ビル緑化


今日の日本経済新聞のトップ記事は、ビル緑化義務付けのことであった。

グローバリゼーションの中で、国際競争力のある日本のトップ30社が、稼ぎ出した外貨を他の日本企業が逆食物連鎖のように分配してきて、この国は豊かになってきた。しかし、とある大手企業がそろそろ広州や香港への出張を解禁するという記事が新聞で報じられているように、日本は既に世界の工場ではなくなっている。

今年の母の日、オランダのアルスメール市場での平均単価は22ユーロセントと、前年より2セント下がった。通年で前年よりも5セントくらい下がった水準で推移するのではないかと言われている。実際の為替とは別に、生活感覚で言うと、アルスメール市場では、母の日でさえ平均単価が22円から25円くらいであった。いかに花が安いかがわかる。日本の国内のサービス価格はスイスよりも高いものが多いから下がっていくだろうが、花きも世界水準と比べて高いものから下がっている。例えば、年末のシクラメンは品質も世界一だが、価格も世界一で、欧米の種苗会社は日本人に好まれるF1種を作り、日本にタネを売る。必然、製品価格は世界標準に近づこうと下がる。2007年までの間に、シクラメン市場はすっかり様変わりする可能性が高い。

このように、国内の物財で、国際的に見て価格の高いものは、グローバリゼーションの中、日本をターゲットにあらゆるものが入ってくる。では、日本は成り立ち得ないのかというとそうでもない。前回の小欄で格差が広がる時代について触れたが、日本の国内でも地域ごとの格差が広がっている。世界規模や日本全国規模で見た場合、都市部は社会システムと経済のソフト化において欠かせないものであるから、日本経済新聞のビル緑化義務化の記事になった。「都市部か、地方か」ではなく、「都市部も、地方も」を考えるのが政治行政システムであるが、グローバリゼーションの中で日本が他国に先んじ新しい国家像を内外に知らしめるとすれば、国土交通省が義務化するビル緑化は素晴らしい法案であると考える。この国は、凛とした成熟国家として、富国有徳を実現していく必要があると考える。足元ではますます目先の利益に重点が置かれているが、これは高コスト体質を持つ現在の日本の現実を打開するため、やむを得ぬこと。それに加え、人を活かして中長期的利益を目標に、すなわち富国有徳を目標に据えることも併せて行っていくことが時代の認識ではなかろうかと考える。




2003/05/26 磯村信夫