2014年3月24日
vol.104 JAあわじ島のアカギク
今回は・・・
淡路島にやってきましたーーーーー!v(≧∇≦)v ワーイ!
ウン探、淡路島に初上陸です!訪れたのは、兵庫県南あわじ市灘地区。
ウグイスの透き通った鳴き声が、ここにも穏やかな春が到来したことを告げています。
青い空と碧い海、そして緑の・・・
・・・が、崖ッ?Σ(゚口゚;
ンわッ!海のち崖!
このようなところにウン探が取材するような品目が生産されているのか?
しかもえんらい急斜面やし・・・^_^;
ここで作れる花ってあるんかな。
まあ、淡路島というたらタマネギですが、これは内陸の平地における生産のこと。実は淡路島の灘地区という、このような急斜面ばかりの地域で、ある花を生産しています。
さてそれは何でしょーーーー!?(←ミステリーハンター風)
正解は、・・・
アカギクとは、その名の通り赤い輪菊(リンギク:1つの茎に1つの花が付いているキクの形)のことを指します。
淡路島は、JAあわじ島(以下、「淡路」と呼ばせていただくことがあります)から出荷されるアカギクの大産地なのです。
海と崖の狭間で・・・
このような急斜面のどちらにアカギクのハウスがあるのでしょうか。(ほんまにあるんかなぁ)
水先案内人は、JAあわじ島・灘花卉部会の部会長、林則幸(はやし・のりゆき)さん。
あ~、チョット、チョット・・・
早速、どちらに連れて行って下さるのでしょうか。
路上には大きな石がゴロゴロと落ちていて、
狭い道にはガードレールもなくハンドル操作を誤れば一瞬で崖に転落するような緊張感(ほんまにあの先、道があるんか・・・?)、
極端なU字・・・っていうかV字かこれ?と思わせるかのような道をぐんぐんと突き進む。
(もうこの道は東京やったら危険で閉鎖されているやろな)
「海のち崖」のような道の運転は、まさに命ガケ!
車が揺れすぎて、道路の様子をうまく写真に撮ることもできない・・・アワワ(◎日◎;)
←ブレすぎ
どこまで行くのかわかりませんが、このようなところに花の圃場があるようには思えないのですが・・・。
と思いきや、突然眼前に現れました、農業ハウス。まさかこんな所に。
ていうか、これはどうやって帰る時に車を向きを変えるのかと思うほどのスモールスペース(◎_◎) ン?
車を降りて、自足で歩けばアキレス腱がプチッといってまいそうな傾斜・・・^^;
だがねーー、伝わらんのよねー、ウン探のローテクな写真撮影では・・・スミマセン(;・ェ・)トホホ
このような地形条件で本当にアカギクを作っているのでしょうか。
作っとった・・・(・0・。)Ahaaa!!
しかも上から見たらL字スタイルのハウス。
「限られた山間地の傾斜スペースを有効に使っとるんよ」
と林部会長。
ここ灘地区は、元々オレンジなどの柑橘類やビワの生産が盛んでした。その面影は今でも至る所に見て取ることができます。
ところが1991年にGATTウルグアイラウンドの交渉結果によりオレンジと牛肉が自由化されて以降、オレンジの木を1本伐り倒すごとに国から補助金が支給されるようになると、ココ淡路でも柑橘類の生産量が減少していきました。
それに代わって生産し始めたのがアカギクなのです。
一見したら、なかなか施設園芸をするような場所ではないかもしれません。
全国でも、このような地形条件の元でキクを生産するのは大変珍しいケースと言えます。
灘花卉部会は全部で11人ですが、もう圃場はみんなこんな感じ。
こちらは山崎光宣(やまざき・みつのぶ)さん、通称"みっちゃん"のハウス。
「まあ、遠くから見たら斜面にハウスが張り付いているようなもんですわ」と山崎さん。
スゴイ傾斜の角度でしょー。
だがねー、伝わらんのよね~、このアタシのローテクな写真撮影では。
っていうか、傾斜が普通じゃないから!(;´Д`A ```
足首が普通に休まることがない!下るときも一歩一歩確認せな、転びそうやもん。この傾斜ハンパないでぇ。
ほんで、こちらがちゃんと(ズームで撮影)した山崎さん・・・と山崎さんの軽トラ。
おっと、ちょっぴりアーティスティックな山崎さんは、ネコのひげが描かれた軽トラがトレードマーク。
軽トラだけど、トラではなくネコに変身か?略してネコトラ。
Best Chrysanthemum!(=ベストなキク!)と書いてあります。
御意!
これは山崎さんの圃場から臨む瀬戸内海ですが、天気の良い日は対岸に和歌山県が見えるそうです。夜には和歌山市の夜景も見えるのだとか。
今日は天気が悪いので、あちらに和歌山県が見えるものとして、写真をご覧くださいませ。
生産
このようなところでどのようにアカギクを生産しているか見てまいりたいと思います。
JAあわじ島でアカギクの部会がこの灘地区で発足したのは今から32年前。
そのポリシーこそ・・・!
「小さくても大きな産地!」
その心は?
「大品目に比べれば出荷量が少ないとしても、その品目の中で大きなシェアを取る!」
ということです。
さて、そのポリシー実現のために、淡路が取り組む生産のこだわりは何でしょうか。
まずは山崎さんの圃場で教えていただきましょう。
山崎さんの場合、この急斜面の土地はお祖父さまがツルハシで開墾しました。
最初はこんな感じの↓土地でした。
なぬッ?ツルハシ?
ブルドーザーとかじゃなくて?
「ツルハシだよ。1日中ずっとツルハシで開墾していたみたい。昔はそれくらいしか仕事なかったしね」
「何年もかかんねんよ」という林部会長。うわ~、これはしんどい作業ですね。
山崎さんは(もちろん他の部会員の皆さまも)、お祖父さまや先代の方々が人生をかけて開墾した土地を大切にして、丹念にアカギクを作っていらっしゃいます。先代の方々は本当に素晴らしいものを残してくださいました。
さて、圃場の中。
一見アカギクが咲いているようには見えませんが、山崎さんは出荷用に収穫していました。
あの~、咲いていないのに収穫して大丈夫なのでしょうか。
「アカギクの場合は、この状態になれば収穫適期!」
こちらの専用の鎌でシャカシャカと手際良く切っていきます。
何か切り前を判断するコツはあるのでしょうか。
「蕾をひとつの球と喩えたときに、上半球と下半球が等しく半分くらいずつがベスト。
これだとちょっと早い↓ 上半球がまだ少し小さいでしょ。」
「ところが、、関西用はこれでも大丈夫と言われるのが面白いところやねん。
大田花きなど東京用は少し緩めのタイミングで切んねん。キクとの対話の中であ・うんの呼吸が重要やな。」
関西市場では"固すぎて怒られることはない"という山崎さん。大田花きにはふっくらと色づいたものを出荷してくれています。他の花でも切り前の要望が関東と関西で異なるというのはよく聞く話ですが、アカギクでも同じようです。
生産のステージで、なんといっても手を煩わせるのが、「芽かき」。
目かきでも耳かきでもありません!
