2009年6月 3日
vol.72 JAいわみざわ 情熱フラワー
まだ桜前線も到達していない4月下旬の北海道に再々上陸!
もちろん平地の雪は解けていますが、山上の方には積雪が見られます。
今回お邪魔したのはJAいわみざわ情熱フラワー。
新千歳空港から札幌経由で1時間余のところにあります。
ここを取材したのは、父の日に向けて出荷されるヒマワリの秘密を探るため。
はい!ここでヒマワリの予習です( ^ー゜)b
ヒマワリはキク科の一年草、または多年草で、原産地は北アメリカ中西部とされています。
古の時代よりヒマワリは太陽の象徴として使われ、例えば古代インカ帝国において「太陽の花」として愛でられ、石造りの神殿にはヒマワリが飾られたという記録が残っています。
また、フランスのルイ14世は別名「太陽王」を持っていましたが、その紋章にはヒマワリが使われていました。
ヒマワリの学名は(Helianthus annuus)。
その象徴として使われているとおり、属名のHeliunthus(ヘリアンサス)とはギリシャ語のHelio(太陽)+anthus(花)から来ています。
英名もsunflowerで「太陽の花」の意味そのまま!
つまり、ヒマワリはまさに夏場の太陽を燦々と受けて元気な花を咲かせる「太陽の花」なのです
・・・原産地から世界に広まった経緯・・・
原産地の中南米ではコロンブスのアメリカ大陸発見後、1564?71年の間にスペインの医師ニコラス・モナルデスがスペイン王立植物園に持ち込み、ヨーロッパに広まったとされています。
ヨーロッパに広がったころ、“この花は太陽の方向に首を回す不思議な花だ!”という噂が広がり、この植物を「太陽について回る花」と呼ぶようになったといいます。
現にスペイン語、フランス語ではヒマワリのことを「太陽に付いて回る花」というのだそうです。
・・・ヒマワリと日本・・・
また日本へは、その後中国に伝えられ、江戸時代初期(1666年)やっと紹介されたようです。
伝来当初は「丈菊(じょうぎく)」と呼ばれ、「ひまわり」という名が使われるようになったのは、元禄時代(1688?1704)なのだとか。
日本語の「ひまわり」という名は、ご存知の通り「日廻り」、つまり「日(=太陽)を追って廻る花」だからこの名前がついたのです。花が咲くまでは、その葉が1日の中で太陽を追いかけて傾くのです。
ところが、「ヒマワリは東を向いて咲く!」ってご存知でした?!
1970年に公開されたソフィア・ローレンが出演している映画「ひまわり」は公開から40年たった今でもあまりにも有名ですが、そのシーンに出てくる一面のヒマワリが印象的で脳裏に焼き付いていらっしゃる方も少なくないでしょう。
(ああ、あの切ない名曲(音楽?)を思い出すたびに胸が締め付けられます?(タララ?ララーララ?♪)
あのヒマワリのシーンを見て不思議に思いませんでしたか?
どうして花がみな同じ方向を向いて開花しているのか?
わざとそのように植えたのか?そんなことできる?
映像でも見たことがあるかもしれませんが、ヨーロッパやアメリカの広い畑に植えられたヒマワリは、すべて見事に花が同じ方を向いて咲いています。そしてそれは東なのです!!
よもや日本を向いている?
「世界中のヒマワリが日本を向いている!」と言い切るのは少し無理がありますが、絵画「ひまわり」で有名な巨匠フィンセント・ファン・ゴッホも、ヒマワリが向いている先の極東日本に憧れ、神秘性すら感じていたようで、いつか日本に渡りたいという強い思いを持っていたようです。
さて、豆知識はこれくらいにして、岩見沢物語を見てまいりましょう。
ついでに、本当にヒマワリは太陽を追って回るのか、また東を向いて開花するのか、専門家に聞いてみましょー!
早速、ヒマワリの生産の秘密を探っちゃいましょ!
( ^ー゜)b
こちらはJAいわみざわでヒマワリを生産されている渡辺勘治さん。
渡辺さんはいわみざわでヒマワリ生産の先駆けとして、またリーダー的な存在として信望を集め、ヒマワリ部会の初代部会長を務められました。
それも発足当時から何と10年も!
10年目にヒマワリの年間売上1億円を達成し(2007年)、現在は次の方にバトンタッチされました。
軌道に乗った2008年も1億円を達成。
「皆さんのお陰です」と謙虚な渡辺さんですが、まさに渡辺さんは“情熱フラワーひまわり特許部会(JAいわみざわ)の偉大なる育ての父”といえるでしょう。
ところで、そんな渡辺さんはヒマワリをパテント栽培しています。
つまりヒマワリの栽培方法に関し、特許を取得された方がいて、その方に一定の料金をお支払いして特許を取得された栽培技術を伝授してもらうというもの。
パテント栽培を始めるきっかけは何だったのでしょうか?
