花き流通の文明化


今週は東京のお盆需要には少し早いが、前進開花のためごった返している。
我々の商売は“3気商売”といわれ、天気・景気・やる気で構成されているが、6月に入り台風が2回も本土上陸したように天気がおかしく、現在「まだ早い」と買い気が少ないのに大量な荷物で取引時間が長引いている。
つくづく思うのは、我々生鮮食料品等を扱う流通業界のシステム化の遅れである。システム化とは、やや大袈裟な言葉で言うと文明化ということである。文明化とは例えば毎朝同じ時間に世界やこの国で起こったあらゆることを新聞で知ることができるということであり、通勤に車を使うとすれば、スタートキーを回せばどこにも故障なく走り出せるということである。
このように考えていくと花の流通は、今日などは非文明国の仕事の仕方だともいえる。産地担当の商品本部が、台風のお見舞かたがた各地に出荷数量の確認の電話をする。昨日の午後2時の時点で、本日の出荷数量を1万7千ケースと我々は踏んでいた。ところが蓋を開けてみると今日はなんと2万ケースを超えている。大田花きではスピーディーな荷受を心掛けており、17時から朝の2時まで8ヶ所のプラットホームで荷受をし、お待たせしてもせいぜい30分以内にしている。しかし、朝の2時以降は予約相対や先取品、分荷作業のため、またサンプル品の置き場として4つの荷受場を閉鎖し、4ヶ所で荷受をする。今朝の3時の時点で、5台のトラックが待っていた。ここ3ヵ月ありえなかったことだが、農協で予想以上の荷が持ち込まれ、結局そこでの作業が遅くなったのだろうと運転手は言っていた。それゆえ大田でも作業時間は3時の時点で30分遅れ。共同荷受所や、永井荷扱所から転送されてくる荷物は平常時より1時間半遅れた。ここが文明的ではないところである。
システム化と文明化は基本的には同意義である。尽力でことを成し遂げるのも文明化、すなわち文明人として自分の仕事を遂行し、他者に迷惑をかけてはならないとする緊張感ある倫理観が、仕事を約束どおり遂行させる。残念ながらこの業界には約束どおりの時間でことを成し遂げなくてもやむを得ないとする考えが根付いてしまっている。それは天気や自然からいつのまにか無情感を感じ、そしてあきらめに似た人生観が正当化されているためであろう。産地の仕事の取り組みに対する甘さが、運送屋から市場に行き、結局割りを食うのは仲卸と買参人である。かれらが割りを食うから単価的に産地が最終的に割りを食う。もうこの悪循環を断ち切る決意をし、業務を文明的なものにしなければならない。


1997/06/30 磯村信夫