2013年6月18日
vol.100 JAみなみ信州 【後編】品目紹介と日本農業賞おめでとうの巻
前編に引き続きJAみなみ信州の後編は、ダリア以外をご紹介していきまーす!
★オキシペタルム
みなみ信州は花でいえば元々オキシペタルムから始まった花き産地です。
・・・ん?オキ△★_ΩΘ?
ソレ何の花?と思われた方へ、ここがこの花が残す大きな課題の一つ。
↓この花のことです。
え?ブルースターじゃないの?!と思われた方へ。
厳密にいうとブルースターというのは品種名です。つまり、バラの中のローテローゼにあたる名前です。
従いまして、例えばこの写真の品種名はピュアブルーなので、ブルースターではありませんということになります。しかもブルースターという品種は現在ほとんど流通していません。
むしろ、ブルースターとは全く別の花といっていいほどあらゆる点が改良され、生まれ変わっています。
そう考えると、こんなにかわいらしい花の名前が、なんとも難しい学名のオキシペタルム(以下「オキシ」と呼ばせていただくことがあります)という名前で流通しているのが何だかミスマッチに思えてきます。馴染みの薄い名前を使って消費拡大を推進していくのは、大変な障壁になります。この名前はオキシ自身のためにもなんとかしたい課題の一つです。(最近、学名はTweediaトゥイーディアが使われることがあります)
なんて、ブーブー(-ε-)言っている場合ではなく、こちらはJAみなみ信州でオキシ一筋30年の池田毅さん。
生産のみでなくオキシの育種家さんでもあり、白、ピンク、紫など様々な色と形と性質のものを生み出されているのです。
ダリアの周年栽培を方針の軸に据えてから、多くの農家さんがダリア生産に切り替えましたが、オキシの魅力に取りつかれ、今でもなお、オキシの育種、生産から手掛けていらっしゃる、まさに日本を代表するオキシペタルムのトップブリーダーなのです!
池田さんの心を離さないオキシの魅力とは何ですか?
「初めて見たときにね、"なんだこの絵具を垂らしたような色は!?"っていうスゴイ衝撃を覚えたんだ。片面だけに花をつける面白さと、水彩画のような濃淡。
オキシと意見が合ったというか、美意識が通じたっていう感じかな」
オキシを一目見た瞬間に電流が走ったような感覚ですか?!
いわゆる一目惚れというやつですね、い・け・だ・さん❤
ぬぁんと、早速見つけてしまいました!
さすが育種家さんの圃場には、まだ見ぬ潜在パワーに溢れた逸材が隠されていますね~!
池田さんの圃場で見つけたのは初めて見るオキシペタルム。
ブルーでもなくピンクでもホワイトでもなく、なんとパーポー(←パープル)!
まさに第4の色Σ(゚口゚;
しかも、この品種は巷で有名なAKB48のおねーちゃんがある日池田さんの圃場を訪れて、「私の名前を付けてください!」ということになり、命名された"マリヤンヌパープル"。
なんだか仮想物語のような流れですが、現実のお話。事実は小説より奇なり・・・ですね!
"鈴木まりや"さんという方だったそうで、ニックネームを「マリヤンヌ」というそうです。まりやさんは、今上海のAKBでご活躍中だとか。いーまーい~ずこぉ~♪(「荒城の月」風)
しかし、この品種はまだ固定しているところで、すぐ出荷とはなりません。
オキシの品種固定は誕生から10年かかると池田さんはおっしゃいますので、マリヤンヌパーポーのデビューはまだまだ当分先となります。とはいえ、日々花に従事する私たちに将来の楽しみと夢を提供してくださっていますね。
ところで、オキシペタルムの魅力の一つがこの花の中心部分、それぞれの品種が持つ色のコントラストが美しい~(≧∇≦)!
ん?でもなんでしょ?中心を囲む王冠ぽい部分?!
これは副花冠(ふくかかん)という部分で、雄しべの一部が変形したものです。その中にスカイツリーのようにそびえ立つのが雌ずい(しずい)、つまりめしべのこと。
ん?では本当の雄しべは?
「雄しべは中の方にあり外からは見えないんだ。そこに花粉塊が付いていて、蜂が来たときにしたに押し込んだりして受粉するんだよ。人工的に授粉する場合は、筆を使うんだよ」
変わり枝を見つけたらそこから10年。オキシの育種はなにしろ気の長い道のりです。時間もかかるし、一度始めたら止められないというのが、池田さんがオキシに30年傾注している理由の一つでもあるかもしれません。ウン探も30年続いて、池田さんの新品種をまたいろいろとご紹介したいですね。
池田さんのオキシは、花弁が固く、花付きが良く、花持ちも良いのが特徴です。
↑切れ目なく連なる花が美しいですね。
花つきの良さ、透き通るような白、品の良さ、ブライダルで使ったら1輪は小さいながら断然目を引きますね。
色によっても全く性質が異なるという池田さん。
それは純粋に遺伝子レベルの品種特性なのですが、例えばピンクとブルーの品種は、形は似ていても「人と猿くらい違う!」のだとか。
なるほど、池田さんは性質を知り尽くしている分、私たちには似ているように思える部分も、全く違うことが分かるのかもしれません。西洋の人からしたら、見た目では日本人と近隣アジア人の区別がつかないというのと同じでしょうかね?
私たちとは遺伝子レベルで全く異なるその猿に悪さをされて、池田さんは頭を痛めています。実はサルだけではなく、シカやイノシシなど強敵揃い。
みなさんアレをご覧ください!LOOK UP!!
補修されたハウスの天井。なんとサルが飛び込んで来た跡なんだそうで、飛び込んできてハウスが損傷したことがこれまでに5回もあるのだとか。ほんとサル相手に損害賠償請求したいくらいですね!
池田さん、ところでオキシの良い水揚げ方法を教えてもらえませんか?(ケッコウナヤム・・・)
「オキシは切り口から白い樹液が出てくるからね、生ける前にそれを流しきった方が長持ちするよ。
一般家庭では切り口を20秒水に浸けて樹液を洗い流せば大丈夫。湯揚げの必要もない。基本的には出荷前に産地で水が上がるように処理しているからね。
今は品種改良されて、以前のオキシとは全然水揚げも花持ちも違うんだ。いわゆるブルースターと言われていた時代とは姿が似ていても、植物としてのポテンシャルは全く違う」
お~!オキシの世界に改革が起こったということですね。
池田さんとしては、今後オキシの育種の方向性をどのように進めていきたいと思われますか?
「一般家庭用の鉢物になる品種創出を目指す!」
なんと頼もしい、将来はオキシの新しいマーケットが生まれそうですv(≧∇≦)v
みなさん、みなみ信州から出荷されるオキシに大注目ですよ~!
JAみなみ信州からの月別オキシ出荷推移(大田花き取扱;2010-2012年)
★アストランティア
またまた難しい名前の花と思われたかもしれませんが、こちらの花のことです。
見たことある方もない方も、今回のうんちく探検隊で覚えちゃってください!
名前はラテン語のアストラ(astra=星)からきています。その名の通り星のように放射状に光を放つ形をしていらっしゃるではありませんか!
星の意味から命名された草花はたまに見かけますね。
例えばステルン・クーゲル。ステルンが「星」で、ドイツ語の「星の球」という意味。五角形が集まりひとつの球を形成しています。
キク科のアスターもasterも同様です。
花と星というのは、古来から人々が夢や希望を抱く対象となっていたという点において、何か共通するものがあるのかもしれません。
さて、本題に戻りますが、その人々の憧れの的アストランティアを栽培するのが、こちらの坂井貞敏さん・美加子さんご夫妻。
鋭いウン探読者の皆様なら、お気づきの方もいらっしゃるかもしれません。 普通のアストランティアより少し色が濃く見えませんか?
この品種は坂井さんが自ら選抜されたもので、みなみ信州のオリジナル商品なのです!
その名も「みなみレッド」。
写真↑の上がみなみレッドで、下がみなさんがよく見るアストランティアに近い色だと思います。
坂井さんのところでも淡い品種を栽培していましたが、突然変異で濃い品種が生まれ、引き寄せられるように花に近づいて行ったといいます。
「それを株ごと引き抜いて、鉢に植え替えて、大切に増やすんだ」
という坂井さん。色ばかりでなく、輪も大きく、どれもその直系は4cm近くあります。
取材中も休みなく働かれる美加子さんの手を拝見すると・・・
なんと"アストランティア・タコ"ができているではありませんか!?
↑中指の関節に2個!わかりますか?
でも、どうして手にタコができるのでしょうか。
「こうやってね、手で採花していくのよ。
そうするとね、だんだんここの皮膚が硬くなって、タコができちゃうの」うふふ^^
その口調から、美加子さんは掛け値なくアストランティアに対して愛情を注いでいる様子が良く伝わってきます。
美加子さんは「アストランティアは形が可愛いだけでなく、散らないし、花粉も落ちない便利な花でもあります。色々なシーンに使ってください」と話します。
みなみレッドは5-6月を中心に出荷されます。
大田花きでの取扱は以下の通り。(2010-2012年実績)
★フサスグリ
そして今回、最後の品目、フサスグリ。
こちらは圃場のみご覧ください。こんな風に高い標高の平らな場所で作っているのですね。
今年の作柄はまずまず。
実付きもなかなかよろしゅうござんしょ!葉も小粒できれいです。
フサスグリへの要望などございましたら、是非忌憚ないご意見をお寄せ下さい♪
大田花きでの取扱は以下の通りです。
★集荷所と清水芳実(しみず・よしみ)部会長
こちらがみなみ信州の集荷所です。
広いみなみ信州(なんてたって香川県と同じくらいの面積ですから!)では、このような集荷所がいくつかあり、まず生産者さんたちはここに自らの商品を持ち込む、もしくは農協のトラックが生産者さんの商品を集めて回り、集荷されます。
↓生産者さん自ら持ち込む様子
↓生産者さんのところに集荷に回ってきて到着したトラック
集荷所に届けられた商品をチェックをしているのは、ベテラン選手の佐々木さん。
「ダリアは全量検品します。
きれいだなと思って見るのではなく、何かあるかもしれないと注意しながら、丁寧にチェックします」
どのようなところを見るのですか?
「虫などは付いていないか、花傷みはないか、規格に合っているか(ボリューム・長さ)、添付された伝票と申告内容があっているかなどをチェックします。
長さが合っていない場合には市場への送り状の内容を修正したり、虫付きなどがあれば取り除いて入り数を変えたりします」
口調は優しい佐々木さんですが、お仕事は真剣そのもの!ちょっとしたシミや虫付きも見逃しません。
←例えばこの白い"かまくら"という品種。
右側の花弁に黒いポツポツがあるのがわかるでしょうか。佐々木さんは針でつついたようなこのようなシミも見逃すことなく、規格外としてはじかれます。
ここでの選別もみなみ信州のブランド維持に一役買っているわけですね。
佐々木さんのプロチェックをパスした商品は、行先を清水さんの采配によって決められ、全国の卸売市場に出荷されます。
どれどれ、大田花きはあるかな~・・・・・
ありました、ありました!写真左はダリアの久保田直人さん(前編にて紹介)と右側がオキシの池田さんの商品です。
大田花きにご出荷くださりありがとうございますm(_ _)m
こちらはみなみ信州の花き部会を取りまとめる部会長の清水芳実さん。清水さんご自身はダリアとリンゴを栽培されています。
みなみ信州の花き部会の部会長をされていて、大変なことは?
「なんてったって570軒近い部会員がいるからね、顔と名前が一致しない人がたくさんいる。部会長の任期は2年で、私は今1年たったところだから、全員と会ったわけではないし、一度くらい会っても覚えるのは難しいよね。
それから、花も200品目以上作っているから、この花の顔と名前を覚えるのがまた大変なんだよ」
花も1年中出荷されているわけではありませんからそうですよね。大きい部会だけに、人も花も覚えるのが大変ということですね。
「生産者さんの高齢化が問題だったけど、こちらは後継者も出てきて明るい兆し。
今年は6億を目指し、将来的には8億円の部会になっていきたいと思うよ」
出ました「8億円宣言!」w(゚ロ゚;w(゚ロ゚)w;゚ロ゚)w オォォーーー!!
もうこれは必達ですね。
◆清水部会長より消費者の皆さまへ一言
「JAみなみ信州の花を知って、どんどん使ってください。みなみ信州にご注文いただければ、品目もたいていのものは揃います」
これは頼りになります。みなさん、是非みなみ信州の花を使ってください。
◆急斜面を活用した農耕地
標高900メートル付近まで上がってきたところで、ふと目の前に開けた急斜面・・・よく見ればなんとここでも花を作っているではありませんか!?
「ヒペリカムとシュウメイギク、栗の木の木陰でアジサイ、ワラビなど、こういうところで70歳代、80歳代の人たちが花生産をしているんだよ」
と説明してくださる塩澤さん。
ワラビも作っていらっしゃるんですね。
「ここはマツタケの名産地でたくさん採れるんだけど、ワラビを乾燥させて、マツタケを出荷するときに箱の下に敷くんだ」
みなみ信州はいろいろ収穫できていいところですね。
それにしてもこの傾斜!
あたくしのフォトテク(写真の技術)ではなかなか伝わらないのではないと思うので、どのくらいのきつい傾斜か、試しにJAみなみ信州にこの4月に入社したピチピチの22歳、中島香奈さんにこの傾斜にトライしてもらっちゃいましょう!
ほら!この傾斜を登るのに、苦闘されている様子が伝わりますか?
ピチピチガールの中島さんがこれほど苦戦するほど本当に急斜面なのです!70-80歳代の方たちがその傾斜を克服してこの地で農業を営んでいらっしゃるとは・・・!
この急斜面を克服する工夫はいたるところに。
トロッコレール
それにしても、この渡し板・・・幅25cmくらいのこんな細いところをご高齢のおじーちゃま、おばーちゃまたちが渡って日々農作業をされていらっしゃると思うと、心配でなりなりません。くれぐれもお気を付けて!
