市場主義経済


失業率が5%になって、日曜日の政治経済番組はこの問題で特集を組むところが多かった。以前お話した通り、WTOを批准する中国は構造改革に取り組んでいるが、農業において株式会社を中心に市場主義経済型に移行しようとしている。当然といえば当然で、WTO自体は地球規模の市場経済体制に組み入れられる。だから、農業も当然競争を促す消費者に好まれるものが勝つという優勝劣敗のシステムを受け入れなければならないから、現存する経済システムは株式会社化していくのである。

中国では理路整然と構造改革が進んでいるが、日本では特殊法人に代表される官制経済と官僚が許認可権を持つ統制(規制)経済と市場経済の3つがあり、全て市場経済に移行するとなると、当然雇用において問題点が出てくる。アメリカは人の選挙権を1960年代に認めたが、同様に人権の意味から賃金に対し、人種別・性別・年齢別に差別をしてはならない法律が施行した。会社はユーザーに喜んでもらい儲けることが目的であるから、その人の持っている発揮機能と賃金がニアリー・イコール(nearly equal)になっている必要がある。市場主義経済の最も大きな問題は失業で、1980年代の後半のオランダのように正社員とパートタイマーの賃金・処遇格差を付けてはならないという法律が取り決められた国以外は、現在の日本と同様で市場主義経済へ移行する上で、失業率が高くなっていった。いわゆる「雇用なき繁栄(Jobless Prosperity)」である。

小生は遅まきながら、この夏初めて日本の「失われた10年」の意味が分かった。それは日本がバブル経済崩壊後、何とか現状を維持しようと国内で経済のことだけ考えているうちに、諸外国は市場主義経済に基づく国際競争力強化の学習をし、確実に実力を付けていたことである。この間、この差は大きく開いてしまった。

国際競争力のある市場主義経済化しているの企業は、日本に或いは生鮮食料品花き業界にどのくらいあるのだろうか。遅まきながら、我々も今後5年のうちに次々と規制が撤廃され、市場主義経済化の一企業として優勝劣敗の世界に飛び込んでいく。その時、日本の多くの企業と同様、機能と効率をキーワードに激しく競争することになろう。

P.S. 市場経済は弱肉強食ではありません。お客様に選んでもらえるかどうかです。ですから上記文中に優勝劣敗の言葉を繰り返した通り、規模は重要なファクターでありますが、絶対条件ではないことを追記します。




2001/09/03 磯村信夫