「芽かき」です。
キクの性質として、葉が分化した根元から花芽が出てきます。
このようにあっちにもこっちにも!
脇芽ともいいますが、これを逐一取り除いていかないと、なんとそのキクは「スプレーギク!」になってしまうのです。w(゚o゚*)wコリャタイヘン!
「アカギク」の定義は、冒頭に示しましたように「赤い輪菊」であることですから、スプレーギクでは出荷できません。
1本1輪の輪菊に仕立てるためには、全ての節間から出てくる花芽をことごとくキレイに取り除かなければならない!
ひょえ~Σ(゚口゚;オソロシ
「1本で10個くらい付くねん」
年間50万本ほど出荷される生産者さんもいらっしゃるようですから、
50万本×10個・・・ということは?? 500万回!!!Σ(゚口゚;
考えるだけでも手の母指球がツリそうやわ・・・
全国からアカギクの芽かきボランティアを募集します!!
(食べ物もおいしく、景色もいいし、とても良いところですから観光がてら是非!)
「シロギクやキギクの中には、品種改良されて3個くらいしか花芽が付かないものもあるのですが、アカギクは品種改良が追い付いていなくて・・・」
ふむ、これが生産者さんを悩ませる最大の理由であったか。
しかも、芽かきが遅れると、その分脇芽に栄養分を取られてしまいますので、本来咲かせたい花の栄養分が減少してしまうぅ~~~!!→輪が小さくなってしまうということなのです。
脇芽を取って、取って、取って、取りまくって・・・
生長点の周り3輪くらい余分に付いているツボミを全て取り除くことが最終工程。
中心の1つを残して、あと20日間温かく見守れば出荷まで漕ぎ着けます。
「まあこの花秀芳(はなしゅうほう)がよく脇芽が出てくんねん。」
冬季の出荷用には、淡路のアカギクは「花秀芳」という品種を使います。
「だから、花秀芳を作っとったら手が黒くなるんよ。アクでな。女性にはかわいそうなくらいやわ。」
ドレドレ( ・_・)・・・(右の写真は、淡路のもう一人の重鎮、林均(はやし・ひとし)さんの手です。後ほどご紹介いたします)
いやいや、何をおっしゃいますか、これぞザ・ハンズ・オブ・ハンズ☆仕事師の手です!
取材日のような嵐の日はあちこち圃場の間も移動もできないので、"芽かき日和"なんだとか。
逆に太陽が出ている日は、1列芽かきに集中している間に汗をかいて体力も消耗して熱中症の危険大!
←1列の終わりは遥か遠く・・・
アカギク生産にとって、この芽かきは生産工程の中で最も大きな問題なのです。コスト的にも労働負荷的にも重くのしかかります。
次に仕立てについて。
淡路のアカギクは、ノーピンで作ります。
"ノーピン"と聞いて、よからぬことをイメージしたお父さんたち!コラコラ(´ー`)そっちじゃありませんから!
ノーピンとは、ノーピンチ(摘芯ナシ)の略語です。
アカギクは、一度もピンチすることなく収穫を迎えます。
だからこそ、スッとした立ち姿。
比較として、ダリアなどはピンチを重ねて1株から何本も枝を取るようにしていました。(小欄vol.100JAみなみ信州の回をご参照ください)
淡路のアカギクはそれだけ1本に栄養を集中させて、エネルギーのこもった「渾身の1本」を作っているのです。
ひとつの苗からこのサイクルを基本的には2回行います。これを「2度切り」といいます。(1回目であっても2回目であっても、花のクオリティは、全く以って遜色ございませんのでご安心を。)
あ、ホントだ。収穫した後にもう一度生長点が出てきています。
・・・と思いきや?(*゚・゚)ンッ?
「摘芯するかノーピンでいくかは品種特性にもよんねん」
という山崎さん。
淡路でもアカギク以外でピンチをする場合があります。
こちらは山崎さんが作るシロギク。芽が出てきたところでピンチをすると、このように2-3本に枝分かれ、同時に2-3本を収穫することができます。
「摘芯する場合は、ノーピンより収穫までに時間がかかんねんで。
ノーピンでいっても、ピンチしても時間と収量は一緒やねん。
それから、ピンチする場合は樹勢が強い品種であることが条件やな。」
そうそう、この点が重要。品種特性。花秀芳はピンチに向いていないので、ノーピンでいきます。その代わり2周するというわけです。
「花秀芳はまっすぐ素直に育つ品種やねん。キレイにスッとな。
うちらは花秀芳を貴婦人のように思てんねん。坪単価や生育特性からしてももっと収穫できる品種はほかにあるけどカントリー娘はあかん。手間がかかっても貴婦人を選ぶ。」
きれいな花色と立ち姿が特長の花秀芳。
うぉ~w( ▼o▼ )w オオォォ!
これぞまさしくレッドダイヤモンドキラキラ☆・・・
買参人の中でもとりわけ淡路のアカギクファンの間で、この美しさと淡路のブランドに敬意を込め、いつのころからかレッドダイヤモンドと呼ばれるようになりました。~崇!!