平成8年の12月に砂川の長岡良治さんという方がヒマワリの栽培に関して特許を取得されたことが『日本農業新聞』に掲載されました。
そこで興味を持って長岡さんに連絡してみたことが始まりです。
長岡さんには全国各地から問い合わせがあったことだろうとは思いますが、長岡さんの「道内の目が届くところでやってほしい」という希望で、全国でも3産地、それも全て道内のいわみざわとニセコ、砂川の産地がパテント栽培をすることになったそうです。
「当時はヒマワリを小さく作るという観念がなかった」という渡辺さん。
“ヒマワリは畑で大きく咲くもの”という渡辺さんの固定観念を打ち破ったのが長岡さんのパテント栽培だったのだそう。
長岡さんが「オレの栽培技術でみんな同じものが作れっから!」と始めてみたものの、1年目から3年目までは大変だったそうです。
というのも、太陽を燦々と浴びて、土壌の栄養がたっぷりあるところでは巨大なまでに成長してしまうヒマワリを、長岡さんの方法で小さく作りましょう!という栽培技術。
つまり小さく作るためには、水や肥料を切らして作っていくという作戦なのです。
そこへきて、渡辺さんの土壌にはそれまでやっていた肥料が残っていますから、肥料を切らしているつもりでもなかなか思うどおりにならないわけです。
「前の肥料が切れて、意のままに作れるようになったのは4年目くらいからかな。
そのころから市場でも評価されるようになった」と回想する渡辺さん。
ヒマワリの栽培について、ここでインタビューしてみましょう。
【何が大変ですか?】
?水やりだね。
全て手潅水なんだよ。毎日1?2回。
しかも自動潅水システムを導入して品質が良くなったアルストロメリアと違って、ヒマワリは生育状況を見ながら潅水する必要がある。
それも葉が萎れる直前☆ギリギリのところで水をやるんだよ。
植物は水をたくさんやると常に水を欲しがり、水を少なくしていると常に少なくて済む。
小ぶりで上品なヒマワリを育てるには、水を少なくする必要があるんだよ。
逆に雨が降ると潅水の心配をしなくていいから安心するね。湿度が上がるから、葉が萎れることもない。
以前自動潅水をしたらあっという間に3メートルくらいまで大きくなってしまった(+_+)
始めたばかりの時で、前の肥料が土壌に残っていたから余計そうなっちゃったんだね。
だから自動潅水はやめたんだよ。
?選別も大変。
難しいね。輪の大きさが同じでも、茎の太さが違ったりするから。
でもこれをやらないと、市場に文句言われっからなぁ?。
(・・・あはは、すみません^_^;)
【それでもヒマワリの栽培を選んだのはなぜ?】
?単位面積当たりの栽培効率が良いから
こんなに詰めて栽培しても大丈夫!
ヒマワリの栽培の1サイクルは60日が基準。
豪雪地帯の北海道では、1年のうち収穫期が短く、いかに効率良く回していくかが勝負どころとなります。
?かわいい
ヒマワリもメリアも、出荷のときは娘を嫁に出すようなもんだわ。
さすが、いわみざわのヒマワリの父です!
【気を付けていることは?】
? 石や泥を入れないように、箱の中をきれいにして、病気がついていないかよ???くチェックしています。
?ヒマワリは食卓や玄関など、家の中に飾ることが多いため、農薬はできるだけ使わない努力をしています。
【良いヒマワリの見分け方は?】
展開して直径が10cmくらいのもので、茎の太さが女性の小指くらい。
ヒマワリは小さく作るのが大変。
【パテント栽培のヒマワリの特徴】
葉が小さくて少ない。
茎が少し黄味がかっている。
箱に「特許栽培」と書いてある。
↑これが目印です。
【品種選びは?】
サンリッチオレンジ、レモン、パイン、マンゴー、フレッシュ、など10品種を栽培しています。
いずれもお花屋さんの評価あっての品種選び。
ほんときれいなんだよね。個人的にはサンリッチパインあたりが好きかな。
自分が作っていると余計にきれいに見えるよね。」と渡辺さんの口元がほころびます。
【広大な土地の北海道で花生産の道を選んだ理由は?】
農家は稼いで投資、稼いで投資の繰り返しで成り立つもの。
北海道は広大な土地を生かして、栽培面積を横に広げるパターン(水稲)もあるが、面積が少ない人は施設を作って集約栽培(花き生産)をする必要がある。
これは作る人の考え次第。
私は手間はかかっけど、施設を建てて、限られた面積で集約栽培する花生産を選んだんだぁ。
【本当にヒマワリは東を向いて咲いている?】
なんと東を向いていました!
