幸田露伴


年末近くになると、新年を迎えるに当たり思想家の本を読み出すのが常である。露伴の本を読んでみようと思い、早速昨日大きな書店に行ったものの、気に入ったものは見つからなかった。その中でも幸田文が父について書き留めた本があり、まずはこれから読もうと思っている。

露伴は近代文学史上、日本の巨頭といわれるが、ニーチェにも並び賞されると云う人も多い。露伴の有名な言葉に「植物がこの世に生を受け死ぬるまで、精一杯天に向かって伸びようとしているが如く日々研鑚しておるように、自分も死ぬるまで学び天に向かって成長し続ける」というのがある。

僕は小林秀雄をライフワークとしている。つい先立って本を読むのも気乗りがしないときに、何気なく開いたページから小林秀雄が幸田露伴について評論している箇所が目に留まった。

『五重の塔』くらいは中学や高校の教科書にも載っているらしいが、露伴の思想は現代人にはなかなか分かり難いものになっている。露伴は王陽明から「忠」と「恕」を次のように学んだという。「忠」は宇宙の気を自分の中に取り込み注入することであり、「恕」は自らの内にある宇宙の気を外に出すことである。ここまでぼんやりとその評論を読みながら考えていた。

地球の地表における万物の現象が理通り変化している。特に人間社会、とりわけ日本の社会の変化はめまぐるしい。勿論日々成長する努力は怠らないが、出し抜く心構えではあまりにも自分というものが惨めになってしまうであろう。競争を生きるということを今日本人はそれぞれの課題としてはっきりとした見識を持ち、来年に備えることが必要であると、私はそれを自分に課した次第である。




2001/12/17 磯村信夫