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先週木曜日、長野県飯田から高速バスで新宿に戻ってきたのが10時頃であった。新宿駅西口近辺には、土、日の歩行者天国で活躍しているミュージシャンや大道芸人が夜10時頃から集まりだし、演奏を始める。
ペルーのミュージシャン達がようやく店開きをしようと、楽器の調整をしていた。この人達はここ2年程日本にいるのではないだろうか。その前はデュッセルドルフやアムステルダム、コペンハーゲンで見たような気がする。
ミュージシャンの前を通り過ぎると、今日1日かかって駅のごみ箱から収集してきた雑誌をホームレスが売っている。その後ろに彼らを束ねている縞の背広を着たおじさんがチワワを膝にのせておっかない顔をしてみている。また10mほど行くとホームレスの人達が鍋を囲んで5〜6人でパーティーをしている。この猥雑さこそ都会の息吹で何やら新宿はニューヨークにも匹敵する人間くさい街になってきた。
そう思いながら電車に乗ったが、日本は確実に豊かになってきている。花き業界の伸びはスローダウンしているが、これはデパートと同様高額商品が売れなくなり、花店の坪当たりの売上が10%近くも落ちているからだ。しかし数量は確実に拡大している。新宿を見る限り、日本だけが特別景気が悪いというのはおかしいと思う。ペルーのミュージシャン達が日本に居るのは、この国がヨーロッパと比べてみて決して景気が劣るわけではないことを示している。GDP2.5%の成長率がアメリカ連銀が言う“インフレ無き成長”だとすれば、おおよそ日本の成長は先進国としてまあまあのものであると認めた方が良いのではないかと思った。
そうは言っても花き業界にもやらなければならないことは多い。まず、マスコミが騒いでくれているガーデニングを小売店は積極的に消費者に販売促進しなければならない。次いで、目新しい植物を通りからも見れるようにディスプレイする。まずはこの2つにより一般小売店の売上減に歯止めをかける。さらに、花の定期的なお客さんは高齢者が多いので、その年代の好みにあわせて花を提案する。それには洋風なトルコキキョウ、ラン、バラに代表される洋花類の作付けを増やす必要がある。洋花でももちのいい花を重点的に作ることが大切だ。ヨーロッパでも高齢化社会になって、「貧しい年寄りと豊かな若者」という構図から、「豊かな年寄りと貧しい若者」に変わってしまった。日本でも同様で、特に花の購買についてはまさに、お客さんは「ご年配の人」と「お金持ちの人」この2つに焦点を絞る必要がある。前述したように花保ちこそ大切で、しかも手間いらずでアフターケアがほとんどいらないというものがポイントになってきている。今までの戦略をもう一度見直し、年配者とお金持ちに気に入ってもらえる花を生産していただきたい。

P.S.新宿の話を市場協会でしていたら、大庭常務が神田のホームレスはどこでみつけてくるのか知らないが花を飾っているという。特に花好きなのだろうが、花業界に見を置く者にとってうれしい話である。


1997/04/14 磯村信夫