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 先週のこのコラムの中で、大田花きが生産地の方にご自分の出荷物のセリ前相対価格をチェックしてもらうべく、今まで経済連殿に付与していたパスワードを直接付与することでお取引関係者と木目細かなコミュニケーションを行いたいと申し上げた。この考えの延長線上に、東京証券取引所が一般会員向けに情報開示をしている友の会がある。東証は大蔵省に業務報告するので、一般のユーザーにそれを開示しようというのである。当社の場合は、手口をも開示しようとしているのであるが、これは証券会社にあたる大田の会員に手口を開示し、現状をチェックしてもらうと共に、今後を推測してもらう。

インターネットは中抜きを促すのではなく、古いミドルマンから新しいミドルマンに移行することを促すに過ぎない。だから農水省の市場課では、卸売市場という制度を健全に保つためには、古いミドルマンの役割から新しいミドルマンの役割へと、ビジネスモデルを作るように、既存業者に問い掛けている訳だ。生産者や農事法人、農協、経済連、県や国の農政部においても同様で、新しい時代にふさわしいビジネスモデルを作る必要があり、そこでの役割は自ずと変わってくるものである。このようなことを思いながら、1週間ほどアメリカにいた。

思いついたことをいくつか列記したい。シリコンバレーで有名なサンノゼの直行便がこれほどあるとは思わなかった。私はサンディエゴ(ロスからもっと南。メキシコ国境に近い)に行ったのだが、そこではカリフォルニア大学のサンディエゴ分校があり、シリコンバレーがそうだった通り、産学共同で新しい産業が勃興していた。

サンディエゴはアメリカ海軍の基地として名高いところだが、産業はEコマースの企業群と、バイオテクノロジーの企業群、そして観光の3つである。パインバレーのヒルトンホテルに泊まったが、通りを挟んで向かい側は世界に名だたるバイオテクノロジーの会社ばかり。今ヨーロッパと日本では危険視されているので、華々しい成果を上げられずに喘いでいるが、今後最も有望な産業と言われている。またEコマース部門には、南カリフォルニアの気候に憧れ、優秀な人材が多数移り住んできている。それゆえアメリカで代表されるEコマース企業が多いのが特徴だ。

花の分野では、ビッグビジネスとしてドール、USAフラワープロダクツ、Eコマース公開企業として800flowers.com、FTD.comがあり、インターネットでそれらの動きを見ることができる。アメリカで注目して欲しいのが、Forrester Research社である。ここのホームページを見ると、あらゆるEコマース企業の格付けがなされている。興味のある方は、是非ご覧いただきたい。

「アメリカは景気が良かったでしょう?」と言われるが、本当に町はきれいだし、人々の仕事に対する取組みや生き方は前向きである。半分以上の家庭にインターネットが接続され、テレビのCMもネット上の.com(プラットホーム)の宣伝が多い。世の中が日本よりも速いスピードで変わってきているのが判る。

花のネットショッピングも、女性60%、男性40%と年々女性の割合が高まり、インターネット花店の新規参入者はもういなくなっている。日本でのインターネット普及率は今25%だから、アメリカの2年後を追っていると言われる。しかしここ2年間がWeb関連でも業界の一つの正念場と言えるのである。


2000/06/05 磯村信夫