくなるし。」
(優しい笑顔の松木さん)
そのたびに既存品種を見直したり新品種を入れています。
営業Y垣部員曰く、松木さんの品種の作付けはいつもバランスがよく絶妙!
やはり綿密な研究・計算のもとで植え替えや品種の導入を行っているんですか?
「よく研究してる産地は試作圃場があるみたいだね。
そういうところは(経済性から)本数切れない品種はその時点で省くんだろうけど。
でもうちは個人でやってるからそんな試作圃場なんか作れないし。採花本数ばっかりみて選んでもね、花がきれいでなかったらしょうがないから・・・。
本数切れなくてもきれいな花はあるからね。うちは花重視だから。
自分が好きなのはとっておくね。あんまり切れない品種入れちゃって、周りからは異端児みたいに思われちゃうけどね。おもしろいと思ったものはどんどん出していこうかなって。まっ、明らかに失敗しちゃったっていう品種も必ずでてきちゃうんだけどね。2つ3つ。いつもパッていっちゃうから。」
それでも各方面から絶妙と言わしめる技はさすがです!
「好きな花を作っているだけだから。逆に挑戦とか、そういうのはないんだけど・・・」
ガーベラお嬢は環境にうるさい
2月だというのに、おジャマした日はとても天気が良く、太陽の光がさんさんとガーベラ達に注いでいます。この季節でこの光量だから、夏場はだいぶ暑くなるのでは?ちなみにガーベラの原産はアフリカ。別名アフリカンデイジーというくらいですから暑さには強いのでしょうけど。「遮光はやるよ。やっぱ遮光しないとねぇ。やると株が疲れちゃうからってやっちゃダメっていう人もいるんだけどね。さすがにしおれちゃうし。水あがんなくなるからね。遮光するとその分涼しくなるからね。
遮光しないと働いてる人間もね、やられちゃう(笑)」
ちなみに冬はあったかくしないと花がなかなか出ないんだそうです。
「今年は油代が高いけどガーベラは周年品目だから暖房たかないと・・・。しかも暖房しても締め切ってはダメだし。」
ガーベラってワガママなお嬢様みたいです。
お嬢様方の一番心地よい環境作りに、松木さんはとても気を使っています。
「それと色はガラス温室が一番いい色出るんだよね。ビニルハウスだと光線の量が落ちるから。光質も大事なんだよ。それを考えるとガラスが基本だね。ビニールハウスだと張り替えた年はいいけど徐々にどんどん光量が落ちていくからね。湿度もむっとするでしょ。ガラス温室はカラッと抜けるから。夏はビニールに比べたら涼しいし。冬は油食うけどね(苦笑)。」
また、ガーベラはしみができやすいという難点もあります。
「うちでは全部自分で見ているからね。束ねるとき一本一本自分の目で見ているよ。一万本あれば一万本見てるからね。チェックして束ねてるから。」
美しさをしっかりチェックしてお嬢様たちを世に送り出しているんですね。
子どもにガーベラを植え付ける
実はおじゃました日に松木さん、野球の予定が入っていたそうです。ほんとうにお時間取っていただいてスイマセン・・・「自分のじゃなくて子供達の少年野球。指導してんですよ。うち、小学校まん前ですしね。」
そうなんですか?。カントクがガーベラ生産者だったら、ガーベラという花を身近に感じるでしょうね。また授業の一環として子ども達が圃場の見学にやってくるそうです。
「幼稚園児から中学生まで来るよ。最近ほら土曜日休みだからね。これで将来需要ができるかどうかわかんないけど。」
いやいやできますよ!普通の小学生はガーベラって名前知ってる子普通いないですもんね。そして小さい頃に覚えた花って絶対忘れないですから。
「見学のお礼に作文が来るもんね。」とうれしそう。
初めて見るガーベラがこんなに一流で立派なものだと、子どもたちもきっと楽しいにちがいないですね。いい消費者になりますよ?。
Y垣部員:「オレ、花って大田花き入るまで桜しか知らなかったからなー。」
・・・こういうオトナが増えないよう、松木さんよろしくお願いします。
広がる松木園芸ガーベラの魅力
ふと見ると、なんと花の中に芽?があるガーベラ発見!(左写真)です。「それは樹勢が強すぎちゃって。こういうのは(市場に)出てる?」
私は見たことないんですけど・・・。
Y垣部員の話によるとB級にたまに入ってるらしいです。
「おもしろいのは、また小さい花が中で咲いてんのがあるんだよね。双子になって咲いてるのとか、スプレー状に咲いてるのもあるよ。」
これらはいわゆる「奇形」の部類に入るのですが、これはガーベラの元々の生命力の強さがなせる個性技で、病気ではありませんよ!