「猫の額のような狭い場所も、更には急斜面であっても、こうやって農耕地にして 活用することができるんだ」
570軒近いみなみ信州の生産者さんは、大規模に花生産されているばかりではなく、傾斜のある小さな面積も花き生産のために耕している方もいらっしゃいます。耕地面積の大小、環境の有利・不利にかかわらず、意欲的に農業に取り組み、鋭利生産されているのです!
そしてなんと、この功績が称えられ、2013年3月、全国でも花き部会は初の日本農業賞(NHK、JA全中などの主催)で大賞を受賞されたのです!
こちらが栄誉ある農業大賞カップ
JAみなみ信州といえば、前編で述べた通り元々はオキシペタルムの産地でしたが、オキシ自体はバラやキクほど消費の多いものではありません。つまり、花だけでそれほど稼げるものではありませんでしたが、生産の主軸をダリアに据え、且つ施設栽培を利用して周年栽培を確立することで、生産金額を劇的に増やすことに成功しました。
また、みなみ信州の広大なエリアと標高差を生かした200品目以上の供給を拡大、結果的に長野の産業を盛り上げ、国内に多い山間部を有効活用するビジネスモデルをも作り上げたわけですね。
部会発足当初は3.6億円だった販売金額は2011年には5.4億に飛躍。まさに戦略に基づいたみなみ信州の躍進があったわけです。
さらには猫の額ほどの土地でも花作りを可能にし、おじーちゃま、おばーちゃまたちが生き甲斐をもって、元気に農業に励んでくれるようにした。
なんと言ってもこの功績が大きいのです。
平成25年厚生労働省発表の都道府県別寿命ランキングを見ると、長野県の寿命は男女ともにぬぁんと堂々第1位!
そのくらいご高齢のみなさまがお元気でいらっしゃるということですね。
元気が先か、やり甲斐が先かわかりませんが、もしかしたら花き生産という農業でみなさまの生き甲斐を作ったことも、本年発表で男女ともに1位に輝いたことに貢献しているのかもしれません。
そして、彼らの燃える花魂に火を点けたのがチャッカマン塩澤さんなのです。
プラス部会全体の団結力と実行力なしではこのような名誉ある賞はもらえません。この賞を受賞したことが、また生産意欲向上に繋がり、みなみ信州の大車輪は大きく前進しているのです。
日本の花き産地としてピリリと辛い、そして大きな存在感を誇るJAみなみ信州なのでした。
◆JAみなみ信州の格言 「日本農業賞受賞おめでとう記念」バージョン
・ダリアは電照栽培を使い、周年出荷を確立すべし。全国唯一の産地になる!
・ダリアの土は団粒構造がベスト!ダリアは土が作る!んだども、土はオラたちが作る!
・ダリアとの出会いは神様の贈り物。歯を食いしばって頑張れば、きっといい出会いがある!
・傾斜のきつい山間地も有効活用すべし!農作物は花がいいね!
・JAみなみ信州をJAみなみ信州たらしめているのは、地の利と技術とやる気とネットワーク!
おじーちゃま、おばーちゃまから20代の若手選手まで、みんな「明るく楽しい花生産」に取り組んでいます!
花作りの生き甲斐が生産者に活力を与え(・・・かどうか定かではありませんが、願わくばYES!)、長野県は全国1位の長寿県という実績を誇ります!
◆ホットなニュース
ちょうどみなみ信州に取材に伺った6月3日、14年後の2027年に開通予定のリニアのモデルがお目見えしたとニュースになっていました。このリニア、正式名称を「リニア中央新幹線 LO(エルゼロ)系」といい、東京から大阪間を時速500キロの猛スピードで結ぶ夢の特急網です。
そんなハイパー特急リニアが、なんと飯田に停車しみなみ信州の管内を横断するようになるのです!東京-名古屋間が40分だというので、飯田へは東京から30分程度で着いてしまうということでしょうか(驚)!
今回は飯田まで新宿から高速バスで4時間かけてお邪魔しました。人口約10万人の飯田市、みなみ信州の管内では17万人の商圏でありながら、住民のみなさんにとっては県外へのアクセスは大変不便なものでした。
ところが14年後には東京への日帰り出張をも実現してしまう夢のリニアなのです!
開通するころには飯田の産業もインフラも大きく様変わりすることでしょう。
全国一の長寿県にありながら、国内でも随一の成長株、みなみ信州!
これはもうみなみ信州の発展に目が離せません!
みなみ信州の花からも目を離さないでください(≧∇≦) !
2011年11月14日
vol.88 八丈島の切り葉・切り花 ~前編~
皆さん!ウンチク探検隊もついに記念すべき第88回目!末広がりの大88回です!
これまでウン探を一度も見逃したことがないというツウなあなたに聞いちゃいます(≧∇≦)
東京都下にある花の産地をいくつ言えますか?
このウン探も88回といえども東京都の産地をレポートしたのは1回か2回か・・・?
2つ以上言えたら、相当ス・ゴ・イ!
今回の取材先は東京都でも有数の花の産地!もちろんウン探も初上陸の地域です。
さてどこでしょう!?
ヒント:羽田から南下することおよそ300km、伊豆諸島の一つで、夏は多くのダイバーや釣り人たちが訪れる南の島!
正解は・・・・・
八丈島!・・・ってここまで引っ張っても、タイトルでもうバレバレですが^_^;
ウン探第88回は「8」つながりで、ここ八丈島からお届けしまーーーす!(*^^)vイェイ!
さて、八丈をディープに知る前に、さらっと一般常識をおさらいしておきましょう。
真中がくびれたこの形は、よく「ひょうたん形」に例えられます。
1960年代にNHKで放送された「ひょっこりひょうたん島」は、諸説ありますがこの八丈島がモデルだったとも言われています。
♪ひょっこりひょーたんじィーま~ぁって若い方々、分かります??
緯度にして九州の長崎、熊本周辺、更にずずーーーーっと西へ行けばヨーロッパより南の北アフリカ、昨今まで政情穏やかでなかったリビアの首都トリポリ辺り、アメリカ大陸ならロサンゼルスより更に南のサンディエゴに相当します。結構“南”よね~。
八丈富士と三原山という2つの火山によってできた島は暖流の黒潮の影響を受け、年間平均気温は18度、冬場の平均気温も10度と比較的温暖、年間降水量は東京全体平均の倍以上に当たる約3,000mmにもなる海洋性気候。日本有数の雨地帯といっても過言ではないでしょう。
森に入れば1年中濃い緑に恵まれ多くの野鳥が現れる。海に入れば亜熱帯の珍魚の宝庫。豊かな自然に恵まれた八丈島の面積約70平方キロメートル。東京都区で最も大きい大田区(約60平方キロメートル)と最も小さい台東区(約10平方キロメートル)を合わせたくらい。
人口約8,000人。ここでは“島内みな知り合い”って感じで、道路で誰かとすれ違うたびにご挨拶。
お名前も皆さん似たような苗字が多いので、ファーストネームで呼ぶのが八丈流。
そんな八丈島は、実は東京都下における花きの大産地なのです。
何を生産しているか。
もちろん高温多湿の環境ですから、熱帯系のものなら何でもお手の物なのですが、花き市場に出荷されているのはロベやレザーファンなどの葉物です。
いまや「“ロベの島”八丈」と言われるほどロベの生産は盛ん。
今回のウンチク探検隊では、なぜそれほどまでに有名な葉物の大産地が八丈島に生まれたのか、秘密を見てまいりましょう。
お邪魔したのは共選産地と個選産地。
いつにも増して記事が長くなる気配ぷんぷんなので、今回は前編/後編とに分けてお送りしたいと思います。スペシャルバージョンです!
まず前編は共選であるJA東京島しょ(とうしょ)八丈島支店。
早速ですが「島しょ」ってなんでしょ?
「島嶼」と書き、「嶼」は「小島」を意味します。
つまり“東京島嶼”といったら東京の小さな島たち。そのうち八丈島にある農協の支店がJA東京島しょ八丈島支店いうわけです。
こちらは八丈支店のレザーファン組合のみなさま。レザー一筋!の専業で他の農産物は作っていらっしゃいません。
組合員の皆様併せて500坪以上で生産しています。
お邪魔したのはレザー一筋21年の佐々木忠彦さんの圃場。2種類のレザーファンを生産しています。
え?2種類?レザーって品種の違いがあるの?と思われた方はなかなか鋭いですね。
市場に出荷されるときはその別なく全て「レザーファン」として出荷されますが、実は八丈のレザーは厳密に言うと2品種あるのです。
いや、しかしどちらがどちらなのか全然見分けがつきません!?(゚_。)?(。_゚)?アレレ?
分からなくてもいいのです(*^-^*)ダイジョブ!
見た目は殆ど同じの2品種は、日本に最初にやってきた在来種と“マイルド”という改良種です。しかもココ八丈島で育種されました。在来種の中から良い品種だけを選抜に選抜を重ねてマイルドが生まれたのです。
“良い品種”とは何かというと・・・
① 大きくてしっかりしているもの
② なにより胞子がつきにくいこと
レザーはシダ植物ですから、小学か中学の理科で習った通り、花を咲かせて実が成って・・・という方法ではなく、葉の裏に付く胞子を飛ばして子孫を増やすのです。
ですから、普通のシダの裏はこの通り胞子でぎっしり!
WOW(@_@;)!!見る人が見たら気持ち悪いと思うことでしょう・・・。
もしくは逆に「素敵」と思うかも?
一般的にはこの胞子がない方が受け入れられやすいので、胞子がつきにくいものを改良してマイルドが生まれたというわけです。
ですから、在来種の中でも胞子が付いておらず、きれいなものは現在でも出荷されます。
“切るタイミング”はどのようにみるのですか?
「まず色を見て、緑が濃いこと。
その次に触ってみる、まだ湿っていて柔らかい場合はまだダメなんだ。そういうのは色が少し淡いでしょ。これではまだ若いから、切った後に水を吸い上げる力が弱いんだ。レザーはシダ類だから水が好きでしょ。水が上がらなかったら致命的だから、ここを見誤ったらいけないんだよ。
(↑こちらは形は既に整っているが、周りの葉に比べて色がまだ淡い。これは収穫にはまだ早いということ)
そして、葉が固くて乾いていること。
それを手で切り取るんだ」
え?手??
手で切り取るんですか。疲れませんか?
「その方が作業が早くて効率がいいんだ。こうやってね!」
なるほど。作業性の問題ですね。
「だから腰が痛くなっちゃうんだよ」
これはなかなか大変じゃ(>д<。)
だから、皆様のお悩みは腰痛なのだとか。こうやって腰にサポーターを巻いていらっしゃる方も。
腰は「月」(にくづき=つまり「体」)に「要」(かなめ)と書きます。農家の皆様、くれぐれもお大事に☆
さて、良いレザーを見分けるポイントは?
「必ず表と裏からチェックすること。
表から見て左右対称なもの。そして今度は裏を見てさっき言ったとおり胞子が付いていないもの」
生産管理で気を付けていらっしゃることはありますか?
「冬場は最低気温4-5度が限界なんだ。霜が降りると若い葉はダメになっちゃうからね。最近は温暖化で施設内に霜が降りるということも少なくなったけど、油断できないんだ。」
そう。レザーにとってベストの管理は温度23度、湿度80%
・・・って結構蒸し蒸し蒸していますね~(;´д`)フー
夜温は14-15度程度が理想的。この昼夜の温度差がないと葉が締まらないのです。
しかし、それ以下の温度になるとやはり気を付けなければなりません。
レザーにとって理想的なこの環境は、実は世界でもコーヒーベルト(コーヒー豆の産地が集中している一帯。赤道を挟んで南北回帰線25度の間)の環境とほぼ同じなのです。
【↓コーヒーベルト】
実はレザーファンの輸入品もこのコーヒーベルトの国々から出荷されているのがほとんど。しかも赤道直下でも標高1,000メートル以上の所だったり、植物の栽培には大変恵まれた環境でレザーがじゃんじゃか生産されているわけです。
八丈島はもちろんコーヒーベルトには入っていません!そのようなハンディキャップの中、八丈のレザーも世界のトップレベルの品質を保っているのです。バラやカーネーション、トルコギキョウや球根類などなど(ありすぎて以下省略)の生産品質と並び、レザーにおいても日本のトップクラスは世界のトップクラスというわけですね。
こちら佐々木さんの奥様。大切な戦力です。
奥様にとってレザーファンは何ですか?
「敵であり味方である」
スパッと答える奥様。さすが、反応がいい。
つまりどういうことでしょうか?
「仕事は決して楽ではないので“敵”とも言えるし、精神的に救ってくれるものでもあるので“味方”ともいえる」
「敵」というのはご苦労が多いということが容易に想像されますが、恐らくは味方が前提なのでは?“味方、ときどき敵”といったところでしょうか。
そうでなければ、このようなりっぱな↓鉄骨の施設でレザーを作りませんよね( ^―゜)b
そう、八丈の皆様は鉄骨の施設でレザーを栽培されている方も少なくありません。
って、えーーーーぇえ!!(゚ロ゚屮)屮??!!
鉄骨はちょっとやり過ぎじゃありませんか?鉄骨の施設では作るのにもお金がかかるし、葉物生産で回収するにもなかなか時間がかかるのでは?
いえいえ、それが違うのです!
ここ八丈島は日本屈指の台風銀座に加えて、台風のないときでも強い潮風がビュンビュン吹き荒れる海洋性気候なのです○o。困ヽ(*゚Д゚*)ノ困。o○
だから通常の八丈の一般家屋は2階建てが少ない・・・。強風が吹くから。いや、“吹き荒れる”から。
昔はよく木造家屋の屋根を吹き飛ばされたのだとかΣ(゚д゚;)!
そのくらい強風が吹き荒れるので、ヤワな施設では飛んで行ってしまうのです。
それに、強風が吹くたびに「大丈夫かな・・・大丈夫かな・・・」という心労やストレスを考えたら、やはりこれは丈夫な鉄骨の施設を作るということがいかに大切なことか、お分かりいただけると思います。はい☆-(^ー'*)
風も強いし雨もよく降る。
この鉄骨施設に守られて、気温と日照と湿度は理想的な形で確保できる。だから八丈の皆様の手によって丁寧に作られたレザーは肉厚で艶々☆
発色も違うし、良く持つのです。
ところで皆さん、日本でレザー栽培発祥の地はココ八丈島であることをご存じでしたか?
