海辺の産地も一丸となるべし


花き業界も日々確実に進歩しており、昨年まで絶対量が不足していた7月のお盆期にも、リンドウの早出し産地として名高い長野・岩手に加え、栃木、福島からも良質なリンドウが入荷した。また、新潟県のJA荒川はオリエンタルユリの質を向上させ、一流産地の印象を与えている。このように、どこの産地も競争力をつけてきているが、グローバリゼーションとともに、品質・コスト・納期の3点で販売力のある小売店にどのようにアピールできるかが産地の明暗を分けている。
組織力で思い越されるのは、地域の民族性である。例えば、私は磯村であるから先祖が海辺の村にいたに違いない。こういった地域は都市部周辺では九州の糸島や宗像地域、愛知の海部や豊橋周辺、静岡の伊豆や千葉なら安房がその代表だろう。安房・渥美・安曇などの地域はいずれもかつて漁労民族がいたところで、この人たちの特徴は道教の影響を強く受けた考えを持つ人たちであると言うことできる。日本人の思想は縄文文化・大乗仏教文化・儒教・道教が入り混じったもので、私見としてはとりわけ道教と儒教の影響が大きいように思う。

ズボン・帽子・靴・椅子・ベッド・・・騎馬民族は儒教を生んだ中国の統治者たちの思想だが、この人たちは実際の労働に汗するというわけではなく、階級思想のもと、肌を見せず常に身なりを整えている。一方、道教の影響を強く受けている地域は、はちまきに袷の着物のようなものを着用し、肌を見せることも卑しいこととは思わない。履物は草履程度で床に敷物を敷き、座ったり寝たりする。独立心が強く、一丸となってのチームプレーは不得意な方であるが、旧薩摩藩のように傑出した人物のもとではまとまり得る団結心を生む場合がある。

なぜこのようなことを考えているのかというと、最近新聞紙上でFTAの記事をよく目にするようになり、海外産地との競争を考えざるを得ないということがひとつ。また現在、オランダの市場やアメリカのマイアミのマーケットなど、全切花の実勢価格が20ドルセント、或いは20ユーロセント内外で、将来日本も最悪の場合ここまで単価が下がっていくことも覚悟していかなければならないとしたら、当然1家族ではなく、1産地としてどのように効率的に花を生産するかを考えざるを得ないからである。花の産地は海辺が多い。もしこのまま集まりに欠けるとしたら問題だ。是非とも花の産地は、中期的に見た経済合理性を以って産地運営に取り組んでいただきたいというのが今日の結論である。




2003/07/14 磯村信夫