次に、こちらは福田昌宏(ふくだ・まさひろ)さんの圃場です。
JAあわじ島の灘花卉部会の中でも、最も栽培面積が大きく収量も多い福田さんです。
「まあ、借金も一番多いけどな(爆)!」
と明るく笑い飛ばす福田さん。
福田さんには増殖についてお伺いいたしました。
増殖
淡路のキクは基本的には挿し芽で増やします。花秀芳はパテント(苗を購入する時に種苗会社に払うもの。パテントのあるものは生産者が勝手に増殖してはいけない)が既に切れていて、ロイヤリティ(出荷数量に応じて種苗会社に支払うもの)も必要ないので増殖自由の品種です。
ですから、淡路では自分たちで苗を作ります。このように、生長点を確保した挿し穂を作り、湿度を高めにした別のハウスで専用のポットに挿し、発根を促します。
苗を育てることから、これを育苗(いくびょう)といいます。
苗がしっかり大きくなったら、この圃場に植え替えます。(定植)
一方、直挿し(じかざし)という方法があります。
それは、このように↓挿し穂を直接地面に挿して、そのまま収穫に至るまで栽培するという方法。これは定植の手間を省くことができるのですが、育苗ハウスで根が張ってから定植するのと異なり、技術が必要です。
「特に夏季は根が腐りやすいから、育苗ステージが必要。冬は直挿しやけどな。
この花秀芳が水に弱くて腐りやすい品種やねん。
以前もまだ苗が小さい時に湿度が上がってベチャーーーーーッ!とハウス丸ごと腐ってもうた時があってな。
もうたまらん!」
直挿しの方が定植の手間が省けるのでその方がいいのですが、技術の習得とタイミングの見極めが必要です。
淡路にしかできないこと
アカギク生産において、この「海のち崖」の淡路の地形の恩恵にあやかっていることは、なんといっても、水はけがええこと!
ご覧の通りの岩肌に急斜面。
「岩肌×傾斜の環境で作るのがちょうどいい」という林部会長。
一般的にキクの根は水に浸けると根腐れを起こしやすいのです。アカギクの根も意外にこじんまり・・・ですから水田だった土地でキクを作るのは、実はあまり向いていないのです。
淡路のこの環境だからこそ素直に育つのだとか。
一見デメリットに見えることをメリットに変え、利益を生み出す農業を営んでいます。
この独特な地形から強みを享受するからこそ淡路が"大きな産地!"になれるのです。
他の産地にはマネできませんし、灘花卉部会のみなさんがその地形に合った花秀芳という品種を上手に選んだところに商機があったのです。
しかし、まだまだこれでおしまいではありません。
「同じ品種を作っとると、毎年同じように作っとっても連作障害で作柄が悪くなってしまうねんな」
そうなる前の方策として、このように圃場の一角で試験栽培を行っています。良い品種を見つけたとしても、その土地に合うように作りこなすまで、またそこから数年を要します。次世代品種のデビューを待ち望むところです。
(↑写真の中心の一角だけ、葉の形が少し異なるのがお分かり頂けるでしょうか。ここ一帯が試作品種となります。)
選別
選別のシーンは山崎さんの選花場で見せていただきました。
"良いものを作る"のはブランド確立のためのひとつの必要条件ですが、"良いもの"の出来具合もそれぞれ。それをいかに階級ごとに画一的な品質に揃えていくかがブランド化にとっても命です。
こちらは当日収穫されたアカギクの山!
ワオッ!ヽ(´∀`*)ノ このひと山で1,000本くらいあります。
「キクは重量で選別するんだよ。」
へー、重量ですか。長さは?
「長さはほぼ90cmで統一する。その上で重量によって4段階に分けるんだ。2L、L、M、Sとね。」
キクの場合は、長さだけではなくもう一つ重さで選別するのがほかの花とは違うところです。
どれどれ、ほんとだ!キクはできによってこんなにも太さが違う!
この重さは、よもや秤で1本1本数えていくわけではないと思いますが、まさか・・・秤が見え隠れしていますが?
「機械で自動的に選別するんだよ!」
自動選別機はコチラ!ジャジャン☆
この機械に1本1本キクを置いていくと自動的に左から右に流れていきます。
その途中で機械のあっち側に分銅が付いていて、その分銅より重いところでパラリと下に落ちる仕組みになっています。
細いアームに載って、右奥の分銅によって重さを測ります。
こちらがその分銅。
その分銅より重いところで、アームが下がり、重量別に仕分けされます。
ぬぁんとこの機械、100万円ほどするのだとか・・高いなー、軽自動車買えちゃう?
「もう20年使ってんねん。」
山崎さん、お仕事のパートナーとして大切に使われているんですね。
その重量以外にも選別の際に、見るところがあります。
重量で分けて10本束にするときに、主に・・・
① 曲がり
② 虫付き ⇒ 特に葉の裏をチェック!
これを10本ずつに束ねて、ここで90cmきっかりに合わせ、一晩水揚げをして集荷所に持ち込み淡路を出発するというわけです。
あら?こ、これは?!(゚ペ?)???
なにやら冷蔵庫に貼り付けられた大きな発泡スチロール板に、詩のようなものが書かれています。
「これは人生についていろいろ考えてん。」
選別場で日々キクと対峙しながら、人生について考えていらしたのですね。
「この詩はな、"散る"っていうのがテーマやねん。」
硫黄島の戦いを指揮した栗林忠道氏の辞世の句だそうです。
「精魂込めて戦い人 ~(中略)~ 散るぞ悲しき」
ココに共感を得て山崎さんはこの詩を転写しました。
硫黄島ではありませんが、ここ淡路島でキクに人生を捧げようと心に誓った山崎さんの情熱と、1回1回の出荷にかける強い思いを反映したかのような引用ですね。
深いッ!深いなー(´▽`)
そして看板の最上部には
"Your life is only one!"
まるで崖の上でアカギクを作る淡路の部会のあり方を象徴したようなフレーズです。
集荷所
海を臨む集荷所にやってまいりました。選別されたアカギクが淡路を発つときです。
ちょうど、続々と部会員さんによって出荷用のアカギクが持ち込まれます。
それから福田さんほか、山崎さんもネコトラにて。
福田さんのトラックは、個人所有なのになんだかとてもプロ仕様です。
荷が降ろされたら、農協職員さんのディレクションにより、出荷市場別に分けられていきます。
よいしょよいしょと運ばれて、最初に仕分けてくださった大田花き行きの山。
「(大田花きには)いっちゃんええのを送んねん!」
とダミ声でおしえてくださったのは、山中一男(やまなか・かずお)さん。
ありがとうございますv(≧∇≦)v イェイ!
山中さんが「大田花き」の大きなスタンプを片手にテイクバックをしながら待ち構えていて、ここに置かれた箱に片っ端から、反復横跳び級の軽いフットワークで「大田花き」スタンプを押していきます。
あっと言う間に仕分け終了。
トラックの運転手さんが来て、各市場に向けて出発します。
っていうか、なんでアカギク?