(さっきチョット言ってしまいましたが・・・)
昭和40年、当時の横浜植木会社(現:横浜植木株式会社様)から30株ほど購入したのがきっかけ。
昭和50年、次世代を担うスーパースターとして八丈島で本格的に増殖し始め、30株から始まったレザーは300株、3,000株、30,000株と爆発的に増えていき、量販体制に。気付けば洋花ブーケの葉物といえばレザーファンは欠かせないというほど一世風靡した品目です。
昭和50年代、レザーファンの時代が到来!
でもどうして、これまた「レザー」と呼ばれるようになったのでしょうか?
英名をレザーリーフ・ファーン(Leatherleaf Fern)といいます。直訳すると「革質の葉を持つシダ」。
想像ですがツヤツヤとした葉の表面が革素材のように見えたのでしょう。そのような高級素材にも例えられたレザーですから、日本でも大ブームを起こすのは至極当然のことにも思えます。ブームを起こすには確固たる生産体制がなくてはなりません。その生産を支えたのが、この八丈島の皆さんなのです。
これからも国産のレザー供給を力強く支えてくれることでしょう。
さて、こちらは独特な雰囲気をお持ちのお父さん。
こんにちは(✿◕ ‿◕ฺ)ノ))。₀: *゚✲コンニチハ✲゚ฺ*:₀!!
なんと知る人ぞ知る八丈島の生き字引きこと喜田孝(きだ・たかし)さん、66歳です。
八丈島農協のロベ生産組合の第2代組合長さんです。ロベの話を伺う前に、八丈島のオリジナル言語について教えていただきました。
なんでも八丈島の方言は日本に数ある離島の中でも最も古い方言なのだとか。そのような貴重な言葉にもかかわらず、全国でも4番目に話す人が少ない方言でもあるのだとか。年々話者が消えゆく幻の方言。せっかくですから喜田さんとちょっとお話してみましょう。
喜田さん、こんにちは!
(喜田さん)「ロベ∀йィ゚+o。△★*@Θ±。。。」
え? ☆!☆?☆ (☆_◎) ☆!☆?☆チンプンカンプン(衝撃的!!)
なんておっしゃいました?全然わかりませんでした。
今、八丈の言葉で何かおっしゃったのですか?それとも日本の共通言語だったのでしょうか・・・それすらワカラナイ!
すみません、昔から英語も聞き取りが苦手だったもので、もう少しゆっくりお話していただいてもよろしいでしょうか?
「ロ・ベ・オ・ヤ・マ・ナ・ベ・ト・カ・ラ」
はあ・・・。
八丈島の言葉のようです。
それにしてもこの音の羅列は一体何を意味しているのでしょう。(゚_。)?(。_゚)?
「“ロベヲ、ヤマナベトカラ”って言ったんだよ」
あぁ!なるほど、“ロベヲ、ヤマナベトカラ!”とおっしゃったのですね。そして普通の言葉もお話になるんですね・・・
それでなんとおっしゃったのですか?(←全然理解が進まない)
「“私はロベを山に植えました”って言ったんだ」
なるほど、やっと伝わりました。ありがとうございます。
八丈の方言をお話しされる方は今となっては大変貴重ですね。
で、その貴重な人物喜田さんも“ロベヲ”作っていらっしゃいます。
「昔はね、牛を飼っていてホルスタインのおっぱい絞りをしていたんだよ」
へ~!ホルスタインのおっぱい絞りからロベ生産に職業変更ですか。かなりの転身だと思いますが、何かきっかけはなったのですか?
「昔はココ八丈では畜産も有名だったんだよ。昔は八丈の牛乳は世界一と言われたものだったんだ。
でも飼料の価格高騰などで徐々に畜産は儲からなくなっていたんだ。だから私も畜産をやめて昭和35年にロベ生産に移ったんだよ。そのころはロベが成長株だったからね」
あ、ホントだ。
ふと振り返れば、農協の集荷場と同じ敷地内に牛乳の加工場がある・・・。
こちらが今でも有名な八丈牛乳。
早速いただいてみると・・・(* ̄O)◇ゞ ゴクゴク
わッ!“本当の牛乳”の味がする!
いつもスーパーで買う牛乳と明らかに違います。
本当はこのような味をしているということを教えてくれる“本物牛乳”という感じです。しかも低温殺菌(今回もお得意の四文字熟語か?いや、花とは関係ないからやめとこ)。
おいしいですよ。牛乳好きにはたまらない。
八丈名物、生き字引の喜田大先生にいろいろ教えていただいたところで、現役組合長にバトンタッチ!
こちらは八丈農協で250軒にも上るロベの大生産組合のリーダーを務めるのが第4代組合長の浅沼實(あさぬま・みのる)さん57歳。
實さん(八丈は同じ名字の方が多いので、現地の習慣に倣って下のお名前にて!)も25年前に民宿経営からロベ生産に華麗なる転身をした転身組です。
ちょうど集荷所で集荷作業をされていました。
ロベを階級分けして箱に詰めているようですが、ロベの良し悪しはどこでみるのでしょうか?
“良いロベ”の見分け方を教えていただけますか?
「本当に良いものは“葉切り”がされていないものだよ」
↓葉切りされているもの。葉先がバツン!と切ってある。
ではどうして葉切りして出荷するものがあるのですか?
「風に吹かれて周りの葉と当たったりすると葉の先が傷むでしょ。だからそこを切り取って出荷するんだよ。
切らないとその傷がだんだんにじんで広がってきてしまうからね。
だから葉先が切れていなくて先端まできれいに伸びているものが“秀品”、葉切りされているものが“優品”なんだよ」
(※品質の階級は上から秀品、優品の順です)
それにしても、見てくださいと言わんばかりの素晴らしい艶です。
ロベはヤシ科ですから、主な出荷期は春夏かと思いますが、冬場は何をされているのですか?皆様ロベ専業と伺ったのですが?
「枝うちとか圃場のメンテナンスだよ」
毎日?
「そう、毎日。
きちんと冬場にメンテナンスをしないと、葉が伸びたい放題では下の方の葉は日照不足にもなるし、高温多湿になって虫害や病気も出やすくなる。夏場に良いものを出荷するには冬場のメンテをいかにきちんとするかにかかっているんだよ」
ふと見れば實さんのお足下はなんと“地下足袋”!
いつもこのスタイルですか?
「そうだよ。集荷場と圃場ではいつもコレ。滑らないし踏ん張りがきくんだ」
それではお待たせしました!ロベの圃場にお邪魔してみましょう。
みなさん、ロベがどのように作られているか想像できますか?
こんな感じかしら?
それともこんな風に植えられているのかしら?
はたまたこんな感じの高いヤシにロープ一本で登って切ってきたりするのかな~、(だから實さんは地下足袋を履いていたんだ)なんて想像されているみなさん♪
真実をお伝えします(*`д´*) ←真剣な面持ち
コチラがその圃場です。
えええーーーーーぇ!なんだか想像と全然違うぅ!
お邪魔したのは共選でロベ組合を構成する250人のうちのおひとり、村上真理子さんです。
この真理子さんがまた只者ではありません。
何を隠そう2010年2月の関東東海花の展覧会にてロベで「農林水産大臣賞」を受賞したスゴ腕なのです。
「色ツヤがいいからって評されたかな。良く覚えていないわ。ハハハッ(笑)」
さすが、この明るさですよ。ロベにツヤをもたらせているのは!
いやいや、それもあるでしょうけどウン探の名にかけて、農水大臣賞受賞の秘訣を「真理子さんの明るさ」で片づけてはなりません!(自戒!)
圃場を拝見いたしましょう。
直射日光がビシバシ当たると、さすがのロベも葉が焼けてしまうので、遮光のためにネット施設で育てています。
「このネットは風除けの意味もあるのよ。強い風に当たると葉先が茶色くなっちゃうから。」
真理子さん、ロベ生産で何か独自に心がけていらっしゃることはありますか?
「そ~ね~、肥料は年に2回でしょ、あとは除草をしっかりすることかな。ロベにとっては台風と並んでムシが大敵なので、除草を徹底するというのは防虫対策でもあるのよ」
なるほど~。
ロベ畑って下から覗くとこのようになっているのですね~。
これはまたきれいに並んでいらっしゃること!∑(o'д'o)!!
「そうそう、それからロベの木を植える時に結構間隔を取るのよね。90-95cmくらい。
人によっては75cm以下の人もいいるくらいなんだけど、ウチは間隔が広い方かな。そうすると風が吹いて葉が揺れ動いても、葉同士が擦れ合わないし葉先が割れなくなるのよね」
あらまあホント。葉先がきれい!これなら葉切りする必要ありませんね。
水やりは?
「ここ八丈では水やりの必要ないのよ。1年を通して十分雨も降るし、湿度もあるしね」
どこから切っていくのですか?
「幹の下に生えている方から順に切っていくのよ。樹の天辺に生えている5枚位を残してね。8月には全て収穫してしまうの」
この施設内のロベの樹はだいたい1.4mくらいでしょうか。ここまで大きくなるのにどのくらいかかるのでしょう?
「10-12年。実生(種から育てること)から苗にするまでに4-5年かかるのよ。苗になったら定植して、この高さになるまで更に5-7年ね。どんなに早くても定植から5年目でやっと製品を採れるようになるの。
同じタイミングで植えても、苗ごとに生長の差があるから、結構高さはボコボコしているでしょ(笑)。高くなりすぎた樹は葉を採った後に幹から切ったりするのよ。そうでないと、低い樹たちの日照権を阻害しちゃうから」
1株から何枚くらい採れるものなのでしょう。
「1回で7-8枚。
切らずに置いておくと葉先が黒ずんできたり割れたりしちゃうので、きれいなうちにね。施設内を回って採花のタイミングをよく見てね。どこを残しておいて、どこを今日切るかの判断が駆け引きだったりするのよね。いまだに日々勉強中よ(笑)」
あれれ??(゚~゚o)???
ロベの葉元をよく見てみると、葉になりかけの子供みたいのがいます・・・これは?
「葉じゃなくて、トゲだよ」
トッ、トゲッ!?∑( ̄[] ̄;)!
ぬぁ、ぬぁんと!こんなに大きくて鋭いトゲが付いているのですか?ロ、ロベに??
あ、ホント触ると固くて・・・これ刺さったらイタイでぇ~=(´□`)⇒グサッ!!
ん?つまり、このトゲを処理して出荷してくださっているということですか?
「そーよー!」
だから真理子さんの手もこの通り・・・アタタタッ!
指を指しているところはとげが刺さって皮膚が変色してしまったところなのだとか。
「トゲはね、1度水に浸けるとふやけて取りやすくなるの。
数時間置いたものをこうやってカマで取る。1本1本両サイドね」
エ━━━(゚ロ゚;)━━ッ!!(驚)
ロベの出荷前に1本1本トゲをカマで取っていてくれていたとは、知りませんでしたm(_ _)mモウシワケゴザイマセン!
市場では大きい箱にたくさんロベが入ってくるものですから、てっきり簡単なものかと思ってしまいましたが、真理子さんの白魚のようだったはずの手をこのように傷つけてまでも、このような鋭いトゲを1本1本取ってからご出荷頂いていたとは・・・脱帽!
【トゲ取りシーン】
きれいにトゲが取れました。
出荷までは本当に手間のかかるものなのですね。
でも真理子さん、どうしてロベを生産品目として選んだのですか?
「私にはロベしかないのよ~。ロベなら難しい技術も要求されないし、連作障害もない。
自分のペースでできるでしょ。ご年配の方でもなんとかできるということは、自分が年をとってからも続けられるってことだしね。
八丈にロベがなかったら生活していけなかったという人も多いのよ、ウン探さん」
連作障害もなく年を取ってからも続けられるというサステイナブルなところがいいですね。
「そうそう、同じ八丈名物でもアシタバは3年で畑を替えなくちゃいけないの」
← 八丈名物「アシタバ」
農業を続ける人にとって、同じ土地でずっと同じものを作っていけるというのは大きなメリットですね。
ロベがあっての八丈島。ロベが八丈の経済を大きく支えていることがよく分かります。
こうしてトゲまできれいに処理されて、集荷場に集められ、出荷の準備ができた商品は八丈島の港に集められます。
こちらがその港、底土港(そこどこう)といいます。
底土港(そこどこう)ってそこドコ?(ア。スミマセン!)
いやいや、冗談抜きにしてそこはどこかというと、八丈島の形をひょうたん形に例えると、このくびれのところにあります。
八丈島のメインの港です。
底土港から出船して東京は竹芝桟橋に到着します。所要時間はおよそ10時間。飛行機であれば1時間足らずの距離なのですが、航空貨物事業が撤退してしまったので、切り葉のような大きな箱のものは船で送るしか手段がなくなってしまったのです。
東京都下でありながら大消費地が遠い。離島である分、生産資材や肥料のコストも本土より高い。加えて、船は欠航率が飛行機よりも高い。これが八丈で花きを生産出荷する人の悩みです。
それにもめげず、平坦地が少なく意外と山がちな八丈で、急斜面を開墾して“段々ロベ畑”にしてでもロベの量販体制に臨みます。
そりゃもうこんな感じ↓
車を走らせれば、流れる景色はロベ林。
↓谷間にも(写真上部の緑がロベ)
♪あれに見ーえるはロベではないか・・・ってホントに木々の向こうに見えるアレもロベです。
ちょっとスペースがあればすかさずロベを植える。どんなに狭い場所であっても、まさに生き字引きこと喜田さんのおっしゃる「ロベヲナベトカラ」状態。
八丈の方々をここまでロベ生産に駆り立てるものって・・・
それは後ほどレポートいたします( ^―゜)b
その前に季節外れですが、せっかくなので共選の「サンダーソニア」の生産現場をちょっとだけお見せしちゃいます。(ウン探を見てくださっている方だけに特別♪)
こちらは奥山隆(おくやま・たかし)さんです。
サンダーソニアを共選で出荷してくださっています。今は時節柄花もなく、球根の育成が主な仕事です。
「サンダーの球根はね、こうやってV字型になっているんだよ」
へ~、V字型の球根ですか。珍しい形をしていますね。
ほら、こんな感じ。なんだかカワイ♪
「養成するときはまずこのV字の先を見るんだ。
これは先が黒くなっているでしょ。
これは組織が死んでいるんだ。こうなっちゃうともうダメ。
これは切って、処分する。
もう一つを見てごらん。こっちは白くてぷっくりしている。
これは生きている証拠。
一つの球根の中でも、生きている方だけを切り取って養成するんだ」
この白い粉は何ですか?体操選手の手ように白粉にまぎれていますが・・・?
