IT(情報技術)について


 花の契約や予約相対が難しいのは、切前にある。葉物や花菜類、根菜類であれば、貯蔵性を除いても出荷のタイミングに幅がある。花は植物にとって一過性のものだから、出荷適期となると甚だ問題がある。ひまわりでさえも2日である。

こうなってくると、天候により大きく影響される。先々週から先週の小菊の入荷量を見ていただければお判りのとおり、先々週が前年比50%、先週が250%となっている。これは切前の問題からである。母の日の市況が高騰するのも、見頃(切前)+花持ちからである。

食べ物は生命維持の為に欠かせないので、農耕が始まって以来、「作りやすい」「店持ちがよい」という遺伝子を中心に改良されてきた。しかしこの90年代に、ビッグビジネスに育ってきた花き産業は、花持ちが良いという遺伝子を優先して入れてこなかった。もちろん花き産業となっている訳だから、一定の配慮はされてきたが、このように切前、花持ちなどは、今後の育種課題になっている。現状ではまだ大きく天候の影響を受ける。

そうなると卸は、生産状況を荷物と同様に流通させることが必要になってくる。現状、「去年も作っていたし、今年も作っているはずだから大丈夫であろう」という程度の認識で花き流通商売をやってきているが、もう少し具体的に情報をバイヤーに流す必要があると思われる。

そのツールはますます発達してきた。取引のデジタル化だけでなく、情報の伝達、ITのネットワークを産地と買参人とに敷き、情報を共有化し、取引を行う必要があるのである。よく産地会議で出荷計画が公表されるが、これは現時点の出荷計画であり、その後のケアを怠っている産地があまりに多い。それゆえ、情報化社会の特徴である「誰がその情報を流したか」ということが、真偽を決める上で必要になっている。

一ヶ月前にぶれ幅前後5日間入れても、誤差10%以内の規格別出荷数量。これが花き業界の世界標準の目安である。品質がいかに優れていようとも、予測がずれている産地や卸は、既に二流と言われる時代になっていることを、日本の花き業界の人も知っていて欲しい。




1999/09/27 磯村信夫