先にも少し触れましたが、灘地区の農業の主流は、柑橘類・ビワ・日本水仙、そして少量のキク栽培。
しかし柑橘類やビワの場合、収穫期は1年に1回、さらに「海のち崖」のような地形においてはいくら天候穏やかな瀬戸内海といえども、台風がくれば1年の努力も水の泡というような高いリスクの中、柑橘類から安定性の高い施設園芸のキクに変更していきました。
「最初はシロもキイロも作っとってん。」
とおっしゃるのは、歯並びがきれいで笑顔が素敵な林均(はやし・ひとし)さん。あー、きれいな歯がマスクで見えへん・・・(-ε-)
「そやけどアカギクを花秀芳で作り始めたら評判が良くて。ほな、"これでイコカ"と徐々に増えていって、最後はアカギク1本になった。それが小さい産地であるウチの戦略やねん。
そのきっかけをくれたのは大田花きやで。大田市場が開場して、大田花きが機械ゼリを取り入れた頃に、たまたまウチら見学に行ってん。
ほんで"アカギク作ってます"言うたら、今の磯村社長に"隙間産業でチャンスがあるから、いい戦略ですね。アカギクでしたら、淡路の出荷数量で十分産地としてやっていけます。しかも周年ですからこれは嬉しい"と言われてん。」
そこで試しに出荷してみたら
「品質的にもOKだから、今後とも出荷をお願いします」と。
東京という大消費地で評価してもらえる面白さもあり、自信を持ってアカギク生産に特化したというわけです。
なるほど。このようなところから海と崖の狭間で作ったアカギクが、大量に東京に出荷される経緯は、こういうことだったのですね。
そう、淡路のアカギクは大田市場の設立がきっかけで産地として生まれたようなもの。淡路のアカギクは大田花きの誕生とともにあるのですね!
「そう、私は死ぬまで花を作る!」
とダイナミック宣言をされたのは山中さん・・・ですが、2カ月で70万の重油の請求書が届いたのだとか!
ひょぇーーーーーーッ(; ̄Д ̄)<愕!!>
思わず悲鳴をあげてしまします。東京でも1カ月35万円あったら相当良いマンションに住めますね^_^;
重く乗りかかる生産コストはここでも深刻な問題でした。
私のものもみんなのもの・・・共選共販
淡路の花き部会員11人全員が、いかに品質を画一化し、気持ちの上でも足並みを揃えるか。淡路の皆さまは、個性豊かな印象を受けましたが、どのように共同の意識を持つのでしょうか。
ひとつは、毎月全員が集まり全員の圃場を巡回し、勉強し合います。基本的には皆同じ品種を作っていますから、お互いに気いたことを意見しあい、部会員のみなさんから学び合うという姿勢。
もうひとつは
「"自分のキクであってみんなのキクである"というの共選共販の意識を持つことだよ」
とおっしゃる林均さん。
蓋し、名言v(≧∇≦)v !!
「自分の品質だけ良くても、部会の誰かの品質が悪かったら部会全体の評価が下がるから」
コラッ、ジャイアン!聞いとるか!
「オマエのものはオレのもの」と言っとる場合ちゃうで!淡路のみなさんを見習うように!
虹色のイルカ集団
個性豊かでありつつも、お互いを尊重し合い、同じ方向に進んでいく灘花卉部会の姿は、灘を回遊する虹色のイルカ集団のようにも見えます。
そもそも灘地区の「灘」って「さんずいに難しい」って書くねんで!
波が荒く潮流の速い難所やいうことやわ。
※瀬戸内海の灘については、島が少ない地域を指して灘と言うこともあるらしく、必ずしも波が荒いとは限らないようです。
いずれにしてもこのような難所で「小さくても大きな産地」を目指して、力を合わせてアカギクを生産する方たちを、全国の皆さまに知っていただきたかったわけです。
消費者のみなさまにメッセージ
キクは国花なり!
今は洋花ブームではありますが、日本を象徴する花はキクが一番!どのような儀式にもキクが欠かせないのです。是非、これからもキクを見直してください。
淡路のアカギクは大変持ちの良いものが出来上がっています。
おまけ その①
この灘地区は、全国でも有数のスイセン郷。あちこちに日本水仙が自生しているばかりではなく、灘黒岩水仙郷という日本水仙で埋め尽くされた市営の公園があるのです。
瀬戸内海を望み、海のち崖のこの急斜面一面に日本水仙が植えられています。
←こちらもすごい角度!
写真は2013年1月のもので、まだ開花期には少し早いときのものですが、満開を迎える頃のシーンは圧巻です。
おまけ その②
★猪狩り
淡路のみなさんな晴耕雨読で穏やかな人たちとお見受けしました。
晴れた日には畑を耕し、海で漁をして、山で狩猟をする。
灘花卉部会のみなさんも、アカギクを作る傍ら、海に出たり、山に入ったりしています。
狩猟は獣害を防ぐためです。林均さんは狩猟免許を持っていて、訪問したこの日、イノシシを仕留めて(檻に誘導する方法)さばいてくださいました。
その猪肉がコチラ!ジャジャーン。
この日は、味噌だれの鍋でいただきます。
イノシシの肉は、豚や牛肉よりもカロリーやコレステロールが低く、ビタミンBは圧倒的に含有量が多いのです☆
猪肉の場合は脂身が美味。
これほどまでに分厚い脂身の猪肉が獲れたのは今年初めてなんだそうです。
人生に1度あるかないかの機会に恵まれ、有難くご相伴に預かりましたm(_ _)mアリガトウゴザイマシタ☆☆☆
2008年5月23日
vol.60 愛知県 JAひまわり
うんちく探検隊 記念すべき第60号!
今回は安藤隊長・西山副隊長率いる08年度入社の新人探検員9名が、新人研修を兼ねて、うんちく探検隊初参戦!
朝4時出発!新人探検員が「生まれて初めて見る生産現場」向かった先は・・・?隊員は西へ西へと車を走らせます途中、お茶畑や富士山を横目に高速を飛ばします。
安藤隊長:
「お茶畑にたくさんある、扇風機みたいなもの何か知ってる?」
「風力発電ですか?」
「ちがうちがう、霜にやられないように設置してあるんだよ」
「あれだけで、霜が防げるなら、ダリアなどお花でも活かせそうですね!」
と、会話は続きます。
しばし休憩です。
安藤隊長の指の先に見えたのは・・・
(左)内藤隊員(右)下田隊員
「ほら、浜名湖だよ!」
?JAひまわりに到着!?
東京を出て約4時間、隊員は愛知県の豊川市、JAひまわりに到着しました。
JAひまわりの知識
■どこにあるの?