「殺菌剤だよ。割ったら傷口ができるでしょ。そこからバイ菌(ウィルス)などが入ったら大変だ。
ダメになっちゃったら、今の努力が水の泡でしょ。
もっのすごく繊細なんだ、サンダーの球根ってのは」
アレレ?どうしてその作業場にスケールがあるのでしょう???ヾ(゚ー゚ヾ)^?。。。ン?
「もちろん重さを測るためだよ。3-4グラムの球根と5グラム以上の球根とに分けているんだ」
な、なんと!∑o(*'o'*)o ウオオォォォォ!!
どうしてですか?4グラムと5グラムの境ってそんなに大きいものなのですか?
「芽が出てきた植物体の大きさとかエネルギーっていうのは、球根のサイズに大きく影響されるからね。
3-4グラムの球根は7-8輪の花が付いたMサイズの商品になるんだよ。5g以上の球根なら9輪以上、出荷時の長は80cm以上という大変立派なLサイズ商品。
採花してからMとLに仕分けするのではなく、最初から分けて商品のバラツキを最小限にするんだ」
なるほどぉ~。
そこまで緻密に良いものを作ろうとしている。
「こうして丁寧に処理していったものを、植え付けまでの間冷蔵庫に保管しておくんだ。
3-5℃で3か月間ね。
一度冷蔵庫に入れた球根を3月上旬まで時期をずらしながら定植するんだ。あえて開花時期をずらして、継続して採花できるようにね。
これを“休眠打破”っていうんだよ」
“休眠打破?”
眠眠打破ならよく知っていますが・・・ア、スミマセン、休眠打破ってなんですか?
「サンダーのような球根植物のうち、多くは季咲きは5月でしょ。
(※季咲き=人工的な処理を加えずに、季節がくると自然に開花すること。本来の旬)
球根の場合は冬の寒さに当たると、“寒いから寝る~”とお休みなるわけ。球根はむしろ“寒さ”に当てないといけないんだけど。
そのあと春が来て気温が上がると“わ~い!温かい~(≧∇≦)”と目を覚まして芽が動き始める。
そうすると開花のタイミングがちょうど5月なんだ。
この冬と春を人工的に作るのが休眠打破っていうんだよ」
球根を冷蔵庫に入れて寒さを当てて、冬だと思わせる。(本当の季節な夏なのですが、冷蔵庫に入れて冬を体感させちゃう!)
そして、冷蔵庫から出して圃場に定植、隆さんのところは施設栽培なので温度コントロールをして、本当の季節は冬なのですが今度は春だと思わせる。
畝によってタイミングをずらしながら球根を定植していくことによって、季咲きを待たずに冬でも継続的にサンダーソニアを採花することができるのです。
少しだけ芽を出したサンダーたち。良く見ると既にサンダーの葉の特徴を示しています。
残念ながら今はまだ花はありません。
今日のところはフリー素材で入手したサンダーソニアの写真で堪忍してください。スミマセン!
下を見ても花はないので、ふと上を見ると・・・
あ、電照がある・・・!
もしかしてサンダーソニアって電照栽培なんですか?
「電照栽培じゃないよ。夜業用だよ」
や、夜業・・・!!w(゚o゚*)w!!
夜遅くまでそんなにお仕事されるのですか、隆さん?
「一つ一つ球根を手で植えていくからね。1ベッドで4,000球植えるんだ。
日が短くなると明るいうちに作業が終わらないから、この夜業用ライトは必須なんだよ」
どうもすみませんでした。
隆さん、くれぐれもご無理をなさらないようお体を大切にしてください。
さてさて、ここまで色々皆様に教えていただいたのですが、う~ん、わからないな~。
八丈島の皆様をここまでロベ生産に駆り立て、ロベの島八丈が誕生した理由・・・
こちらは八丈島農協の持丸元一(もちまる・もといち)さん。57歳。
「八丈といえば葉物。昔から八丈は葉物で有名なんですよ」
はあ・・・。でもどうして葉物で有名な八丈が誕生したのでしょうか。
「八丈の気候とか諸条件に合っているんですよね。
例えば花物をやろうと思ったら、苗代や球根代はのコストがかかるし、市場までの運賃は東京都下でありながら本土とはレースにならないほど高いんですよ。
運搬コストが全般に高いから内地に送る商品だけではなく、八丈に送る商品も高い。だから八丈島の物価は少し高いと言われるんです」
加えて風が強い八丈からの船便は航空便よりはるかに欠航率が高い。
「これがまた結構欠航するんですよね」(あ~、ダジャレ得意なんですか?)
↑嵐の底土港。これでは船が出るはずもなく・・・。
「多い時では週3回出荷のうち2回も欠航するんです。
しかも、出荷したい時に限って。春先は春一番も吹きますから、3週間出ないということも決して珍しくないんですよ」
となると、せっかく採花したのに市場に送れず全部廃棄なんてこともよくあるわけです(+_+)ショック!
通常通り船便に載せられたとしても、海の上で揺られているだけで10時間。東京都下なのに長いぃ~!
そのようなリスクをトータルで考えたときに、なかなか「葉物」という選択の代案を考えるのは難しくなってくる。
そのような制約条件の多い中、せめて生産と販売は安定してできるものということでロベやレザーになったわけです。
では、八丈島とロベ・レザーとの出会いは何だったのでしょうか。
必ずその出会いがあったはずですよね?
なんと八丈島における園芸の発祥は享保年間にも遡るのだそう。
享保といったら江戸時代8代将軍吉宗の享保の改革の享保年間??
そうなんです。江戸時代、日本の花卉園芸文化は飛躍的に繁栄したと言われますが、離島であるここ八丈でさえもこの時代に園芸文化の発祥を見ることができるのです。
そのころ本土からもたらされたのはソテツ、ボタン、シャクヤク、キク、バラ、アサガオ、ツツジなど。これらに加えて八丈に自生していたのはソテツ、タニワタリ、フウラン、セッコク、エビネラン、ギボウシ、マンリョウなどがあり、人々は多種にわたる観葉植物に見飽きることはなかったと言われています。
しかし、この観葉のための植物から八丈の経済を支える園芸植物へと成長するのは大正時代になってからでした。
はい、ここがポイント!( ^ー゜)b 八丈島とロベとの出会い。
大正10(1921)年、当時の「横浜植木会社」(現:横浜植木株式会社)という園芸会社が八丈島の亜熱帯的な気候に目を付け、東南アジアからロベ2株を持ってきて植え付けたのが、まさに出会いとなります。←八丈に目を付けロベを植えたこの方、この企業がやはりセンスありますね~。
このロベの2株が雌木と雄木の対になっていたために、これが親木となって種子が採取され、ロベはどんどん殖えていきました。
このように八丈にもたらされた園芸品目は数知れず。八丈の気候条件と相まって、後の八丈を園芸王国にのしあげたのです。
「八丈にもたらされた最初のロベの親木がまだあるんですよ」と元一さん.
えッ∑(゜◇゜;) ギョギョッ!
化石でも標本でもなく、ホンモノの親木があるのですか?
イキテル??生きていらっしゃるんですかぁ????
「そう。見てみますか?」
と連れて行ってくださったのは「ロベの碑」。
コチラ↓
いつもロベをご利用の皆さま、このようなものがあることをご存知でしたか?
(あたくしは存じ上げませんでした・・・カ・ン・ゲ・キ(დ☣‿☣)!!)
八丈の経済を支えるロベに最敬礼の思いを込めて、昭和58年に自治会の皆様によって建てられました。
ロベの碑の両脇を護衛するかのように立っているのが八丈に最初にもたらされたロベの2本です。
そのお姿は斜陽を浴びて神々しいほどです。
お足元はこんなに苔むして・・・!
八丈の皆さんにとっては、戦後の物資欠乏や食糧不足の危機を乗り越えた今日の経済的繁栄もこのロベご夫妻の賜物なのです。
いわばロベの島八丈を生み出したお父さんとお母さんです。
このお二方あっての花き業界、そして大田花き。
ロベご夫妻、ありがとうございます(合掌)。
もうここまで「ロベ」を連発すると、「なぜ“ロベ”というんだろう・・・」と分からなくなってしまいましたが、ロベとはその学名であるフェックス・ロベレニー(Phoenix roebelenii)を略してロベと呼ばれるようになりました。最初から略しっぱなしですみません。。。
はい、それでは最後に共選を代表して實さん!
八丈では消費者の方々と直接お話しされる機会も少ないでしょうから、ここで消費者の皆様に一言お願いします!
「ロベを使ってくれてありがといと思っています。
生け花やスクールの先生、仏業務の方々、そのほかロベをいつも使ってくださる皆様、長い間ロベを使ってくれてどうもありがとうございます」
皆様への感謝の思い!お預かりいたしました!
ロベを使ってくださっている皆様に届きますように~!
・ 八丈のレザーもロベも品質は世界トップレベル。緑は濃く艶やかで肉厚、葉が締まっていて本当に美しい。
もう一度その美しさを見つめ直すべし!
・ レザーファンの栽培条件はコーヒーベルトの条件がベスト也。
コーヒーベルトより少し北緯の高い八丈では寒さから葉を守れ!
・ ロベは葉先が命!
風に揺れても葉がぶつかりすぎないような間隔で定植すると◎。
トゲは取っても刺されるな!生産に携わる皆様はご注意ください❤
・ 離島の制約条件、限られた選択肢の中で島の経済を支えるほどの
大きな産業を生み出した八丈ピーポーのスピリットを見習うべし!
・ 台風銀座八丈における施設栽培は鉄骨が基本!
・ ロベの島八丈を生み出したロベご夫妻に最敬礼の念を以って臨むべし!
八丈にお出かけの際はぜひ立ち寄ってみてください♪
後編につづく
2008年4月25日
vol.57 静岡県 JA伊豆太陽
伊豆半島の最南端に位置する南伊豆町は、1年を通して暖かな常春の町。
太平洋の大海原を三方に望み、海あり、山あり、温泉ありの風光明媚な景勝地ですね。
4月、春一番に咲いた河津桜は青々とした新緑をつけていました。
河津桜の名産地、河津町から最南端の南伊豆まで、JA伊豆太陽を代表する草花を
うんちくThe Movie2部編成でお届けしてまいります。
まずは、伊豆太陽について勉強してみましょう!
詳しくはコチラ⇒http://www.ja-shizuoka.or.jp/taiyo/topix/topix.html
JA伊豆太陽 第1弾 『キンギョソウ』
発色鮮やか、しまりの良い伊豆のスナップ、つぼみが咲ききるマーガレットの秘密に迫る!スナップとマーガレットの育種に取り組む、伊豆農業研究センターの稲葉さんが解説します。
第2弾 『マーガレットの未来を占う』
第1弾に引き続き、伊豆のマーガレットにスポットを当てます。
伊豆農業研究センターを舞台に、私たちの知らないマーガレット育種の現場をご紹介します。第1弾に引き続き伊豆マーガレット生みの親、稲葉さんに試験場をご案内いただきました。
河津町特産のカーネーション、花菖蒲も5月の需要期を前に順調な作柄です!
?大田花きでの展示会の様子? 2007年度版/2008年度版 ◇伊豆のスナップは白さが違う!
◆JA伊豆太陽の格言◆
温度をかけて咲かせるため、白品種の花は乳白色から純白に。
◇伊豆マグは作りやすく、使いやすい。
これからも続々と、作り手と使い手のことを考えた新しいマーガレットが登場します。
◇マーガレットの水揚げが心配なら、最後の1輪まで咲ききる“エレガンスホワイト”を使うべし。
◇伊豆はオリジナル品種が豊富!自分の好みに合ったものを見つけてマークするべし。
◇温泉熱を利用した河津の花菖蒲は日本一早咲き。60年の栽培の歴史が確かな品質を生み出す!
2007年9月19日
vol.45 福岡県 JAたがわ&JAみい
福岡県第4弾!
各地でたくさんの農産物が作られている福岡ですが、今回 始めに訪れたのは田川市です。
以前、炭鉱の町として発展し、言わば 日本の近代産業の原動力となっていた地域!
そんな田川が中心となり、今 県を挙げて最先端農業に取り組んでいました。
?21世紀を勝ち抜く攻めの農業を目指して?
<JAたがわ種苗センター>まずは、今年4月より稼動し始めた大規模育苗センターを訪れました。
なんと、自然に囲まれた広大な敷地 46,600?にも及びます。
そこで行われている育苗システムとは…
播種 冷蔵
発芽
冷蔵庫で管理したのと、そうでないものでは、20日程生育に差が出るのだそうです。
今は春に市場へ出荷する用の苗作り真っ最中!
しかし、苗作りの段階でもスリップス、コバエなどの天敵に狙われてます!
そうして、根も張ってきたばかりの赤ちゃん苗が、栽培農家へ里子に出されるのです。
そんな“JAたがわ育苗センター”の強みは?
高品質な苗の安定供給によって地域ブランドが育成できる!
農協で数量を把握できるため、戦略的な販売ができる!
という二大メリットがあるのです!
そんなシステマティックな大規模施設ですが、廻りを見渡すと…
施設脇には山並みが望め、本当に自然の中にあるのだと実感!!
でも良?く見ると、平らになっている山が!
香春(かわら)岳と呼ばれています。
昔は田川で一番高い山だったとか。しかし、セメントにするため削って石灰を採取しているうちにこのような姿になってしまったようです(>_<)。
さてさて、ここからは生産現場の様子をお伝えします!