渡辺さんにお伺いしたところ、つぼみを持つまでは、日中太陽を追いかけてぐるぐる回るのだとか。
噂は本当だったのです!
「でもね、苦労して作ってるんだわぁ」と訴えかけるように言う渡辺さん。
その苦労が反映されてか、渡辺さんのヒマワリは本当に高品質!
「一般的にヒマワリは茎が腐りやすいって言うけど、うちのヒマワリは腐らない。
導管が丈夫だし、家ん中飾ったら、水を取り換えなくても枯れるのを待つか、水がなくなるのを待つかしかない。栽培過程で手間をかけた分、家庭ではメンテナンスフリーのヒマワリだよ!」
そして、大田花きの担当者もその品質の良さを認めています。
営業本部草花チームチーム長の松永は
「質と量を伴った良い産地です。パテント栽培しているだけに、品質はしっかりしていますよ。」
と太鼓判を押します。
JAいわみざわの取り組み( ^ー゜)b
☆花き組合長の佐藤さん
岩見沢農協が一つになって8年目。
JA岩見沢情熱フラワーの部会員90人を取りまとめます。
支部長3人に分かれて、出荷者一人ひとり面談を行い、その年の出荷予定をヒアリングします。
組合長の佐藤さんはスプレーカーネーションやデルフィニウムなどをメインに栽培しています。
佐藤さんの圃場で見つけたのは、こんな面白い代物。
ポンポンカッターといいます。
圃場にマルチ(シルバーのシート)を敷いたときに、苗の部分に穴を開ける機械です。
マルチの目的は、
?地表からの水分の蒸散を防ぐ
?雑草繁栄帝国を阻止する
↓結果
水やりと草取りが楽になる!
佐藤さんには当たり前の道具ですが、ウン探取材班にとってはとても新鮮に見えるのです。
さて、大切なことは組合員の所得を上げて生活を豊かにすることと言う佐藤さん。
組合員の所得を上げていかないと、発想も貧困になっていく。
品質、パッキング等と部会全体で指導統一し、組合員の人数もを現在の90名から120人まで増やして、売上10億を達成を目指します。量は力なり!
例えば、年間売上3,000万円の人が10人集まれば3億。
組合全体でポジティブな方向に進めるよう舵を切っていきたいと頼もしい組合長佐藤さんは語ります。
そんな佐藤さん率いる組合員の方を一部ご紹介しちゃいます!
■■■岡敏幸さん■■■
主にアルストロメリアとカーネーション、リンドウなどを栽培しています。
歩くと土がふかふか!雪の上を歩いたかのように、一歩一歩足跡が残ります。
このふかふかが花栽培に向いているとのこと。土が柔らかいと、根が入りやすいからいいそうです。
雪深い冬の大地で、冬も施設を崩さずそのままにして暖房を焚いて温度管理しています。
夏場はもちろん冷房なし!外気30度なら施設の中は40-45度になりますが、その場合は換気をして蒸れないようにします。
・・・・なにか見つけました。
【高いポールは何の役目?】
ポールが低いと雪が溶けるときに一緒に沈んでいってしまう。160cmメートルくらいは積もるからね。
豪雪地帯で農業する岡さんの圃場では、あらゆるところに工夫が見られます。
↓こちらは岡さんのハウスの入口ですが、積雪の際でもドアが開けられるよう、少し高くなっていますね。
“良いメリアの見分け方は、「花芽が放射状にきれいに広がっているもの」
いろいろ試作しているけど、品種選びはきれいなだけではだめなんだよね。自分がきれいと思っても、生産性が悪かったりすると続けられないし。”
それでも岡さんが花生産の道を選んだのは、次のような理由から。
「水田10町歩、麦10町歩、花2町歩の収益性はどれも同じくらい。花の場合はその分施設に投資しないといけないが、純粋に面積効率からいくと5倍になるんだよね。花は機械が入らないから、全て手作業で手間がかかるけど、限られた土地で農業をやる人には花が向いている。大変だけど面白みがあるんだよね。
一方、施設を持つというのはリスキーで、大雪で150m分の施設がつぶれたこともあったし、台風で飛ばされたこともあった。
施設と施設の間は雪が落ちるように十分な間隔を開けておくようにうするんだけど、大雪の場合は雪が屋根に乗って横に逃げきれずに、ドシャッつぶれてしまう。
涙出ちゃうね、そんなときは・・・(:_;)」
ハウス内にはあの緩衝材「プチプチ!」が使ってありました。
保温のためにやってみたそうなのですが、それほど効果はわからないという岡さん。これも試行錯誤の痕跡です。
そのほか、ナデシコ、スズバラ、アスター、シャクヤク、ブルーレースなど、さまざまな品目を試作していらっしゃいます。
北海道は栽培期間が短いため、どれが出荷のタイミングと需要が合うのか、試してみないとわからないのです。
失敗・勉強を繰り返し、先輩に聞きながら、今日も岡さんの試行錯誤は続きます。
■■■鈴内さん■■■
スターチスをメインにし、その他デルフィニウムなどをご出荷されています。
もともとカーネーションを栽培されていたという鈴内さん。
スターチスに転向したのは、繁忙期と閑散期のメリハリを持てるから。
カーネーションの前は、もともとは水稲と麦だけの栽培でしたが、周りの農家さんが次々と花生産に転向していったことと、ご自身にも労力の余裕があったことで、花栽培を決意されたとのことです。
農業の魅力は、繁忙期と閑散期のメリハリがあること。
また、花はやればやっただけの成果が得られることが魅力。
“栽培の苦しみが、収穫の喜びに変わる瞬間”が嬉しいと語る鈴内さんは、生まれ変わってもまた農家をしたいというほど、農業を愛しています。
いわみざわウンチクニュース!( ^ー゜)b
いわみざわカラスの巣占い
な、なんとっ!?(゜◇゜;)
木の上にモリモリとついているボールのようなもの。
見たところではなさそうですし、あれは一体なんでしょう!?
