大人狙い


ようやく暑さもおさまってきて、秋の結婚式のシーズンに突入した。行われる場所を考えると、結婚式場やホテル会場などをすぐ連想するが、レストランウェディングなども大変増えており、東京・神奈川では推定だが3分の1くらいがレストランウェディングなどで、残りの3分の2がホテルや式場などであろう。また、結婚式専門のコーディネーター(コンサルタント)を介した結婚式が年々多くなってきているようだ。コーディネーターに求めるのは、理想の結婚式の実現や、個性的だが個性的すぎない儀式の演出であろう。結婚式などの宴会関係ではコーディネーターやアドバイザーが既に活躍しているが、これらはサッチャー政権下のイギリスで目的別の専門家が多く活躍し始めたことに端を発するようだ。その流れが日本にもやってきた。

団塊ジュニア達は今、結婚式のスタイルを新しいものにしようとしている。一方では、団塊の世代は葬式のスタイルを新しいものに変えつつある。儀式の形態も大きな変化の時を迎えており、洋の東西の時差はなくなりつつあるのではないだろうか。

東京の街は新陳代謝をし、このたび新しいスポットとして丸ビルが生まれ変わった。お台場や渋谷などの人気のある若者の街は、私のように50歳を過ぎた者には残念ながら居心地が良くない。確かに元気をもらうことはできるが、ゆったり落ち着くという雰囲気ではないのである。若者の街渋谷も、マークシティを中心に大人の雰囲気を演出し始めているものの、銀座や丸の内中央通りとはまだ格段の差がある。

団塊の世代が楽しめるスポットは、東京でもかなり少なくなってきた。例えば飲食店など、個人事業のお店は生産性に勝るチェーン店に押され数が減ってきているし、チェーン店だらけでは変わり映えがしないので面白くない。そこへいくと有楽町のかつて「そごう」だったビルの裏側から丸の内へ続くこの中央通りは、かつては銀行がひしめいている印象であったが、現在ではビルの一階は殆どおしゃれなショップの路面店になり、すぐ側にあるインターネットカフェもネクタイやアスコットタイなどが良く似合うほどだ。中央通りの突き当たりにあるのが新しくなった丸ビルで、そこは男性なら少なくともジャケットくらい着て行きたいと思わせる場所である。こういう大人のスポットが少しずつではあるが作られるようになってきた。丸ビルのお花屋さんは宮内庁御用達の花慶様が入ってらっしゃるが、品揃えのポイントは、法人需要にはやや保守的に、パーソナルユースのターゲットには団塊の世代を据えやや抑え気味の斬新さを売り物にしていくようだ。地方都市においてもお城や美術館などの観光スポットの周辺には、そろそろ明確に団塊の世代をターゲットとした大人向けの店舗が徐々に生まれてくるであろう。




2002/09/09 磯村信夫