?アスターの周年・安定供給を目指して!?
<JAたがわ・(有)グロウテック>
種苗センターに程近い高台で、周年アスター栽培を目的として新しく建てられた生産団地です。
早速、栽培の秘訣に迫ってみましょう。
広大な敷地で周年出荷を実現!
ひと屋根ごとに1週間ずつ生育ステージをずらし、2連続きのハウス×6棟のローテーションによって、全国的にも少ない周年出荷を実現しています。
⇒⇒
(播種?生育段階)
土は使いません!
アスターは連作障害が発生しやすい植物で、連作が困難と言われています。
そこで、連作障害の恐れがなく、安定出荷できるアクアフォーム溶液栽培を行っています。
アクアフォームとは、吸水性スポンジを砕いたようなものなので、空気の通りや水通りがよいだけでなく、土と違って無機質なので、必要な肥料だけ与えれれば土作りをする必要がありません。
さらに、養分もタイマーで時間を決め、適量が自動的に行き渡るようにシステム化されています。
ハウス内は土足厳禁!
連作障害を防ぐには、雑菌を入れないのが一番!
そこで、ハウス内には靴を履き替えて、さらに消毒をしてから入るほど徹底的な管理がされていました。
こちらのハウスはなんだかスッキリして見えませんか?→→→
「溶液を与えると湿度が高くなるので、下葉は傷みやすいんです。
繁茂すると病気も入りやすいので、風通しを良くするため先に取っているんですよ。」
と代表の佐野さんが教えてくださいました。
なるほど、これなら栽花も簡単そう!
まだ、稼動し始めて2年目で、溶液自動管理システムもデータを取っている段階。
「今後 3年、5年と経つにつれ、より品質も向上していくよ。」と佐野さん。
順調にいけば、1年に何本切れる、とまで管理できる工場生産のようになるかもしれません!
今後の目標は、「規格を落とさないように2Lの長さは確保しつつ、いかにハウスを効率よく回転させていくかです!」と意気込んでいらっしゃいました。
佐野さんからお花屋さんへのメッセージ
周年で出荷するので、他のスポット産地と違っていつでも対応できます!
***出荷品種***
?山育ちの丈夫なトルコキキョウ!?
<JAたがわ・高瀬花園>
早速、ハウスへ案内していただいたのですが…
「ここで、軽トラックに乗り換えて!」と向かった道は、まるで獣道!!
左の写真は、娘さんの舞ちゃん、美紅(みく)ちゃん。
大きな岩もゴロゴロある急な坂道を登って、ようやく到着したハウスでは色とりどりのトルコキキョウが出迎えてくれました。
こちらのハウスでは育種もされており、珍しい品種いっぱいの状況に興味津々!
↓まるで白い薔薇のような花型や、↓変わった色合いの品種↓
赤系品種もこんなに沢山!絞りや八重咲き品種など気品を感じさせる花にうっとりします!
さらに、八重の花は 触るとカサカサと音を立てるぐらい花弁が固い!
これは、標高600mという栽培環境のなせる業のようです。
素晴らしい環境ですが、当然ココは夏だけの1作栽培。
雪が降ったら登って凝れませんから…。暖房や電照が必要な品種はご自宅近くのハウスで栽培しています。
でも、栽培できないコノ冬場にイイ商品を生み出す秘密があったのです。
雪が土の悪い成分を全部洗い流してくれる!
山に住む鹿のフンが肥料になって天然で、且つ適度な養分が土に加えられる!
そうして、翌年もまたいい環境で栽培ができ、新しい品種が生まれるのです。
出荷品種の特徴は?
マイシリーズ:小輪で輪付きが多いもの
ミクシリーズ:大輪八重+フリル咲き
もうお分かりですか?
高瀬さんによって生み出されたオリジナル品種のシリーズ名は、娘さんの名前だったのですね。
←高瀬さん手作りのPOPです!
画像をクリックすると、大きくなります。
地元農協の営業担当を経て、30歳で脱サラして花卉専業農家へ転身。
標高300?600mの冷涼な気候を活かして作型を工夫され、一般市販品種とオリジナル品種のリレー出荷を手掛ける高瀬さん。
今後はさらに育種に力を入れて、オリジナル性の高い商品を提供していきたい!と意気込んでいらっしゃいました。
>高瀬さんからお花屋さんへのメッセージ
高冷地の栽培環境を生かして作った品質の良い花をご利用ください!
ブライダル需要にはもちろんですが、花弁が厚く花持ちがいいので、いつ必要になるか分からない葬儀用としてもオススメします!
?どこにも負けない!存在感ある大輪ガーベラ?
<JAみい・ガーベラ部会 4名>
続いて、久留米市に移動しました。
見通しのいい、広大な田んぼの中に目指すガーベラのハウスはありました。
カラフルな花が顔を覗かせます。
ウチの『ソープ』は違うよ!咲かせてから切ってるから花持ちがいい!
それに40本入りの箱だけど、20本しか入らないほど花が大きいんだよ!」
と教えてくれたのは、圃場主の牛島さん。
約13cmの花は、確かな存在感をアピールする驚きの大きさ!!
そして、白の大輪“インスピレーション”。
この品種は、特に花弁が折れて傷つきやすいので、こんな風に栽花してすぐ圃場でキャップを付けるのだそうです。↓↓↓
「花びら自体がパンっと張ってるでしょ!圃場で咲かせないと水揚げが悪く、色のりも異なってくるんだよ。ほらっ!!」実演してくださる牛島さん。
さらに、冷蔵庫には除湿機を、撰花場には冷房を入れて品傷みを防ぐ徹底ぶり。
「10℃違うと花は汗をかくので気を使うんですよ!」
JAみいでは、一昨年から大輪品種を導入し始め、今では出荷品種の8割を占める主力品種となりました。
「まだ、今咲いている花は本来の姿じゃないよ!気温が下がってくると花弁数も増えて、もっと大きくなるから!」と大輪品種の色目も揃ってきた今年、さらに素晴らしい出来を予感させる力強いお言葉をいただきました。
>JAみい ガーベラ部会からお花屋さんへのメッセージ
大輪ガーベラと小輪ガーベラは、同じ品目でも競合するものではなく、別物として位置付け、ガーベラの新たな魅力を伝えていきたいと思っています。
1品種800株を最低ラインとして栽培していますので、変わった品種の大量注文にもお応えできます。
お花屋さんのご意見もどんどん聞かせてください。
“JAたがわ&JAみい”の格言
最先端技術を備えた大規模施設育苗センターによって作られる良質苗の安定供給が、田川ブランドを育てる!
システマティックな工場生産が可能にしたアスターの周年供給で、用途拡大を図る!
山育ち! だけど都会的なオリジナルトルコキキョウ!今後、作出される品種にも期待大!
従来のガーベラと大輪ガーベラは、同じガーベラでも別物と認識すべし!
2007年6月11日
vol.41 福岡県 JAふくおか八女&JAみなみ筑後
福岡県 第3弾!
そして、JAふくおか八女 第2弾!!
博多あまおう、八女茶、菊だけじゃないんです!!!
前回のレポートはこちら→http://www.otakaki.co.jp/blog/place/archives/2007/05/vol39.html
今回は、洋ランの栽培現場をクローズアップします
JAふくおか八女・洋ラン部会
?洋ランが出荷されるまで?
25名いる洋ラン部会を率いる中村昭光さんを訪ねました。
可憐なオンシジュームが出荷されるまでには、想像以上の時間と手間がかけられているのです!
⇒⇒
? ? ?
?昨日まいた苗 6ヶ月後に→?2.5寸に植え替えて半年後に→?4寸に植え替えて、さらに1年経つとようやく出荷にたどり着きます。
栽培農家の方の手によって、なんと3年もの間、愛情込めて育てられるのです!
さらに、「生育には日中と夜の温度差があった方が好ましいので、福岡は洋ランの栽培に適しているんですよ。」と中村さん。
?栽培されている品種は??
見慣れた顔のオンシジューム『百万ドル』
スポットレスでレモン色のような明るい黄色がきれいな『ハニードロップ』
都会的な雰囲気漂う『ワイルドキャット』
「もう苗を捨てようと思ってたばってん、市場のヒトが捨てないで!って言うから…」
と栽培を続けてくださっている品種!オシャレです!
見た感じそのままの『タイガー』
「この花は大阪で販売してるんです。東京だったら巨人かな?」と中村さん。
黒とオレンジの花ができたらぜひ!
出荷作業場は鮮やかな黄色が目にまぶしい
中村さんの栽培したオンシジュームを見ると、ボリュームがあります!!
何が違うのかなー?とよ?く見てみると、花が頂点までしっかり咲いています。
なのに、下の方の花もヘタッとしてない!だ・か・ら ボリューム感があるのですね。
エビデンもありました
こんなに色とりどりの花ですが、全て同じ苗から生まれたもの。
「いい花あっても苗作るのにメリクロンかけたら5、6年かかるし、同じフラスコでどういう色がでているか分からんと。」と、中村さん。
思うような品種を作るのが難しいのは、どの品目にも共通して言えることですが、洋ランは特に根気がいりそうです(>_<)
目印はコノ箱! ⇒⇒⇒
JAふくおか八女では、常時500ケースを出荷しています。
これ程の数量の洋ランを扱える産地は、JAでは八女しかありません!
中村部会長を筆頭に部会一丸となって、栽培に時間を要する洋ランの安定供給に励んでいます。
中村からお花屋さんへのメッセージ
月・水・金と安定出荷しますので安定価格で買ってください。
<中村昭光さんと奥様>
JAふくおか八女・洋ラン部会の格言
・共撰出荷で洋ランを安定出荷!
・昼夜の気温差が高品質のオンシジュームを生み出します!
JAみなみ筑後・エメラルドウェーブ研究会
続いてご紹介するのは、暖かい気候を利用して豊富な作物を栽培している南筑後地域!
トルコキキョウ、クジャク草、ガーベラなどを栽培していますが、花卉部会は発足して まだ3年という若さ。
数ある生産物の中から、今回は波打った形状が特徴的な葉っぱ『エメラルドウェーブ』をご紹介します。
葉が生い茂るハウスの中では、突然 霧のような雨が!まるでジャングルのような雰囲気です!
まずは、『エメラルドウエーブ』という商品の歴史から見てみましょう!
?エメラルドウェーブの歴史?
“エメラルドウェーブ”として出荷されているこの葉っぱですが、“しまおおたにわたり”の突然変異なのです!
現在、出荷をされている杉本健康さんのお父様 春男さんが植物園を作る為の植物を集めている際、昭和37年に屋久島でウエーブのはいった人目を引く色合いの株を1株発見し、選抜、育種に取り組んだのです。
そうして30年後、平成6年にようやく品種の固定が確認でき、品種登録を出願。
『エメラルドウエーブ』と名付けられました。
平成7年、JAみなみ筑後瀬高花部会により関東、関西の花市場へ生花用として園芸連(現、JAふくれん)を通して共販を開始。
園芸文化協会主催の第2回新花展にて ゴールド賞受賞!
平成8年には、第5回ジャパンフラワーフェスティバル(JFF)福岡コンテストにて九州農政局長賞受賞!
と高い評価も得ているのです!
そんな、エメラルドウエーブを栽培する生産者の一人 杉本さんは、ショウブ、カトレア専門でしたが、エメラルドウエーブ1本に絞られました。
?栽培はエコなハウスで!??
栽培施設は、ハウスの中にハウスが何棟も連なっています。
ハウス内はもちろんポカポカ!これだけ広いと暖房も大変ですねぇ。
すると、「このハウスは地下水を利用して暖めているんですよ。」と杉本さん。
なんと、15?16℃の地下水をハウスの中に巡らせたパイプに流すことで、冬場でも10℃を保てるのだそうです!
だから、「重油だと一晩で2万円だけど、電気代にして月2万円程度ですんでいるんですよ!」
と土地の気候を活かした方法でエコロジー且つ、経済的!!
重油代の高騰に頭を抱える栽培農家の方からすると、うらやまし?い話ですよね。
では、エメラルドウェーブにぐぅーっと寄ってみましょう
若い葉は、クルっとして愛らしい表情を見せています。
すると、「この前、天ぷらで食べたら美味しかったよ!」と高巣さん。
えぇー!食べられるんですか?
無農薬だから食べても安心なんです。
でも、農協担当の日高さんは「注文いっぱい入っているんですから、食べないで出荷に回してくださいね。」と心配そうにされていました。
杉本さんも、「ハウスの中に24時間いることもあるんです!」
「ある人に植物を感じることが大事だ!と言われたことがあって、自分のハウスで実行したんですよ。」
と、皆さんエメラルドウエーブを肌で感じる程の思いの入れようです。
葉っぱを裏返すと、胞子がビッシリ実っています!
「これを出荷する時は、全部洗い落とすんですよ!」と手順を再現してくださいました。
⇒⇒
まずは刈り取ったエメラルドウエーブを水を張った大きな水槽に入れます。
そして、葉の裏に付いた胞子と産毛を一枚一枚 丁寧にハケを使って洗います。
この時点で、傷がないかチェックし、選り分けます。
食品を扱うように、一枚一枚 手作業で手間隙かかっていました!
?栽培に携わるエメラルドウエーブ研究会の皆さん?
オリジナルの素敵なポスターを手に!
左:高巣真澄さん、中央:古賀敏朗さん、
右:杉本健康さん
?おまけ Part??
今後出荷を計画している鉢物のハウスも見せていただきました。
このうねりも 個性的でステキです!
温度が足りない為に、スクリュー状になってしまうのだとか。
でも、それがまたイイ味出してます!
こちらは、10年選手!
堂々とした風格ある姿に成長しています。
新しい観葉植物として、今後の出荷に乞うご期待♪
エメラルドウエーブ研究会からお花屋さんへのメッセージ
長持ちするので、ぜひ使ってみてください!
JAみなみ筑後・エメラルドウエーブ研究会の格言
・エメラルドウエーブは、地下水による暖房施設で栽培される、無農薬栽培のエコな癒し系植物!
