貸し渋り


 銀行の不良債権処理は、政府の本腰の入れようが今ひとつだから、このままでは立ち直る力を持つ花の小売店が打撃を受け、花き業界も足元からぐらついてしまう。
以前は、単年度で黒字なら債務のある小売店でもプロパーで融資してもらえたのが、この夏から保証協会付貸出になってきている。このままいけば、立ち直れる小売店や事業拡大を考える小売店でさえ資金繰りに行き詰まることになり、本来金融機関が支援すべきことをしなくなり、当社を含む卸売会社で支援せざるを得ないところも出てくる可能性がある。
事業拡大を目指す小売店といったが、花の場合は事業を伸ばし得る環境にあると言えるだろう。消費不振は他の業種と比べると殆ど憂慮するに及ばないと言ってよい。確かにデフレで利幅が下がり、商品回転率を高めていかなければ以前と同様の利益を確保できない。しかし、商品回転率が高い駅周辺や繁華街、大規模小売店のある人通りの多いところに出店しさえすれば、目論見通りになる確率が高い。
先日法事で会ったおばの一人が「しばらくお花屋さんに行っていないけど、近所のピーコックでは週1回花束を買っている。このごろスーパーの花も良くなってきたし、種類も増えているから満足しているの。」と言っていた。このように経営努力をしている小売店は着実に伸びている。ちなみに駅前の花店がピーコック殿に花を納めているとのことだ。 個人商店は今年も、去年と同じことをやっている店が多い。フランチャイズのところは経営のノウハウを本部から受け、コンビニにしても居酒屋にしても必ず去年と違ったことをしている。経営力からするとかなり差がついてきている。他業種はこのように個人商店が立ち行かなくなりつつあるが、花屋さんには若い血がどんどん入ってきており、チェーン展開している店やスーパーマーケットの花売場と伍してやっていけると思われる。ただ懸念すべきことは、商店や店づくりなどは上手だが、資金繰りや利益などの経営全般を見ると十分とはいえないところだ。
今後、金融がさらに行き詰まり信用不安が増すことも予測され、政府の不良債権処理に本腰が入ると当座は大手企業の倒産も考えられるし、信用問題があらゆる業種や規模で表面化する。(そうしないと日本は立ち直れないから、短期的には痛みをこらえるべきであろう。)そのときに備えておくべきことが、手がねとバランスシートの黒字化である。
上半期も今月でお終い。少なくとも赤字会社は下半期を努力して黒字にしておいてほしい。日本の花の小売店の大多数が健全であればこそ、日本の花き産業は健全な姿でいられるのである。
 


2002/09/16 磯村信夫