新しい利益モデルへの価値基準


この4月に農林水産省より卸売市場の規制緩和で「手数料の弾力化」が発表されたが、具体的な方針決定はこの秋を待つことになる。手数料について、今まで床屋さんのような料金徴収形態であった。例えば、カット、シャンプー、リンス、ブロー、髭剃り、そしてちょっとした按摩をして、一括でいくらという料金設定である。一方、美容院ではそれぞれのサービスに値段がついていて、何と何を選んだらいくらになるという設定だ。費用対効果の原則のもと、ユーザーが好きなサービスを選べるようになっているのだ。多分日本の卸売市場も受益者負担の原則に基づき、費用対効果で選んでもらう方式——これをメニュープライシングというそうだが——になっていくと思う。

日本の取引で、他の先進諸国から「不透明」だと指摘されているのがリベートである。「長いものに巻かれろ」主義で、弱者の権利を認めてこなかったから、力関係でなんとなく物事を決めてしまうことが多い。これがリベートにも表れていて、世間を見ると甘い汁を吸っているところがある。当業界でも完納奨励金、出荷奨励金という販売促進のリベートをどうするかという問題がある。東京都中央卸売市場では現在、この2つの奨励金は、都の許認可事項になっている。

そして、取引の慣行で卸売市場と日本の社会との整合性が取れなくなってきているのが平等の概念である。「入口の平等」、誰にでもチャンスを与えるということと「出口の不平等」努力したものが報われるということ。この2つを以って公正という。
2000年7月、卸売市場法の改正で行動指針が平等から公正へと移った。しかし、実態は未だ進捗していない。生産者にしろ小売店にしろ、消費者にとって誰が最も役立っているのかということを販売額というものさしで推し測るならば、取扱額の多い先ということになる。話は横道に反れるが、利益額は生産性、効率性を推し測るものさしである。取扱額が消費者にとってお役立ちの一つの指標であるとすれば、当然その努力に報いるための便益をそれぞれ図らなければならない。

以上のポイント「メニュープライシング」「透明性」「公正」の3つの価値基準をもとに、アングロアメリカン化する日本の経済において、卸売市場の利益モデルを変えていく必要がある。




2003/07/07 磯村信夫