・独特のウエーブは、農林水産省登録品種で、オリジナル性バツグン!
?おまけ Part??
こちらもオリジナル商品!
福岡県産のツブツブみかん果汁がた?くさん入った『つぶ入りみかん』。
美味しかったですよ!一度お試しあれ♪
2007年4月30日
vol.38 福岡県 JA糸島
今回 訪れたのは福岡県の糸島地区。
この周辺は『魏志倭人伝』に記される古代国家『伊都国(いとこく)』が栄えた地と伝えられています。
つまり、『いと』という響きから時代によって少しずつ文字を変えながら、現代の『糸島』へと伝わってきたというわけです。
また、諸説ありますが、女王 卑弥呼の国とも言われています。
いずれにせよ、歴史の重みが感じられる地域。
その伊都国より出土された勾玉と銅鏡がデザインされたマークがJA糸島の目印となっています!
↓↓↓
生産物は、背振山の麓では露地菊や千両の栽培が、そして平野から沿岸沿いでは草花・洋ラン・バラ栽培などが盛んに行われています。
そして、こちらのお二人がJA糸島の生産者をとりまとめるドン二人(?)、JA糸島花卉販売委員会の委員長 吉村さん(左)と副委員長 高宮さん(右)。
「現場の声をよ?く聞いとってください!」と生産者のハウスを案内してくださいました。
早速、“花伝説・糸島”の花職人達をご紹介しましょう!
?富永 達章さん?
8名いるブバリア生産者のうちの一人で、海にほど近い場所で栽培している富永さんです。
栽培する上でのご苦労を聞いてみると、
「芽かきや連作障害による欠株が出やすかったり、大変なことばっかりですよ!」と富永さん。
「特に、ブバリアは天候に大きく左右されるんです。」
「日照がないとダメだけど、夏場の暑さではクシャっとなる。だから毎日、日中は1列ずつシェードをかぶせて、夕方 はぐる(めくる)作業も必要あるから、出掛けることもできんわけですよ。夜、飲みに出歩いてるようではダメなわけです(!?)」
と花作りに懸ける禁欲生活(!?)、ではなくご苦労を語ってくださいました。
ロイヤルダフネレッド ロイヤルダフネピンク ロイヤルユリヤ(NEW)
新しい品種の『ユリヤ』は、咲くと薄いピンクの可愛い花で、使いやすい色目です。
「この他にも、『ナオミ』っていうスナックの名前(?)の品種も出てきます。」と富永さん。
こちらも乞うご期待!!
富永さんからお花屋さんへのメッセージ
単色ではなく、白、ピンク、赤、グリーンと色バランスよく出荷しています。
添え花だけど、丹精込めて作っているので10円でも高く買ってもらえると嬉しいです!
?平野 正文さん?
9名のトルコキキョウ生産者のうちの一人 平野さんです。
「トルコは日照時間が生育に大きく影響します。
九州はあったかいイメージですが、この辺の北部九州は、冬場 日照が悪く、1ヶ月に2、3日しか晴天がない時もあるんですよ!」と予想もしない天候によるご苦労を語ってくださいました。
日照不足は苗枯れや、死花が増える原因となり、トルコキキョウにとっては まさに死活問題です。
主力品種は、“まほろばシリーズ”、“リネーションシリーズ”、“春うらら”など。
4月中?下旬に出荷開始です。
平野さんからお花屋さんへのメッセージ
今後の出荷に期待してください!
さらに、来年は3月下旬からの出荷に挑戦します!
(3月に出荷するには、例年より1ヶ月早い9月に定植する必要があるのですが、9月の福岡はまだ暖かい為、難しいのです。)
?一ノ宮 浩さん?
15名いらっしゃるミヤコワスレの生産者の中でも異色の存在の一ノ宮さん。
何故かというと…田舎暮らしに憧れて2年前に糸島の地へ移住していらしたのです!
しかしながら、風邪をひかれていてお会いできず(-.-;)残念!
そんなわけで、圃場主不在ではありましたが、ハウスの中を見せていただき、以前ミヤコワスレを栽培していたことのある委員長の吉村さんに説明していただきました。
「今年は暖冬で温度が下がりきらなかったから色が薄いなぁ」と吉村さん。
ミヤコワスレの生育には寒さも必要なのです。
「でも、暑さにも弱いんです。
夏場は1000m近く標高の山の上や、高冷地で水はけのよい場所へ持ってかなきゃいけないから、苗を残す為に大変苦労しているんですよ。」
まさに今 危機状態なミヤコワスレ!
さらに、「栽培にもかなり技術がいるとですよ!しっかりした苗が残り、彼のような若い後継者ができればよかばってん、苗も分けるほどないのが現状やけん…。」と寂しくなるお話も。
それでも糸島の生産者はガンバッテます!
「普通はピンチかけて栽花本数取ってるけど、糸島は1株1本で勝負してますから!」と最後に力強くおっしゃいました。
ミヤコワスレの作り手からお花屋さんへのメッセージ
茶花感覚で使われるので、使われる量が減るのが心配です。
でも、1ヶ月は花持ちしますし、糸島のミヤコワスレはスゴイです!
?吉村 義隆さん?
個撰出荷をされていて、多くの品目を栽培されている吉村さん。
たくさんの品種を抱えお忙しい上に、訪問したのはちょうど出荷日。スミマセンm(_ _ )m
私達が到着するなり、「じゃ、行くよ!」と走り出す吉村さんを追いかけてハウスを見せていただきました。
年間20種類もの品目を出荷されています。
今時期、出荷されているのは…
カレンジュラ ダイアンサス ソネット ワイルドオーツ ヘリクリサムシルバー
ヘリクリサムライム チョコレートコスモス ベルベロン ストロベリーキャンドル
そして、この巨大スカビオサには驚かされました
同行した販売促進アドバイザーの鈴木千春さんも長身ですが、さらに長身のスカビオサ。
農場整備によって、下に溜まっていた肥料分が混ざり合って、良い土壌になったようです。
そして…
コレ何だか分かりますか?
答えは『アスパラガスの根っこ』でした。
あまりお目にかかれるものではありませんよね。
野菜のアスパラガスと同じ仲間なんですが、観賞用で残念ながら食べられません。
属名のアスパラガスは、「とげのある」という意味のギリシャ語に由来し、一部の種類がとげをもっていることから名付けられましたようです。
ちなみに、主な品種のプルモーサスは、「羽毛状の」という意味なんですよ!
吉村さんからお花屋さんへのメッセージ
共撰出荷だと出荷できる品種も狭まってくるとですが、消費者の要望に応えられるように個撰出荷で幅広く栽培しています。
花屋さんはじゃんじゃん売ってください!!
?藤川卓雄さん?
ちょっとピークは過ぎてしまいましたが、エビデンドラムのハウスも見せていただきました。
「苗作るまで2年、生産まで2年もの期間を経てやっと出荷できるんですよ。」と藤川さん。
そうしたご苦労があってこそ、可愛い花が咲くわけです。
藤川さんからお花屋さんへのメッセージ
年末から正月にかけてが出荷のピークです。
来年に期待してください。
?吉村 和実さん?
最後に訪問したのは、JA糸島花卉販売委員会 委員長の吉村さんのカンパニュラのハウスです。
カンパニュラ部会では 12月?5月にかけて電照や温度管理によって、出荷量に波ができないように生産者同士で調節しています。この調整が、長期にわたる安定出荷を可能にしているのです。
と、そこへ奥様が通りかかり
高宮さん:「父ちゃんの花は生き生きしとるなぁ!」
奥様:「そやろ!!(^。^)/」 なんて微笑ましい会話も。
さてさて、品種は『チャンピオンピンク』、『チャンピオンパープル』、『チャンピオンホワイト』が中心。
さらに、「今期はお客様の要望に応え、現状の半分ほどの大きさの小輪タイプを新たに加えたんです!」と吉村さん。
残念ながら写真はありませんが、ピンク、ライトピンク、パープルで、アレンジに使いやすいカンパニュラをぜひお試しください!
吉村さんからお花屋さんへのメッセージ
お花屋さんの声に応えられるように頑張って栽培してます!
今日一日お付き合いいただいた皆さんでパチリ!
とにかく厳しい状況の中でも、明るく、意欲的に生産に取り組むステキな糸島の皆さんでした!
(左から) JA糸島花卉販売委員会 副委員長 高宮さん、JAふくれん 猪名富さん、農協の中牟田さん、同じく 森本さん、花卉販売委員会 委員長 吉村さん
幅広い商品群でお花屋さんや消費者の期待に応えるJA糸島!
さらに、使い手の心をキャッチしようと新品種や、新しい品目の導入にも積極的な糸島から目が離せません!
JA糸島の格言
・60%共撰出荷でいい品物を、長期間、安定数量お届けします!
・40%個撰出荷で小回りをきかせ、細かなご要望にも対応します!
・ふくれん、農協、生産者で三位一体となって取り組んでいます!
2007年4月16日
vol.37 沼田弘樹さん&常陸野カーネーション組合
今回は訪れたのは茨城県の常陸野カーネーション組合です。
かえで→てぃあら→らなん
あっ、「ん」が付いてしまった!
…と “しりとり”になっているこれらの単語は常陸野カーネーション組合オリジナル品種の名前なんです!
さらに、そのオリジナル品種を生み出しているのも組合員!
そこで、まずは生産と育種を手掛ける沼田弘樹さんを訪ねました。
育種家 沼田弘樹さん
では早速、沼田さんが生産しているオリジナル品種をご紹介しましょう!
ひよこ いちご れもん
『ひよこ』
オリジナル品種の代表作!名前とマッチした花色はお花屋さんからも使いやすいと評判です。
さらに、軸が太く、バランスもよいことから、関東東海花の展覧会で銀賞に輝いた実績もあります!
『いちご』
沼田さん:「レッドバーバラなんかと違って小輪でこじっかりした赤でしょ!」
この“こじっかりした赤”を作りたくてベースにグリーンの遺伝子を加えたのだとか。
『れもん』
沼田さん:「花びら1枚1枚をよ?く見ると、縦にピンクや白っぽい色が入っているでしょ!」
う?ん、写真じゃ分からないですが…これも一つのコダワリなんです。
ぜひ本物を見てください!
そして、その他に こんな未発表品種も!
今後に乞うご期待
オリジナル品種画像一覧は このページの一番最後、もしくは常陸野カーネーション組合のHPをご覧ください。→http://www.hitachino.net/p.html
ところで、もう皆さんもお気付きかもしれませんが、品種名が全てひらがな3文字!
とても明快で覚えやすいですよね。その名付け親であり、産みの親でもある沼田さんに育種する際のポイントを聞いてみました!
すると意外にも、「色に対するコダワリはない」という答えが返ってきました。
「茨城は暖地でも高冷地でもない、どっちにも特化してない地域なんです。冬は寒くて、夏は暑い!だから、茨城の気候で花を作るのはホントは難しいんです。
だからこそ、いい品質のものを安定して、長い期間出荷できる品種作りを目標としています。」
沼田さんが手にしているのは、カーネーションではないようですが…?
実は育種しているのはカーネーションだけではないのです!
それは、また後でご紹介するとして…
良いカーネーションとはどんなものなのか聞いていました!
Point ステムしっかり!
Point 花は四方にバランスよく!
Point 葉はクリクリ!
Point ワックスによって限りなく白い葉!
Point 最後まで咲く!
圃場を見ていると、確かに!
葉がクルクル巻いています。
「栄養バランスがいい証拠なんだと思うけど…、カーネのお決まりで昔から巻いていた方が良いと言われているんですよ。」と沼田さん。
表面の白いものは手でこすると落ちますが、農薬ではなく、自らが分泌するワックスがのっている状態なのです。
これによって害虫がつきにくくなるのだそうです。
そして、それらの条件をクリアした代表作が『ひよこ』>なのです!!
でも、茨城という土地が花を栽培するには難しい土地柄である上に、組合員が12市町村に点在しているという常陸野カーネーション組合。
共撰出荷にも関わらず、統一規格と高品質を維持していく秘訣は何なのでしょうか?
組合員の方々の圃場を拝見しましょう!
沼田 実さん
圃場主はご不在でしたが、奥様が作業をされていました。
栽培している品種は… キャンドル ライトクリームキャンドル など
もしかして、キャンドルがお好きなのでしょうか?
それにしても草丈の長さに驚きです!
なんと肩の位置より高く伸びています。
「実さんのハウスは草丈が伸びるんだよね。ウチの土壌とは違うせいかな…?」と沼田さん。
生育は良好!!出荷商品に期待です。
ハウスの片隅では、花キリンも こんなに立派に咲いていました!
藤崎 千秋さん、一樹さん
続いて、藤崎さん親子です。
栽培している品種は… レジーナ ピンクテッシノ など
品種選びの基準について聞いてみると…
藤崎さん:「レジーナは花が好きだから…、それにウチは同じ組合でも広範囲におよんでるから、田んぼと畑のような土地の差があるんですよ。だから、それぞれの土地に合った、作りやすい品種というのも自ずと異なってくるんです。でも、品種選びは毎年悩むよねー。」
沼田さん:「我々のような中堅産地では品種を絞り込まず、同じ色でも幅広いラインナップで、それぞれのお客さんに対応できるようにしているんですよ。」
なるほど、組合内で同じ品種に集中しすぎず、それぞれの土地に合った品種を栽培することによって、様々なお客様の要望に応えられるような幅広い商品構成も常陸野カーネーション組合の魅力なわけですね。
カーネーション作りを始めて32年の藤崎さんの作るカーネーションは、“太くてしっかりした茎”+“ぷっくり膨らんだ蕾”が魅力的!
それぞれの土地で、組合員みんなが同じように栽培できるだけのキャリアがあるのも魅力の一つです。
そして、冷蔵庫の中で発見したのがコレ!
花持ち保証の秘密兵器『鮮度保持装置』です!
13日間花持ち保証の取り組みをご存知でしょうか?
常陸野カーネーション組合では、2001年11月から取り扱い市場及び茨城県経済連との厳格な品質管理によりセリ日から13日間の花持ち保証をしているのです。
そして、それを可能にするのが組合全員の冷蔵庫に取り付けられた『鮮度保持装置』!
