デフレから見た日中関係と菊のマーケット


今から4,5年前だったと思うが、(社)日本花き生産協会の一輪菊部会において「一輪菊のビッグバンはあるか」という演題で講演をしたことがあった。スプレーギクは東アジア各国で作られるようになり日本にも出荷されるが、一輪菊にはその可能性は少ないであろう。理由は、特に中国人が白菊をあまり使わないので、海外の生産者は日本の価格が暴落した場合逃げ道がないからである。よって一輪菊はスプレーギクに比べると輸入量はたかが知れているという結論であった。

日本の各企業はデフレ対応で激しい販売合戦をしている。生き残りをかけてリストラをしなくてはならない。こういった一連のデフレ対応で、中国などで生産し輸入して自社の競争力強化につなげている日本企業は多い。労働組合がなく法定福利費や健康保険料などの費用を計上する必要も殆どなく、人件費が日本の30分の1から50分の1で済むから中国で作ればコストを下げられる。

中国の企業が自ら製造して売りに来たというよりも、日本の企業が作ってもらっているというのが今の日中関係の現状であり、同じようにして一輪菊が日本に入荷するようになってきた。繰り返しになるが、日本の企業間競争が中国からの輸入品を招いているというのが事実である。それもこれも国際競争力を高めようとしてグローバルエコノミーで自らデフレスパイラルを作り出しているからである。

他に例を挙げれば、狂牛病の影響で外食では魚の需要が増したが、魚の卸売価格は決して上がらない。以前なら需要が増せば魚の単価が上がるという方程式が当然であったが、今は需要が増しても価格は上がるどころか下がっているのである。




2002/01/28 磯村信夫