インターナショナルフロリカルチャーシンポジウム2002


金曜日から昨日まで、韓国安眠島の国際花博に行ってきました。そのシンポジウムで、オランダからは国際博覧会副会長、中国からは花卉新品種研究所副所長が小生と共に基調講演をしました。韓国も豊かになり、高校を卒業してから、勉強が嫌でふらふらしている人も多少出てきましたが、相変わらず若者たちは勉強熱心で、父親や先生、年配者を敬い大切にしている様子を見ると、これからこの国は益々楽しみです。韓国の花き関係者は、大変若い人達が多く、学界でも30歳後半から40歳代が業界をリードしています。花博を植物やデザイン性、展示の仕方等から見ると、この国の花き産業が本格的に始まったばかりで、初期段階だと言えます。しかし、ソウルから車で3時間かかるという安眠島まで毎日5〜8万人もの人達が訪れるのですから、花き関係者の成功へ向けての情熱や花への関心は熱狂的な感じさえします。

花き業界における韓国の努力目標の一つに、育種力があります。国の試験所では、プラザ合意のとき、静岡や愛知から韓国へ産地を移転したサボテンの接ぎ木技術を更に発展させたり、新品種を生み出していますが、他の切花や鉢物用の品種は日本やヨーロッパ、アメリカから導入を図っています。UPOV条約に加盟したので、新品種がかなり見られるようになりましたが、日本に比べて冬と夏が長く、春と秋が短い韓国の気象条件に合った育種をすることが、生産性の向上、延いては価格競争力、差別化に繋がっていきます。例えば、今ヨーロッパでスペインが花の分野において輸出競争力を失っているのは、カーネーションであればコロンビアなどに「高品質マーケット」を奪われてしまったからです。ヨーロッパでは、新品種比率や品物そのものが良いというだけでなく、花保ちを保証し、規格を整え、更に一定基準以内の農薬散布に抑え、労働者は不法移民などではなく、適切な労働者環境を整えられていることなどを含め、「高品質マーケット」と呼んでいます。日本も京都議定書を踏まえ、農業も環境に配慮したものになっていくでしょうから、韓国から日本に輸出しようとすると、当然これらの基準を満たすだけでなく、日本の輸入検疫をパスするよう病害虫などを一切出してはなりません。そうなると、やはり自国の風土に合った品種を開発することが遠回りのようですが、実は近道なのです。

韓国は中国と陸続きなので、近いということもあり、既に穀類や野菜などがそうである通り、今後花もかなりの数量が中国から入ってくると想定しています。そこで、自国内は勿論のこと、日本に向け、そして富裕層の中国人に向け、高品質の花を輸出していこうとする方針がディスカッションの場で結論づけられました。

日韓両国がサッカーのワールドカップを同時開催する意義は大きく、競争と共生なる関係となっていくことと思います。花き業界においても日本の国内、とりわけ九州・中国地方はこのセミナーで結論づけられたように、適地適産、できれば県内で育種された花きの栽培ウェイトを上げていく必要があると痛感して帰国した次第です。




2002/04/29 磯村信夫