情報開示とオークション


先週、朝刊各紙にアメリカで飛行機チケットオークションが開かれ、順調に推移しているとの記事が載っていた。アメリカには8つの航空会社があり、そのうち5つがまだ埋まっていない席をオークションにかけている。オークションといっても入札方式だ。余った席だから希望下限値があり、正規の料金はこれで、そこで販売する。購入したお客には“マイレージサービス”はつかない。
インターネット等による情報ネットワークが整備されると、情報は広く開示される。情報開示が盛んになると、一般相手にはこの下限値を設定した入札、また会員制をひくものではオークションが盛んになる。何もこれは今に始まったことではない。最も進んでいたのはニュージーランドとオーストラリアで、中古車だけでなく中古家具、住宅、本と、あらゆるものをオークション化する動きが1980年の後半に起きた。やはりイギリスの血をひく国である。
イギリスではロンドンからロイヤルボタニカルガーデンに行く道すがら、中古家具オークションが19世紀から20世紀の頭にかかっていた。それが現代ネットワーク化でいろいろなオークションが可能になってきた。現物を見ながらのオークションはアメリカで盛んである。ここでは手数料は買った人が払う。すなわち買う楽しみは現物取引、掘り出し物の楽しみはネットワーク上の取引と、世界各国で様々なオークションが行われるようになった。
我々の開催するオークションは、これらのオークションと社会的意義が違う。これらのオークションには“処分する”ということに最大の目的がある。しかし、我々のオークションは、需給バランスを反映して価格を決定するだけでなく、日々序列を決めているのだ。銘柄産地になるため、オークションで決定された価格を鑑み、そこから自分の改善事項を知り、努力して次のシーズンにはより高い評価を得る一つの目標を示すものである。現代、資本主義においてプロのマーケットを開設できる場所は、情報化の進展で一般的なオークションが増えるのとは反対にますます少なくなってきた。ちなみにオランダの青果市場では、オークションマーケットはウエストランド地域のプールダイク一ヶ所のみである。




1998/04/27 磯村信夫