今期仏花低調


もうすぐ彼岸だというのに9月に入って暑さが続いている。8月の下旬に衣替えをしようと、夏物から合の物へ洋服ダンスを入れ替えたが、今でも洗濯屋へ出すはずの夏物を着ている。

秋の花の出荷が早いというのに、この暑さで秋物が似合わないから安値で推移しているのは残念である。夏も冷夏でトロピカルなものやグリーンの花や葉物が思いのほか低調であった。衣料品とまさに同じような値動きをしている。きっと女性は温度にかなり敏感なのであろう。
昨年度はキク類の相場が堅調で、前年並みの売上高の所が多かったが、本年度は一転してキク類が安い。天候不順で盆や彼岸の需要期の前に出荷されたことが最も大きな要因だが、ボサ菊、懸崖菊などの鉢のキク類も安値となっている。キクに加え、一輪カーネーションも本年度は安値である。切花の大品目であるキクとカーネーションが安いのだから切花を中心に扱う卸売会社は損益分岐点を割り込んでしまっているところが多いのではなかろうか。

さて、この安値は消費者が持つキクとカーネーションのイメージを狭い場所に押し込めてしまったことに起因する。キクは仏様の花以外にもっと幅広く使えるようにしなければならない。その流れを既存の流通業者だけでなく、育種会社も一緒になって作り上げていかなければならない。スプレーギクは成功しつつあるのだから、一輪ギクの用途をもう一度広げる必要がある。カーネーションの一輪も同様だ。
今年この切花二大品目は昨年の裏目となっている。オーソドックスな仏花素材としての供給量を越えてしまったということであろう。従来型の仏花はキク、コギク、赤いカーネーション、ないしピンクのカーネーションと季節の花で作る。この量が間に合ってしまっているのだ。

今日は敬老の日。元気なお年寄りの姿がマスメディアを通じて流されている。私は本年度、年配者の消費行動やライフスタイルをウォッチして思うのだが、かつて我々がイメージしたおじいさん、おばあさんはいなくなった。現在のお年寄りは英語で言うのもおかしいが、ニュアンスとして強いて言えば“grandfather”“grandmother”なのか、「おじさま」「おばさま」なのか、80歳になっても老醜を感じさせない人ばかりだ。そういう元気な年配者が増えている現実を思うと、一輪ギクや一輪のカーネーションの用途幅をもっと広げていかないと、仮に物日の需要期に出荷できたとしても昨年の単価を取ることはもう出来ないように思われる。「一輪ギクはモダン」「一輪のカーネーションはモダン」のキャンペーンをする必要があると思っている。




2003/09/15 磯村信夫