新年のご挨拶




明けましておめでとうございます。

旧年中はご愛顧を賜り、厚く御礼申し上げます。本年も時代の息吹をお伝えすべく邁進する所存ですので、ご拝読のほど引続きよろしくお願い申し上げます。

花き業界の雑誌及び新聞の新年号に、変化を捉えた特集記事が多数掲載されるようになりました。が、業界紙ゆえ、いずれも今までの業界の秩序を保つために踏み込んだ論説がなされていなかったことは、甚だ残念であります。

今、日本の社会で必要とされているのは、インフラ及び社会システムの変革です。人や法人に関して言えば、出る釘が打たれない状況をどのように作るか、ということです。このようになっていくためには、あくまでも消費者のサイドに立って物事を組み立てていく必要があるのです。先程業界紙の特集記事に対して批判しましたが、あくまでも消費者の視点が欠けており、従来の供給者の論理で良いことは都合の良いこと、悪いことは都合の悪いことという域を出ていないのであります。

昨年末、5ヶ月ぶりにキクの市況が高騰しましたが、この事は生産から卸、小売業まで含め、誰も得をしないことでありました。小売において、量販店は予約相対で仕入れ、思った価格で売ることが出来ましたが、全体の75%を占める花き専門店はいずれも小売のマージンを圧縮せざるをえない価格で仕入れたため、他の利幅のある花へ販売をシフトさせていきました。一方、キク生産者においては相場が高く収入が多くなったわけですが、来年以降のキクの消費量を減らす原因を作ってしまったこと、予約相対の価格を欲から高く設定しようとする部会員の要望が上がる可能性が出てきたこと、以上の2点において産地も得をしなかったわけです。

戦後生れのアメリカナイズされた消費者が、花き業界で中心的なお客になるに連れ、誰もが関心を寄せる物日に消費者も良く、供給サイドもまあまあであるという結果を作っていかないと、他の花に向かわせるのならともかく、他の商品へ向かわせることになってしまうのです。もう、物日に対する考え方は、価格は普段と同じだが安定している、しかしとにかく量が捌けるという供給者側のコンセンサスを基にし多少取引を行うことが益々重要になってきているのです。

本年こそはイベントに向け、以上のような対応で産地、大田花き、買参者はプロダクトパイプラインとして消費者に良い花を供給していく所存です。




1997/01/01 磯村信夫