愛知県の豊川市です。
■どんなお花をどのくらいの方が作っているの?
SPマム(75名)、キク(72名)、バラ(46名)、洋花(28名)です。
■ひまわりを作っているの?
ひまわりは、ごく少量しか作られていません。
■なぜひまわりってついたの?
昔、いくつかの生産地が合併をした際に、募集をかけて決まったのがJAひまわりでした。
今回、迎えてくださったのは、JAひまわり営農部花卉出荷センターの小林センター長です。
「このシールは、各生産者が一箱一箱貼って、出荷場に持ってこられます」「このシールを自動ローラーで分荷する前に、検査を一箱一箱行っています」
「えー!全部の箱を毎日チェックしているのですか?」
「生産者の当番がチェックしているんですよ」
これが「検査報告書」です。各品目ごとに報告書が異なります。これはキクの検査報告書です。ダニ、アブラムシ、白さび病、曲がり・・・様々な理由の項目。連絡事項には、検査員がコメントを書きます。チェック項目のランクは、連絡→注意→格下げ→返品。中には出荷場で、返品されることもあるそうです。これは昔から続いているJAひまわりの習慣だそうで、検査までが「自分たちの責任」という自覚をお持ちで、これに不平不満を言う方はいらっしゃらないそうです。
この検査報告書には「もう少し咲かせてください」とコメントが書かれています。市場でも、特にセリの際にはセリ人がお花を見て判断して、セリ機に「咲きすぎ」「曲がり」「葉悪し」・・・などを表示させて競ることがありますが、セリという限られた時間の中できっとこの「検査報告書」ほど細かくチェックできていないでしょうし、産地へのフィードバックも細かい対応はできていないでしょう。JAひまわりでは、ここまでは産地の仕事という認識から、毎箱毎箱チェックをされているそうです。
検査員の生産者の方々も、生産・出荷作業にプラスしてのチェック作業は、時間を作り出すのも大変だと思いますが、他の人が作っている花が見れたり、荷姿が見れたり、新しい刺激になっていると、小林センター長はおっしゃっています。
「1箱でもダメな物があったら、産地の信頼が崩れてしまう。ここでは、こんなに沢山箱があっても、結局、お花屋さんに届くのは1箱なのですから。」
このような認識があるからこそ、ひまわりのブランドが保たれているわけですね!
みんなも納得!(してるよね?)
左から、石井隊員、吉田隊員、矢作隊員、依田隊員
「他にも、組織で役割分担がきっちり決まっていて、抜き打ちでバラのバケットのバクテリアチェックをしたり、広報活動や、開封検査など、ローテンションで役割が決まっています」
では、JAの山田さんと金子さんに圃場をご案内いただきましょう!今からガーベラと、バラと、SPマムの圃場をご案内頂きます。
その前に、記念撮影。
お忙しい中、朝からありがとうございました!
?市川さんのガーベラ!?
早速、ガーベラを生産されている市川さんのハウスにお邪魔しました。とても広く、設備の整ったハウスには、出荷前の赤・黄色のガーベラが沢山ありました!初めてガーベラの栽培現場を見る新人探検隊も「きれい!」「すごい!」と感動の嵐。
市川さん:「今までは鉢で栽培をしてきましたが、今年からはロックウールの栽培に変更しました。肥料や原油の高騰から、どちらも量を少なめにしてしまったことが影響して、今年の栽培は良かったとは言えませんでした。肥料を吸い上げるのにも、ある程度の温度が必要!ということが分かった一年でした。」
ハウスの温度を保つのに、一日最低50ℓ?80ℓもの油が必要だそうです。
原油の高騰したからと言って、花が高く売れるわけではない、というのが残念ながら今の花卉業界の現状。弊社では、そのためにも「一円でも高く売れ!」というシールを営業全員のパソコンのデスクトップに貼ってあります。
市川さん:「ロックウールで栽培するメリットは、太くていいものができることです。」
←去年まで使われていた鉢
市川さん:「ロックウールのメリットは、本数は切れること。1?から400?500本/年間切れます。アルミ箔のようなものをかけることで、蒸散や微生物の繁殖を防ぐことができるんですよ。デメリットは重みが少ないように思います。」
黒い線のようなもので、自動的にお水をあげることができます
光を当てないと、このように何も生えてこない
ガーベラの花保ちをよくする方法memo
市川さん:「ガーベラは、花びんに活けるとき、水は茎の5cmくらい使っていれば十分です。毎日少しづつ、足してあげるのがガーベラにとって良いんだよ。」※ガーベラは水浅で活けることは常識でしたが、もっと少なくて良かったのですね。
市川さんから、お花屋さんへ一言☆
ガーベラは使いやすく、手ごろ。色々な方面で活躍できる花だと思います。冠婚葬祭にも、もっともっと使って頂きたいし、その方法を考えて下さればと思います。
わたしたち生産者は、いいものをがんばっていい花をつくります!
近年のブライダル重要についてのmemo by 安藤隊長
「大人婚」という言葉が持てはやされている今、結婚しても仕事を続ける女性が増えています。企業で働く人にとって、春先は転勤や異動で何かと忙しいので、結婚式は秋にするカップルが増えているようです。人口減少から、結婚式の需要も年々少なくなりますが、春の式は減少傾向にあっても、秋の式は横這いのままです。ブライダル需要に合わせてお花を作るなら、「秋」ということですね!
写真左:倉持隊員
市川さんと記念撮影!
市川さんから、新入社員へメッセージ☆
市川さん:私は昨年新しい栽培方法にチャレンジして失敗をしました。しかし、失敗で得た経験は大きく、そこから利益を生んでがんばっていこうと思います。会社でも、失敗やミスをすることはあると思いますが、同じ失敗を繰り返さずにそこから何かを学べば、上司や先輩も、皆さんのことを怒らないでしょう。皆さんも失敗を恐れずに、がんばってください。
市川さん、素晴らしいメッセージをありがとうございます。
ガーベラを頂きました。気分もhappy☆よかったね!!
ガーベラ@car
ちゃんとお水入りのペットボトルに入れて、車の中でも水揚げします。車に花があるのも気分が明るくなって良いですね!
?河合さんのバラ!?
続いて向かったのは・・・
バラの生産をされている河合さんのハウスです。
河合さん:「バラの生産をしています河合です。15年ほど前からバラのロックウール栽培を始めました。現在では、バラを63?栽培していて、43?がフィルム・20?がガラスのハウスで栽培しています。栽培を始める際にはハードにお金がかかり、ガラスのハウスを作ることには、周りからとても反対されましたが、今となってはよかったと思っています。」
屋根が高?い!
