Wチェックの必要性


7月1日から、東京都では「相対」が卸売市場の取引として正式に認められる。委託品であるが、卸の裁量において相対取引をする。これがどのような意味を持つのか考えていきたい。

今までの卸売市場法は、供給が少なかったり、ちょうど需給バランスが取れていることを前提としていた。だからセリと入札しか認めていなかったのである。それが相対という手法も認めるということは、遅きに失した感もあるが、ようやく過剰である現実を直視した取引手法である相対によって、ボリュームディスカウントや小売の業態により仕切価格の変更などができるようになってきた訳だ。

セリではその商品の価値と、その時の需給バランスを鑑み、せり人が初期値を設定してセリをする。公開の席上で取引が行われているから、もし割安な価格がついたら、その人だけに独占させてはならじと、多数の買参人が一斉にボタンを押す。このように買参人同士で牽制し合っており、適正な価格が生まれる可能性が高い。しかし相対は、価値と、想定される需給バランス、そして卸の担当者とバイヤーの力関係の3つが価格を決定する要因となっている。しかも公開の席で行われないので、卸売会社の担当者の上司しか、その時チェックする人間がいない。相対は、その意味でなかなか難しいのである。

大田花きでは産地や小売店に社員の自宅の住所を教えることを極力控えている。理由は特定関係ができないようにするためだ。特に、今後相対取引が正式な取引として認められれば、相対担当者と買参人との癒着が問題になってくる。ならない方がおかしいと言ってもいいだろう。そのために大田花きでは、産地担当と顧客担当に分け、産地担当が早朝出勤したらまず端末を覗き、夜間に行われている取引が産地にとって適正なものかチェックし、それが習慣化している。

しかし、今まで数量、即ちみんなが欲しがっているものがセリに出るか、上場量は充分かをチェックし、時として先取りのものをセリ上場に振り向けたりしていたが、7月から先取りがなくなってしまう。要するに、セリ前取引では今までの先取りのように「値段はセリの価格」というわけにはいかない。相対は相対で値段を仕切らなければならないのだ。そうなると単価チェックをしなければならない。

これからは(予想だが)、Aという産地の同じ品物を、1番さんには50円で仕切り、2番さんには65円で仕切るということも、数量やその産地との関係において当然考えられ得るところである。1番という買参人は、A産地のものしか使わない。例え品物が落っこっても、必ずAのもの以外使わないのだ。そうなると、産地にとっては最も重要な顧客ということになり、一般には65円であっても、1番さんには特別価格を提示することになる。それを卸の社員がしている。

さて、その社員の判断がどうであったかは、A産地の人間でないとわからない。そこで産地の皆さんには、インターネットで大田花きのコンピュータに入ってもらい、セリ前の相対取引、セリ取引をチェックしてもらおうと考えている。ダブルチェックは人を悪くしないための施策と、私は考えているので、上記のA産地の職員がその段仕切を見て、50円が安過ぎるというなら、早速にクレームを言っていただきたいと考えている。

3月下旬から、価格が切花、鉢物とも15〜20%安くなった。少なくてもその1割は、フライングをした卸売会社が相対によって大手の買参人に花を供給し、結果セリが形骸化し、巡ってその大手買参人はセリよりも高く(相対で)買ったとして、もっと安くするよう強要するという、負の連鎖の影響が大きいと考えられる。このようにフライングを起こした卸売会社が多いと予測されるが、今後は産地においても卸売会社の相対価格をチェックしていく必要がある。

今までプール計算で100円としていたが、実際は120円、100円、80円の場合もあると考えられる。セリであると公明正大であるが、相対となると産地はその卸売会社にコメントを聞く必要がある。当社の場合、インターネットで日々チェックできるが、それができない卸売会社へは突然の査察などが必要であると考える。

産地の皆様へ
イントラネットを95年に敷き、各県の経済連殿にパスワードを渡しておりました。前述のように、今後相対で決定した細かな取引をチェックしていただく必要がでてきました。そうなりますと、県経済連の職員の方では物理的に難しいと判断し、農協や、個人出荷の場合は生産者の方々にパスワードを供与し、チェックしていただくことにいたしました。提供する情報の内容も充実したものになり、供給過剰下において共に巧く販売するため、共同作業を行っていく上で欠かせない内部情報の提供もできるようになっております。

ぜひとも大田花きホームページへアクセスし、開発室宛てに早急にお申込ください。


2000/05/29 磯村信夫