愛情でロスを無くす


先日、味方村のチューリップの反省会にスピーカーとして呼ばれ、出席した。その時、「本年度は球根のできが悪く促成物は10%位の落ちがあった。」と報告された。植え付けた物の1割も咲かないとなると、生産者の手取りは0の人もいたのではないか。あるいは赤字になった人もいるのではないかと危惧した。
それでは製品歩留まり率を上げるにはどのようにしたら良いか?はたまた売店でロスを出さないようにするにはどのようにしたら良いか?
因果率をきちっとするアプローチは欠かせないが、残念ながらこの因果率も金を儲ける意識が前面に出過ぎて結局アダム・スミスのいう“利己心は利他心に通じる”ところまでいっていなかったのではないか。今、花き業界は数量が伸びているので成長期が続いていると考えられるものの、単価が下がってきて売上や収益では右肩下がりになっている生産者や小売店が多い。それゆえアダム・スミスの社会学者としての見識まで至っていないのが残念である。
もう一つ、ロス率を下げる方法がある。これこそが花のプロとしての心の持ち方だと思うが、それが植物に愛情を持つことである。(バクスター効果)我々は生き物を扱っているから、当然生産の段階では弱々しい花が生まれてくることもあろう。そんな時、子供にかける愛情と同じ様にできの悪い花に手を入れている生産者は品質が揃い、ロス率が少ない。
これは売店についても言えることだ。カジュアルフラワーを広めた河合さんは、社名を東京フラワーマーケットと変えた。そして花屋の原点に帰って、自分が扱っている花を居心地が良いようにしようと、毎日全ての切花の水を取り替え、すべての鉢物の弱った葉を取り、社員に一つ一つの花と対話するようにさせた。この植物に対する対応は、花好きの消費者の対応と同じである。小生は河合さんを商売の天才だと思うが、彼は感謝の気持ちを持って今日も売れずにまだある花を一本一本手入れする。


1997/06/09 磯村信夫