河合さん:「これまではロックウール栽培でうまくやってこれたけど、楽をしすぎてきてしまったのではないか?という考えのもと、3年くらい前から一個一個解析して、努力をしている最中です。」
(後姿の畑中隊員)
みんなも真剣にメモをとります。
わたし:「ロックウールで栽培しているバラは、今までに見たことがありますが、こんなに木化しているのは初めて見ました。何年くらい栽培すると、木化するのですか?」
河合さん:「3年くらいですね。普通は、2?3年で植替えをする方が多いですが、私は4?5年周期で植替えします。また、植替えをするなら、植物にとって春が良いと思いますよ。株の出来もいいです。よく、夏に植替えをする方もいますが、夏に植え替えると、その年の年末までに出荷するのはおそらく無理でしょう。それもあって、春に植替えするのが良いです。」
わたし:「これはなんですか?」
河合さん:「除湿機です。これを入れることによって、葉がしまったような印象になります。重量のあるしっかりしたバラが作れるんです。湿度は70?75%に保つようにしています。今日は雨が降ってないから、水がポトポト落ちるところがお見せできなくて、残念ですよ(笑)」
ちなみに雨の日は90?92%になるそうです。
河合さん:「ただし、落とし穴があって、20℃以上ないと除湿できないので、冬はそのためにも油を焚く必要があるんですよ」(相対湿度の問題)
「新しい機械やヒートポンプを入れると、その業者がなんと言おうと、自分で感じて試してみる。これが一番大事ですね。なので、去年は3日くらい、ハウスに寝泊りしました。これをやった時どうなる?秋にこれをしなかったら?品種によっても異なるし、これからも試行錯誤です。」
除湿機を入れたことによって出来た厚みのある葉
社会や環境を背景に、花きの生産者も国際競争で戦わなければなりません。継続性のある経営とは?
河合さん:「私は、定番品種を1/3、可能性を秘めた新品種を1/3、自分の好きな品種を1/3の割合で栽培しています」「やっぱり、食べていくために稼ぐことも必要だけど自分の好きな品種も作らないと、おもしろくないじゃない?ただし、これは1,000坪以下では出来ないと思います。1,000坪以下なら1/2を定番にする。もしくは、8割を定番に。1割好きなもの。1割あたしいもの。という比率が良いのではないでしょうか。」
後に、車で移動中に・・・
安藤隊長:「河合さんは安定して生産されていらっしゃるから、理想の比率で生産されていますね。私がもし、生産者なら始めは7割を食べていくために。残りの3割で新しいものと好きなものを作りますね」
「作りやすい」「作りにくい」「自分の好きなもの」「市場性」・・・比率を決めて生産をすることがキーワードですね!
「河合さんの好きなバラはどの品種ですか?」
河合さん:「マダムヴィオレです。香り・色、最高でしょ?咲くともっと違って見えますよ」
「いい香り?☆」
出荷前のものなので、蕾の状態でしたが、ほんのりいい香り!他のバラとは違う香りがしました。
病気に弱いマダムヴィオレ。それでも市場に「いつもあるように」という考え方のもと、栽培・出荷されています。
マダムヴィオレと、ラ・カンパネラは、栽培するのに腕が試されるバラ。
わたし:「次々と新しい品種が出るバラ。それを待ち望んでいる顧客が大勢いる中、市場からは栽培上の視点から、同じ品種を10年くらい作って欲しいという要望があります。河合さんはどのようなご意見ですか?」
河合さん:「そうですね。やはり、品種特性を掴むのに3年はかかるでしょう。それから多少栽培方法の修正をして、4年周期、4年周期と繰り返せば、10年ですからね、その通りだと思います。しかし、商品性については新しい品種がないと、デザイナーが寂しがりますね。」
河合さん:「いろいろとありますが、私は生産をする上で、いつも初心に返れるようにと心がけています。」
立石隊員:「河合さんの初心とは、どのようなことですか?」という鋭いツッコミ。
河合さん:「自分の作った花で、みなさんに喜んで頂くことです。」
河合さん、たくさんのメッセージをどうもありがとうございました!
とても勉強になりました☆
?JAひまわりのSPマムと輪菊?
最後はスプレーマムと輪菊の温室へ
残念なことに、輪菊の生産者の小林さん・スプレーマムの生産者の林さんは出荷作業のため留守にしていましたが、JAの金子さん・山田さんにご紹介頂きました。
こんなに背丈があるのですね!
コガネハマ(写真の花はあと2日くらいで出荷です)
この品種は、「芽かきなしで良いという作業性、冬場にあまり油を焚かなくていい」という生産性の良さから、これからますます出荷量が増えていきそうです。
ダッチライトという、花の生産に適した高い屋根のハウス。
オランダでは、このハウスが主流だとか。湿気がたまりにくいそうです。
ここで自動的に温度や湿度を測って管理しているそうです。
レミダスプリンス
突然の取材で、SPマム生産者の小林さんと林さんにお会いできず残念でした。次回は是非、いろいろと教えてください。
また、お忙しい中JAの金子さん、山田さんご案内・たくさんのご説明頂き、ありがとうございました。
最後は、JAひまわりの周辺の風景!
JAひまわりの皆様、ありがとうございました!
JAひまわりの格言
・一人一役(JAひまわり)
・新しいことにチャレンジして、たくさん学ぶべし!(ガーベラ・市川さん)
・自分の作った花で、皆さんを喜ばすという心を持つべし!(バラ・河合さん)
このあとも、新人探検隊の旅は続く・・・
(文責 Cimone♪)
2008年4月28日
vol.58 沖縄県 太陽の花
お花屋さんなら、「沖縄 太陽の花と言えば小菊」と連想する方も多いのではないでしょうか?
今回、特集するのも菊ではあるのですが、同じ菊でも『菊らしくない菊』をコンセプトとしたマムです。
そんなマムが誕生する現場を動画でご覧いただきます。
では、動画の中でも触れていましたが、台風の多い沖縄で、安定した品質の小菊栽培が可能になった秘密について、ご紹介します。
?平張りハウスって??
訪れたのは読谷(よみたん)という地域。
米軍跡地というだけあって、なんと滑走路が道路になっています。
ここは、沖縄の東側の海岸沿いで、海風を受けやすいため、台風の被害を一番受けやすい地域。
だから、昔は年末の栽培は壊滅的で、生産も安定しなかったそうです。
それが、今や10億の売上げ地域に変貌!
