11月相場


11月の市況は、過去7年来最低の水準となった。
チューリップやアイリス、フリージアなど、種苗費がかさむ切花が多くなってきたが、運送枹数当り7,000円そこそこの単価水準となった。例年だと8,500円位であるから、1枹当り1,500円程安いことになる。鉢物も同様で、1ケース当り500円程昨年よりも安くなっている。
生産者のことを思うと心が傷むが、市場の相場ゆえ真実を反映し、謙虚に受け止めなければならない。鉢物ではポインセチアやシクラメンの相場が下がり、値頃感を出して販売しようとする小売商の意欲が感じられる展開であったので、末端の流れは決して悪くない。しかし切花は次のような理由で過剰感があったということだ。きっかけはストックやスナップが後ろのものが前に被さり、入荷過多となって暴落してから相場がおかしくなり始めた。消費サイドから言えば、①霜が降らず、庭のキク類がいつまでも楽しめたためキクの相場は軟調、②暖房の必要が無く、花保ちが良かった、③世間の経済破綻で、消費する気が起らなかった、以上の3点が理由であるが、最も大きいのは、売れなくても花を廃棄せずに済むようになってきていることと、小売店はセリで花を調達するが、ほとんどが前年割れを起こしており、紙一重で供給が上回ると相場が急落する構造となっていることである。
今後ともこのような展開にいつなってもおかしくない状況であるが、どのようにそれを回避するかというとまずは小売店が“待ち”の商売から、“積極的に売って出る”商売に移行してもらわなければならない。つい3年前までは待っていれば売れたわけであるから、一朝一夕には販売姿勢が変わるとは思われない。量販店は、分母が小さかったというだけの理由で2桁以上の伸びを示しているのではない。売っていこうとする積極姿勢と、潜在需要を具体的な消費行動に繋げていくための実験を重ねているからである。小売店は安閑としていられないはずであるが、まだ余裕があるのかもしれない。しかしそのしわ寄せは確実に生産者におよんでいるのだ。


1997/12/01 磯村信夫