農協の東井さんのお話よると、カラスの巣だそうです。
カラスの巣が低いところにある年は風が強い年、高いところにある年は風が弱い年。
農業県の北海道はこのような情報もその年の生産方法を考えるのに役に立つのだとか。
カラスの巣占いでいくと、今年の風の強さは?
「まあまあ風は弱い方かね」と東井さんの読み
当たるといいですね!
東井さんはカラスの巣と教えてくれましたが、鷺が木のてっぺんにとまっていました
・・・なんで?(↑上の写真のてっぺんにちょこんととまっている小さな物体。見えますか?)
私たちは鳥のウンチク探検隊ではないので、これ以上深追いはしないことします。
美唄市の農家さんを困らせるマガンたち
JAいわみざわの花き部会長佐藤さんのご自宅のある美唄(びばい)市は、マガンの群れが集うことで全国的に有名なところです。
美唄市にある宮島湖(ラムサール条約登録湿地)には、夕方になるとマガンの群れが戻ってくるので、その姿を求めてフォトグラファー達が遠路はるばる訪れます。
このマガンの群れ、地域の名物とも言える光景ではありますが、実は麦畑に群れで降り立ち、あっという間に麦の新芽を食べてしまう地域の人にとっては大変な困り者だったのです。
以前は全国にいたそうなのですが、乱獲により1971年に国の天然記念物に指定され、どんなに農地を荒らす嫌われ者となったとしても、現在では駆除することができなくなってしまったのです。
マガンの天敵は?
人間くらいでしょうか。その人間がマガンに手を出せないとなると、マガンの数は増えていく一方。
美唄市の農家さんたちにとっては、マガンの存在は本当に頭の痛い問題なのです。
とはいえ、朝方その湖から一斉にマガンが飛び立つ姿は圧巻です。
JAいわみざわヒマワリ生産の格言( ^ー゜)b
小さなヒマワリの中に大きな栽培技術が凝縮されている!
ヒマワリは花が開いて直径10cm程度のものを選ぶべし!
茎は女性の小指と同じくらいの太さなら正解◎!!
豪雪地帯の北海道で、1年の中で栽培・収穫できる時期は限られる。としたらその短い期間でいかに回転良く出荷するかが勝負どころ!栽培品目も熟慮すべし!
お花屋さんと消費者の皆さんへひとこと( ^ー゜)b
花屋さんあっての品種選び。これからも消費の声を聞かせてください。
ヒマワリの花言葉は「あなただけを見つめている」「崇拝」「憧れ」。
お父さんを尊敬している人もしていない人も、お父さんに憧れている人も憧れていない人も、「お父さん」は一家を照らす太陽です。・・・よね?
是非ヒマワリに日ごろの感謝の気持ちを添えて父の日に贈ってみてはいかがでしょうか。
JAいわみざわの出荷量は夏場このような形で推移しています。(2008年)
6月からどーんと増えますので買ってくださーい!
岩見沢の箱はこちら↓これを目印に!
JAいわみざわのヒマワリがセリにかけられる瞬間です(2009年6月3日)。
東を向いて咲く世界中のヒマワリは、極東に位置する日本を照らしているかように見えます。
外来種とはいえ、日出国日本を象徴する花ともいえるでしょう。
今年の夏は、北の大地の生産者さんの思いを感じながら、ヒマワリをご家庭で楽しんでみてください。
☆おしまい☆
(岩見沢の夕日↓)
<写真・文責:ikuko naito@花研>