花持ち保証がされていると、消費者の方にも安心してお奨めできますよね。
箱の側面には、長く楽しむ為の取り扱い方法についても記載されていますので、ぜひ参考になさってください。
さらに、この箱スグレモノ!
名付けて『常陸野オリジナルワンプッシュロック』!
その名の通り、ワンプッシュで開閉可能。ガムテープを貼ったり、はがしたりする手間も省けて
省コスト! + 再梱包の際もラクラク!なんです。
販促活動やお客様のニーズを探るヒアリング活動にも積極的!
作るのも大変ですが、売るのも大変な今の時代!
常陸野カーネーション組合では、お花屋さんの生の声を聞こうと数班に分かれて都内のお花屋さんを回ったり、大田市場内仲卸通りにて来場するお客様に展示した商品についてのアンケート調査を行ったりしています。
売る人、使う人の意見に耳を傾けてくれる常陸野カーネーション組合から生み出される商品は これからも期待できます!
組合長 尾形昌寛さんからお花屋さんへのメッセージ
組合員14名は12市町村に離れていますが、ネットワークでしっかり結ばれています!
メーリングリストで情報共有しているので、共撰でもきめ細かい対応が可能です。
とにかく、イイモノをお届けしよう!という一心で一生懸命作っています!!
常陸野カーネーション組合の格言
・茨城で生まれ育った maid in 茨城のオリジナル品種は、茨城の気候にマッチしているからストレス知らず!ボリューム、輪付きが違います!
・多品種栽培でお客様の要望に応えます!
・常陸野カーネーション組合の強みは、12市町村に渡るそれぞれの土地でも、組合員みんなが同じように栽培できるだけのキャリアがあること!
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さてさて、お待たせしました!
続いては沼田農園レポートです。
まずは、グラジオラス!
通常グラジオラスという名前から思い浮かべる花は、初夏の頃から見られる鮮やかで大きな花だと
思いますが、沼田さんが育種しているのはスプリンググラジオラス!
圃場に咲いた花をご紹介しましょう。
サザンクロス フォンティーヌブロー ヌーベルモーヴ
クレッセント アメジスト オーロラ(今年は出荷なし)
細いラインで繊細なイメージの花ですよね。
この花の育種を手掛ける切っ掛けを聞いてみると…
「20代半ばに原種のトリスティスに出合っていいな!と思って…。あの時見た木漏れ日の中で風に揺られていた姿は鮮明に思い起こせますよ。」と初恋の人を思い出しているよう(?)でした。
以来、可能性ある全ての色と、原種がもつ繊細な草姿をイメージしながら育種を続け、切花として出荷できるまでに7年もの歳月を費やしたそうです。
そして、「かわいいでしょ!こうやってフワっとまとめるだけでも花束らしくなるでしょ!」と差し出してくださいました。
太陽の方を向き、お辞儀をするアメジスト。→
華奢な雰囲気ながら、凛とした上品な面持ちの花が魅力的です。
でも出荷最盛期のハウスを見せていただくと、こんな感じで真っ青。
切り前も右の写真のように ちょっと色付いたくらい。
花傷みを防ぎ、長く楽しんでもらう為に蕾が色付き出した程度で出荷しているのです。
一度使ってみれば、その可愛らしさの虜になるはず!
数ある品種の中からお気に入りの品種を見つけてみてはいかがですか?
次に案内してくださったのは、ヤツデのハウス。
⇒⇒
これまた、「かわいいでしょ」と沼田さん。
ヤツデの葉は、成長するごとに3枚葉⇒4枚葉⇒5枚葉と枚数が増えるのだそうです。
軸も10cm程あるので、ミニブーケに使ってもカワイイのではないでしょうか?
ハウス周辺の景色に見とれていると…
「あの山も、この道の左側も全部ウチだよ。」と サラッとおっしゃる沼田さん。
そして大王松が立ち並ぶ場所へ着くと…、
⇒⇒
「年末にはこうして伐採するんだよ。」と身のこなしも軽やかに登っていきました。
動画でお届けできないのが本当に残念(+_+)
それもそのはず、沼田さんにはこんな趣味もあるのです。
広大な土地の中にはお手製ロッククライミング練習テントを発見!
⇒⇒
いとも簡単そうにやっているので桐生隊員も挑戦しましたが…、
へっぴり腰。
この次の瞬間 ボタっとあえなくマットに沈みました…(-。-;)
ちょっと横道に逸れましたが、年末の大王松も楽しみです!
これからも たくましい腕っ節 + 育種家としての凄腕で、理想の姿とオリジナリティを現実のものとする沼田さん、そして 買う人の要望に応える花作りに取り組む常陸野カーネーション組合から目が離せません!
★カーネーション オリジナル品種一覧★
いちご ひよこ
しおん あられ
うさぎ なつめ
れもん てぃあら
ぼるどー かえで
らなん
2007年1月 5日
vol.32 JA豊橋
(愛知県 豊橋市)
今回 訪問した豊橋市は、太平洋メガロポリスのほぼ中央!愛知県の東南部に位置し、東は静岡県、南は太平洋に面した県下第2位の大きな都市!東三河の産業・経済・文化・交通の拠点としての役割を果たしています。
でも、その温暖な気候風土と、豊かな土地と水を生かして農業も盛んです!
やっぱりメインは野菜ですけど…、
しか?し、花も頑張ってますよ!!!
↓こちらはJA豊橋のマスコットキャラクター“とってもハッピー「トッピーちゃん」”!
その他、特産物キャラクターがたくさん揃ってます!
ほ?んの一部をご紹介すると、↑真ん中が「トマトン」、そして右が「ブロッキー」です!
こうした仲間達は、ぬいぐるみにもなっているとか。
では、早速お花をチェック!
?豊橋の代表品目 デルフィニューム!?
まずご紹介するのはデルフィニューム!
デルフィニュームと言えば「豊橋」、「豊橋」と言えばデルフィニュームというくらい主要品目になりました。
「デルフィニュームの産地としてはパイオニア的存在!」と胸を張っておっしゃる農協の担当者さん。
まずは、そのお二人をご紹介します!
写真左が、朝倉さん。「大田花きの前身‘大森園芸’を知る男!」
写真右が、松井さん。「洋花を知り尽くした男!」
以上、「違いの分かる男」(?)お二人の案内でハウスへ向かいました。
そして、自信作のパールブルーがこちらの花です。→
元々、このようなシネンシス系は園芸種で、草丈の伸びない品種。
それを平成4年に、丈を伸ばしてSP仕立てにできれば必ず1つの品目として確立できる!と確信し、その栽培に取り組んだのだとか。
そうして枝数を増やして、1本でもボリュームあるSP仕立てにする事で、立体感のあるスタイルを確立したのです!
「登場した時は衝撃的で、インパクトがあったんですよ!」と農協の朝倉さん。
さらに、「今までにない水色の品種が平成12年に出荷されたことで、爆発的にマーケットが広がった。」との事。
「シネンシスは、花がカップ咲きで角がないから、ベラドンナ系に比べて絡まず使いやすいんですよ!」
「枝ぶり、発色がすばらしさはもちろんだけど、パールブルーっていう名前もいいでしょ!商品名が一番大切なんだよね!」とパールブルーについて熱く語る朝倉さん。
なんと、その名付け親だったのです!
なるほど!その思い入れも人一倍強いわけです。
←左がデルフィニューム部会の部会長
竹本伸二さん
下の写真が「パールブルー」の育成者 大沢史治さん(左)、そして 見せていただいた圃場の 黒田真咲さん(右)↓
作り手の皆さんにシネンシス系の特徴を聞きました!
蕾まで咲ききるので花持ちがよい!
さらに、側枝(そくし)の花が一緒に咲いてくれるので、花屋さんにとってはお得!
ということです。
←1本のボリュームもこんなにあるんです!
ところで、生産者としてどんなことにコダワリを持って栽培されていますか?という質問に対して、
「花の形、発色の濃淡まで生産者は拘るよ!1コ満たされれば、また次と要求はどんどん湧いてくるもの。だから、いろんな花を作ってみることで、こんな花の特性を活かせないかな?とかヒントを得ることができるんだよ!」とおっしゃっていました。
ここで、デルフィニュームの分類と、代表品種をご照会します。
●シネンシス系(スプレー・シングル仕立て)
切り分けてアレンジにできるのが特徴。そのままでもマスフラワーとして人気あり。
パールブルー クリスタルピンク スイートスカイブルー
↓ ↓ ↓
↑このピンクの花柄ダンボールが豊橋ブランドの目印!どの品目でも同じです。
そして、次から次へと登場する「オリジナル品種」は、一目で分かるシール付き!
●八重系(ジャイアント系)
穂状に咲くジャイアント系、ヨーロッパ風にゴージャス・カジュアルな彩り!
オーロラブルー オーロララベンダー ライラックキャンドル
もう1件、デルフィニューム生産者を訪問しました!
昨年まで大田花きで研修生として一緒に働いていた山本君です。
ちょうど、選別作業中でした。
「ここで、長さやバランスを見ているんです。A品でも他産地より上のレベルだと自信を持ってます!」と力強い言葉が聞けました。
これは、“プラチナパール”→→→
ここでも、「ナチュラルな水色、微妙さがいいでしょ
」と絶賛の松井さんでした。
デルフィニューム部会からお花屋さんへのメッセージ
安定感、安心感、品種の多さ、発色の良さがウリ!
市場から電話1本もらえば、デルフィニュームなら何でも揃う豊橋農協をよろしくお願いします!
………………………………………………………………………………………………………………
?安定出荷のグロリオサ!?
グロリオサの部会員は16名。
グロリオサ作りを始めて23年の大橋孝典さんのハウスを訪れました。
定植から夏場は40日、冬場は60日で出荷できる商品になります。
⇒⇒
そして普通、花を切り終わると球根はすぐに彫り上げてしまうのですが、採花後50日間そのままおいて球根を育成する!というのはグロリオサの特徴でしょう。
バランス良く仕上げる為に側枝を取ったり、6輪付いたところでピンチして、その2週間後に収穫したり…といった作業を4人でこなしているそうです。
そして、高?く伸びた花を切るのに活躍する道具がコレ→
発泡スチロールで出来た高ゲタです。
オリジナルの手作り品かと思いきや、農具などを販売している店で売っているものなんだそうです。
JA豊橋では、一人一人が周年出荷できるような体制をとっているため休みなし!という事です!
(-o-;)大変!
でも、球根に毒性があるので虫も付かない!というのが、せめてもの救いでしょうか…。
生産者から見る良いグロリオサのポイント
★茎が硬く
★花色が鮮やか
★ボリュームがあって硬く締まったもの
★そして、花と茎のバランスが3:7
これがBESTだそうです。
そして、イチオシ品種は
パールホワイト ライム ファイヤーバード
発見!!グロリオサの恋!?
分かりますか?
大橋さんからお花屋さんへのメッセージ
もっと幅広い用途で使って欲しいです!
………………………………………………………………………………………………………………
?ボリューム満点のカスミソウ!?
←23年前からカスミソウを栽培している尾川さん。
トマトからカスミソウ栽培に転身されたそうです。
栽培していた「ファースト」という品種は、愛知県が銘産のトマト!
“ニューフェース”→→→
11月?5月まで出荷されています。
「今はいろんな品種がでてきて、品種選びに悩むけど、採花量よりボリュームを重視して出荷してます!」と尾川さん。
尾川さんからお花屋さんへのメッセージ
もし、日持ちが悪かったりしたら言って欲しい!
花屋→市場→農協→生産者 全ての人に上手く伝わっていないような気がします…。
自分たちは一方的に送るだけだから、いろんな意見を聞かせてください。
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?周年出荷のサマースイトピー!?
10年前からスイトピーを栽培されている松井一郎さん。
4、5月に作るものとして、宿根スイトピーを栽培し始めたのが切っ掛けで、今は全てを宿根スイトピーに!そして、サマースイトピーという名前で出荷されています!
スイトピー、サマースイトピーそれぞれ良さはありますが、
サマースイトピーの魅力について聞いてみました!
★より輪数が多く!
★上の花まできちんと咲く!
★日持ちよし!
★豪華に見えて、且つ柔らかさもある
という所だと語ってくださいました。
松井さんからお花屋さんへのメッセージ
作りに自信はあるけど、モノ、仕立て方についてはこちらが聞きたいことの方が多いです!
これでいいの?って不安になることがあるから、ご意見ください。
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?最後に?
JA豊橋さんより各方面へメッセージをいただきました!
産地へのメッセージ
・売れないのを市場の責任にしないこと。売れないのではなく、産地が売って(打って出て)いないのではないでしょうか?
市場へのメッセージ
・市場販売大?好きです。(色々な人との出会いが楽しいです!)
・正真正銘の価格形成機能を期待しています!
・一晩中でも「花」について語り合いましょう!
・他産地情報も当産地にお問い合わせください!
花屋さんへのメッセージ
・産地表示をして販売してください!お願いします!
・贅沢に使う花・洗練された花はお任せください!「ちがい」のわかる方ぜひ…
・もともと視察者が多いので、いつでもお寄りください!
JA豊橋のHPはこちら→http://www.ja-toyohashi.com/brand/kaki/kaki.html
JA豊橋の格言
・「情報」「スピード」「変化」が成功の鍵です!
・とにかく「遊び心」が大切です!
・NOと言わない「NOkyo」でなければ…!
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?おまけ?
←特産品のひとつで「やりがい君」!
なんと、ブロッコリーとカリフラワーの掛け合わせ。
もちろん食べてもおいしい♪ですが、野菜を使ったアレンジでなんていかがでしょう?
2006年11月23日
vol.27 JA愛知みなみ?シード会編?
(愛知県 田原市)
今回は、愛知県田原市でも旧 赤羽根地区へ。
コダワリを持って花作りをされているSEED会 会員さんの産地を訪問しました!