その背景には、島田コンさんという方が起こした地域活性化事業、通称『島コン』がありました。
野菜農家を含む7人の生産者、一人に3千坪ずつが割り当てられて、平成15年からスタートしたこの事業では施設にも拘り、菊栽培では初めて平張りハウスが導入されたのです!
その特徴は、
ビニールではなく、防風ネットで覆われているので風が抜ける!
また、雨が強く打ちつけるのではなく、メッシュを通ってミストのようにハウス内に降り注ぎます!
その時のハウスは、「まるで風のない霧の中にいるような感じ」なのだそうです。
ちょっと幻想的ですね。
そして、そのメリットは、
防虫ネットで虫や紫外線カット!
雨水は通しても、雨で叩かれることはないから土はいい状態!
健康な土ができるから農薬散布の量も半減し、自然と減農薬栽培が可能に!
風が抜ける為、台風で倒壊することもなく、補修費用がかからない!
と、平張りハウスとは環境に優しく、経済的なエコハウスと言えるのです!
虫が避けられて、4?5年の耐久性があって、沖縄の紫外線にも強い!このハウスのお陰で、読谷地区での平準出荷が可能となったわけです。
そんなハウスで、小菊やスプレー菊を大量に安定的に栽培できるようになったのですが、仏花需要だけの菊を4月に出荷しても売れ行きは良くありません…。
そこで、新品種開発に取り組むこととなったのです!
?菊らしくない菊!?を目指して?
今までにない菊作りを目指して取り組み始めた太陽マムシリーズのコンセプトは?
小菊としても、SPキクとしても活躍できるマム!
そして、その中には2つのシリーズがあります。
1.小さくてかわいいキャンディーマムシリーズ
2.オシャレでインパクトがあるファッションマムシリーズ
では、それぞれの代表品種をご紹介しましょう!
“キャンディーマム”(小輪タイプ)
?うりずんシリーズ?
うりずん ウスピンク サーモンピンク ブラウン
?その他?
ちゅら テラ トア
“ファッションマム”(大輪タイプ)
?2007年発表の品種?
太陽の美乱(びらん) / 太陽のソフィア / 太陽の藍夢(あいむ)
太陽の乱舞(らんぶ)/ 太陽の橙瑠璃(とうるり)/ 太陽のルイーズ
太陽の麗江(りいじゃん)/太陽の情炎(じょうえん)
どれも個性的な名前が付いたファッションマム!
その由来をいくつかご紹介しますと…、
太陽の藍夢(あいむ): 沖縄出身の世界で活躍している「宮里 藍」選手に夢を託して。
太陽の乱舞(らんぶ): 美乱と同様に、乱れ舞う姿を表現。
太陽の橙瑠璃(とうるり): 沖縄をイメージさせる“瑠璃”に、オレンジ色を“橙”と漢字で表現。
太陽の麗江(りいじゃん): 中国古城の町・麗江(リィジャン)に降り立った時のイメージ。
考え抜かれた名前だということがお分かりいただけましたか?
品種名に漢字を多く取り入れたのは、輸入攻勢を受けている状況下で、日本人の感性を活かしたブランド品種として、“和”のテイストを組み込もう!、“メイド・イン・沖縄”を打ち出そう!という意図が含まれているのです。
ぜひ、新しい使い方で新たなマムの魅力を引き出してください!
最後に、現在 登録申請中で今年の秋より販売開始となる、初公開のファッションマムと、太陽の花の皆さんからのメッセージを動画でご覧ください。
太陽の花よりお花屋さんへのメッセージ
太陽の花の格言
虫や紫外線はカット!その上、農薬の使用量を半減できる!環境に優しいエコな平張りハウスが、高品質・安定出荷を可能にしています!
太陽マムの格言
仏様に供えるだけじゃない!菊の新しい魅力に目を向けるべし!
小菊としても、SP菊としても活躍できる優れもの!可愛くて、オシャレな太陽マムに注目すべし!
太陽マムの名前の由来を知ると、もっと面白い!
2007年5月14日
vol.39 福岡県 JAふくおか八女
福岡県 全農ふくれん第2弾!
今回は八女にスポットを当てます。
八女というと皆さんは何を思い浮かべますか?
私の頭に真っ先に浮かぶのは、「八女茶!」だったのですが、
ハウスへ向かう道すがら見た風景はお茶畑のみならず、果樹園もたくさん!
そう、JAふくおか八女は特産品の豊富さと、その生産高で県下はもちろんのこと、
全国でも最大規模を誇る大産地なのです。
中でも販売高NO.1はイチゴ!“博多あまおう”は有名ですよね。
そしてNO.2が八女茶!
NO.3が菊!
それからブドウ、ミカンと続きます。
では、ここで一曲ご紹介!
♪八女茶にいちごに電照菊
みかんにキウイに梨ぶどう
米も沢山取れるとこ
自慢の味を作り出す
われらJAふくおか八女♪
さすが特産品の宝庫!こんな歌まであるんです。
さて、その中でも今回クローズアップするのは、もちろん菊です!
現在、5月下旬? 夏菊の“優花”(白)を、
10月上旬?秋菊の“神馬”(白)/“精興の秋”(黄)/“美吉野”(赤)を
年間を通して出荷しています。
?柴田実千穂さん?
始めに訪れた柴田さんの栽培した菊は、今年 福岡県花き品評会で農林水産大臣賞受賞しました!
その審査基準は、仕立て本数、特級品率、生育・開花の揃い等多岐に渡ります。
確かな栽培技術はお墨付き!
そんな柴田さんのハウスは、肥料、水、温度など全てコンピューターによって管理されたオートマチックハウスで、溶液土耕栽培をしています。
「これによって過剰な摂取を防ぐ事ができ、エコファーマーにも繋がるんです。」と柴田さん。
そう、JAふくおか八女では環境に優しい菊作り宣言をし、電照菊部会でエコファーマーを認定取得されました!
ここでチョット豆知識!「エコファーマーってどんな人」
「持続性の高い農業生産方式の導入促進に関する法律」に基づいて、持続性の高い農業生産方式を導入するための「導入計画」について、県知事が認定した農業者(個人または法人)のこと、
ってご理解いただけました?
つまり、環境に配慮して、地球に優しい生産方法を計画的に取り入れている生産者、ってことですよ!
