高齢化社会と専門店


内閣府が8月31日に発表した「国民生活に関する世論調査」(対象全国成人男女1万人、6月20日〜30日調べ)によると、生活の仕方について、物の豊かさより心の豊かさに重きを置きたいという回答が60.7%あった。この傾向は'80年代から年々高まってきており、今回は前回より4ポイント増えて、過去最高となった。また、日頃の生活に「充実感を感じている」のは、1.7ポイント増えて67.0%、感じていないは1.8ポイント減って29.6%であった。景気が悪いので将来に蓄えるという人は、1.6ポイント減の26.9%で過去最低、毎日の生活を充実させて楽しむという人が2ポイント増の56.4%でこれも過去最高となった。長引く不況が日本人の上滑りした精神を鍛えてくれるはずだとバブル経済が崩壊した'92年直後に感じたが、人口動態の影響もあって、予感した通り、精神的には健全な方向に向かっている。あとは、収入を得る手段である仕事生活において、成熟国家の一員たる、分をわきまえた意思決定や事業活動が期待される。

さて、昨年の12月からスーパーマーケットの花は悪くないと団塊世代の女性たちは感じ始めたようで、最寄りのスーパーやその近所の花店で家庭用の花を買うようになっている。ここで言っているのは、地元に密着した食品スーパーや、ターミナル駅にあるデパ地下まで含めた食品売り場のことであり、車社会の地方都市にあるショッピングセンター化したGMSなどのスーパーのことではない。

日本の花き産業が、質の高いものであり続けるためには、人口動態を再確認しておくべきであると今危機を持って感じている。確かに、マスコミはターミナル駅に出店している専門店チェーンにスポットライト当てている。これらの店は現在の花き業界を引っ張ってくれている。しかし、将来に眼を向けると、少子高齢化で昨年は65歳以上が18%、2015年には26%になる。こうなると徒歩で日用品の買い物ができることが高齢者にとって不可欠である。最寄りの商店街の花屋さんは、高齢者にとって欠かせない。また、一週間に一度、或いは仏花やサカキなどを月2回配達していくというようなシステムは、高齢化社会を迎えるに当たり、街の花屋さんの大切なサービスになるだろう。ウォールマートが日本でどのような活躍をするのかはまだ分からない。仮にアメリカでのように大活躍したとしても、「商店街は古い」「街の花屋さんが淘汰される」ということではないのである。進化においては時代に適合した形態が繁栄するのであり、他の形態が繁栄しないからといってなくなるのではない。そうすると、街の花屋さんは何をすべきか、また商店街はどのような機能を持つべきか、それを考え、来るべき時代になっていると思われる。今から少子高齢化社会に適合できるよう準備を始めておく必要がある。




2002/09/02 磯村信夫