一任勘定取引


野村證券に強制捜査が入ったのは、この一任勘定取引をしたためである。
金に絡むこととなると、人は邪悪になることがある。昔、銀行員の給料が高かったのは、お金を十分あげておかないと悪い気が起きるといけないからという理由であった。このほど左様に、金に絡む話になると、チェック機構が欠かせなくなる。
一任勘定禁止は、実際に法律で定められていない荷受会社にも当てはまるのではないか。本来公開な取引の場としてのマーケットは、証券市場であれば公取会員が行事の役割をしているように、ニュートラルな人が取引を成立させるべきである。しかし、生鮮物の卸売会社は400年来の慣例で、業務を実際に執行する卸売会社の社員が公取会員にあたる役割を行っている。卸売会社は、出荷者からのみ販売手数料をもらうことが法律で決められているので、高く売った方が良くなる。そして、一任勘定と同じく産地の担当者が自ら販売する。ここに内部牽制が働かなくなる危険がある。確かに一人で売るわけだからスピーディーではあるが、近頃は供給過剰でいわゆる悩み現象のときも多く、結局荷を掃くために、必要以上に安く売ってしまう危険性もある。
こう考えてくると、自画自賛で恐縮だが、大田花きのように産地の立場に立つ営業マンと、買参人の立場に立つ営業マンが、お互いに牽制し合う組織を作る必要がある。金が動くところに必ず悪徳が存在すると考え、経営層は信用を失墜しないためにも、一任勘定を廃すべきではなかろうか。



1997/05/05 磯村信夫