高所得者に消費の陰り


本年下半期から景気が少しは良くなると期待していたが、それもどうも難しくなってきた。
シンクタンクの見通しでは、今期で−1%強、来年も−1%弱と観るところが多い。構造調整や消費不振、デフレなどいくつかあるが、花き業界に最も大きな影響を及ぼすのは、株式公開会社の収益悪化に伴うリストラで、高所得の人たちも消費を手控えるようになってきたことである。
バブル崩壊後、下請けやら一般の未公開企業の所得は、公開会社のリストラによって打撃を受けてきた。よって消費は2極化され、公開会社で働く者の給与は相変わらずであったが、その他企業で働く人の給与は少なくなり、3年位前から消費の陰りが顕在化していた。
橋本内閣の時に「景気が良い」と実感できないかったのは、一部の公開会社に勤める人の消費は落ちていないようだが、ほとんどの未公開会社に勤める人の消費が落ち込んでいたためであった。物日は売れるが普段は効かない、という声が小売店から聞かれた。それに加え、今年から本格的に高所得者であった公開会社に勤める社員もリストラで給与が減り、職を失う可能性が高くなってきた。従来は子会社に出向させられたり、下請けに任せていたものを内政化させたりして、大企業はそれなりに利益を確保してきたが、これは上辺のリストラであった。アジア経済も悪くなり、設備も人も余っていることを直視し、本格的にリストラを始めたのだ。日本で従来の収益確保をし続けるためには、失業率が7%台〜8%台にならなけらばならない。この数字を聞くと恐ろしいようだが、しかし公開企業といえどももう後がなくなっている。
花は嗜好品だから、豊かな人たちに支えられてきたことは言うまでもない。しかし、都心の港区、中央区、渋谷区の3区や、大阪のようにJFTDの取引件数が前年より2桁下がってきた地域もあり、いよいよ花も不況の波をかぶっていく。そうなると物日は今まで以上の消費を期待できるが、普段が効かない傾向に拍車がかかる。
市況の乱高下は、残念ながら来年も続くものと思われる。


1998/09/07 磯村信夫