「こういうのもいいと思うんだけど数がまとまんないんだよね。」
蕾でもステキなものが!真ん中がベルベットみたい!さわり心地も素晴らしいのです!!
スタイリッシュな感じがまた使えそうです。
ウンチク隊、ウンチク忘れて商品開発(開拓?)に若干走ってしまいました。
これ出してくださいよ?!
「女の人はツボミ好きだよね。弟のかみさんも同じこと言ってたな。」
ぜひ出荷してほしいもんです。頼みます、松木さん、Y垣部員。
ちなみに松木さんが個人的に一番好きな品種はどれでしょうか?
「うーん。好きなのばっかり選んでるからね。(としばし悩んでから)しいて言えばコルニスとかいいね。花色とか形じゃなくて総合的にみてね。ステムの太さとか硬さとかね。
一番きれいな花はオプチマかな。ステムの感じがいいね!硬すぎず柔らかすぎず。」
目のつけどころが花じゃなくてステム!ってとこが職人ぽいですね。バラといい、やはり花はステムが命のようですね。
(コルニス※写真左)(オプチマ※写真右)
ちなみにガーベラ担当Y垣部員は何が好きでしょうか?
「オレはアンニュイなやつが好きだな。M・Gとか。裏がとってもいい。セリ場ではそういうの売れないけど。」
アンニュイ・・・。しかもM・Gってアンニュイって感じか・・・?
垣部員曰く 「アンニュイ」なM・G。
(注:アンニュイ・ennui(仏)・・・倦怠感、退屈、の意。)
最後にウンチク探検隊として質問です。
自分はここだけ他の産地には負けない!とか哲学とかあったら教えてください!
「負けない!?哲学っ!?・・・(すごく考えてる・・・)」
あっ、あのー、そんなにムズカシク考えなくてもいいんですけど・・・。
いつも仕事で思ってることとかでいいので。
「そうだねぇ・・・。個人でやってるからあまり採算考えないでいい花を選びたいと思うね。切れなくていいから売れなくていいから。」
お花屋さんにお伝えしたいことがあれば・・・
「花屋に伝えたいこと?うーん、自分は自分なりのわがままでやってますから。お花屋さんが言うことより自分重視なんですけど(笑)。まぁ・・・気に入ったら買ってってことで。」
・・・と口ではこう言う松木さん、でもY垣部員と話すときはこんな言葉が随所に出てきてます。
「いいのあったら言ってもらえれば・・・」
「欲しい品種とか、言っていただければ・・・」
「なんでも言ってください。作ってほしいものがあったら・・・」
こんな本当に低姿勢な松木さん。松木さんの視点は単に好きなだけで終わりません。
種苗会社の話を聞き、私達市場の人間の話を聞いていただき、お花屋さん(弟さん夫婦がお花屋さんを営んでいらっしゃるそうです)の話を聞き、情報収集した上で松木さんの素晴らしい感性が生かされているんですね。
松木さんはこれからも魅力ある大輪系をもっともっと増やしていきたいそう。苗はオランダに発注するのだそうです。
「苗の供給が遅れたり、こなかったり、カタログと違うのが来たりすることがあってね。」
外国とのやりとりは大変です。
「本当は実際にオランダに行って見て選びたいんだけどね。市場に週3回出していると忙しいしねー。」
すいません、ご出荷ありがとうございます!そしてよろしく頼むよオランダ人!!
「ユーロはあがる、苗代は高い、油代も高いで大変だけど。」
大田花きもがんばって販売します!
そしてうちの営業部員Y垣のアンニュイさ加減もなんだかビミョーですが、これからもよろしくお願いします!
松木園芸の格言
・ガーベラは光が命!
・低姿勢で生かされる絶妙な感性!
お花屋さんへ一言・・・
松木園芸から出荷されている大輪ガーベラたち
おまけ:アンスリウム
実は松木さん、ちょこっとですがアンスリウムも作っています。
「アンス好きなんですよ、遊びでね。温度とかはガーベラとおんなじくらいだし。白とか増やしたいね。オレ、年取ってから、お金があって、温室があったらそんでまぁそこそこにアンスやろうかなぁと。」
あれれ?ガーベラは??