大田市場花き部の新しいデポ


ようやく3月本来の需要期の出荷量となってきた。昨年の夏と秋の悪天候で製品歩留まり率が悪く、2月いっぱい荷薄感が続いたが、ここにきて需要に見合った数量が出てきた。

先日、フランスの友人と話していたとき、日産自動車のカルロス・ゴーンさんの本の話になった。「日本では路地裏にも何らかの花が栽培されており、それが日本人の素晴らしさの一つだ」という一文があるそうで、その友人も花には不似合いな発泡スチロールさえも花壇にしている点など、自然を愛し、自分の人生を楽しんでいる国民性を賞賛した。僕が日本人だからではなかろうが、日本びいきが惹かれるのはこんなところにあるのだという。

ここ4年間、日本の花き業界はあえいでいるのだが、それは卸売価格が1999年から2003年まで約15%下がり、2000年から小売価格も下げ始め、15%から20%安くなって利益が出にくくなったこと、また小売店はロスを出したくないので、切花の入り本数を少なくし、ケース価格では1999年対比2003年で30%下がったことで生産者の手取りが減っていることなどが主たる原因である。
利益を確保するにはどうしたらよいのかが花き業界の全ての人たちに問われているが、ポイントは消費者に好まれる売れ筋と新商品を商いし、消費者に買ってもらうことに尽きる。そのためにはマーケティング機能や商品開発力、卸・仲卸であればリテールサポート力を付ける以外に手はない。そしてロジスティックの力だ。その意味で大田市場花き部では、北側に隣接しているおよそ15,500㎡の敷地に主要場内業者が主として搬出を行うデポを総工費約14億円かけて建設した。流通業は現在のポスト産業資本主義の世の中でも、スケールメリットにより「規模の経済」と「範囲の経済(クロス・マニュファクチュアリング)」が有効に機能する業種である。大田市場の場合、この経済原則に従って機能をより高め、市場外流通業者にはできない店舗ごとの品揃えなどの物流加工を行うことを目的としている。卸だけではなく、ピッキング作業を得意とする仲卸と周辺の関連資材業者とも協業し、ワンストップサービスで顧客が調達できるようにしたい。まずは花専門の一括納品体制を整えたつもりである。各市場、各社の戦略の違いが卸売市場の規制緩和とともに出てきたが、大田市場花き部では、納品体制を整えることで機能強化を図っていく所存である。
私はこれこそが産地から信託された花を再生産価格で販売していく方策であると考えている。




2004/03/08 磯村信夫