この他にもエコな取り組みをされています。
電照を蛍光灯に換えて、電気代をナント今までの1/4にカットする事に成功!
「メーカーとタイアップして、この電球を導入してから1年経つけど、電気代ころっと違うよ。」と柴田さん。
これだけの面積つけているのは、この産地だけだと思われますが、きっと
ゆくゆくは全ての産地に導入されることでしょう。
この電球は上半分が傘で覆われているので、電気をつけても下だけがぽわっと明るいので、独特の雰囲気になるとか。夜の電照夜景風景もちょっと現象的な雰囲気に変わるかもしれませんね。
さらにさらに、換気する際にハウスを開けても虫が入ってこないように防虫ネットもしっかり貼っています。
防虫ネットの使用はJA八女全ての生産者で義務付けられており、一丸となって減農薬栽培を推進しているのです。
よく見ると防虫ネットにはアルミが織り込まれています。
これは、菊の天敵である害虫のスリップスがアルミのピカピカ光るのを嫌うためなのだそうです。
ここで二つ目の豆知識!「スリップスとは」
名前の由来はギリシャ語の「木の虫」に由来する英語の「Thrips」をそのまま発音し、「スリップス」と呼ばれるようになったようです。 体長は0.7?3.3mm程の小さな虫。
日本では、「アザミウマ」とも呼ばれています。アザミウマは漢字では花の「薊」と動物の「馬」との合成語で「薊馬」と書きます。
明治時代に大阪周辺で、アザミの花を右手に持ち左手の手のひらにそれを乗せて軽くたたき、
「馬でよ!牛でよ!」と言って、アザミの花から出てくる虫の数を競った遊びがあったそうです。
「アザミウマ」と名前をつけた博士が、もしも牛好きな方であったなら「アザミウシ」になっていたかもしれませんが…!?
さて、柴田さんに菊を栽培する上で大変なことについて聞いてみました。
すると、「芽摘みが一番大変ですね。労働時間の1/3ぐらいを占めてるんじゃないかな。
だから、下の方の芽が出てこない品種を導入することも検討しているんです。」との事。
そして、実際に芽摘みの手間が省けるような新品種が県の試作品であるとか。
そうした品種選びに対するコダワリについても、続いてご紹介します。
?中園英治さん?
早速、部会長の中園さんのハウスへ。こちらのハウスでは、福岡県の試験場で交配された何万本の中から選ばれた実生品種を産地と一緒に作るという取り組みがされています。
現在導入されている品種で、有望品種として登場したのが『雪姫』。
「やっと名前がついて栽培し始めたけど、まだ面積は狭いし、栽培についても確立していないんですよ。」と中園さん。
しかし、その期待の程はかなりなものです。
「現在主流となっている品種“神馬”は5?6月になると花がとんがってきたり、花持ちが悪くなるんだけど、雪姫は水揚げバツグンにいいとよ。自宅の玄関先で2ヶ月もったよ!」
「また 個体差がなく 花が揃っているため、仕事屋にもよいし、生産者向けでもあるんですよ。
仕事屋は差し替え作業が一番手間がかかるでしょ。その作業が不要になれば、人件費削減になる。使う人がどっちを選ぶかですよ!」と自信満々です。
それもそのはず、何十年も作っている中で、栽培してみても、飾ってみてもよい性質だと実感したから言えることなんです。
さらに、「マレーシアから輸入される神馬の品質がいいでしょうが。冬場はとうてい勝てないわけです。
だから、あと5?10円下げても経営できるような花を作らなきゃ!
いかに高くせんで年間買ってもらえる花を作るか考えないと産地は衰退してしまいます。
海外に勝つにはやってかんと!この雪姫は100%じゃないけど有望品種!
これからは産地間競争じゃなく、国際競争で戦える価格で年間通して出荷できないと産地は衰退してくる!マレーシアに負けたくないんです!」
雪姫が100%でないという理由は、神馬のような理想的な葉ではないという事です。
立葉で、刻みがあって、色が濃いという理想の葉に近づける為、さらなる品種改良をおこなっているのです。
また、今後MPSの取得も目指していると聞いたのですが…
「防虫ネットや土作りに取り組んでいたら、今の状況で取れることが分かったのでエコファーマーを取ったんです。そしたら経営的にもよくなった。
次世代の経営診断としても活用し、MPSの取得もしていきたい。」
と意欲や熱い思いを語ってくださいました。
3つ目の豆知識!「MPSって」
オランダで始まった環境負荷低減を目指す 花き業界のための認証プログラムです。
まだ日本では始まったばかり!
大田花きでもMPSの取得を応援しています。詳しい説明はこちらをご覧ください。
→http://www.otakaki.co.jp/development/MPS.html
各生産者から↑こちらの集荷場(フラワーセンター)へ集められたには、徹底した品質管理のもと、市場へ出荷されます。
建物内にあるショーケースには、菊を使ったアレンジが飾られていました。
和テイストの菊も こんな風に飾ると、モダンな印象になりますよね!
実は、こちらのオンシジュームも八女の特産品!⇒
次号その栽培現場をご紹介しますのでお楽しみに♪
日本でも古く、大きな菊産地ですが、グローバルな視点で新しいチャレンジを続け、全体をリードしていこうとされている八女電照菊部会の取り組みには目が離せません!
【八女電照菊の魅力】
精興の秋
光沢のある純黄色の丹弁抱え咲きの大輪。
茎は青軸で、濃緑の照葉の立ち葉で木姿のよい中長幹種です。株立ちよく生育の揃いがよい。
神馬
花色が純白で抱え咲きの大輪。
葉が小葉であり、立ち葉。
水揚げが大変よい八女電照部会の主力品種。
美吉野
花色はビロードのような赤色抱え咲きの大輪。花弁に艶があり満開まで咲ききる。赤色の主力品種。
残念ながら 画像はありませんが、
優花
大変ボリュームのある白菊大輪。
水揚げが良く、光沢のある葉である。高温による奇形花の発生率が低く、安定出荷が見込まれる。
柴田さん、中園さんからお花屋さんへのメッセージ
末端が喜ぶ花作りを目指しています!
新品種“雪姫”が一つの起爆剤になるよう、常にチャレンジし続けますので、
ぜひ 使ってみてください!
JAふくおか八女・電照菊部会の格言
・圃場には差があっても、箱の中身には差がない商品作りをしています!
・部会だけでなく、国内全体の菊生産が海外と戦えるよう、常にチャレンジし続けます!
・環境に優しい菊作りを目指します!