伊良湖岬の高台から見た景色です。
見渡す限りハウスが連なっています。
夜になると電照菊明かりが灯り、昼間とはひと味違ったステキな夜景が望めるようですよ♪
?石川昌男さんが作るデザイナー好みのバラ?
『石川さんの作るバラは、デザイナーさん好み』と言われていますが、どこに秘密があるのか興味津々で訪問しました!
そこへ、ラフなスタイルで登場!
現在、作っている品種は…
グランス
香りもあって人気品種!
オンディーノ
作っている人はごくわずかな希少品種!テッセンのような趣きが魅力的です。
スペランツァ
ミニチュアローズでお花も可愛らしいですが、グリーンとしても使える花!
アイスバーグ
ティの香りもGOODですが、かっちりしていないラインも魅力的!
ポロ
イングリッシュローズもどきで純白がまぶしい!
では、人気の秘密を探るべく「どんな事に気を付けて栽培されていますか?」と尋ねると、
「ゆっくり咲かせてるの。」
ゆっくり咲かせる、ですか?
「うん、ゆっくり開かせて、切り前を緩くするように気を使ってるんだよ。
そうしないと、本来の色が出ないから。」
例えば、シャンティは…
⇒⇒
このように蕾の時は朱色ですが、開花するにしたがってくすみ色へと変化するのです。
「汚い色が好まれるみたいだから…。だから、鮮やかな色のうちでなく、開いて汚い色になるまで待つんだけど、ゆっくり咲かせるとダニがつきやすくなるし気を使うんだよ!」
「あと、あんまり太いのも嫌がるし…本数切れないけど、みんなと同じことやるの嫌だから!」
と言いながらも、「汚い色がなんで好まれるんだろう?」と頭をひねっていらっしゃいました。
飾る住空間の変化によるものでしょうか?
それから石川さんと言えば、ブルーの染めバラが気になっていたんですが…。
どんな切っ掛けで始められたのでしょうか?
「ビアンカキャンディーのピンクなんだけど、色むらが出やすくてばらつきがあったの。
でも出荷しないのももったいないし、ブルーに染めてみたんだよ。それだけ!
中途半端なのは嫌だから、皆がやらない事をやって、楽しんでるのよ!」
と石川さん。
ポイントは皆がやらない事に取り組もうとする姿勢にあったんですね。
それから、「お客さんの言う事聞きます!要望を聞いて、それを作るのがプロですから!」
と自信をもっておっしゃていました。
石川さんからお花屋さんへのメッセージ
儲けてますか?
お花屋さんが売れないと生産者も儲からないので、頑張って売ってください!
石川昌男さんの格言
・皆がやらない事やってみる!
・『こんな薔薇がほしい!』と言われたら、その願いを叶えるのがプロとしての仕事である!
?根木眞一さんが作るアーティスティックな菊?
続いてご紹介する菊を見たら、皆さん菊に対する認識が変わります!
こちらが、作り手の根木さんです。 →→→
根木さんも作っている洋菊の代表で、人気品種のグリーンシャムロック。
それから赤羽根地区では、洋菊というと…
ボーグ セイ オペラレモン
このような素敵な品種も作っていますが、より日本的で、且つ見た目にも新鮮な菊がありました!
色鮮やかなシルエット!
逸る気持ちを抑え、早速“クラシックマム”のハウスへ潜入です!
全て“クラッシックマム”としてMIXで出荷されていますが、唯一名前が付いているのが こちらの“クラシックマム ココア”!
名前とピッタリで素敵なニュアンスカラーが魅力的です。
名付け親は、意外にもガッチリとした体型の男性!菊の担当者 田中君でした。
これらは、新鮮に見えますが、実は日本の伝統的な菊!
11月は各地で菊花展が催され、鉢物仕立てでその出来が競われていますよね。
まずはご覧ください。
↑くるくるウェーブが可愛らしい表情のキク↑
ふんわりとして、大きなマシュマロのようなキク!
花の大きさと、花弁の開き方が特徴的なキク!
花弁が波打って、光の陰影が浮き出そうなツヤツヤした質感があるキク!
思わず触りたくなります。
⇒
渦巻く花弁が開くと、右の写真に変身!!!私の手ほどの大きさがあるんです!
こうした菊を作ることが、江戸時代に流行したと言われています。
そして、品種自慢、技術自慢を見物人と共に楽しむ文化も生まれたのです。
さらには、日本の風土に合った菊は独自の品種も作出されて、日本が誇る
伝統菊となっていったのです。
こちらは、菊らしくないキク! 花弁がねじれて、とってもアーティスティックなキク!
根木さんが「花弁がねじれて芸が出る!」と表現された右のような菊は江戸菊と言います。
ここで、
江戸菊についての豆知識
寛政?文化期に江戸で生まれた品種で、当時は「中菊」、あるいは「正菊」とも呼ばれていたようです。
いったん平開し、花芯が見えて通常は終わりとなりますが、江戸菊の特徴はここから本領を発揮するところ!!
外弁一重分を残して、内側の弁は外反したり、折れ曲がったり、花芯を包むように日々変化して、最終的には抱え咲きとなります。
この変化する過程もお楽しみください!
品種は異なりますが、このような順で変化します。
⇒⇒
どうです?スゴイでしょ!
目にも新鮮に映る伝統菊ですが、開花の過程でも、また違った表情を楽しめるのです♪
ところで、どうしてこうした菊を切花として作り始めたんですか?という質問に
「日本の伝統を活かさない手はないじゃない!」
「でも、これを切花にもってこようって人はまずいないんじゃないかな…。」とおっしゃっていました。
というのも、花が大きいので重さに耐えられず折れやすくなったり、出荷するにも気を使うし、手間がかかっているんです!
8月?10月にかけては、暑さの影響で色抜けして本来の色ではないかもしれませんが、周年出荷!
乱れ咲きの菊ですので腫れ物に触るように大事に扱われ、ネットをかけて出荷されています!
根木さんからお花屋さんへのメッセージ
いろんな素材を提供するので、一般消費者に上手く提供してください!
根木眞一の格言
・日本の伝統花を活かさない手はない!
・花持ちはもちろん良し!開花途中の変化も楽しめる趣ある菊を使うべし!
2006年11月17日
vol.26 JA愛知みなみ?洋花部会編?
(愛知県 田原市)
今回は、愛知県の南部、渥美半島に位置するJA愛知みなみを訪問しました!
東は豊橋市に接し、西は伊良湖水道を経て伊勢志摩に、
南は太平洋を臨み、北は三河湾に面するこの地域は、
暖流の影響で冬も暖かく、平均気温はおよそ16℃!
そんな花の生育に適したこの土地で栽培される花をご紹介します。
南国の雰囲気が漂い、海岸線もキレイ!
渥美町一番のビッグウェーブポイントとされる伊良湖岬です。
愛知というと真っ先に思い浮かぶ品目は“菊”ですよね。
実際、田原市の農業産出額は菊がダントツ1位!
でも菊だけじゃないんです!
今回は、日本一の総合産地と言われるこの地域の洋花部会に迫ってみました!
?アルストロメリア出荷連合?
まずは、アルストロメリアの圃場を見せていただくことになったのですが、 生産者の皆さんが集まってくださいました。
前部会長の川口さん(左)、現部会長の片山さん(右)
奥からJA愛知みなみの渡辺さん、同じくJA職員でサーファーの宮本さん、そして生産者の清田さんです。
今 出荷があるのは…
エストラーダ ホワイトフォレスト ブライダルピンク
この他にも…
マンゴー、メイフェア、サクラメント、スポットレス etc
品種画像はこちらをご覧ください。↓
http://www.otakaki.co.jp/topics/2006/200613/index.html
そして、来年の試作品種も並んでいました。
こちらは頬にチークを塗ったような表情がかわいらしいですね♪
JA愛知みなみのアルストロメリアの特徴
その?:日照量が多いから花が大きく、発色が良い!
…冒頭でもご紹介した通り、直接外洋に面している為、暖流の影響で暖かく、秋から初夏にかけて日照量も多いんです。
その?:地中冷却装置が全てのハウスに設置されている!
これが、その装置。球根は夏の暑さに弱い為、5℃の冷水を地中に埋められたパイプで循環させ、地温が10℃前後に保たれるようにしているのです。
アルストロメリアは夏に暑いと花芽が付かず、需要期である秋に開花することができないんです。
「地中で花芽を付けるから、地中の環境が大事なんだよ!」と片山さん。
皆さん知ってました?
このように、夏場にもお金と手間がかけられているから、茎も太くて品質がよいアルストロメリアが誕生するのです。
珍しい配色のメリアが沢山並ぶ圃場では、生産者の皆さんから、「この色はどう?」「こっちは?」と質問が飛んできて、意識レベルの高さを感じました。
これから出荷される新品種にも期待です♪
ところで、アルストロメリアと言えば、昆虫を誘う為の花弁の斑やラインが特徴的ですが、葉にも特徴があるんです。
分かりますか?
ねじれてます。どうしてかは生産者の方々にも不明?
誰かご存知の方いらっしゃいますか??
アルストロメリア部会の皆さんからお花屋さんへのメッセージ
『圃場を直接 見に来てください! 私達がいくらでも対応しますから。』
花の生産における長い歴史に裏付けられた誇りと自信を感じる力強いお言葉でした!
?ガーベラ出荷連合?
続いて、ガーベラ栽培をされている小野さんにお話を伺いました。
小野さんがモットーとするのは、
立ち本数を減らして、茎が太く、しっかりとしたガーベラを栽培する事!
ガーベラの特徴
その?:他産地に比べ、日持ちが良い!
その?:栽培方法!
…腰ほどの高さで発泡スチロールに入れて栽培するのです。
作業性のよさはもちろんですが、病気が発生しても、その箱だけを取り除けば、周りの苗にうつることがないのが利点だそうです。
「ガーベラは虫に喰われやすいんだよ。葉もぐり、ダニ、なめくじなんかに好かれるみたいで…。」
その対策にも日々追われているのです。
エビィ オーディオ キムシー
ティアラ ティプシー マジックライト
小野さんからお花屋さんへのメッセージ
『イベントで使う花はなんでない色ばっかりかき集めようとするんだろうね?
作付けの多いものを使ってくれたら助かるんだけど…。』
そうすると…
苗屋さんのお奨め品種&生産者の流行予測が大事になってくるのでしょうか?
品種選びについて「センスだよ!」とおっしゃっていた小野さん。
産地や市場からの情報をキャッチして、その年の導入品種を上手に活用しましょう!
?スイートピー出荷連合?
部会長の井本さんにお話を伺いました。
ちょうど咲いていた花は切ってしまったところで、残念ながらツルしか見ることができませんでした。
でも、出荷しないのに花を切ってしまうなんてどういう事でしょうか?
「花芽を一度切り落とすことによって、木に力を与えるんだよ。」との事。
今は力を充電する時期なんですね。
それから、スイトピーは日照が大事!
「曇りが3日も続くと花芽が落ちるし、手間がかかるんだよ」と井本さん。
スイトピーを作り始めて20年の井本さんでも、「毎年違うから奥が深い」とおっしゃっていました。
さらに、この作り方も特徴的ですよね。
「初めは紐を張ってツルを誘引して、絡まったツルをいちいち解いて巻きつけていたんだけど、この棒にしてから作業が楽になったよ」
ツルが伸びると畝の真ん中がモリモリと覆い茂って、右の写真のようになるのだとか。
そして、そのツルは1年でどのくらい伸びると思いますか?
なんと電柱1本分くらい(7m以上)巻くのだとか。
驚きの長さです!
ここでスイトピー豆知識
スイトピーの栽培で一番手間がかかるのが「巻き下げ」と呼ばれる作業。
スイトピーのツルは、毎日3?4cm、1ヶ月でおよそ100cm伸びて、棒のてっぺんまで届きます。
伸びたツルを大きな輪を描くように根元でぐるっと手繰り下ろすのが従来のやり方。
しかし、可動式のワイヤーだと、横に這わせることもでき、折れる危険性が少ないのです。
また、養分も先まで行き渡って良質の花を咲かせるのだとか。
「花屋さんに並んでると分からないかもしれないけど、手間がかかってるんだよ。
高くかってもらわないと!」と井本さん。
こうした苦労を知ると、店頭に並んだスイトピーもまた違って見えるのではないでしょうか?
ステラ スイートメモリーズ メモリーズ
メアリー エミリー ダイアナ
グレース マリアン モーフィアス
井本さんからお花屋さんへのメッセージ
『絶対損はさせません!
花持ちに自信をもって作っていますので、ぜひ使ってみてください!』
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この他のJA愛知みなみの出荷品目をご紹介しますと…SP菊:スプラッシュ/ペリカンサーモン
菊はゴルフクラブのような柄が長い鎌を使って
採花作業が行われていました。
トルコキキョウ:左からロジーナピンク/シュークリーム/キングイエローピンクフラッシュ/ピーチインパクト
ストック:ホワイト、ブルー
グロリオサ
カスミ草:スノークィーン
この地域は、左を見ても、右を見ても、見渡す限り様々な花を栽培するハウス、ハウス、ハウス!
さすが日本一の総合産地です!
ちなみに左の写真はキャベツ畑。こちらもた?くさん見られました。
そして、これらのが山の中にそびえ立つ
集出荷施設“花ポート”です。
訪れた時は荷物がなく、がらんとしていましたが、より一層その広さが分かったような気がします。
生産者各自の手で所属する部会と名前を判別するバーコードを貼った出荷物が持ち込まれます。
そして、検査台で品質、等級などの検品を受けた後、荷受データが読み込まれたバーコードが添付され、貯留する立体倉庫に収められます。
それから、指定のトラックレーンへと搬送される仕組み!
最盛期には なんと約13,000ケースもの取り扱いがあるそうです!!!
JA愛知みなみについての詳しい情報はこちらのHPもご覧ください。
→http://www.ja-aichiminami.or.jp/
“JA愛知みなみ”の格言
・温暖な気候のもとで作られる渥美半島の花は茎がしっかり、日持ちバツグン!
生産者自ら、絶対の自信をもってお奨めしています!
・日本一の総合産地は恵まれた気候と農業技術の進歩に加え、生産者の高い意識によって成り立っています!
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