今こそ生活に潤いを


いやはや大変な時代になってきた。
高齢化は人の年齢だけではなく、この国の会社や役所の仕組みなど、あらゆる所に起きていたことがようやく解ってきた。「羹に懲りて鱠をふく」ではないが、自己改革を後にして、相手先のことをとやかく検索し、自己保存を図ろうとするところが金融関係をはじめあらゆる分野に出てきている。これが日本列島高齢化の図である。
こんな時、我々花き業界で働く者は、もう一度原点に則り、自分達の社会的使命を再確認するところからはじめなければならない。それは「生活に潤いを与えること」である。3年前の大地震の時、大阪の佐藤さんはじめ神戸のお花屋さんも、被災者に花をプレゼントした。この理念に立ち戻り、もう一度甘えや今起きている自己防衛のための過剰な疑心暗鬼を排除し、小売、仲卸、卸、産地は、共通の目的に向かって連帯するべきである。甘えとは、今までの花き業界のやり方全てを指すといっても過言ではない。生活の潤いを花でどう創造するか?その提案をして、消費者に実際にお金を出してもよいと思わせなければならない。
この上半期、天候不順で切花はインフレであった。特に小菊の不作は他のキク類にも波及した。一方、鉢物や苗物などはデフレであった。ここには天候以外、量販店が花の商売に本気で取組んだことも一因になっている。専門店は、新しい花との生活を提案しなければならない。量販店は生活経費削減のため、当たり前の花を割安感を持って提供しなければならない。ホームセンターは生活空間の演出を提案しなければならない。コンビニや通販は、買い物時間の削減を提案しなければならない。
それぞれ業態により、花販売にも社会的使命が異なるのである。それを明確に分け、商品供給を生産地や川中の業者は行う必要がある。それにしても、専門店が花の消費拡大を、そして花との新しい生活の楽しみを提案し続けていかなければならないのは、ファッション業界と変わらないのである。


1998/10/19 磯村信夫