ブランドマーケティング


1960年代のファッションがプレタポルテで復活してきている。それはもっともな話で、1ジェネレーションが30年だから、より新鮮に映るのは60年代のものだ。これを現代風に少し焼き直して、丈を短くするなど細工を加えているから昔のものをひっぱり出しても何か時代にそぐわないようで、新しいものを買わざるを得ない。花も同様で、ダリアのような大きく立派なものが目を引く。
しかし、60年代といってもこればかりではない。ショールやマフラーのように流行で身につけているものをFD用のワイヤーで作り出し、そこに花を取り付けるなど、今のファッションを取り込む動きもある。これもかつて物のない頃フラワーデザイナーたちがやっていた手法である。フラワーデザインのデモンストレーションや作品展、生け花の展示会などできるだけ見に行くように心がけているが、いずれもその道の著名人や作品展の入賞者たちには独特な時代の匂いをかぐ嗅覚があり、我々生活者が時代の下に生きていることがわかる。

こういう展示会などを見ていると、色のグラデーションや同じ色目でも花の大きさや咲き方の違いなど様々なタイプの花が必要であることがよくわかる。多量に出回る規格品を使って技術で価値を高めるのが小売店の商売だが、アッパークラスの消費者はそれでは満足しない。だからどうしても様々な花が必要となる。この様々な花は生産者が大の花好きでないとなかなか作れない。採算を合わせるのがそう容易ではないからだ。勿論、卸も仲卸も同様で花好きでないと「採算第一主義」ではとてもできない。大田市場は都心に最も近い大規模な卸売市場だから、花や青果は珍しいものが出回ると地方から見学にいらっしゃった小売店は評価してくださる。それもこれも花好きがそれぞれの仕事をしているからである。花は園芸文化と言われるように、文化性が高いので、商売抜きで稀少な花を扱っていることも多いが、これで拝採算割れして将来供給が難しくなるかもしれない。そこで生産サイドの産地名や品目・品種のブランド化を図り、再生産に見合うリターンを得られるようにする必要がある。消費者まで伝え、認知してもらうブランドマーケティングが花の分野で必要となってきている。




2003/10/13 磯村信夫